室谷さん、「重要市場の商流維持・拡大対策事業」って名前を最近よく聞くんですけど、これって農林水産物を輸出する事業者向けの補助金なんですか?
そうなんです!ざっくり言うと、日本産の農林水産物や食品を海外に売り出している事業者が、さらに輸出を伸ばすために使える補助金です。農林水産省が2026年度当初予算として約5億円を用意している、かなり規模の大きい制度ですよ。
5億円!えっ、それって相当大きいですね。補助上限はどのくらいなんですか?
1事業あたり最大1,000万円までです。補助率は原則「定額」なんですが、機器の購入や認証取得については2分の1以内という上限がかかります。
なるほど。プロモーション費用とかは「定額」補助ってことは、実費全額が補助されるってことですか?
基本的にはそうです。ただし1,000万円が上限なので、全体の経費がそれを超える場合は超過分は自己負担になります。精算払いのみで概算払いはない点も要注意です。
令和8年度の公募は2026年6月19日(金)が締切です。公募開始が2026年5月25日なので、応募期間はざっくり1ヶ月弱。意外と短いので、今すぐ準備を始めないと間に合わなくなります!
補助対象の3タイプ(販路拡大・高付加価値化・コスト削減)
3つのカテゴリーがあります。「販路拡大」「高付加価値化」「コスト削減」です。複数を組み合わせることもできますが、申請時に主たる事業内容を1つ選ぶ必要があります。
販路拡大だと、現地スーパーや日系外食チェーンでのプロモーションフェア、現地バイヤーとの商談会参加・主催、EC(ネット通販)での展開なんかが対象です。高付加価値化は新商品開発やテストマーケティング、現地小売が求める認証取得。コスト削減は複数社での共同物流の構築や、省人化・効率化のための機器導入が対象ですね。
はい!ただ機器・備品費は補助率が2分の1以内になります。プロモーション費用は定額補助なので、まず販路拡大の取り組みを軸にしてそこに機器導入を組み合わせる、という設計をとる事業者が多いですね。
人件費・謝金・賃金/旅費/賃借料・使用料/広告宣伝費/輸送費/役務費/印刷製本費/消耗品費/機器・備品費(2分の1以内)/借上げ費/委託費/認証等取得経費
いくつか注意が必要です。建物の建設・不動産取得はNG。交付決定前に発生した経費も対象外です。それと、認定品目団体の入会金・会費・事業負担金も対象外に今回から明記されました。汎用性の高いパソコンやデジタルカメラなども対象外ですね。
- 建物等施設の建設・不動産取得に関する経費
- 交付決定前に発生した経費(前払い相当のものも含む)
- 認定品目団体の入会金・会費・事業負担金(令和8年度から追加)
- 汎用性の高いパソコン・デジタルカメラ等の取得経費
- 本事業と関係ない事業者との単なる視察・見学に要する経費
すべての農林水産物・食品の輸出業者が使える補助金なんですか?
3つの条件をすべて満たす必要があります。まず1つ目が「重要市場での輸出拡大を図る取り組みであること」。2つ目が「取り組む国・地域において直近2年以上の輸出実績があること」。3つ目が「認定品目団体の会員による取り組み、もしくは認定品目団体会員と連携した取り組みであること」です。
「認定品目団体」って何ですか?それが一番わかりにくくて…
農林水産大臣と財務大臣が認定した15の品目団体のことです。牛肉なら全国和牛登録協会、日本酒なら日本酒造組合中央会、お茶なら日本茶業中央会…みたいな業界団体ですね。自分が扱う品目に対応した認定品目団体に会員として加入していることが基本条件になります。
もし今まだ会員になっていなかったら、今から加入しても間に合いますか?
「会員となるための申請が認定品目団体に受理されている者」も会員と見なされるので、申請受理のタイミングに間に合えばOKです。ただ品目団体によって手続き期間が異なるので、早めに確認するのが必須です!
「直近2年以上の輸出実績」ってどう計算するんですか?
2024年5月〜2025年4月末が1年目、2025年5月〜2026年4月末が2年目の「2年間」として見られます。この1年目・2年目の双方に輸出実績が必要です。毎月連続して輸出していなくても、その年に少なくとも1回でも輸出実績があれば要件を満たします。
あ、毎月じゃなくてよかったんだ!それは知らなかったな。
商社経由の輸出でもカウントされますし、申請しようとする品目以外の品目の実績でも大丈夫です。「2年間ずっと輸出し続けていないとNG」ではないのでご安心ください。
はい、品目ごとに異なります!農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略で品目ごとに定められた国・地域のことです。たとえば日本酒だと中国・米国・香港・韓国・EU・英国・台湾などが重要市場に指定されています。
| 輸出重点品目 | 主な重要市場 |
|---|
| 日本酒(清酒) | 中国、米国、香港、韓国、EU、英国、台湾 |
| 牛肉 | 米国、EU等、中国、台湾、香港、シンガポール |
| 牛乳・乳製品 | 中国、ベトナム、米国、台湾、香港 |
| 茶 | 米国、EU等、英国、ASEAN、台湾、香港 |
| 米・パックご飯 | 米国、EU等、英国、シンガポール、台湾 |
| ホタテ貝 | 米国、中国、香港、ベトナム、台湾 |
| りんご | 台湾、香港、タイ、ベトナム、シンガポール |
重要市場以外の国、たとえばインドに輸出する取り組みには使えないんですか?
原則は重要市場向けの取り組みが対象です。ただ、重要市場向けの取り組みをメインにしつつ、重要市場以外の品目と「一体的に」事業を行うことは妨げないとされています。インドへの展開だけを目的にした事業はNGですが、重要市場向け事業の中にインドへのアプローチを組み込む形はOKなケースもある、というイメージです。
補助金をもらったあとに何か目標達成しないといけないんですか?
そうです。これは大事なポイントで、補助金交付額の2倍以上の輸出額増加が成果目標として設定されています。たとえば500万円の補助金を受けた場合、2025年の輸出実績から1,000万円以上の輸出増加を達成することが目標になります。
事業計画に虚偽があった場合や事業自体を適切に実施していない場合を除き、補助金の返還は求めないとされています。ただし達成できなかった場合は重要市場事業事務局から指導が入ります。「目標未達=即返金」ではないですが、それなりに実力のある取り組みを計画する必要があります。
なるほど。ちょっと安心しました!でも2倍増加はなかなかハードルが高そうですね。
そうですね。だから申請時に輸出目標の設定はかなり慎重に考える必要があります。過去のベースラインとなる輸出実績(2025年1月〜12月)をしっかり把握して、達成可能な範囲で計画を立てることが大事です。
重要市場事業 申請の流れ(5ステップ)
Jグランツというシステム上で電子申請します。まずGビズIDを取得していないと申請できないので、持っていない方は今すぐ取得手続きを始めてください!
GビズIDを取得する(未取得の場合。審査に2〜3週間かかるため早めに)
公募要領・実施規程・FAQ(Ver.1.2)を精読し、要件を確認
必要書類を準備(指定様式・決算書・定款・現在事項全部証明書など)
2026年6月19日(金)締切前までに電子申請を完了させる
交付決定後に事業を実施(交付決定前着手届を提出すれば事前着手も可能)
そこそこあります。指定様式(実施計画内容説明書)、現在事項全部証明書(発行後3ヶ月以内)、代表者の住民票(発行後3ヶ月以内)、定款、決算書(直近3年分)、会社案内・組織図、経理規程等の組織運営に関する規約が必須です。認定品目団体の会員証明書類も必要になります。
令和7年度補正事業との比較で変わった点はありますか?
いくつかあります。1つ目は「交付申請区分」の明確化。主申請者・主申請者相当・共同申請者の分類が追加されました。2つ目は輸出目標の重複排除ルールの追加です。令和7年度補正事業に採択されている場合、その事業とベースライン・輸出目標額が重複しないよう排除する必要があります。3つ目は認定品目団体の入会金・会費・事業負担金が申請できない経費に明示追加されたこと。ここは要注意ですね!
- 申請区分の追加(主申請者・主申請者相当・共同申請者)
- 複数事業への参画時は輸出目標の重複排除が必須に
- 認定品目団体の入会金・会費・事業負担金が対象外経費に追加
- 共同申請者: 輸出事業を実施し経費を申請する場合は必ず共同申請者として申請
採択されやすくするために何か押さえておくべきポイントはありますか?
必須項目と任意の加点項目があります。まず必須項目をしっかりクリアすることが最低条件で、加点項目でいかに加点を積み上げるかが採択を左右します。
任意の加点項目(高スコアを取るために意識すること)
- 米国・中国・中東のいずれかで直近2年以上の輸出実績がある事業者の販路確保支援
- 輸出促進法第38条第1項に規定する「認定輸出事業者」の認定を受けていること
- フラッグシップ輸出産地、またはその者を構成員に含む団体であること
- 成果目標が高い(補助金額の2倍以上の目標を大きく超える計画)
- 地域の複数事業者が連携した取り組み
「認定輸出事業者」ってまた新しい言葉が出てきましたね!
農林水産物・食品の輸出の促進に関する法律(輸出促進法)に基づいて農林水産大臣が認定する制度です。輸出事業計画を作成して認定を受けた事業者が「認定輸出事業者」になれます。この認定を取っておくと今回の補助金でも加点があるので、本腰で輸出に取り組む事業者さんは検討の価値があります。
なるほど。申請前に輸出促進法の認定を取っておくと有利なんですね。
審査でのアドバンテージになります!それと採択後の精算払いは「事業完了後の精算払いのみ」なので、資金繰りに余裕を持って計画することも大事です。
実際どんな使い方をするのが一番効果的なんでしょうか?
目的によって全然変わりますね。たとえばお茶の生産者グループが香港のスーパーでプロモーションフェアを打つ場合、現地渡航費・通訳代・サンプル提供のための輸送費・会場賃借料・広告費などが全額対象になります。1,000万円まで使えるので、大型の展示会出展費用もカバーできます。
輸送費も対象なんですね!サンプルを海外に送る費用とかも?
プロモーション目的のサンプル費用は対象です。ただし「農林水産物等の購入に要する経費」は原則対象外なので注意。サンプル購入費は「プロモーションのためのサンプル購入」として明示されている場合は対象になる、という微妙なラインがあります。実際に申請する際は事務局に事前確認することをおすすめします!
複数の事業者が共同で申請することもできるんですよね?
できます!主申請者と共同申請者という形で複数社が参加できます。たとえばマグロ業者とコメ農家が連携して海外スーパーに「本マグロと国産米を使った寿司総菜」として一体的に売り込む…みたいなコラボ事業も支援対象です。共同で申請する場合、それぞれの事業者が申請できる経費は主申請者がとりまとめて申請する形になります。
| 申請パターン | 特徴 |
|---|
| 単独申請 | 主申請者1社で申請。要件をすべて自社で満たす必要がある |
| 共同申請 | 主申請者+共同申請者。それぞれが輸出事業を実施・経費申請 |
| 任意団体での申請 | 構成員に認定品目団体会員を含む場合に申請可能 |
| 連携先ありの申請 | 主申請者が品目団体会員要件を満たせない場合に連携先(1社のみ)を選定 |
詳しく聞きたいときはどこに問い合わせればいいですか?
Jグランツの補助金詳細ページから公募要領・指定様式・記入例・Jグランツマニュアルなど一式ダウンロードできます。特に「よくあるご質問(FAQ)Ver.1.2」が更新されているので、これを読んでおくと細かい疑問が解消できますよ。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 令和8年度 重要市場の商流維持・拡大対策事業 |
| 補助上限額 | 1事業あたり1,000万円 |
| 補助率 | 定額(機器・認証取得は2分の1以内) |
| 予算総額 | 約5億円 |
| 公募期間 | 2026年5月25日〜2026年6月19日 |
| 申請先 | Jグランツ(電子申請) |
| 実施機関 | 農林水産省 輸出・国際局輸出企画課 |
| 事務局 | 重要市場事業事務局(株式会社ぐるなび) |
| 公式情報 | Jグランツ 補助金詳細 |
同じような農業・食品系の補助金と比べると、この補助金はどういう位置づけなんですか?
農林水産物・食品輸出系の補助金の中でも、「重要市場の既存商流を守り・広げる」ことに特化している点が特徴です。新規開拓というより「すでに輸出実績がある事業者がさらに伸ばす」ための制度、という色合いが強いですね。
「輸出実績2年以上」という条件がそれを物語ってますね。
認証取得の補助を先に使って、実績を積んでから申し込む、と。
農業・食品輸出を本気でやろうとしている事業者さんにとっては、複数の補助金を組み合わせて攻めていくことが大事なんですね。
まさに!重要市場事業は1,000万円という大型補助なので、これを柱に戦略を立てて、足りない部分を別の補助金で補うというアプローチが採択事業者の多くが取っている戦略です。
最後に、申請前に多くの人が疑問に思うことをまとめて教えてもらえますか?
よく問い合わせが来る質問をいくつかご紹介しますね。
まず「認定品目団体の会員でないと絶対に申請できないのか」という質問はどうですか?
原則は「会員であること」が必要ですが、例外が2つあります。1つ目は「認定品目団体の会員と有機的に連携した取り組み」として申請する場合。この場合、会員以外の事業者でも申請できます。2つ目は「会員となることが困難である合理的な理由がある場合」です。どうしても会員になれない場合は理由書を提出することで対応できます。
「共同申請」と「連携先ありの申請」は何が違うんですか?
共同申請者は自ら輸出事業を実施し補助対象経費を申請する立場。連携先は主申請者が認定品目団体会員要件を満たすために連携する相手で、補助対象経費を申請しません。選定できる連携先は1社のみという制約もあります。複数社で一緒に補助金を申請したい場合は「共同申請者」という形をとります。
軽微な変更は事務局への届け出で可能ですが、大幅な変更は農林水産省の承認が必要になります。また、採択後に別の補助事業と輸出目標が重複することが判明した場合は修正を求められることもあります。
事業完了後に実績報告書を提出し、経費の証拠書類(領収書等)とともに精算請求を行います。審査が通れば補助金が振り込まれます。概算払い(事業中の中間払い)はないので、事業期間中の資金は自己資金で賄う必要があります。事業完了後に全額受け取れる精算払い方式なので、資金繰り計画は必ず立てておいてください。
2026年6月19日(金)締切前にやること確認リスト
- GビズIDの取得(未取得の場合は今すぐ手続き開始)
- 認定品目団体への会員確認・入会申請
- 直近2年分(2024年・2025年)の輸出実績データの確認
- 2025年1〜12月の品目別・国別輸出実績(ベースライン)の集計
- 取り組む重要市場(対象国・地域)の確認
- 公募要領・FAQ(Ver.1.2)の精読
- 決算書(直近3年分)・定款・現在事項全部証明書の準備
- 事業計画・輸出目標の策定
室谷さん、ありがとうございました!締切まで時間がないので、今すぐ動き出さないとですね。
そうです!農林水産物・食品の輸出に取り組んでいる方にとっては、1,000万円まで使えるかなり手厚い支援です。GビズIDの取得や品目団体への会員確認だけでも時間がかかるので、今日中に着手することをおすすめします!
農林水産物・食品の輸出に取り組む方向けの補助金は全国共通の制度だけでなく、都道府県・市区町村の独自支援も充実しています。地域別の一覧もぜひご活用ください。