室谷さん、今回取り上げるのは「令和8年度臨床研修費等補助金(歯科医師)」ですね。名前からして、歯科医師の研修にお金が出る制度ですか?
そのとおりです。厚生労働省の「臨床研修費等補助金」という事業の枠組みのなかで、歯科医師の臨床研修にかかわる取り組みを支援するものです。根拠になるのは歯科医師臨床研修費補助事業実施要綱と、医療関係者研修費等補助金及び臨床研修費等補助金交付要綱の2つ。骨格はこの2つで決まっています。
はい。実施要綱で「何を補助するか」を決めて、交付要綱で「どう交付するか」を決める、という役割分担です。今回はその歯科医師版、ということになります。
なるほど! でも、なぜ歯科医師の臨床研修に国のお金が入るんですか?
そこが制度の出発点です。次の小見出しで、目的をそのままたどってみましょう。
実施要綱にはこう書かれています。平成18年度からの歯科医師臨床研修の必修化を踏まえ、臨床研修開始時点における研修歯科医の歯科医師としての資質を確保すること。そして、研修歯科医が臨床研修に専念できる環境を整備することなんですね。
さらに、研修歯科医が臨床歯科医として患者中心の全人的医療を理解した上で歯科医師としての人格をかん養し、総合的な歯科診療能力を身につけ、臨床研修を生涯研修の第一歩とすること。ここまでが支援の目的に含まれています。
一度きりの研修じゃなくて、その後の生涯研修のスタート地点と捉えているわけですね。
そう読めます。だからこそ、受け入れる施設側の体制づくりまで支援対象になっているんです。
ここで引っかかるのが、jGrantsの掲載情報では対象地域が東京都になっている点です。歯科医師の制度なのに東京だけ?
掲載情報上はそうなっていますね。ただ実施要綱には、広域連携型プログラムの要件として、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の臨床研修施設と、それ以外の道府県の臨床研修施設が連携する、という定めがあります。
あ、じゃあ東京が起点になりつつ、ほかの県と組む形も想定されているんですね。
そう読めます。ただ、あなたの施設がどの区分で応募できるのかは、最終的に公募要領で要確認です。地域の扱いは、いちばん慎重に見るべきところです。
はい! 自分の施設がどのパターンか、最初に確認します。
令和8年度 臨床研修費等補助金(歯科医師)の特徴根拠は2つの要綱
歯科医師臨床研修費補助事業実施要綱と交付要綱
対象は歯科医師の臨床研修
平成18年度からの必修化を踏まえた支援
4つの事業で構成
臨床研修・指導歯科医資質向上・在宅歯科医療等研修・広域連携型
で、いちばん気になる金額ですよ。いくらもらえるんですか?
先に結論を言います。今回の掲載情報では補助金額の欄に具体的な金額の記載がなく、制度詳細の備考にも「補助額上限については交付要綱をご参照ください」と書かれています。
そうなんです。だからといって、こちらで推測して数字を出すわけにはいきません。交付要綱に当たるのが唯一の正解ルートです。ここを飛ばして「だいたいこれくらい」と考えるのが、いちばん危険です。
なるほど。金額は交付要綱で確認、と。メモしました。
はい。そして同じく、補助率についても記載がないので、この段階で「何割」と断定はできません。公募要領で要確認という前提で動いてください。
いいですよ。押さえてから詳細に入ると迷子になりません。
表にすると一目ですね。募集期間が2026年10月8日から2027年7月31日まで、というのも大きな情報だ。
そう、約10か月の募集期間です。年度をまたぐ長めの設定なので計画は立てやすい。でも、後回しにするとあっという間に締切が来ます。
確かに。10月開始だと「まだいいや」ってなりがちですもんね。
その油断がいちばん怖いんですよ。次は、そもそも誰が手を挙げられるのかを見ていきましょう。
実施要綱では補助対象が複数に分けて整理されています。そのうち歯科医師臨床研修広域連携型プログラム実施事業については、臨床研修を実施している施設のうち、令和9年度以降に広域連携型プログラムを実施しようとする歯科大学・歯学部の附属施設が対象とされています。
令和9年度以降に実施しようとしている、というのがミソですね。
先を見越して体制を整える段階から支援する、という設計に見えます。とはいえ、どの区分の補助対象に自分が当てはまるかは、実施要綱と公募要領の突き合わせが必須です。
はい、そこは自分で確認します。ところで、逆に対象外ってあるんですか?
あります。次の小見出しで見ましょう。ここは誤解しやすいポイントです。
実施要綱の補助対象外の規定では、補助対象の一部について、国が開設する病院は補助の対象としない、とされています。この「国」には国立大学法人、国立高度専門医療研究センター、そして国立健康危機管理研究機構を含む、と明記されています。
国立大学法人も「国」側に入るんですね。これは誤解しやすい!
そう思います。「大学病院だから当然対象」と考えると足元をすくわれます。自分の施設の設置主体がどこなのかを、まず確定させてください。
加えて、臨床研修を行う施設で医事に関する犯罪または不正行為が認められた場合などは、補助金の全部又は一部を交付しないことがある、という規定もあります。これも対象可否に関わる話です。
国が開設する病院ですか?あなたの施設は国が開設していますか?
はい一部区分では補助対象外
該当するかは公募要領で要確認
さっき出た「全部又は一部を交付しない」の話、もう少し聞いていいですか?
はい。臨床研修を行う施設において、医事に関する犯罪または不正行為が認められた場合、その他制度の適正な運営に支障があると認められる場合など、補助目的である良質な研修の実施を達成することが困難であると厚生労働大臣が認めるときは、補助金の全部又は一部を交付しないことがある、と定められています。
全部だけじゃなく、一部を止めることもあるんですね。
はい。なお詳細は別に定めるとされています。研修の実施体制だけでなく、施設としての姿勢も見られる、と考えて準備するのが安全です。
では、補助対象となる事業の中身に入りましょう。4つあります。
1つめは臨床研修事業です。これは歯科医師法第16条の2第1項に規定する臨床研修に関する省令の施行について、という通知、いわゆる施行通知に基づく事業とされています。この通知は令和8年4月1日付の医政発0401第47号です。
法律の条文番号まで決まっているんですね。歯科医師法第16条の2第1項、メモしました。
ここが本丸です。臨床研修そのものを回すための体制が、この事業の対象という整理になります。研修の実施計画を立てる際の土台になる部分です。
指導歯科医資質向上推進事業です。「歯科教育モデル・コア・カリキュラム令和4年度改訂版」により、超高齢社会への対応、多職種連携・多職種協働やチーム医療を図るという観点から改訂された卒前教育の内容を、指導歯科医に周知するための講習会を実施する事業です。
講習会を開く側への支援なんですね。なんか意外です。
研修の質は指導する側で決まる、という発想です。なお、講習会を実施するにあたっては4つの要件をすべて満たすこと、とされていますが、今回の情報では中身が略されています。ここは公募要領で要確認です。
4つ要件がある、というのは分かったので、公募要領でつぶします!
その姿勢が大事です。3つめは在宅歯科医療等研修推進事業です。
在宅歯科医療等研修推進事業です。今回の情報では内容が略されていますので、研修の具体像や要件は公募要領・実施要綱で確認が必要です。
正直に言うと、名前から在宅の歯科医療を学ぶ研修かな、と想像しちゃいます。
想像は自由ですが、記事としては書けません(笑)。確実に言えるのは、在宅歯科医療等に関する研修を推進する事業が、補助対象の1本として用意されているという事実です。
そうしてください。そして4つめ、ここがいちばん要件が細かいところです。
歯科医師臨床研修広域連携型プログラム実施事業です。施行通知に基づいて実施する歯科医師臨床研修プログラムにおいて、異なる地域における地域歯科医療を経験するという観点から、広域連携型プログラムを実施するための体制整備を行う事業です。
地域をまたいで研修する体制づくりに支援が入る、と。
そういうことです。そして対象として、令和9年度以降に広域連携型プログラムを実施しようとする歯科大学・歯学部の附属施設が挙がっていましたね。要件が3つあるので、次のセクションでじっくり分解します。
3つとも落とせない要件です。順番に見ていきましょう。
まず、広域連携型プログラムは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県の臨床研修施設が、それ以外の道府県の臨床研修施設と連携する形で実施します。ただし、その施設の研修プログラムの募集定員の合計が10人以上の場合は除かれます。
大都市側の施設にも条件が付くんですね。10人以上だと外れる、と。
はい。そして、それぞれ管理型臨床研修施設または協力型(Ⅰ)臨床研修施設として3月以上の研修を行う研修プログラムであることが求められます。
3月以上、つまり短期の視察じゃなくて、ちゃんと腰を据えた研修ですね。
そこが本事業の核心です。異なる地域の地域歯科医療を経験する、という目的に直結する数字ですから、ここは計画書で明確に示したいところです。
プログラム責任者とは別に、広域連携型プログラムの研修に係る連絡調整を行う実施責任者を置くこと、という要件です。
そこがポイントです。既存のプログラム責任者が兼務すればいい、という話ではないと読めます。連携先との調整は日常的に発生しますから、専任で置く前提で体制図を描いておくといいですよ。
はい。そして3つめは、開催回数まで指定されています。
当該プログラムに関わる指導歯科医、協力型(Ⅰ)臨床研修施設等の指導歯科医も含みます、そしてその他関係者が集まり、広域連携型プログラムに関する研修の到達目標、指導内容及び評価方法等を検討・共有するための会議等を、年に2回以上開催すること、という要件です。
会議の回数まで決まっているんですね。年2回以上か。
はい。しかも議論する中身まで指定されています。到達目標・指導内容・評価方法の3点セットです。開催記録が残るように運営しておくのが大事です。
そのうえで、この3要件は1つでも欠けると満たしたことになりません。まとめて確認しておきましょう。
大きいのは、研修歯科医が臨床研修に専念できる環境整備を国が後押ししてくれる点です。研修を受け入れる側は、指導の人手も設備も時間も要りますから、そこに支援が入る意味は小さくありません。
学生さんにとっても、落ち着いて研修できる環境になるのはありがたい。
そうですね。加えて臨床研修を生涯研修の第一歩と位置づけているので、単発の施策ではなく、長い目で見たキャリア形成につながる支援という性格があります。
さらに広域連携型では、異なる地域の地域歯科医療を経験できるという学びの広がりも生まれます。
3つ挙げます。1つは補助額の上限が交付要綱に委ねられていて、この情報だけでは金額が確定しないこと。2つめは国が開設する病院が一部区分で対象外とされていること。3つめは、医事に関する犯罪・不正行為などがあると補助金の全部又は一部を交付しないことがある、という規定です。
金額が読めない、対象外がある、コンプライアンス次第。どれも初動で確認できることですね。
そう、初動で潰せるものばかりです。だからこそ最初の1週間の確認が勝負なんです。締切は2027年7月31日ですから、時間はあるようでありません。
この補助金のメリットと注意点- 研修歯科医が臨床研修に専念できる環境整備を後押し
- 臨床研修を生涯研修の第一歩として位置づける支援
- 広域連携型では異なる地域の地域歯科医療を経験できる
×デメリット
- 補助額の上限は交付要綱に委ねられ、金額の記載がない
- 国が開設する病院は一部区分で対象外
- 医事に関する犯罪・不正行為などで全部又は一部を交付しないことがある
厚生労働省が公開している申請関連のページでは、実施要綱・交付要綱・取扱い通知をもとに作業を進めること、そして必要な様式が第1号様式、第2号様式(別紙1及び別紙2を含む)、第3号様式として用意されていることが示されています。あわせて記入例や予算書例、Q&Aも公開されています。
そうですね。ゼロから書くより、記入例の前提条件を読んでから自分の数字に置き換えるほうが早いです。Q&Aも先に目を通しておくと手戻りが減ります。
そのうえで様式に入る。順番を守るだけで作業量が変わります。
公開されているページでは、各都道府県からの指示に従って提出していただく形が示されています。申請書等の提出にあたっては、実施要綱、交付要綱、そして実施に当たっての取扱いについて、をもとに作業を進めるように、と書かれています。
はい。そして基幹型の病院が補助対象外で、協力型の病院や臨床研修協力施設が代表して申請を行う場合は、その施設にも通知内容を情報提供するように、とされています。代表者が誰か、最初に決めておきましょう。
そのとおりです。連携先に情報が届いていないと、書類の不備につながります。
jGrantsのポータルも見ました。ここから申請するんですか?
公式URLとして掲載されているのはjGrantsのページです。公募情報はここで確認できます。電子申請の方式や必要な事前準備、たとえばIDの取得が要るかどうかは制度ごとに違いますから、公募要領で要確認です。
そう、そこが落とし穴になりやすい。取得が必要と分かった時点で即動く。これが鉄則です。募集期間が長いからと後回しにすると、締切直前に慌てることになります。
本当にそうなります(笑)。準備は前倒しでお願いします。
公開されているページでは、事業実績報告書の提出は令和8年度の事業終了後とされていて、第4号様式と決算書例が用意されています。交付申請と実績報告はセットだと考えてください。
そうです。研修の実施記録、会議の開催記録、お金の流れ。この3つが後から追える状態になっていると、報告がぐっと楽になります。
それが結果的にいちばん速いんです。次のセクションでは、審査の目線を確認しましょう。
申請から実績報告までの流れ- 1
公式ページで公募情報を確認
jGrantsの掲載ページを開く
- 2
実施要綱・交付要綱・取扱い通知を読む
自分の区分と要件を特定する
- 3
- 4
- 5
- 6
大前提として、実施要綱に書かれた要件を満たしていることが必要です。ただ、満たしているだけでは足りなくて、満たしていることが書類で分かる状態になっていないといけません。たとえば広域連携型なら、連携先との関係、実施責任者の配置、会議の開催予定が書類上で追えるかどうかです。
口頭では説明できるのに書類にない、が一番もったいない。
まさにそれです。公募要領で要確認の部分は早めに埋めて、書類に落とし込む時間を残してください。
よくあるのは、対象地域や設置主体の確認漏れです。jGrantsの掲載では対象地域が東京都とされていますし、国が開設する病院は一部区分で対象外とされています。自分の施設がどの区分なのか、最初に確定させてください。
もう1つは、金額の見積もりを交付要綱を見ずに進めてしまうケースです。補助額の上限は交付要綱参照と明記されていますから、そこを見ずに予算書を書くと、後で全部書き直しになります。
だから最初に交付要綱。この順番だけは崩さないでください。
1つめ、目的から逆算して書くこと。この制度は研修歯科医が専念できる環境づくりと、全人的医療を理解した上での総合的な歯科診療能力の習得を支えるものです。そこにどう効くのかを軸に組み立てます。
2つめ、要件の一つひとつに証拠を添えること。3つめ、スケジュールに余白を残すこと。会議を年に2回以上開くなら、その日程も計画に織り込んでおく。この3つです。
ちなみに公募要領の読み込みは、締切の直前ではなく最初の1週間にやるのがおすすめです。手戻りがなくなり、結果的に一番速いですよ。
まず令和8年4月9日に実施要綱と取扱い通知が出ています。次に令和8年10月7日付で交付要綱。そして募集は2026年10月8日に始まり、2027年7月31日までです。事業実績報告は令和8年度の事業終了後に提出、という流れです。
要綱が出てから募集開始まで、けっこう近いですね。10月7日と10月8日、ほぼ同時だ。
そうなんです。交付要綱の日付の翌日に募集開始ですから、金額の確認は募集が始まってから即座に必要になります。ここは本当に前倒しでお願いしたいところです。
はい。その日を起点に、逆算のカレンダーを作っておきましょう。
募集スケジュール令和8年4月9日
実施要綱・取扱い通知
医政局長通知・医事課長通知
令和8年10月7日
交付要綱
厚生労働省発医政1007第1号
2026年10月8日
募集開始
jGrantsで公募情報を公開
2027年7月31日
募集締切
詳細は公募要領で要確認
令和8年度の事業終了後
事業実績報告
第4号様式・決算書例
締切の2027年7月31日に向けて、何を優先すべきですか?
まず該当する事業の区分を決めること。臨床研修事業、指導歯科医資質向上推進事業、在宅歯科医療等研修推進事業、歯科医師臨床研修広域連携型プログラム実施事業のどれで出すのか。次に必要書類です。第1号様式から第3号様式、記入例、予算書例、Q&Aを確認して、都道府県の指示に沿って整えます。
区分を決める、書類をそろえる、窓口に従う。この順番ですね。
はい。そして広域連携型で出すなら、要件に挙がっていた会議の予定も組み込んでおく。3月以上の研修ですから、研修の年間カレンダーも一緒に作っておくと強いです。
最後に、読者からの素朴な疑問をまとめておきたいです。
やっぱり「金額はいくらですか?」が一番来そうですが。
これは正直にお伝えするしかありません。今回の情報では補助金額・補助率の記載がなく、上限は交付要綱をご参照ください、とされています。だから「公募要領で要確認」が答えです。曖昧な数字を出さないのが、結局は一番親切だと思っています。
公式URLのjGrantsページを開いて公募情報を確認する。同時に交付要綱と実施要綱、記入例、Q&Aに目を通す。そして自分の施設の設置主体と対象地域を確定させる。この3つを最初の1週間で。それだけで、その後のスピードがまったく変わります。
はい! まとめると、金額は交付要綱、区分は実施要綱、手続きは都道府県の指示。今日はありがとうございました!
ありがとうございました。締切は2027年7月31日。長いようであっという間ですよ。