室谷さん、「中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業」って、なんか名前が長くてちょっと難しそうなんですけど(笑)、これってどんな制度なんですか?
笑。名前は長いんですけど、仕組みはシンプルで、東京都の中小企業が建設・IT・ものづくりの3分野で技術者を採用するとき、企業が奨学金の返済を肩代わりする費用を東京都が半分出してくれる制度です。
えっ、奨学金の返済を肩代わり?それって会社にとってかなりお得じゃないですか!
そうなんです!しかも採用しなければ費用は一切かかりません。まず企業として「登録」だけして、実際に奨学金持ちの学生を採用して1年間働き続けてから支援が始まる仕組みなので、リスクゼロで参加できるんですよ。
ノーリスクで優秀な学生にアプローチできるってことか。これ、どこが実施してるんですか?
東京都と公益財団法人東京しごと財団が実施しています。令和8年度の企業登録は2026年2月5日から12月17日17時まで受け付けていて、jGrants(Jグランツ)というオンラインシステムから申請します!
奨学金返還支援事業 申請フロー
具体的な流れをもう少し教えてもらえますか?企業が何をすればいいのか、ステップで聞きたいです。
1東京しごと財団の専用サイトや公募要項で制度内容を確認、企業負担コースを検討する
2jGrants(電子申請システム)で「企業登録」を申請する
3登録完了後、奨学金貸与を受けている大学生等とのマッチングが行われる
4採用候補者に「奨学金返還支援あり」を打ち出して採用活動を展開する
5正規雇用で採用し、1年間継続在籍が確認されたら助成開始
6選択したコースに応じた金額を財団が奨学金貸与団体(日本学生支援機構等)に直接振り込む
直接振り込まれるんですね!企業が一度立て替えてから返金されるわけじゃないんだ。
そうです。会社から学生に現金を渡すわけでもなく、財団が奨学金の貸与元に直接支払うので経理処理もシンプルです!実際の資金フローは「企業の出えん金→財団→奨学金貸与機関」です。
なるほど、それは透明性も高くて安心感ありますね。で、この「コース」ってどう選ぶんですか?
奨学金返還支援 企業負担コース比較表
コースが複数あるって聞きましたが、どれを選べばいいか迷いそうで。
4つのコースがあります。企業が支出した金額と同額を東京しごと財団が上乗せするので、常に「登録者への助成金額 = 企業負担×2」になるんです!
| コース | 企業負担/年 | 財団上乗せ/年 | 登録者助成/年 | 3年合計助成額 |
|---|
| Aコース | 5万円 | 5万円 | 10万円 | 30万円 |
| Bコース | 12万円 | 12万円 | 24万円 | 72万円 |
| Cコース | 25万円 | 25万円 | 50万円 | 150万円 |
| Dコース(大学院卒のみ) | 37.5万円 | 37.5万円 | 75万円 | 225万円 |
一番手厚いDコースだと3年間で合計225万円!それを企業は半分の112.5万円で実現できるってすごい額ですよね。
理工系の大学院卒を採用したい企業には特に効果的です。大手企業との年収競争だと不利でも、「入社後3年間で奨学金225万円分を返してもらえる」というのは、学生側にとって非常に魅力的な条件ですから!
それは就活生にとっては「この会社選ぶ理由」になりますよね。ただ、コースって後から変えられますか?
登録申込後の変更はできません。これが一番の注意点です。申請前に複数人採用した場合の総負担額もシミュレーションしておくことをお勧めします。例えばCコースで3人採用したら、年間75万円(25万×3人)×3年間で最大225万円の企業負担になります。
選択した企業負担コースは登録申込後に変更できません。1人採用の想定でも、将来的に複数人採用した場合の総コストを計算してから選択しましょう。Cコースで年間25万円×採用人数が毎年かかります。
東京都内の中小企業が対象です。具体的には以下のいずれかに該当することが必要です。一つは「本社または主たる事業所が東京都内にある中小企業等」、もう一つは「採用した学生を東京都内の事業所で働かせることを条件に採用する中小企業等」です。都外に本社があっても、東京の拠点で就業させるなら対象になり得ます!
| 分野 | 対象業種(日本標準産業分類) |
|---|
| 建設 | D.建設業、建築設計業(7421)、測量業(7422) |
| IT | G.情報通信業のうち情報サービス業(39)、インターネット付随サービス業(40) |
| ものづくり | E.製造業 |
建設・IT・製造の3分野に絞ってるんですね。飲食や小売は対象外か。
職種も制限があって、厚生労働省編職業分類の「02研究・技術の職業」での採用が条件です。施工管理技士、ITエンジニア、品質管理・生産技術などが対象で、営業や事務での採用には使えません。
ちょっと待って、採用する側(学生)にも条件がありますよね?
要件1(卒業・在学状況)次のいずれかに該当すること
・令和9年3月31日までに大学・大学院・高等専門学校(専攻科)を卒業・修了予定の者
・卒業済みかつ満35歳未満の者
・卒業または修了後3年以内の者
要件2(奨学金の種別)次のいずれかであること
・独立行政法人日本学生支援機構の第一種奨学金または第二種奨学金
・代理返還制度を実施している公的機関の貸与型奨学金で財団理事長が認めるもの
要件3(重複支援の禁止)
他の制度による奨学金返還免除等を受けていないこと
短大はダメなんですね。あと「卒業後3年以内」なら既卒の人も対象になるんだ。
そうです!新卒に限らず、卒業後数年経った若手も対象になります。これは即戦力の採用を考えている企業にも使いやすい設計です。
室谷さん、実際のところ、この制度を使うとどれだけ採用に効果がありますか?
数字で見ると分かりやすいんですが、日本学生支援機構の調査によると大学生の約5割が奨学金を借りていて、第二種奨学金の場合、平均借入額が300万円前後になるケースも珍しくありません。月々の返済が3〜4万円になると就職活動の際の大きなプレッシャーになっているんです!
そっか、奨学金の返済って就活の判断軸になるんですね。
「奨学金の返済が不安で大手や高給の会社を選ぶ」という学生が多い中、中小企業でも「うちに来たら奨学金返済を一緒に負担するよ」と言えるのは強力な差別化ポイントです。Cコースなら3年間で150万円の支援ですから、月4万円の返済なら実質3年分以上をカバーできる。
確かに!大手との年収差を「奨学金返済支援」でカバーする発想ですよね。
まさにそれです!採用コストに換算すると、企業が年間25万円を3年間出して計75万円の負担で、登録者には年50万円×3年間=150万円を還元できる。一般的な人材エージェント費用(年収の30〜35%等)と比べると圧倒的にコスト効率がよく、しかも採用が決まらなければ費用ゼロというリスクフリー設計です。
この制度の強みをまとめると:
・採用競争で不利な「知名度の低さ」を金銭的インセンティブで補える
・「奨学金返還支援制度あり」は求人票の差別化ポイントになる
・採用できなければ費用はゼロ(完全ノーリスク)
・3年間の継続支援で早期離職防止にもつながる
・大学院卒の高度人材採用にも対応(Dコース: 年75万円×3年)
審査って難しいんですか?落とされることはあるんですか?
この事業は「審査」というより「登録」の形式なので、要件を満たしていれば基本的に受理されます。とはいえ、申請書類の記載漏れや業種・職種要件の確認不足で登録できないケースはあります。
チェック1: 業種コードの確認
日本標準産業分類の「建設業(D)」「情報通信業(G)のうち39,40」「製造業(E)」のいずれかに該当するか登記情報や許認可で確認する。
チェック2: 職種の明確化
採用する職種が「研究・技術の職業(02)」に該当することを求人票に明記する。施工管理、システムエンジニア、品質管理技術者などが典型例。
チェック3: コース選択の慎重な検討
変更不可のため、複数名採用シナリオ含めて総コストを試算してから選択する。
チェック4: GビズIDの準備
jGrantsでの電子申請にはGビズID(gBizID)が必要。取得に数週間かかる場合があるため早めに取得を。
GビズIDって補助金申請でよく出てきますよね。まだ持ってない会社は早めに取っておかないと!
そうです。GビズIDの申請から取得まで通常1〜2週間かかります。2026年12月17日の締め切りは余裕があるように見えますが、優秀な学生は春〜夏に就職先を決める傾向があるので、2026年4月〜6月には登録を完了させておくのが理想です!
採用したあとのことも聞きたいんですが、奨学金支援があれば勝手に定着するかというと、そうでもないですよね?
鋭い!奨学金返還支援は「入社の動機付け」には強力ですが、それだけで3年間定着するわけではないです。入社後のフォローも大事で、3点セットで組み合わせると効果的です。
一つ目が「メンター制度」。入社3年以内の離職は職場の人間関係や成長実感の欠如が主因なので、先輩社員がマンツーマンで指導する体制が離職防止に効きます。二つ目が「技術研修・資格取得支援」。建設なら施工管理技士、ITならAWS・基本情報技術者など資格取得費用を会社が負担すると「ここで成長できる」という実感が生まれます。三つ目が奨学金支援の「見える化」。毎年「今年もこれだけ返済しましたよ」と通知があると、制度への感謝と会社への帰属感が高まります。
なるほど、奨学金支援を「話題」にし続けることで感謝を持続させるんですね。
それと、
令和8年度スキルアップ支援事業との組み合わせもお勧めです。採用後の研修費用を別の助成金でカバーすると、トータルの人材育成コストをかなり抑えられます!
似たような制度って他にもあるんですか?東京都内で。
ES(社員満足度)向上による若手人材確保・定着事業助成金が同じ東京都内で使える人材定着系の制度です。
1年目申請用・
2年目申請用・
3年目申請用と段階が分かれています。比較してみましょう。
| 比較項目 | 奨学金返還支援事業 | ES向上・若手人材確保助成金 |
|---|
| 対象業種 | 建設・IT・製造業(技術者採用) | 幅広い(条件あり) |
| 採用前後 | 採用前の動機付け | 採用後の職場改善 |
| 助成の性格 | 奨学金返還費用の負担軽減 | 職場改善・研修費用の助成 |
| コスト | 採用しなければゼロ | 取組み実施が前提 |
| 支援期間 | 最大3年間 | 最大3年間 |
組み合わせて使える感じですね!採用前は奨学金支援で呼び込んで、入社後はES向上助成金で定着させると。
まさに!採用コストを最小化しながら人材の確保と定着を両立できる黄金コンビです。奨学金返還支援事業で採用した若手技術者に、ES向上事業で職場環境を整備するという2段構えが、令和8年度の東京都の人材確保戦略として非常に効果的です!
| 項目 | 内容 |
|---|
| 正式名称 | 中小企業人材確保のための奨学金返還支援事業【令和8年度企業登録】 |
| 実施機関 | 東京都・公益財団法人東京しごと財団 |
| 対象地域 | 東京都(本社または就業場所が都内) |
| 対象業種 | 建設業・情報通信業(情報サービス業等)・製造業 |
| 企業登録受付期間 | 令和8年2月5日(木)〜12月17日(木)17時 |
| 企業負担金額 | 年間5万円・12万円・25万円の3段階(大学院卒は37.5万円追加可) |
| 最大助成額 | 年間75万円×3年間=225万円(大学院卒・Dコース選択時) |
| 支援期間 | 最大3年間 |
| 申請方法 | jGrants(電子申請) |
| 公式サイト | https://tokyo-scholarship-support.jp/stakeholder/ |
| 問い合わせ先 | 公益財団法人東京しごと財団 企業支援部 雇用環境整備課 採用定着促進支援担当係(電話: 03-5211-1080) |
jGrantsで申請するのでGビズID必須ですね。早めに動かないと!
12月が締め切りとはいえ、優秀な学生は2026年4月〜6月に内定を決める子が多い。企業登録したら積極的に求人でアピールして、早い段階でマッチングの機会を作ることが大事です。「奨学金返還支援制度あり」という言葉一つで求人の読まれ方が変わる、そのくらいインパクトのある制度ですよ!
企業の方がよく疑問に思いそうなことをまとめてもらえますか?