NEDOカーブアウト事業スキーム図
室谷さん、「カーブアウトによるディープテック・スタートアップ創出事業」ってNEDOの公募があるじゃないですか。なんかタイトルが長すぎて、何をしてくれる事業なのか全然わからなくて(笑)。
ですよね!(笑)。ひとことで言うと、「大企業や研究機関が社内に眠らせてる革新的な技術を切り出して、独立したスタートアップを作る支援をNEDOがやる」という事業なんです。
たとえば大手化学メーカーが次世代材料の研究をずっとやってるけど、「既存事業との利益相反があるから商品化が進まない」とか「事業化の優先順位が低い」という状況がよくあるんですよ。その技術を本体から切り離して、独立した会社——つまりスタートアップ——として新たに設立するのが「カーブアウト」です。
ほんとに?!大企業の中にそういう埋もれた技術ってけっこうあるんですか?
めちゃくちゃあります!日本の大企業や研究機関が保有する特許って膨大なんですが、そのうちビジネスとして使われているのはごくわずか。残りは休眠特許として社内に積み上がってるんです。この状況を「もったいない」とNEDOが動いたのがこの事業の背景です。
なるほど!じゃあNEDOはその「切り出し」を手伝ってくれると?
そうです。ただ注意点があって、この事業は事業会社やスタートアップを直接支援するのではなく、カーブアウトの支援に積極的に関わりたいVC(ベンチャーキャピタル)やアクセラレーター等が応募主体なんです。つまり「支援者を支援する」という二段構えのスキームなんですよ。
えっ、そういうことか!直接応募できるのはVC・アクセラレーター側なんですね。これは大事なポイントですね。
大きく2つあります。【1】調査事業と**【2】実証事業**です。内容が全然違うので、自分たちがどちらに適しているか見極めることが大切です。
| 事業区分 | 内容 | 事業期間 |
|---|
| 【1】調査事業 | 国内外のカーブアウト先行事例を調査し、普及・啓発に関する取り組みを調査 | 2026年度〜2027年度(2028年3月31日まで) |
| 【2】実証事業(新規枠) | カーブアウトを、①社内プログラム・②社外での起業家募集プログラムの2パターンで実証 | 2026年度〜2027年度(2028年3月31日まで) |
| 【2】実証事業(加速枠) | 2024年度採択者が対象。これまでの成果を加速・深化させる形で実施 | 2026年度のみ(2027年3月31日まで) |
2024年度に同じ事業で採択された機関が対象の枠です。前回の成果をさらに発展させる形で追加支援が受けられる仕組みで、初めて応募する機関は新規枠を選ぶことになります。それと事業終了から1年後に「活動報告書」を2028年3月頃に提出する義務もあるので、長期的なコミットが求められます。
約2年間の事業期間なんですね。腰を据えて取り組む感じですね。
ディープテックの実証って1年じゃ結果が出ないことがほとんどなので、2年間というのは理にかなった設定です。
お金の話を聞いていいですか?いくらもらえるんでしょう?
金額は公募要領に記載されています。ここで重要なのは、これは「補助金」ではなく「委託費」だという点です。
補助金は「かかった費用の一部をNEDOが負担する」仕組みですが、委託費は「NEDOが指定した業務を実施した対価をNEDOが払う」仕組みです。つまりNEDOが業務を発注して、採択された機関がその業務を受託する形になります。
| 方式 | 仕組み | 自己負担 |
|---|
| 補助金 | かかった費用の一部をNEDOが補助(例:補助率2/3) | あり(1/3等) |
| 委託費 | NEDOが業務を委託し、費用を全額払う | 基本なし |
原則そうです。ただし経費の使途はNEDOの規定に厳格に従う必要がありますし、会計処理も補助金より細かく報告が求められます。「自己負担がない分、責任も大きい」というのがNEDO委託事業の特徴です。
なるほど、資金的な安心感はある一方で管理の厳しさがある、と。
そうです。でもディープテック・スタートアップ支援のような長期的プロジェクトは、財務リスクを極力下げながら進めることが大事なので、委託費方式は適切な設計だと思います。
NEDO委託事業 応募チェックリスト
公募要領によると「企業(団体等を含む)、その他」となっていて、特に事業会社のカーブアウトの創出・成長に積極的に関わりたいベンチャーキャピタル、アクセラレーター等が応募対象として想定されています。
大企業の技術部門が「うちの技術を使ってほしい」と直接応募することはできないんですか?
できないんです。この事業は「カーブアウトを支援する側(VC・アクセラレーター)」が実施者であって、「カーブアウトされる側(事業会社・スタートアップ)」は直接の応募対象外です。NEDO公式サイトにも「事業会社、スタートアップ等を直接支援する事業ではありません」と明記されています。
それは重要な注意点ですね!勘違いして応募書類を作ったら大変なことに。
そうなんですよ。ここを間違えてる問い合わせがNEDOにも来てると思います。もしあなたが「カーブアウトで独立したいエンジニア」なら、まず今回の事業で採択されたVC・アクセラレーターと接触することが正しい経路です。
本事業の応募主体は VC・アクセラレーター等の支援機関 です。事業会社や個人起業家が直接応募できる事業ではありません。「カーブアウトしたい技術者・研究者」は、採択された支援機関のプログラムに参加する形になります。
委託費として採択されたら、具体的に何の費用が出るんですか?
カーブアウトの支援活動全般です。調査事業・実証事業それぞれ対象経費が異なる可能性がありますが、一般的なNEDO委託事業では以下のような経費が対象になります。
| 経費カテゴリ | 具体例 |
|---|
| 研究・技術開発費 | 試作品製作、外注研究費、技術評価・分析費用 |
| 事業化調査費 | 市場調査、フィージビリティスタディ、競合分析 |
| 知財関連費 | 特許出願・維持費、知財デューデリジェンス費 |
| 人件費 | 事業担当者の人件費(上限割合あり) |
| 外部専門家費 | 法務・会計アドバイザー、経営コンサルティング |
| その他事業費 | 設備・機器費、旅費交通費、通信・情報処理費 |
VC・アクセラレーターがカーブアウト支援プログラムを運営するにはかなりの専門性が必要なので、外部専門家費が対象になるのは重要です。ただし詳細は公募要領の仕様書(調査事業用・実証事業用それぞれ別冊)に記載されているので、必ず
NEDO公式ページから最新版を取得してください。
- 事業と直接関係のない一般管理費・本社経費
- 採択前(2026年4月8日以前)に発生した費用
- 土地・建物の購入費
- 他の公的補助金と重複して計上する経費
- 役員報酬への充当
採択前の費用は出ないんですね。準備費用は自腹なんだ。
そうです。だから申請書類の作成コスト(弁護士費用等)は採択後の委託費では回収できません。それを踏まえて応募するかどうか判断する必要があります。
2どちらの事業に応募するか決定
調査事業(先行事例調査・普及啓発)か実証事業(新規枠・加速枠)かを選択する。加速枠は2024年度採択者限定。
3Jグランツアカウントの準備
申請は電子申請システム「Jグランツ」経由のみ。GビズIDが必要なので、取得していない場合は早めに申請する。取得に数週間かかることがある。
4提案書の作成
様式1(提案書)および別添資料を作成。評価基準に対応した構成にすることが重要。技術の独自性、事業化計画、チーム体制、知財戦略を具体的に記述。
5Jグランツで応募申請(2026年5月11日正午締切)
Jグランツシステム上で応募申請。締切直前はシステム混雑のリスクがあるため余裕を持って提出する。持参・郵送・FAX・メールは不可。
6採択通知を待つ
NEDOが書類審査・面接審査等を経て採択者を選定。採択後にNEDOとの委託契約を締結して事業開始。
GビズIDって先に取っておかないといけないんですね。
これは要注意です!GビズIDの取得には書類郵送・確認で2〜3週間かかることもあります。申請締切(5月11日)から逆算すると、すでに急いで動く必要があります。
Jグランツでの申請にはGビズIDプライムが必要です。まだ取得していない法人はGビズIDサイトで今すぐ申請状況を確認してください。発行まで最大2〜3週間かかる場合があります。
NEDOの委託事業では一般的に以下の観点が審査されます。今回のカーブアウト事業は特にこの4点を強く意識してください。
- カーブアウト支援プログラムの設計力: 具体的にどのようなプログラムで支援するか、評価・選定基準・メンタリング体制・VCとのネットワークまで具体的に示す。
- 過去の支援実績と専門性: 類似プログラム(社内起業家育成、スタートアップ支援等)での実績・採択事例を定量的に示す。
- 事業会社とのネットワーク: カーブアウト対象の技術保有企業との接点・MOU等を持っているかどうか。
- 提案の社会的インパクト: 提案内容が日本のイノベーション・エコシステムや経済成長にどう貢献するかのビジョン。
厳しいのは正直なところです。ただ「過去の事業実績」よりも「具体的で現実的なプログラム設計」と「事業会社・研究機関との具体的な連携関係の証拠(MOU・覚書等)」が重視される傾向があります。スタートアップ支援の経験があるが大きな実績がまだない機関でも、準備次第で勝負できます。
そうです。「こういう支援をする予定」ではなく「この企業のこの技術について、こういうプロセスでカーブアウトを実現する計画がある」という具体的な提案が評価を左右します。
NEDOの委託費以外に、関連する公的支援ってありますか?
いくつかあります。ただし委託費は国費なので、同一の活動に対して他の国費補助金・委託費を重複受給することは原則禁止されています。
| 制度 | 性格 | 組み合わせ可否 |
|---|
| NEDO委託費(本事業) | 委託費(本事業) | ー |
| VC投資・民間資金調達 | 民間資金 | 基本OK(活動が重複しなければ) |
| 経産省 J-Startup等 | 認定プログラム(補助金ではない) | OK |
| 他の国費補助金・委託費 | 公的資金 | 同一活動への重複受給は不可 |
個別相談の受付も用意されていました(2026年4月23日正午まで)。今後もし来年度以降の公募があれば、個別相談を積極的に活用することをお勧めします。問い合わせ先はスタートアップ支援部 カーブアウト事務局(MPM事務局)で、メールはMPM[@]nedo.go.jpです。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 事業名 | 事業会社等が保有する革新的な技術を活用したカーブアウトによるディープテック・スタートアップ創出等促進事業 |
| 公募期間 | 2026年4月8日(水)〜2026年5月11日(月)正午 |
| 事業期間 | 2026年度〜2027年度(2028年3月31日まで) |
| 応募対象 | VC・アクセラレーター等(事業会社・スタートアップの直接応募は不可) |
| 資金形態 | 委託費(補助金ではない) |
| 申請方法 | Jグランツのみ(電子申請) |
| 対象分野 | スタートアップ支援 |
| 実施機関 | NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構) |
| 問い合わせ | スタートアップ支援部 カーブアウト事務局(MPM事務局内) MPM[@]nedo.go.jp |
| 公式ページ | https://www.nedo.go.jp/koubo/CA2_100518.html |
プロジェクトコードは「P23007」で、事業名は「研究開発型スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業」の一環なんですね。
そうです。この「カーブアウト」事業はNEDOのスタートアップ支援の旗艦プロジェクトの一部で、日本政府の「スタートアップ育成5か年計画」とも連動している位置づけです。
「技術保有企業が直接応募できないなら、どうカーブアウト事業に関わればいいですか?」
採択されたVC・アクセラレーターのプログラムに技術提供企業として参加する形が正規のルートです。NEDO HPで採択結果が公表された際、その採択機関に直接コンタクトを取るか、NEDOのスタートアップ関連イベントに参加してネットワーキングすることが現実的です。
Jグランツの利用にはGビズIDが必要で、GビズIDには「法人代表者向け」と「従業員向け(GビズID メンバー)」があります。今回の応募主体はVC・アクセラレーター等の法人が想定されるため、法人代表者のGビズIDプライムが必要になります。個人での応募は想定されていないと考えていいでしょう。
NEDOのHPで過去の採択結果が公表されているケースが多いです。
NEDO公式サイトの関連ページを参照するか、NEDOの事業紹介ページで「研究開発型スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業(P23007)」を検索すると過去の採択情報が出てきます。
「大学発スタートアップ(研究機関のスピンアウト)は対象になりますか?」
事業名には「事業会社等」とあり「等」には研究機関が含まれる可能性があります。ただし応募主体はあくまでVC・アクセラレーター側なので、大学側が「技術保有者」としてカーブアウト対象になることは想定されます。大学の技術移転部門(TLO等)がVC・アクセラレーターとコンソーシアムを組んで応募するケースは十分あり得ます。詳細はNEDO担当者に直接確認することをお勧めします。
カーブアウトによるディープテック・スタートアップ創出は、日本のイノベーション政策の中でも特に注目度の高い領域です。今回の事業はVC・アクセラレーターにとって、国費で2年間のプログラムを運営できる貴重な機会です。
そうなんです。公募期間は2026年4月8日から2026年5月11日正午までの約5週間しかありません。Jグランツの準備、提案書の作成、事業会社との連携確認など、やることが多いので、今すぐ動き始めないと間に合いません。
技術保有企業側(カーブアウトを検討している大企業や研究者)も、今から動いた方がいいですか?
今採択されたVC・アクセラレーターがどこかを5月以降に把握して、来年度以降の公募に備えるのが現実的です。ただし今から技術の棚卸し——「うちの会社にどんな眠れる技術があるか」「知財の権利関係はどうなっているか」——を整理しておくことは、どのカーブアウト支援プログラムに参加する際にも必ず役に立ちます。
都道府県別の補助金も見ておくといいですよね。たとえば東京都ならスタートアップ支援の制度が色々あるので、
東京都の補助金一覧もチェックしておくといいかもしれないですね!
そうですね!国の補助金・委託費と都道府県の補助金を組み合わせる戦略は、スタートアップ支援機関にとって重要な視点です。重複受給に注意しながら、うまく組み合わせてほしいですね。