室谷さん、今日はちょっと意外な制度を教えてもらえるんですよね。「廃業」が補助金のテーマって、正直びっくりしたんですが。
そうなんですよ、佐藤さん。制度名は「事業承継・M&A補助金」なのに、廃業にかかるお金を見てくれる枠があるんです。今日のテーマは16次公募の中の廃業・再チャレンジ枠です。
廃業って、できれば避けたい響きじゃないですか。それが支援の対象になるって、どういう発想なんですか?
ここが肝心で、狙いは「後ろ向きの廃業」じゃないんですよ。事業承継やM&Aに伴って既存の事業をたたんで、新しい取り組みにチャレンジする。その一歩を支えるためのお金です。制度の目的にも「事業承継、事業再編及び事業統合を契機として新たな取り組みを行う事業」と書かれています。
なるほど、主役は「再チャレンジ」なんですね。じゃあ上限はいくらなんですか?
補助上限が300万円、補助率が2/3以内です。これが今日の基本ラインです。
えっ、2/3! 300万円ぶんの経費なら200万円戻ってくる計算ですよね。それはデカい!
ただ、廃業にお金がかかるって、いまいちピンとこないんですよ。店を閉めるだけなら、そんなに費用はかからないんじゃないですか?
それが意外とかかるんです。公表されている補助対象経費を見ると、廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、土壌汚染調査費などが挙がっています。たとえば設備や在庫を処分するにもお金がかかりますし、建物を解体して更地に戻すとなれば、それなりの金額になります。
あー、たしかに。機械を処分するだけでも産廃費用がかさみますもんね。土壌汚染調査なんて、自分では絶対に金額の見当がつかない。
しかも、廃業してから新しく動き出すまでの間って、収入が止まりやすい時期です。そこに解体費や在庫処分費がドンと乗ってくる。だからこそ、この部分を公的なお金で軽くして、再チャレンジに踏み出しやすくしようという設計なんです。
納得です。じゃあ「廃業して終わり」じゃなくて、廃業が新しい事業のスタート地点になる人向け、ということですね?
まさにそのとおりです。ここを押さえておくと、このあとの要件の意味がすっと入ってきますよ。
ところで、この制度名がとにかく長いんですよ。読み上げるだけで息が切れそうなんですが。
正式には中小企業生産性革命推進事業_事業承継・M&A補助金(16次公募)_廃業・再チャレンジ枠です。事業名としては「中小企業生産性革命推進事業_事業承継・M&A事業補助金(16次公募)」の中のひとつの枠、という位置づけになります。
16次公募、ということは、それだけ回数を重ねてきた制度なんですね。公募の受付はどこでやっているんですか?
申請は電子申請(Jグランツ)のみでの受付です。紙で郵送して終わり、というルートは用意されていません。だからまず、申請用のアカウントまわりを整えるところから始まります。
なるほど。ちなみに、同じ補助金の中に別の枠もあるんですよね?
あります。事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠の3つで、今回の廃業・再チャレンジ枠はこれらと併用申請ができるという特徴があります。ここは後半でたっぷり掘り下げますね。
廃業・再チャレンジ枠の特徴廃業の費用を補助
廃業支援費・在庫廃棄費・解体費・土壌汚染調査費などが対象
再チャレンジが主役
廃業して新たな取り組みにチャレンジする計画が前提
法人は株主、個人は本人
再チャレンジの主体が申請の形を決める
併用申請が可能
事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠と併用できる
さっき300万円・2/3という数字を聞いて、頭の中がざわついてるんですが、ここは丁寧に確認させてください。補助率2/3以内って、つまりどういうことですか?
補助の対象になる経費の2/3以内、つまり最大でも3分の2までが出る、という意味です。そして、出る金額には300万円という天井があります。この2つは別々のルールなので、分けて考えるのがコツですね。
天井があるから、経費をいくら積んでも300万円で止まる、と。
そういうことです。ここを混同すると、あとで「思ってたより少ない!」となりかねません。
順番にいきましょう。まず補助率2/3以内。これは「4分の3でも5分の4でもダメ、3分の2まで」という理解でいいんですか?
はい、そこが上限です。2/3を超える補助は出ません。つまり、対象経費のうち最低でも3分の1は自分で負担する必要があります。ここは資金計画を立てるうえで外せないポイントですね。
逆にいえば、3分の1を自分で用意できればいい、とも言えますね。全額を自分で抱えるよりはるかにハードルが下がる!
そのとおりです。そして天井が300万円。つまり補助額は「対象経費 × 2/3」と「300万円」の小さいほう、という考え方になります。
なるほど、そこの小さいほうを取る、と。すごく腹落ちしました。
で、さっきちらっと出た「併用申請」なんですが、これで何か変わるんですか?
変わります。公表資料には、併用申請の場合の補助上限として150万円と300万円の2つの数字が示されています。使い分けは、併用する枠によって決まります。
150万円と300万円、その差は大きい。どういう分岐なんですか?
資料の整理では、事業承継促進枠、専門家活用枠(小規模売り手支援類型を除く)、PMI推進枠と併用する場合は補助上限300万円。専門家活用枠の小規模売り手支援類型と併用する場合は150万円、という区分になっています。
へえ、併用する相手によって天井が変わってくるんですね。じゃあ、どの枠と組むかで戦略も変わりそうだ。
そうなんです。だから「まず廃業・再チャレンジ枠だけ出すのか、他の枠と組み合わせるのか」を最初に決めておくのが大事です。なお、他の枠と併用する場合は、それぞれの枠の事業としてそれぞれ申請する形になり、廃業・再チャレンジ枠での申請は不要とされています。このあたりは公募要領で要確認の部分もありますから、必ず要件と突き合わせてください。
数字が並ぶと頭が痛くなってくるので、具体的な例で教えてもらえますか?
では単独申請で考えてみましょう。対象経費がちょうど300万円だった場合、2/3を掛けると補助額は200万円になります。上限300万円を超えていないので、この200万円がそのまま補助されるイメージです。
300万円かけて200万円戻る。手出しは100万円。なるほど、わかりやすい!
次に、対象経費が450万円だった場合はどうなるでしょう。2/3を掛けると300万円です。これは上限300万円とちょうど同じなので、補助額は300万円になります。
おお、ぴったり300万円。じゃあ経費がもっと大きかったら?
たとえば対象経費が600万円なら、2/3だと400万円になってしまいますが、上限があるので補助額は300万円で止まります。ここで「あれ?」と感じた方が鋭いんです。
あれ? です! 450万円のときも600万円のときも300万円なら、経費の積み方に意味はあるんですか?
いいところに気づきました。自己負担の額が変わってくるので、資金繰りの設計は変わります。ただ補助額だけを見れば300万円で頭打ち。だからこそ、対象経費をむやみに膨らませるより、要件を満たす経費を確実に積み上げるほうが現実的です。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 補助上限額 | 300万円 |
| 補助率 | 2/3以内 |
| 併用申請時の補助上限 | 150万円または300万円(併用する枠による) |
| 対象地域 | 全国 |
| 募集期間 | 2026年10月2日〜2026年11月6日 |
表にすると一気に見やすくなりますね。募集期間が10月2日から11月6日というのも、頭に刻んでおきます。
ここからは、いちばん大事な「自分は出せるのか」の判定ですね。応募資格はかなり細かく書かれていると聞きました。
はい、公募情報では(1)から(17)までの要件が並んでいます。全部を一気に暗記する必要はありませんが、「自分に関係する番号」は確実に押さえておきたいところです。
17個! 多いなあ。でも、順番に見ていけば大丈夫ですよね。
まず、そもそも誰が申請するんですか? 廃業する会社が申請するのかと思っていました。
ここが独特なんです。再チャレンジ申請の場合、廃業する予定の中小企業(対象会社)と、対象会社の議決権の過半数を有する株主(支配株主)、またはその株主の代表者(株主代表)のいずれかで共同申請することが必要です。
共同申請! 会社と株主が二人三脚で出すんですね。なぜそんな形なんだろう?
再チャレンジする主体が、法人の場合は株主だからです。会社は廃業しますが、次に挑戦するのは株主。だから両方の名前が必要になる、という整理ですね。なお、支配株主は1者で議決権の過半数を有する者、株主代表は議決権の過半数を有する株主の代表者1者と定義されています。
廃業する予定の中小企業者が個人事業主である場合は、その個人事業主での申請になります。会社ではないので、株主という考え方が出てこないわけですね。
すっきりしました。法人は株主と、個人は本人と。ここを間違えると入口でつまずきそうです。
次に気になるのが、要件の(15)です。これ、けっこう特殊な条件に読めたんですが。
そうですね。2020年以降、M&A(事業の譲り渡し)に着手したものの、成約に至らなかった者であること。これが再チャレンジ申請の重要な要件のひとつです。
譲り渡しに挑戦したけど、買い手が見つからなかった、ということですか。それって、なかなか言い出しにくい状況のような……。
そこは制度のやさしさというか、「一度チャレンジした人をそのまま放置しない」というメッセージに読めます。ただし「着手した」と認められるには条件があります。事業承継・引継ぎ支援センターへの相談依頼、M&A仲介業者や地域金融機関などM&A支援機関との包括契約(着手に関する契約)、M&Aマッチングサイトへの登録のいずれかに該当すること。そして原則として、M&A支援機関登録制度に登録された専門家等による支援であることが求められます。
なるほど。自分で勝手に買い手を探した、というのはダメなんですね?
はい、申請者自身でM&Aに着手した場合は対象外と明記されています。それと、もうひとつ時間の条件があります。公募申請期日時点で、事業の譲り渡しに着手してから3か月以上経過していること。着手したばかりでは対象になりません。
3か月以上、と。ここは日付で判断されるので、記録をきちんと残しておかないといけませんね。
要件の(16)に「認定支援機関の確認」という言葉が出てきました。これは何を確認してもらうんですか?
廃業後に再チャレンジする事業に関する計画を作成し、認定支援機関の確認を受けていること。これが要件です。つまり、ただ廃業するだけの計画では足りなくて、その先の再チャレンジの計画がセットで必要になります。
なるほど、だから「再チャレンジ枠」という名前なんですね。計画を第三者の目で見てもらう、というプロセスが入るのがポイントか。
そうですね。それと(17)も見落としやすいんです。過去に「経営資源引継ぎ補助金」または「事業承継・引継ぎ補助金」を受け取ったことがある人は、期日までに事業化状況報告を適切に実施していることが求められます。報告義務があるのに出していない人は対象外とされています。
過去に受けた人が、報告をサボっていると締め出される、と。これは怖い。心当たりのある方は今すぐ確認したほうがよさそうです。
あと、業種の縛りってあるんですか? うちの読者には飲食や建設の方も多いんですが。
対象業種はとても広くて、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉、複合サービス事業などが挙がっています。
かなり幅広い! 飲食も建設も入っているなら、多くの読者に関係がありそうです。
規模の条件も押さえておきましょう。中小企業者等の定義は中小企業基本法第2条に準じていて、たとえば製造業その他なら資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業なら資本金1億円以下または従業員100人以下、小売業なら資本金5千万円以下または従業員50人以下、サービス業なら資本金5千万円以下または従業員100人以下です。
従業員数の数え方も気になります。パートさんも入るんですか?
そこは公募要領の細かい定義を確認していただくのが確実です。ただ、ひとつ注意点として、一部は対象外となる中小企業者等の条件も設けられています。公募要領の「5.補助対象者」の【対象外となる中小企業者等】を必ず確認してください。
なるほど、ここは「たぶん大丈夫」で進めると危ないですね。原典確認が必須だと。
お金の話に戻りましょう。実際、何に使ったお金が対象になるんですか?
公表されている例では、廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、土壌汚染調査費などです。廃業にまつわる、いわゆる「後始末」のお金が中心になっています。
在庫廃棄費が入っているのは、小売や飲食をやっている人には大きいですね。食品の在庫を抱えたまま閉めるとなると、処分だけでも相当なものですから。
それぞれの項目を少し掘り下げますね。まず廃業支援費は、廃業の手続きを進めるにあたって必要になる支援関連の費用という位置づけです。次に在庫廃棄費は、文字どおり在庫を処分するための費用。
解体費は建物の取り壊しですよね。工場や店舗を持っている人は、これが最大の山場になりそうだ。
そうですね。そして土壌汚染調査費。これは見落とされがちですが、土地を手放すとなれば、汚染がないかを調べる必要が出てくることがあります。調査そのものにも費用がかかりますから、補助の対象に挙がっているのは大きいです。
たしかに、土壌汚染調査って何十万円という世界ですよね。それを2/3見てもらえるなら、廃業のハードルが本当に下がる。
ただし、ここは繰り返しになりますが、対象経費の詳細な範囲は公募要領で確認してください。公表されている例は「など」で締められていますから、自分のケースが該当するかは一次情報で確かめるのが鉄則です。
逆に、これは使えない、という線引きはどうなっているんですか?
提示されている情報の中では、対象経費の例が示されている一方、それ以外の詳細な線引きは公募要領の確認が必要です。ただ、考え方として押さえておきたいのは「廃業のために必要なお金」であって、再チャレンジ後の新事業の設備投資などは、この枠の趣旨から外れてくる可能性が高いです。
あー、それは大事だ。新しい事業のための機械を買いたい、というお金をこの枠で出そうとすると、ずれてしまうかもしれないんですね。
そうですね。新事業のための設備投資は、併用する事業承継促進枠やPMI推進枠の事業統合投資類型などの役割になってくる。つまり「どのお金をどの枠で出すか」を仕分けする発想が必要です。
なるほど、枠ごとに役割分担がある、と。だから併用申請という仕組みがあるんですね!
対象経費のイメージと注意点- 廃業支援費が対象
- 在庫廃棄費が対象
- 解体費が対象
- 土壌汚染調査費が対象
×デメリット
- 詳細な範囲は公募要領で要確認
- 再チャレンジ後の設備投資は枠の趣旨から外れる可能性
- 補助率2/3超は出ない
- 後払いのため資金繰りに注意
ここまでで「誰が」「いくら」は見えてきました。次は「どう出すか」です。実際の手順を教えてください。
まず大前提として、申請は電子申請(Jグランツ)のみでの受付です。そして、申請にはGビズIDプライムアカウントが必要になります。この取得には時間がかかることがあるので、いちばん最初に着手するのが安全です。
締切前に慌てて取りかかると、ID発行待ちで詰む、というやつですね。こわい。
流れとしては、GビズIDプライムを取得して、公募要領を読み込んで、要件を確認して、再チャレンジの計画を作って認定支援機関の確認を受けて、必要書類をそろえて、Jグランツで申請する、という順番になります。
認定支援機関の確認が入るぶん、普通の補助金よりワンクッション多いんですね。ここは時間を見ておかないと。
そうなんですよ。しかも個人事業主の場合は、青色申告者であり、税務署に提出した確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出できることが求められます。電子で申告している場合は、受付が確認できる「メール詳細」または「受信通知」を追加で出す必要があり、それが無い場合は「納税証明書〔その2〕所得金額の証明書」または「課税証明書(所得金額の記載のあるもの)」も追加になります。
うわ、ここで書類が足りないと差し戻しになる。事前に手元をチェックしておかないとですね。
外国籍の方は、住民票の写しに「国籍・地域」「在留期間等」「在留資格」「在留期間等の満了の日」「30条45規定区分」が明記されたものを添付する必要があります。ここも忘れがちなポイントです。
締切は11月6日ですよね。じゃあその少し前に出せばいい、という感覚でも大丈夫ですか?
それが、今回はそうはいかない事情が公表されています。過去の公募回の傾向から、申請期日の前日・当日に申請が集中することが予想されていて、今回の審査日程では期日間際の申請に対して複数回の不備指摘や修正差戻しができないとされています。そして、不備が解消しない場合は不採択となる可能性がある。
えっ、それは怖すぎる! 内容が良くても、書類の不備で落ちてしまうことがあるんですか。
そういうことです。だからこそ、不備の指摘や修正差戻しを希望する場合は、申請期日の5営業日前、2026年10月29日までの提出が検討されています。余裕をもって出すことが、そのまま採択の可能性を守ることにつながります。
10月29日、カレンダーに線を引いておきます。締切前日じゃなくて、5営業日前。ここは本当に大事な情報ですね。
書類づくりが不安な人は、専門家に頼むことも考えますよね。このあたりにルールはありますか?
あります。申請内容の作成を有償で第三者へ依頼する場合は、行政書士(または行政書士法人)に限られ、行政書士証憑・委任契約書の提出が必須です。ここは明確に決まっています。
なるほど、誰でもいいわけではないと。知らないで頼むと、あとで大変なことになりそうだ。
詳細は「公募申請の手引き」に記載があるので、そちらを確認してください。いずれにしても「頼める相手が決まっている」という前提で動くのが安全です。
申請までの流れ- 1
GビズIDプライムを取得
申請は電子申請のみ。取得に時間がかかるため最初に着手
- 2
公募要領を読み込む
対象経費・要件・対象外条件を確認
- 3
再チャレンジ計画を作成
廃業後の新たな取り組みを計画に落とす
- 4
認定支援機関の確認を受ける
計画について確認を受けることが要件
- 5
必要書類をそろえる
確定申告書B・青色申告決算書の写し等
- 6
Jグランツで申請
2026年10月29日までの提出が検討されている
提出まで見えたところで、次は「通るために何を気をつけるか」を聞きたいです。落とし穴がありそうで。
そうですね。この制度は要件が細かいぶん、中身の前に「形式」でつまずくポイントがいくつかあります。順番に見ていきましょう。
まず併用申請。さっき「150万円と300万円で上限が変わる」と聞きましたが、他に注意は?
公募情報には、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠と併用して申請する場合は、それぞれの枠の事業として申請すること、廃業・再チャレンジ枠での申請は不要と書かれています。つまり、併用するなら申請の出し方そのものが変わるんです。
あ、そうか。同じフォームにまとめて書くわけじゃないんですね。知らずに一つの申請で済ませようとすると、そもそも形が違ってしまう。
そこです。しかも併用申請の取り扱いについては「別途公表の公募要領を参照すること」とされています。だから、自分が単独で出すのか併用で出すのかを先に決めて、該当する公募要領を読む。この順番が大事です。
なるほど、最初に方針を決める。それが結果的にいちばんの時短になりそうだ。
要件の(13)が特徴的です。申請時点から過去18ヵ月の間に、中小企業庁が所管する補助金に申請した内容について、賃上げ加点の要件等が未達成の場合、正当な理由が認められない限り大幅に減点される、とされています。
えっ、過去の申請が影響するんですか! それは知らないと痛い。
対象として例示されている補助金には、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、サービス等生産性向上IT導入支援事業、小規模事業者持続化補助金、事業承継・引継ぎ補助金、事業承継・M&A補助金、成長型中小企業等研究開発支援事業、事業再構築補助金、新事業進出補助金、中小企業省力化投資補助事業などが挙がっています。令和8年9月時点の整理として示されているものです。
過去に補助金をもらって、賃上げの約束を果たしていないと。心当たりのある方は、申請前に状況を確認しておかないとですね。
そうですね。ここは申請書を書く前にチェックすべき項目です。
提出した申請に不備や確認すべき事項があった場合、事務局からJグランツを通じて連絡が来ます。だから、採択結果の通知まで、Jグランツのマイページや登録したメールアドレスに連絡が来ていないかをこまめに確認してください。
メールを見落としていたら、そのまま不備で終わってしまう可能性があるわけですね。怖い。
そしてもうひとつ。(14)として、事務局が求める調査やアンケート等に協力できることも要件です。この補助金では、事業承継・M&A事業における事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点、**中小企業活性化協議会(旧:中小企業再生支援協議会)**の利用状況について、申請時にアンケートを実施するとされています。
アンケートの回答内容で採否が変わることはあるんですか?
そこは明記されていて、回答内容が補助金の採択に影響することはありません。安心して正直に答えてよい、ということですね。
ここまでで「廃業・再チャレンジ枠」はかなり見えてきました。最後に、全体の中での位置づけを整理したいです。同じ補助金の中に他の枠があるんですよね?
はい。事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠、そして廃業・再チャレンジ枠。公募要領の公表ページでは4つの枠の概要が並べて示されています。それぞれ役割が違うので、並べて見るとわかりやすいですよ。
ざっとでいいので、それぞれ何をする枠なのか教えてください。
事業承継促進枠は、5年以内に親族内承継または従業員承継を予定している人が対象で、設備投資費用や店舗・事務所の改築工事費用などを補助します。補助率は1/2・2/3で、小規模事業者に該当する場合は2/3。補助上限は800万円から1,000万円で、一定の賃上げを実施する場合は800万円から1,000万円に引き上げられます。
M&Aで経営資源を他者から引き継ぐ、あるいは他者に引き継ぐ予定の中小企業・小規模事業者が対象で、ファイナンシャルアドバイザーや仲介に係る費用、デュー・ディリジェンス、セカンド・オピニオン、表明保証保険料などが対象です。補助率や上限は類型ごとに細かく分かれていて、買い手支援類型、売り手支援類型、小規模売り手支援類型があります。
M&Aに伴って経営資源を譲り受ける予定の中小企業等のPMIの取り組みが対象で、専門家活用に係る費用や設備投資に係る費用を補助します。PMI専門家活用類型は補助率1/2・上限150万円、事業統合投資類型は補助率1/2・2/3で、小規模事業者は2/3、上限は800万円から1,000万円です。
こうして並べると、廃業・再チャレンジ枠は「終わらせる側」、他の枠は「つなぐ側・引き継ぐ側」という色分けに見えますね。だから併用できるんだ!
4つの枠をざっくり比較| 項目 | 廃業・再チャレンジ枠 | 事業承継促進枠 | 専門家活用枠 | PMI推進枠 |
|---|
| 主な対象 | 廃業して再チャレンジする人 | 親族内承継・従業員承継を予定する人 | M&Aで経営資源を引き継ぐ・引き継ぐ予定の人 | M&A後に経営統合・事業統合を考える人 |
| 補助率 | 2/3以内 | 1/2・2/3 | 類型による(1/3・1/2・2/3) | PMI専門家活用は1/2、事業統合投資は1/2・2/3 |
| 補助上限 | 300万円 | 800万円〜1,000万円 | 類型による(450万円〜2,000万円) | PMI専門家活用は150万円、事業統合投資は800万円〜1,000万円 |
| 併用申請 | できる | できる | できる | できる |
表で見ると一気に整理されますね。自分の状況がどの枠に近いのか、考えやすい。
そうですね。ただし、併用する場合の上限の考え方は先ほど話したとおりです。150万円なのか300万円なのかは、組み合わせる枠で変わります。ここは公募要領で要確認のうえ、判断してください。
最後に、時間の流れを確認させてください。公募要領の公表から締切まで、どう動けばいいですか?
まず2026年9月4日に公募要領が公表されました。そして公募申請受付期間が**令和8年10月2日から令和8年11月6日17時まで(予定)**です。
約1か月ちょっとですね。その間に、計画づくりと認定支援機関の確認まで終わらせないといけない。思ったよりタイトだ!
そうなんです。しかも不備の修正差戻しを希望するなら2026年10月29日までの提出が検討されています。受付開始から締切までの間に、実質的な山場が2回あるイメージです。
10月2日に出せる準備をしておいて、遅くとも10月29日には出す。これが安全策ですね。
そのとおりです。逆算すると、GビズIDプライムの取得や認定支援機関との調整は、9月中に動き始めておくくらいの気持ちがちょうどいいと思います。
公募スケジュール2026年9月4日
公募要領を公表
内容と要件を確認する
2026年10月2日
公募申請受付開始
電子申請(Jグランツ)で受付
2026年10月29日
実質的な提出推奨ライン
申請期日の5営業日前。不備の修正差戻しを希望する場合はこの日までの提出を検討
2026年11月6日
公募申請受付終了
17時まで(予定)
一番多い質問がこれだと思うんですが、締切は2026年11月6日でいいんですよね?
はい、公募申請受付期間は令和8年10月2日から令和8年11月6日17時まで(予定)です。ただし先ほど話したとおり、期日間際は申請が集中すると予想されていて、複数回の不備指摘や修正差戻しができないとされています。実質的には2026年10月29日を目標に動くのがおすすめです。
出せます。中小企業者等には個人事業主も含まれていて、廃業する予定の中小企業者が個人事業主の場合は、その個人事業主での申請になります。ただし、青色申告者であり、確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出できることが求められます。電子申告の場合は受付が確認できる「メール詳細」または「受信通知」も必要です。
はい、そこがこの枠の肝です。廃業後に再チャレンジする事業に関する計画を作成し、認定支援機関の確認を受けていることが要件になっています。廃業そのものだけを見る制度ではなく、その先の新しい取り組みがセットで問われます。
専門家活用枠・廃業再チャレンジ枠の窓口は050-3145-3812です。受付時間は平日9時30分から12時までと、13時から17時まで。土曜・日曜・祝日を除きます。問い合わせの前に、事業承継・M&A補助金事務局のプライバシーポリシーを確認するよう案内されています。
できます。事業承継促進枠、専門家活用枠、PMI推進枠と併用申請が可能です。ただし併用する場合は、それぞれの枠の事業として申請することになり、廃業・再チャレンジ枠での申請は不要とされています。上限も150万円または300万円と分かれるため、公募要領での確認が欠かせません。
かなり長い旅でしたが、最後にぎゅっとまとめてもらえますか?
はい。廃業・再チャレンジ枠は、事業承継・M&Aに伴って既存事業を廃業し、新たな取り組みにチャレンジする中小企業・小規模事業者を支える枠です。補助上限は300万円、補助率は2/3以内。廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、土壌汚染調査費などが対象経費として挙がっています。
そして、ただ廃業するだけではダメで、再チャレンジの計画と認定支援機関の確認が必要、と。
そうです。それに加えて、2020年以降にM&Aへ着手したものの成約に至らなかったこと、着手から3か月以上経過していること、といった要件もあります。法人は対象会社と支配株主または株主代表の共同申請、個人事業主は本人での申請です。
締切周りの注意も忘れられないですね。10月2日から11月6日17時まで、そして10月29日までの提出が検討されている、と。
そうですね。そして有償で作成を頼むなら行政書士に限られ、証憑と委任契約書の提出が必須です。ここは最初に知っておくと無駄な動きをせずに済みます。
ありがとうございました! 「廃業」という言葉のイメージが、今日ですっかり変わりましたよ!