室谷さん、今回取り上げるのは「女性活躍情報公開促進奨励金」です。名前が長い! ひとことで言うと、何なんですか?
東京都の制度で、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定や、男女間賃金差異等の情報公開に取り組む中小企業等を支援する奨励金ですね。実施主体は公益財団法人 東京しごと財団です。ポイントは「情報公開に取り組むこと自体にお金がもらえる」という点なんです。
えっ、公開するだけでお金がもらえるんですか? ほんとに?
はい、そこが目的なんです。女性従業員の処遇や賃金の引上げを後押しするために、まず「自社の状況を把握して、計画を作って、公表する」という最初のハードルを越えてもらう。その一歩に対して奨励金を出す設計になっています。
取組の中身として、男女間賃金差異と女性管理職比率、それに加えて1項目以上を公表すること、と示されています。さらに1つ以上の数値目標を定めた行動計画を作って、社内周知して、公表する。行動計画を策定した旨を都道府県労働局へ届け出ることも必要です。
公開するだけかと思ったら、計画づくりから届出までワンセットなんですね。
そうなんです。なので「書類を出すだけ」の奨励金とは性格が違います。3か月の実施期間の中で、この一連の作業をやり切る必要があります。ここを軽く見ると、途中で息切れしてしまいます。
マジですか。3か月で全部やるって、なかなかですよね。
だからこそ、申請の前から社内体制を整えておくことが大事になります。制度の目的は、女性従業員の処遇や賃金の引上げの後押しですから、ゴールは奨励金そのものではなく、その先の職場改善なんです。
いえ、対象地域は東京都です。本社または主たる事業所が東京都内にあることが要件に挙がっています。実施主体も東京しごと財団なので、東京の中小企業のための制度ですね。
都外の会社は対象外と。だとしたら、次は金額の話を聞きたいです。
では次に、いちばん気になる奨励金の金額を見ていきましょう。ここで「最大」と「定額」の違いも整理しておきます。
さっき名前の話を聞きましたけど、やっぱりいちばん気になるのは金額です。いくらもらえるんですか?
jGrantsの掲載では補助上限額が20万円。東京都の報道発表では「支給金額 20万円」と書かれています。この記事のタイトルでは「最大20万円」としていますが、実質的には定額20万円として案内されている制度です。補助率の記載はありません。
なるほど、タイトルの「最大」と本文の「定額」が食い違って見えるかもしれないですけど、掲載上の上限が20万円で、案内上も20万円、という整理なんですね。
そのとおりです。正確には、補助上限額が20万円で、支給金額としても20万円と示されている、ということです。使途としては、新たな事業を行いたい、人材育成を行いたい、雇用・職場環境を改善したい、といった目的が挙がっています。
この20万円って、何に使うお金なんですか? 備品を買うとか、そういうイメージでした。
ここは誤解しやすいところで、この奨励金は「取組を実施したこと」に対して支給されるお金です。6つの取組を3か月の実施期間内にすべて実施する、というのが支給要件になっています。
経費の申請というより、行動に対する報酬に近いんですね。
そう捉えると分かりやすいです。だから「これを買ったら何割」という補助率の話が出てこないんです。ただし、対象になる経費や対象外の経費の細かい区分は、この情報だけでは示されていません。そこは募集要項で要確認です。
えっ、そこは自分で読み込まないといけないんですね。
はい。金額の話はここまでにして、次に間違えやすいポイントを先につぶしておきます。
名前が似た奨励金があるって聞いたんですが、本当ですか?
同じ「女性の活躍推進に向けた職場環境改善プロジェクト」の中に、別の奨励金があります。そちらは女性管理職の増加や非正規従業員のキャリアアップに取り組む方向けで、支給金額や対象人数、実施期間の条件が異なります。取り違えると申請が通らないので、自分の会社がどちらに当てはまるか、特設サイトや募集要項で必ず確認してください。
そうですね(笑)。似た名前の制度が並んでいるので、募集要項の表紙で制度名を指差し確認するくらいでちょうどいいと思います。では次に、そもそも誰が申請できるのか、要件を1つずつ見ていきましょう。
金額は分かりました。で、誰が申請できるんですか? 要件を1つずつ教えてください。
まず1つ目、本社または主たる事業所が東京都内にあること。2つ目が、常時雇用する労働者の数が100人以下であること。報道発表では「常用雇用労働者100人以下」と書かれています。
中小企業等と書かれていますが、この数字が実質的な線引きになります。数え方の細かい定義は募集要項で確認してください。次が少し独特な要件です。
労働者、係長職、管理職または役員のうち、いずれかに占める女性の割合が4割を下回っていること、という条件があります。
女性比率が高すぎると対象外になる? 逆じゃないかと思ったんですけど。
ここが面白いところで、すでに女性活躍が進んでいる会社ではなく、これから取り組む会社を後押しする設計なんです。だから女性の割合が4割以上の会社は対象外になります。
なるほど、これから頑張る会社向け、と。で、4つ目は?
厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」に、男女間賃金差異および女性管理職比率等の情報公開を行ったことがないこと、という条件です。つまり「まだ公開したことがない」会社が対象になります。
そうなります。ただしここで挙げたのは主なもので、「そのほかにも要件があります」と明記されています。詳細は募集要項の1ページから2ページをご覧ください。
東京しごと財団のページから募集要項がダウンロードできます。まずはこれを開くのが最初の一歩ですね。では次に、実際に何をやればいいのかという本題に入ります。
4つの要件は分かりました。じゃあ、要件を満たしていればもらえるんですか?
いえ、そこがこの制度の肝で、3か月の実施期間内に6つの取組をすべて実施することが支給要件です。1つ目が、自社の女性の活躍に関する状況把握と課題分析。2つ目が、1つ以上の数値目標を定めた行動計画の策定、社内周知、公表です。
女性の割合、管理職の比率、賃金の差などが対象になってきます。ここで自社の現状を数字で把握しておかないと、次の行動計画の数値目標が立てられません。分析が浅いまま目標を置くと、社内からも突っ込まれてしまいます。
要件としては「1つ以上」。1つでも満たせば条件はクリアしますが、実態に合った目標を立てるのが大事です。ここを丁寧にやると、後ろの公表作業もスムーズになります。
3つ目が、行動計画を策定した旨の都道府県労働局への届出。4つ目が、男女間賃金差異および女性管理職比率に加えて、1項目以上を公表することです。
厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」への情報公開が前提になっている要件です。社内だけじゃなくて外に出す、というのがポイントですね。
社外に数字を出すのって、抵抗がある会社も多そうですけどね。
そこを越えるための支援だと考えると、この制度の意味が見えてきます。社内周知と社外公表は別の作業なので、まとめて片づけるつもりで段取りしてください。
5つ目が、専門家の支援を受けること、1回。6つ目が、社内の幹部等向けの研修を行うことです。
そこも含めて、事業専用サイトや事務局に確認するのが確実です。少なくとも、3か月の実施期間内に専門家の支援を1回受ける必要があるので、日程調整は早めに動かないと間に合いません。
研修をやって、計画を作って、届出して、公表して、専門家に来てもらって……。3か月で全部やるのはなかなかハードですね。
だからこそ、段取りが勝負になります。取組の中身が分かったところで、次は申請から支給までの流れを追いかけましょう。
6つの取組、なかなかのボリュームでした。で、実際の手続きはどう進めるんですか?
大前提として、電子申請はJグランツで行います。そのためにGビズIDアカウント、特にGビズIDプライムの発行が必要です。ここが最初の関門で、発行には時間がかかるため、余裕をもって準備してください、と注意書きがあります。
そうなんです。締切の直前に気づくと、そもそも申請の土俵に上がれない可能性があります。GビズIDプライムの申請は専用サイトから行います。次に、支給申請期間内に支給申請書類をJグランツで提出します。
いえ、順番があります。支給申請、支給決定、奨励金対象事業の実施、実績報告書の提出、交付額確定・請求、支給、という流れです。支給決定後に、実施期間内に所定の取組を行います。
支給決定が先に来るんですね。てっきり先に動いてから申請するのかと。
そこは要注意です。取組が終わったら実績報告書類を提出し、実績確認と奨励金額の確定を経て、奨励金の請求に進みます。実施期間の中で行う必要があるので、支給決定前に取組を始めてしまうと対象外になる可能性があります。
順番を守らないと無効になっちゃうんですね。こわい。
制度名に「奨励金請求」って入っていますけど、請求って何ですか?
実績報告の結果、奨励額確定通知書が届きます。それを受領した後、概ね1か月以内にJグランツで請求する、というステップです。ここまでが一連の流れで、最後の請求までやってようやく支給にたどり着きます。
しかも、各回申請ごとに申請フォームが異なる、と明記されています。自分の申請回に対応するフォームを使わないと、正しく申請できません。
気をつけないと(笑)。ここまでの流れを図にまとめてもらえますか?
いいですよ。この図の順番どおりに動けば迷いません。では次に、いつ申請するのかというスケジュールの話に移りましょう。
申請から支給までの流れ- 1
GビズIDプライムを取得
発行に時間がかかるため早めに準備
- 2
- 3
- 4
- 5
- 6
交付額確定・奨励金請求
確定通知書の受領後、概ね1か月以内に請求
- 7
さっきの流れ、申請のタイミングは決まっているんですか?
東京都の報道発表では、支給申請期間が10回に分かれています。第1回が令和8年6月15日から6月30日、第2回が7月1日から7月31日、第3回が8月1日から8月31日、第4回が9月1日から9月30日です。
そうですね。第5回は10月1日から10月31日、第6回が11月1日から11月30日、第7回が12月1日から12月31日。年が明けて第8回が令和9年1月1日から1月31日、第9回が2月1日から2月28日、第10回が3月1日から3月31日です。
各奨励金の定員として100社ずつと示されています。月末が締切なので、余裕をもって準備したいところです。
ここで1つ引っかかったんですけど、jGrantsのページには募集期間が2026年10月1日から2028年3月31日と書かれています。報道発表の第1回は6月15日からなのに、ずいぶん違いますよね。
そこは混同しやすいポイントです。jGrantsに掲載されている期間が2026年10月1日から2028年3月31日となっている一方、東京都の報道発表では令和8年6月15日から支給申請が始まる10回構成になっています。申請回ごとに実施期間や実績報告の受付期間が定められているので、自分が申請する回の期間は募集要項で確認してください。
はい。どの回に出すかで、実施期間や実績報告の時期が変わります。ここは公募要領で要確認です。
女性活躍情報公開促進奨励金は3か月です。専門家の支援1回を含む期間になります。同じプロジェクトのもう一方の奨励金は6か月とされているので、そちらと比べると短めですね。
だからこそ、申請前に社内の体制を整えておくことが大事になります。では次に、通りやすくするコツを見ていきましょう。
ここまでの話を聞いて、正直ハードルが高そうだと思ったんですが、通すコツはありますか?
まず押さえたいのが順番です。支給決定の前に取組を始めてしまうと、対象事業として認められない可能性があります。実施期間内に、という条件を意識してください。
あともう1つ、6つの取組は「すべて実施」が条件です。1つでも抜けると要件を満たしません。特に専門家の支援と幹部研修は日程調整が必要なので、実施期間の終盤にまとめると詰みます。
そのとおりです。カレンダーに6つの取組を落とし込んでから着手すると、迷いません。
行動計画の公表と、男女間賃金差異・女性管理職比率に加えてもう1項目以上の公表、この2つを混同しないことです。公表先は女性の活躍推進企業データベースが前提になっています。
別の作業です。計画の策定、社内周知、公表、労働局への届出、この4つはセットで押さえてください。ここを一気に片づけると、残りの専門家支援と研修に集中できます。
企業向けのオンラインセミナーや、集合型セミナー・相談会が実施されると案内されています。日程や内容は特設サイトで知らせるとのことなので、まず予約しておくのがおすすめです。東京都の「女性活躍推進度診断ツール」も、自社の現状把握に使えます。
あわせて、この事業に取り組んでいる中小企業者は東京都中小企業制度融資の「女性活躍推進融資(TOKYO ウィメン・ビズ・サポート)」の対象になり、信用保証料3分の2補助や利率優遇を受けられる、と紹介されています。資金調達も視野に入れるなら、ここはチェックしておきましょう。
じゃあ最後に、よくある質問をまとめて聞いてもいいですか?
もちろんです。迷いやすいところを順番につぶしていきましょう。
よくある質問をいくつか。まず、個人事業主でもいけますか?
要件には「本社または主たる事業所が東京都内にあること」「常時雇用する労働者の数が100人以下であること」などが挙がっています。ただし、個人事業主が対象かどうかの明記は、この情報の中にはありません。判断に迷う場合は、事務局か募集要項で確認してください。
そうですね。そのほかにも要件があります、と明記されているので、自己判断は禁物です。
常時雇用する労働者100人以下というのが要件です。報道発表でも「常用雇用労働者100人以下」と書かれています。数え方の細かい定義は募集要項で確認してください。なお、同じプロジェクトのもう一方の奨励金は対象人数が違うので、混同しないように注意です。
支給金額も取組内容も別物です。名前が似ているので、募集要項の表紙で必ず確認してください。
電子申請はJグランツで行います。GビズIDプライムの発行は無料で、申請書類の提出にも手数料の記載はありません。ただし、専門家の支援を受ける際の費用や研修の実施にかかる費用は、取組内容によって発生します。それらの費用がどう扱われるかは、この情報だけでは分かりません。公募要領で要確認です。
はい。金額に直結する部分なので、必ず確認しましょう。
東京しごと財団のページでは、本事業に取り組んでいる中小企業者は東京都中小企業制度融資の「女性活躍推進融資(TOKYO ウィメン・ビズ・サポート)」の対象となり、信用保証料3分の2補助や利率優遇が受けられると紹介されています。融資と奨励金の組み合わせは、事業資金の流れを考えるうえで心強いですね。
なるほど、奨励金は後払いなので資金繰りに効きそうです。
ただ、他の補助金や給付金との併給可否については、この情報の中には記載がありません。二重取りにならないよう、必ず事務局に確認してください。
分からないことがあったら、どこに聞けばいいですか?
女性の活躍推進に向けた職場環境改善プロジェクト事務局、電話番号は03-6744-6539。受付時間は平日の午前9時から午後5時までです。
平日の9時から17時、と。時間外は無理なんですね。
最後にもう一度、混同しやすいポイントを確認したいです。
「女性活躍情報公開促進奨励金」と、同じプロジェクト内のもう一つの奨励金は、名前も取組内容も支給金額も違います。申請フォームも申請回ごとに異なると明記されています。だからこそ、自分が申請する奨励金の募集要項を開いて、対象・支給金額・取組内容を最初に確認する習慣をつけてください。
そうならないように、ですね(笑)。注意点を整理した図も置いておきます。
この奨励金のメリットと注意点- 返済不要の奨励金20万円
- 専門家の支援やセミナーなど伴走サポートがある
- 女性活躍の情報公開という対外的な発信につながる
- 取り組み企業は東京都の制度融資で保証料補助や利率優遇の対象になる
×デメリット
- 3か月の実施期間内に6つの取組をすべて終える必要がある
- 支給決定前に取組を始めると対象外になる可能性がある
- 女性の割合が4割を下回るなど独自の要件を満たす必要がある
- 確定通知書の受領から概ね1か月以内に請求が必要
- 定員がありGビズID取得など事前準備に時間がかかる
そうですね。もう一度要点を並べると、東京都の制度で、対象は都内の中小企業等。支給金額は20万円で、補助率の記載はなし。3か月の実施期間内に6つの取組をすべてやることが要件です。
計画づくりから公表、届出、専門家支援、幹部研修まで、ワンセットなんですよね。
はい。実績報告のあとに奨励額確定通知書が届いて、そこから概ね1か月以内にJグランツで請求する。ここまでが「奨励金請求」という名前に込められた一連の流れです。
最初にGビズIDの発行が必要というのも、忘れられないポイントでした。
まず東京しごと財団のページで募集要項を入手して、1ページから2ページの要件を確認。同時に、GビズIDプライムの取得を進める。そして特設サイトでセミナーや相談会の予定をチェックする。この3つを並行して動かすのが最初の一歩ですね。
そのとおりです。申請期間は10回ありますが、各回100社の定員があります。準備に時間がかかることをふまえて、余裕をもって動いてください。