室谷さん、今日のお題は「中小企業生産性革命推進事業 事業承継・M&A補助金」の16次公募、専門家活用枠の買い手支援類型、100億企業特例。……名前が長すぎて、読み上げるだけで息が切れるんですけど(笑)。
はは、たしかに長いですね(笑)。でも構造はシンプルです。親の制度があって、その中の「専門家活用枠」、さらに「買い手支援類型」、そして「100億企業特例」という絞り込みがかかっている、という入れ子なんです。
3段階の絞り込み、と。で、結局これは何のためのお金なんですか?
M&Aに伴って専門家を活用する費用を、国が一部補助するものです。対象には、ファイナンシャルアドバイザーの費用やM&A仲介費用、デュー・ディリジェンス、セカンド・オピニオン、表明保証保険料といったものが挙がっています。補助上限は2,000万円、補助率は1/3以内または1/2以内です。
えっ、2,000万円!? 専門家の費用だけでそんな額になるんですか?
大規模なM&Aならあり得る世界です。しかも今回の類型は、事業を「引き継ぎたい」側、つまり買い手の支援に特化したものなんですよ。
じゃあまず、一番外側の「事業承継・M&A補助金」そのものから教えてください。
目的は、中小企業者や個人事業主が、事業承継・事業再編・事業統合を契機として新たな取り組みを行う事業について、その経費の一部を補助することです。それによって事業承継や事業再編、事業統合を後押しし、生産性向上による日本経済の活性化を図る、というのが狙いです。
承継そのものじゃなくて、「承継を契機に何かやる」ってところにフォーカスしてるんですね。
そこがポイントです。根拠法令は、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律、中小企業基本法、それから商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律の3つです。
M&Aによって経営資源を他者から引き継ぐ、あるいは他者に引き継ぐ予定の中小企業・小規模事業者、個人事業主を含めて、そういう方々が対象です。M&Aに係る専門家活用の費用を補助する、という枠になっています。
はい。だから「買い手支援類型」と「売り手支援類型」という分かれ方になるんです。今回はそのうち買い手側、しかも100億企業特例に限ったお話です。
100億企業特例、ずっと引っかかってるんですよ。これ、普通の買い手支援類型とは何が違うんですか?
補助上限額を2,000万円以内とする買い手支援類型、それが100億企業特例です。jGrantsの申請フォームも、この類型だけに向けて用意された専用のものになっています。
そうです。100億企業要件の細かい定義や判断は、公募要領で要確認です。ここは雰囲気で判断しないでください。
ここからは、みんなが気になるお金の話です。補助率が2つあるのが気になってるんですよ。
そのとおり、この制度は段階構造になっています。100億企業要件を満たす場合、対象経費の1,000万円以下の部分は1/2、1,000万円を超える部分は1/3です。
そのイメージで大丈夫です。だから、1,000万円というラインを意識しながら対象経費を積み上げていくのが大事になります。
例えば1,000万円ちょうどの対象経費だったら、補助額は500万円になる、と。
そういう理解で合っています。ただし、細かな適用や対象経費の範囲は公募要領での確認が必要です。
補助上限は2,000万円です。ここは100億企業要件を満たす場合の特例の金額ですね。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 補助上限 | 2,000万円 |
| 補助率 | 1/3以内 又は 1/2以内 |
| 100億企業要件を満たす場合 | 1,000万円以下の部分は1/2、1,000万円超の部分は1/3 |
| 対象経費の例 | FA・M&A仲介費用、デュー・ディリジェンス、セカンド・オピニオン、表明保証保険料 等 |
見えますよ。買い手支援類型は補助率が1/3・1/2・2/3で、上限は600〜800万円、100億企業要件を満たす場合が2,000万円。売り手支援類型は補助率1/2・2/3で上限600〜800万円。小規模売り手支援類型は補助率2/3で上限450万円です。
100億企業特例が、上限だけ見ると飛び抜けてるんですね!
はい。なお上限600〜800万円の部分には、800万円を上限に、デュー・ディリジェンス費用を申請する場合に200万円を加算する、という条件も示されています。
類型ごとの補助率と補助上限| 項目 | 買い手100億企業特例 | 買い手支援類型 | 売り手支援類型 | 小規模売り手支援類型 |
|---|
| 補助率 | 1/3以内 又は 1/2以内 | 1/3・1/2・2/3 | 1/2・2/3 | 2/3 |
| 補助上限 | 2,000万円 | 600〜800万円 | 600〜800万円 | 450万円 |
| 補助率の段階 | 1,000万円以下は1/2、超は1/3 | 公募要領で要確認 | 公募要領で要確認 | 公募要領で要確認 |
中心は、ファイナンシャルアドバイザーの費用とM&A仲介に係る費用です。これには条件があって、M&A支援機関登録制度に登録されたFAまたはM&A仲介業者によるものに限るんです。
登録制度があるんですね。そこに載っている人に頼まないと対象にならない、と。
そうです。加えて、デュー・ディリジェンス、セカンド・オピニオン、表明保証保険料も対象経費として挙がっています。
あれ、登録されたFAや仲介業者、あるいはその法人の代表者が補助事業者になる場合のルールもあるんですよね?
よく気づきました。その場合、自己または関連会社をFAやM&A仲介の委託先としない事業であることが要件です。申請時に、他のFAや仲介業者へ委託する理由を求められることもあります。
申請書づくりを誰かに頼む場合、注意点はありますか?
あります。有償で申請内容の作成を第三者へ依頼する場合は、行政書士または行政書士法人に限られ、行政書士証憑と委任契約書の提出が必須です。
はい。詳細は「公募申請の手引き」で確認すること、とされています。あわせて、FAやM&A仲介費用を対象経費にする場合は、M&A支援機関登録制度の事務局に情報提供されること、そして登録FAや仲介業者から実績報告がなされることに同意する必要もあります。
対象になる経費と注意点- FA・M&A仲介費用(M&A支援機関登録制度に登録された業者に限る)
- デュー・ディリジェンス費用
- セカンド・オピニオン
- 表明保証保険料
×デメリット
- 登録制度に登録されていない業者への費用は対象外
- 有償で申請内容の作成を第三者に依頼する場合は行政書士又は行政書士法人に限られ、証憑と委任契約書の提出が必須
- 登録FA・仲介業者による実績報告への同意が必要
買い手側の会社が対象、と。規模の条件はありますか?
あります。中小企業基本法に準じた中小企業者等の定義が使われます。製造業その他なら資本金3億円以下、または従業員300人以下。卸売業なら資本金1億円以下、または従業員100人以下。小売業なら資本金5千万円以下、または従業員50人以下。サービス業なら資本金5千万円以下、または従業員100人以下です。
ゴム製品製造業は一部を除いて資本金3億円以下または従業員900人以下。ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下または従業員300人以下。旅館業は資本金5千万円以下または従業員200人以下です。
900人って、急にスケールが大きい! 見落としそうなところだ。
そうですね。あと、資本金または従業員の基準を満たせば、個人開業医、会社法上の会社や有限会社である農業法人、個人農家も中小企業者等に含まれます。ただし該当者は公募要領の対象事業の要件を確認する必要があります。
| 業種分類 | 定義 |
|---|
| 製造業その他 | 資本金3億円以下、または従業員300人以下 |
| 卸売業 | 資本金1億円以下、または従業員100人以下 |
| 小売業 | 資本金5千万円以下、または従業員50人以下 |
| サービス業 | 資本金5千万円以下、または従業員100人以下 |
| ゴム製品製造業(一部を除く) | 資本金3億円以下、または従業員900人以下 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 資本金3億円以下、または従業員300人以下 |
| 旅館業 | 資本金5千万円以下、または従業員200人以下 |
できます。ただし条件が厳しめです。「個人事業の開業届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した日付から5年が経過していることが必要で、確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出できることも求められます。
電子申告の場合は、受付が確認できるメール詳細か受信通知を追加で提出します。それが無い場合は、納税証明書〔その2〕所得金額の証明書、または課税証明書を追加提出することになっています。
外国籍の方は、国籍・地域、在留期間等、在留資格、在留期間等の満了の日、30条45規定区分が明記された住民票の添付が必要です。法人の場合は、申請時点で設立登記と3期分の決算および申告が完了していることが必要です。
そして(1)から(17)までの要件リスト。多い! 全部覚えるの、無理ですよ(笑)。
はは、全部大事ですよ(笑)。でもツボはあります。まず大前提として、日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を営んでいること。これが外れるとそもそも対象外です。
次に、地域経済に貢献していることも要件です。地域の雇用の維持や創出、域内仕入が多い、地域の強みである技術や特産品、観光、スポーツの活用、域外販売が多い、新事業で中心的な役割を担っている、といった例が示されています。
それから、反社会的勢力でないこと、法令遵守上の問題を抱えていないこと、事業化状況報告を期限までに提出すること、公募要領等に違反しないこと、事務局の質問や追加資料依頼に適切に対応すること、採否や結果通知に係る事項の修正通知に同意すること、返還事由が発生した際の各種費用を事務局が負担しないことに同意すること。
さらに、経済産業省や独立行政法人中小企業基盤整備機構から補助金交付等停止措置や指名停止措置を受けていないこと、過去の「経営資源引継ぎ補助金」または「事業承継・引継ぎ補助金」の受給者であれば、期日までに事業化状況報告を適切に実施していることも必要です。報告を出していない人は対象外です。
過去の報告漏れが、次の挑戦をふさぐと。これは知っておきたい。
そして見落としやすいのが、申請時点から過去18ヵ月の間に中小企業庁所管の補助金に申請した内容で、賃上げ加点の要件等が未達成だと、正当な理由が認められない限り大幅に減点されることです。
ですので、17項目は自分事としてチェックしてください。あと、情報の取扱いにも同意が必要です。申請時に提供した情報が、事業実施や政策立案、経営支援のために国や独立行政法人中小企業基盤整備機構に提供されること、統計的に処理されて匿名性を確保しつつ公表される場合があること、他補助金の申請・交付情報を審査で利用し、他補助金事務局とも情報共有すること、そして交付後に法人名や代表者名、法人番号、住所、テーマ名などが公表されることに同意すること、などが含まれます。
申請は電子申請(Jグランツ)のみでの受付です。Jグランツを使うには、事前にGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。この取得に2〜3週間程度かかるとされています。
ええっ、2〜3週間!? 締切を1週間前に知ったら終わりじゃないですか!
だから中小企業庁も、公募締め切りに余裕をもって手続きを進めるように呼びかけているんです。公募期間は令和8年10月2日から令和8年11月6日午後5時までです。逆算して動きましょう。
午後5時締切っていうのも、うっかりしやすい時間ですよね。
申請までの流れ- 1
GビズIDプライムを取得
取得に2〜3週間程度。締切から逆算して早めに
- 2
公募要領で要件を確認
対象経費・応募資格17項目・100億企業要件をチェック
- 3
M&A支援機関登録制度の登録業者を確認
FA・M&A仲介費用は登録された業者に限る
- 4
申請内容を準備
書類をそろえる。有償で依頼する場合は行政書士に限られる
- 5
Jグランツで電子申請
不備の指摘や修正差戻しを希望するなら2026年10月29日まで
- 6
マイページとメールを確認
採択結果の通知まで連絡を見落とさない
あと、申請が期日の前日や当日に集中するって書いてあったのが気になります。
そうなんです。当公募回は審査日程上、期日間際の申請に対して、事務局が複数回の不備指摘や修正差戻しを行えないとされています。不備が解消しない場合、不採択となる可能性があるんです。
はい。不備の指摘や修正差戻しを希望する場合は、申請期日の5営業日前、2026年10月29日までの提出を検討すること、と示されています。
2026年10月29日。締切は11月6日だけど、実質の勝負は29日、と。
その認識でいいと思います。早く出すことが、そのまま採択の可能性を高めることにつながります。
公募スケジュール2026年10月2日
公募開始
申請受付スタート
2026年10月29日
申請期日の5営業日前
不備の指摘や修正差戻しを希望する場合はこの日まで
2026年11月6日 午後5時
申請締切
Jグランツでの電子申請のみ
3つ挙げます。ひとつは地域経済への貢献。これは応募資格にも入っているので、事業計画の中でしっかり書く必要があります。
ふたつめは、不備。審査以前の問題ですが、不備で不採択になったら元も子もありません。さきほどの10月29日までの提出が効いてきます。
3つめは、過去18ヵ月の中小企業庁所管補助金での賃上げ加点の未達成。ここは自分では動かせないので、申請前の確認がものを言います。
アンケートがあるって聞きました。あれ、答え方で有利不利が出たりするんですか?
いえ、そこは安心してください。事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点、中小企業活性化協議会の利用状況について申請時にアンケートがありますが、回答内容が採択に影響することはないとされています。
はい。あわせて、事務局が求める調査やアンケートへの協力ができることも要件です。
個人事業主なら、開業届出書と青色申告承認申請書を提出した日付から5年経過していることの確認、確定申告書B、所得税青色申告決算書の写しなどが絡みます。電子申告なら受付確認のメール詳細か受信通知を追加。それが無い場合は納税証明書や課税証明書も追加です。
法人なら、設立登記と3期分の決算・申告が完了している必要があります。外国籍の方は住民票の添付、有償で作成を依頼する場合は行政書士証憑と委任契約書の提出。FAや仲介費用を対象経費にする場合は、情報提供や実績報告への同意も必要です。
不備や確認すべき事項があれば、事務局からJグランツを通じて連絡が来ます。採択結果の通知までは、Jグランツのマイページや登録したメールアドレスに連絡がないか、適宜確認すること、とされています。
見落としたらまずいですもんね。こまめにチェックします。
分からないことがあったら、どこに聞けばいいですか?
事業承継・M&A補助金事務局の専門家活用・廃業・再チャレンジ担当です。電話番号は050-3145-3812。受付は平日の午前9時30分から正午まで、午後1時から午後5時までで、土日祝日は除きます。
はい。問い合わせの前に、事務局のプライバシーポリシーの確認もお願いします。
長い旅でした……。最後に要点をまとめてもらえますか?
はい。まず、これは事業承継・M&A補助金の16次公募、専門家活用枠の買い手支援類型で、補助上限2,000万円の100億企業特例です。補助率は1/3以内または1/2以内で、100億企業要件を満たす場合は1,000万円以下の部分が1/2、超える部分が1/3です。
出ます(笑)。対象経費はFAやM&A仲介費用、デュー・ディリジェンス、セカンド・オピニオン、表明保証保険料など。FAや仲介はM&A支援機関登録制度への登録業者に限られます。
公募期間は令和8年10月2日から令和8年11月6日午後5時まで。ただ、不備の指摘や修正差戻しを希望するなら2026年10月29日までの提出が推奨です。GビズIDプライムの取得には2〜3週間かかるので、今日から準備を始めてください。
今日から、ですね。いやあ、濃い時間でした。ありがとうございました!
ありがとうございました。まずは公募要領とGビズIDから、ですね。