室谷さん、今日は東京都の助成金ですよね。名前が長すぎません? 「東京都就職氷河期世代等安定就業サポート助成金」。しかも上限が240万円、補助率100%って聞いたんですけど、それ本当ですか?
本当です。補助率は100%、上限は240万円。これは加算を含めたときの上限額です。東京都が交付する助成金で、返済は不要ですね。
100%って、じゃあ会社の持ち出しはゼロなんですか!?
対象になる取り組みに対して、ですよ。会社が支払った分がそのまま助成される、という性格の助成金です。目的は、いわゆる就職氷河期に就職の機会を逃したなどで十分なキャリア形成ができず、正規雇用労働者としての就職が難しい方を、正規雇用労働者として雇い、計画的な育成計画の策定など安定して働き続けられる労働環境整備を行った事業主に助成することです。
採用するだけじゃなくて、育てる仕組みまで求めてるんですね。それって、ただの人集めとは真逆の考え方じゃないですか。
そうなんです。根拠は「東京都就職氷河期世代等安定就業サポート助成金 交付要綱」。実施主体は東京都です。人を採って終わりではなく、定着まで見ているのがこの制度の性格ですね。
そうなんです。7年度までは「就職氷河期世代等待遇向上支援助成金」という名前でした。8年度から今の「就職氷河期世代等安定就業サポート助成金」に変わっています。令和8年4月15日に更新情報が出ています。
変わっています。1年度につき1雇用保険適用事業所ごとに申請できる対象労働者数が3名から5名に増えました。さらに、新たに「介護支援制度整備加算」が創設されています。
えっ、5名に増えたんですか! それは大きい。加算も増えたなら、狙う価値ありですね。
そうですね。令和8年度の募集は令和8年5月1日から受付が始まっていて、第1回から第6回まで設定されています。今回取り上げるのは、そのうちの第6回の受付です。
この助成金の特徴補助率100%
対象の取り組みに対して全額を助成。返済は不要
対象労働者は最大5人
1年度・1雇用保険適用事業所あたり5人が限度
加算が4種類
退職金・結婚育児・介護・賃上げで上乗せ
3か月の支援期間が前提
育成計画・メンター・研修の実施が必要
金額の内訳を教えてください。1人いくらなんですか?
コースが2つあります。まず「正規雇用等コース」。対象労働者数に応じてもらえる額が決まっていて、1人なら30万円、2人で60万円、3人で90万円、4人で120万円、5人で150万円です。
1人30万円が人数分そのまま積み上がるんですね。すごくわかりやすい!
ええ。そしてここに加算が乗ります。退職金制度整備加算が10万円、結婚・育児支援制度整備加算が10万円、介護支援制度整備加算が10万円、賃上げ加算が1人12万円からです。
加算だけでけっこうな額になりますね。全部のせたらどうなるんです?
上限は加算を合わせて240万円です。ここは両コース共通のルールなので、まず覚えておいてください。
「安定有期雇用コース」です。こちらは1人20万円、2人40万円、3人60万円、4人80万円、5人100万円。正規雇用等コースより少なめに設定されています。
安定有期雇用コースのみの場合、加算はありません。そこは注意してください。
なるほど、正規で雇うほうが手厚いと。じゃあ両方を使うこともできるんですか?
正規雇用等コースと安定有期雇用コースを合わせて、対象労働者は5人が限度です。上限額は加算を合わせて240万円。この枠の中でやりくりする形になります。
条件があります。退職金制度整備加算は、支援期間中に新たに退職金制度を整備して、就業規則などを労働基準監督署へ届け出た場合、または新たに中退共制度に事業主として加入した場合です。10万円が加算されて、1事業主あたり1回のみの申請です。
支援期間中に、新たに結婚、妊娠・出産、育児に関する休暇や一時金制度を整備して、就業規則などを労働基準監督署へ届け出た場合ですね。これも10万円、1事業主あたり1回のみです。
介護は令和8年度からできた加算ですよね。条件は同じですか?
同じ考え方です。支援期間中に、新たに介護に関する休暇制度を整備し、就業規則などを労働基準監督署へ届け出た場合に10万円が加算され、1事業主あたり1回のみ。ここまでが3つの制度整備加算ですね。
賃上げ加算が一番インパクトありそうです。条件を教えてください。
支援期間中に、対象労働者の時間単価を60円以上賃上げした場合です。加算額は1人なら12万円、2人で24万円、3人で36万円、4人で48万円、5人で60万円です。
えっ、5人で60万円ですか! でも「60円以上」だけじゃ条件を満たさないんですよね?
よく気づきました。賃上げ後の時間当たりの賃金額が、東京都の最低賃金を60円以上上回っていることが必要です。ここは忘れがちなので注意してください。
なるほど! 最低賃金との関係まで見られるんですね。時給制じゃなくてもいいんですか?
様式を見ると、月給制、日給制、時給制、出来高払制それぞれの賃金支払実績確認表が用意されています。ご自身の給与形態に合うものを出す形です。
助成額は次の表のとおりです。ここが全ての出発点になります。
| 対象労働者数 | 正規雇用等コース | 安定有期雇用コース |
|---|
| 1人 | 30万円 | 20万円 |
| 2人 | 60万円 | 40万円 |
| 3人 | 90万円 | 60万円 |
| 4人 | 120万円 | 80万円 |
| 5人 | 150万円 | 100万円 |
具体的に、どう組み合わせれば240万円に近づくんですか?
たとえば正規雇用等コースで5人雇うと150万円。そこに賃上げ加算5人分の60万円が乗って210万円。さらに退職金制度整備加算10万円、結婚・育児支援制度整備加算10万円、介護支援制度整備加算10万円が全部のれば、30万円が上乗せされます。
それでトータル240万円! 上限ぴったりに届くんですね。
そういう計算になります。ただし加算はどれも就業規則などの届け出や賃上げの実績が前提です。全部を狙うなら、支援期間3か月の間にきちんと段取りを組む必要があります。
逆に言えば、しっかり準備すればちゃんと上限まで届くと。これは計画を立てる甲斐がありますね。
ありますね。ただし撤回届の提出期限後は対象労働者の変更や追加ができません。そこを踏まえて、無理のない人数で組み立てるのがコツです。
まず中小企業事業主であること。それから東京労働局管内に雇用保険適用事業所があること。この2つは絶対条件です。
要件は「東京労働局管内に雇用保険適用事業所があること」なので、そこがポイントです。対象地域は東京都、とjGrantsでも示されています。
業種は広く挙げられています。漁業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)、農業・林業、鉱業・採石業・砂利採取業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉です。
対象労働者は3パターンあります。まず、正規雇用労働者として採用された場合。次に、有期雇用労働者として採用された日から6か月未満の間に正規雇用労働者へ転換された場合。そして、有期雇用労働者として採用され、そのまま有期雇用労働者として継続して雇用されている場合です。
ただし、有期雇用労働者として継続雇用される場合は、申請事業主において、有期雇用労働者が社会保険に加入していることが必要です。この条件を忘れると対象から外れてしまいます。
採用された日から支援期間終了まで、ずっと同じ事業主で働いて、都内の事業所に勤務していることも条件ですよね?
その通りです。いずれの場合も、採用された日から支援期間終了の日まで、同一の事業主との間で雇用契約が継続し、都内の事業所に継続して勤務かつ在籍している労働者であることが求められます。
要件の中に「都の就職支援事業」ってありましたよね。具体的には何があるんですか?
8事業あります。①就活エクスプレス、②ミドルチャレンジ(Jobトライ)、③東京しごと塾、④就職チャレンジ多摩(ミドルコース)、⑤雇用創出・安定化支援事業、⑥ものづくり産業人材確保支援事業、⑦成長産業人材雇用支援事業、⑧キャリアチェンジ再就職支援事業です。
けっこうあるんですね。これを使う場合と、国の助成金を使う場合、どっちでもいいんですか?
どちらかに該当していれば大丈夫です。国の特定求職者雇用開発助成金、中高年層安定雇用支援コースまたは就職氷河期世代安定雇用実現コースの支給決定を受けている。または、都の就職支援事業を利用し、同事業を都から受託する事業者から職業紹介を受け、対象労働者を正規雇用労働者として採用する。どちらかのルートですね。
職業紹介を受けて採用、というのがポイントなんですね。
そうなんです。このルートの場合は、公益財団法人東京しごと財団から受託する事業者からの職業紹介であることが前提になります。細かい要件は申請の手引きにまとまっているので、必ずそちらで確認してください。
支援期間、これは3か月間ですが、その間に次の支援事業を行うことが求められます。①3年間の指導育成計画の策定(安定有期雇用コースは1年間)、②指導育成者、いわゆるメンターの選任とメンターによる指導、③指導育成計画に基づく研修の実施。この3つです。
メンターを決めて、研修もやる。けっこう本格的ですね。
ただ採用するだけではなく、定着と育成まで見ている制度です。実績報告のときには、指導育成計画書、メンター選任・指導報告書、研修実施報告書といった様式を出すことになります。
書類名を見ただけで大変そう(笑)。でも、支援期間のなかでやればいいんですよね?
そうです。事前に計画を立てておけば慌てません。逆に、この3つを実施できなかった場合は交付を受けられないので、そこが最重要ポイントです。
対象になる取り組みと注意点- 支援期間中に指導育成計画を策定できる
- メンターを選任して指導する体制がある
- 計画に基づく研修を実施できる
- 就業規則の届け出や賃上げの実績で加算が狙える
×デメリット
- 撤回届の期限後は対象労働者の変更・追加ができない
- 期限後に中止すると年度内の申請回数にカウントされる
- 支援期間に支援事業が実施できないと交付を受けられない
- 実績報告の提出がないと交付を受けられない
たとえば賃上げ加算を狙うなら、賃上げ後の時間当たりの賃金額が東京都の最低賃金を60円以上上回っていることが必要です。ここを満たさないと加算は取れません。
賃上げしたのに条件を満たしていない、なんてことになりそうです(笑)。
ありがちです。それから撤回届の提出期限後は、対象労働者の変更や追加ができません。同じ期限後に事業計画を中止した場合は、年度内の申請回数にカウントされて、交付したものとみなされます。ここは本当に要注意です。
えっ、中止したのに交付したことになるんですか!? それは痛い。
そうなんです。だから申請前によく検討して、無理のない計画を立ててください。加算の制度整備も、就業規則などを労働基準監督署へ届け出ることが条件なので、段取りが何より大事です。
申請方法を教えてください。オンラインで完結しますか?
電子申請と、郵送・窓口申請の2通りがあります。電子申請の場合は、令和8年度の電子申請の手引きを確認してください。Jグランツを使うには、法人共通認証基盤、GビズIDのアカウント、gBizIDプライムを取得する必要があります。
かかります。gBizIDプライムのアカウント取得には、デジタル庁のGビズID運用センターによる審査があります。ID発行まで時間がかかるので、余裕をもって準備してください。
締切ギリギリに気づいて、まずID取得から! となりがちですもんね。
まさにそれです。しかも審査があるので、申請期間に間に合わない可能性すらあります。早めの準備が本当に大事です。
書類をすべて整えて、原則郵送で提出します。送達記録の残るレターパック等の方法で送ってください。申請書類は信書に該当するので、信書の送付が禁止されているメール便、宅配便などは使えません。
FAX、メールでの申請受付、問合せ、書類の受理等は一切対応していません。あと、返信用封筒を含めて郵便料金に不足がないようにしてください。不足していると受付できません。
郵送の場合は、各回の受付期間開始日から受付期間終了日までの消印有効です。ただし、消印のない場合、たとえば料金後納郵便などは書類の到着日とされます。そこは混同しないでください。
電子申請で出して、実績報告は郵送、みたいに分けられますか?
分けられません。交付申請書を電子申請で提出した場合、その後の実績報告書、撤回届、中止申請書および再提出書類は、すべて電子申請で提出します。逆に、郵送や窓口で提出した場合は、これらを電子申請で出すことはできません。
最初に選んだ方法で最後まで通す、と。じゃあ提出する書類には何があるんですか?
交付申請時は、事業計画書兼交付申請書、誓約書、同意書、支払金口座振替依頼書などです。実績報告時は、実績報告書、指導育成計画書、メンター選任・指導報告書、研修実施報告書。加算を狙う場合は、結婚・育児支援制度整備確認票、介護支援制度整備確認票、賃金支払実績確認表などが加わります。
「TOKYOはたらくネット」からダウンロードしてください。手引きも様式もそこで配布されています。まずセルフチェックリストを開いて、抜けがないか確認しながら進めるのがおすすめです。
申請から実績報告までの流れ- 1
GビズIDを準備
電子申請ならgBizIDプライムを取得。発行に時間がかかる
- 2
手引きと様式を確認
TOKYOはたらくネットからダウンロード
- 3
交付申請を提出
令和8年10月1日8時30分〜10月31日17時15分
- 4
支援期間に取り組む
令和8年12月1日〜令和9年2月28日に3つの支援事業
- 5
実績報告を提出
令和9年3月1日8時30分〜3月16日17時15分
まず要件を満たしているかです。中小企業事業主であること、東京労働局管内に雇用保険適用事業所があること、国の就職氷河期コース等の支給決定を受けているか都の就職支援事業経由で採用していること。このあたりが土台になります。
見られます。支援期間中に3つの支援事業を確実に行ったか、指導育成計画書や研修実施報告書が計画と合っているか。加算を狙うなら、就業規則の届け出や賃上げの実績が確認できるかですね。
なるほど! あらかじめ計画を立てて、その通りに進めるのが大事なんですね。
まさに。あと、予算の範囲を超えた場合は、年度途中でも申請受付が終了することがあります。受付終了はTOKYOはたらくネットで案内されるので、こまめに確認してください。
一つはGビズIDの取得待ちです。電子申請したいのにIDがない、というパターンですね。もう一つは、撤回届の期限を過ぎてから対象労働者を変えたいと言っても変更できない点です。
あ、それは前に聞きました。中止すると申請回数にカウントされるやつですよね。
そうです。それと、各回に設定されている支援期間に支援が実施できない場合や、実績報告受付期間に実績報告の提出がない場合は、助成金の交付を受けられません。ここも大きな落とし穴です。
支援期間が3か月って決まっているから、その間にメンター指導も研修もやる必要があるんですよね。スケジュール管理が勝負だ。
その通りです。実績報告の受付期間も決まっているので、カレンダーに書き込んでおくといいですね。
さっき「予算の範囲を超えたら受付終了」って言いましたよね。それって珍しいことなんですか?
制度上、予算の範囲を超えた場合は、年度途中であっても申請受付を終了することがある、と明記されています。受付終了時には、ホームページ「TOKYOはたらくネット」で案内されます。
じゃあ締切前に枠が埋まる可能性もあるんですね。のんびりしてられない!
そうですね。申請の際は、必ずホームページで最新の状況を確認してください。これ、地味に大事なポイントです。
交付申請の受付期間は、令和8年10月1日木曜日の8時30分から、10月31日土曜日の17時15分までです。支援期間は令和8年12月1日日曜日から令和9年2月28日日曜日まで。実績報告の受付期間は令和9年3月1日月曜日の8時30分から3月16日火曜日の17時15分までです。
申請してから支援が始まるまでに少し間があるんですね。
あります。だからこそ、その期間で指導育成計画をしっかり詰めておくといいですよ。
令和8年10月1日8時30分スタート、10月31日17時15分締切。ここは絶対に外せないですね。
外せないですね。時間も指定されているので、17時15分を過ぎると受け付けてもらえません。
第6回のスケジュール令和8年10月1日
交付申請の受付開始
午前8時30分から
令和8年10月31日
交付申請の締切
午後5時15分まで
令和8年12月1日
支援期間の開始
〜令和9年2月28日
令和9年3月1日
実績報告の受付開始
午前8時30分から
令和9年3月16日
実績報告の締切
午後5時15分まで
基本情報は次の表にまとめておきます。
わからないことがあったら、どこに聞けばいいんですか?
東京都正規雇用化推進窓口の就職氷河期世代等安定就業サポート助成金担当です。電話番号は03-6205-6730。受付時間は平日の午前8時30分から午後5時15分までで、12月29日から1月3日を除きます。
東京都新宿区歌舞伎町2-42-10、ハローワーク5階です。持参する場合はこの受付時間内に提出してください。受付時間外は受け付けてもらえません。
郵送が基本だけど、持ち込むなら時間厳守、と。様式はどこからダウンロードするんですか?
この助成金の要件に、国の特定求職者雇用開発助成金の支給決定を受けていることが含まれています。そこが前提になっている制度なので、関係は公募要領や手引きで確認してください。本助成金の申請は1年度につき1雇用保険適用事業所ごとに、正規雇用等コースと安定有期雇用コース合わせて対象労働者5人が限度、上限額は加算を合わせて240万円とされています。
申請回数や撤回の扱いは細かく決まっています。撤回届提出期限後に事業計画を中止した場合は、年度内の申請回数にカウントされ、交付したものとみなされます。ここは手引きで確認してください。
なるほど。わからないまま進めないほうがよさそうですね。
そうですね。迷ったら窓口に電話するのが一番早いです。電話番号は03-6205-6730ですよ。
最後に、応募を考えている事業者に向けて要点をまとめてください。
まず、補助率は100%、上限は240万円。正規雇用等コースは1人30万円から5人150万円、安定有期雇用コースは1人20万円から5人100万円。加算は退職金・結婚育児・介護それぞれ10万円、賃上げは1人12万円から5人60万円です。
使うためには、就職氷河期世代の方の採用と、3つの支援事業がセットなんですよね。
はい。中小企業事業主で、東京労働局管内に雇用保険適用事業所があること。国の就職氷河期コース等の支給決定か、都の就職支援事業経由の採用か。どちらかのルートが必要です。そして支援期間3か月の間に、指導育成計画の策定、メンターの選任と指導、研修の実施を行います。
締切は令和8年10月31日17時15分。GビズIDをまだ持っていない人は、今すぐ動いたほうがいいですね。
そうですね。ID発行には審査があって時間がかかるので、早めの準備が本当に大事です。第6回の申請を検討しているなら、まず手引きをダウンロードして、窓口に電話で確認する。そこから始めましょう。