室谷さん、東京都がフィンテック企業向けに補助金を出しているって聞いたんですけど、これってどんな制度なんですか?
ほんとに面白い制度ですよ!正式名称は「フィンテック企業等に対するイノベーション支援事業(金融サービス事業化支援補助金)」といって、フィンテック企業と金融機関が一緒に実証実験をする費用を最大400万円、補助率2/3で支援する東京都の制度です。令和8年度(2026年度)版が今まさに公募中なんです。
へえ、フィンテック企業だけじゃなくて金融機関も絡むんですね。
そこがポイントなんですよ。一社だけじゃ申請できなくて、フィンテック企業と銀行・証券・保険会社などの金融事業者が「協働」することが必須条件なんです。例えば、AIを使った与信審査システムを開発したフィンテックスタートアップが、地方銀行と組んで実際の審査データで検証するとか。
なるほど!じゃあフィンテック系のスタートアップが金融機関と組んで新サービスを試すための補助金ってことですね。
まさに。東京都が国際金融都市を目指している流れの中で、金融分野のイノベーションを促進したいわけです。令和4年度から続いている制度で、令和8年度が最新版です。過去の実績も積み重なってきていて、採択実績もかなり豊富になっています。
申請者タイプ別の補助金比較表
申請者が誰かによって補助率と上限額が変わります。ここが大事なポイントなので整理しますね。
| 申請者タイプ | 協働相手 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|
| フィンテック企業(初申請または1回目) | 国内金融事業者 | 2/3以内 | 400万円 |
| フィンテック企業(過年度1回受給済み) | 国内金融事業者 | 1/2以内 | 200万円 |
| 国内金融事業者 | 海外フィンテック企業 | 1/2以内 | 300万円 |
初めて申請するフィンテック企業が一番有利なんですね。
そうです!初回申請なら補助率2/3で最大400万円。600万円の実証プロジェクトなら400万円を補助してもらえるイメージです。逆に、すでに過年度補助金を1回受けた企業は補助率が1/2に下がって上限200万円になる。
令和4年度から令和7年度にかけて東京都が実施してきた同種の補助金(フィンテック企業等に対するイノベーション支援事業)の受給回数を数えます。2回以上受け取っている場合は今回は申請できません。1回だけなら申請できますが、補助率と上限額が下がるという仕組みです。
なるほど。じゃあ初めての人ほど手厚い支援を受けられると。
その通りです。あと、海外のフィンテック企業と組む場合は少し仕組みが変わって、日本国内の金融事業者側が申請者になります。東京都内に拠点のある海外フィンテック企業のサービスを導入する実証実験に対して、金融機関が申請するイメージです。
補助対象になる経費は何ですか?全部カバーしてくれるわけじゃないですよね。
申請者のタイプで対象経費が分かれています。フィンテック企業向けと金融事業者向けで内容が違うので、ちゃんと確認しないといけないですね。
| 申請者 | 対象経費の種類 | 具体例 |
|---|
| フィンテック企業 | クラウドサービス利用費 | AWS・Azure・GCPなどの利用料 |
| フィンテック企業 | 委託・外注費 | システム開発の外注、テスト・QA費用 |
| フィンテック企業 | 専門家等への相談経費 | 金融規制専門家、法務・知財アドバイザー料 |
| 金融事業者 | 海外フィンテックサービス導入経費 | サービスライセンス料、API連携開発費 |
| 金融事業者 | 専門家等への相談経費 | コンプライアンス専門家への相談料 |
残念ながら人件費は補助対象外です!あとは事務所の賃料・光熱費、通信費、交通費、飲食費・交際費なんかも対象外になります。実証実験に直接使う「外に出ていくお金」に絞られるイメージですね。
- 自社スタッフの人件費・給与
- 事務所の家賃・光熱費・通信費
- 飲食費・交際費・交通費
- 汎用ソフトウェアの購入費
- 関連会社・グループ企業への委託費(親会社・子会社・兄弟会社は不可)
- 交付決定日より前に発生した経費
- 他の補助金で助成を受けている経費
大事な点がいくつかあります。1件100万円以上の委託・外注費は原則として2社以上の見積書が必要です。それと、親会社・子会社・関連会社への委託は補助対象になりません。技術開発要素のないデザインや翻訳費用も対象外です。審査が厳しいので事前にきっちり確認しておきましょう。
なるほど、その辺りはちゃんと確認してから申請しないといけないですね。次は申請の流れを教えてください。
申請から実証開始までのフロー図
ざっくり言うと、申請書類を出して面接審査を通過して交付決定を受けてから実証を始める、という流れです。
1募集要領を熟読・要件確認 — 東京都産業労働局のホームページから最新の募集要領・交付要綱・申請様式をダウンロード。協働パートナー(フィンテック企業または金融事業者)と要件が合致するか確認
2協働パートナーと実証計画を策定 — 実証的取組の内容・目的・成果指標・工程表を協働相手と詰める。審査で「実証スキームと仮説・検証方法・成果指標が明確か」がチェックされる
3申請書類を作成・提出 — 交付申請書に必要書類一式を添えて提出。提出方法は郵送(簡易書留)か窓口持参かjGrants電子申請の3通り。受付期間は令和8年4月8日から令和9年1月29日まで(予算額に達した時点で締切)
4面接審査(オンライン) — 受付後、概ね1〜2ヶ月ごとに審査会が開催される。A4用紙2枚以内のパワーポイント資料を用意して申請者本人が出席
5交付決定通知を受領 — 審査通過後に交付決定通知書が届く。この日以降に実証的取組を開始できる(交付決定前の経費は補助対象外)
6実証的取組を実施 — 令和9年3月31日までに実証を完了させ、経費の支払いも完了させる必要がある
7実績報告書を提出 — 取組完了後に見積書・契約書・請求書・振込受付控え・写真等を添付して実績報告書を提出。確定検査を経て最終的な補助金額が決まる
そこが他の補助金と少し違うところです。書類審査だけでなく必ず面接審査があるので、事業内容をちゃんと説明できるよう準備が要ります。プレゼン資料はA4で2枚以内という制限があるので、シンプルにまとめる力が大事です。
A4 2枚ってかなり絞り込む必要がありますね。次は応募資格を確認したいです。
- [1] 東京都内に登記簿上の本店または支店があること — 本社が地方でも東京支店があればOK
- [2] 協働パートナーがいること — フィンテック企業なら国内金融事業者と、金融事業者なら海外フィンテック企業と組む必要がある
- [3] 実証的取組の実施能力と完遂意思があること — 途中放棄はアウト
- [4] 同一年度内に国や他自治体から委託・助成を受けていないこと — 東京都の他部署からの助成金も対象
- [5] 過年度の同種補助金を2回以上受けていないこと — 1回はOK(ただし補助率・上限額が下がる)
面白い質問ですね!海外フィンテック企業が東京都内に子会社等の拠点を持っている場合、その海外企業のサービスを導入しようとする国内金融機関が申請できます。例えばシンガポールのRegTech企業と日本の銀行が組んで実証する場合、日本の銀行側が申請者になる形です。
海外企業のサービスを試してみたい金融機関にもチャンスがあるんですね。では審査対策を教えてください!
審査ではどんな点が見られるんですか?採択されるコツを教えてください!
審査の視点は大きく4つです。革新性・社会的意義・実現性・実証的取組の有効性です。それぞれ解説しますね。
- 革新性: 優れたビジネスモデルや技術に基づいているか、競合との差別化が明確か、市場の成長性があるか
- 社会的意義: 都民の生活利便性や都内企業の生産性向上につながるか
- 実現性: 事業化に向けたロードマップが今回の実証の位置づけを含めて明確か、必要な資金・人員体制が揃っているか
- 実証的取組の有効性: 実証スキームと検証仮説・方法・成果指標が明確に設定されているか、工程表が具体的か
特に「何を検証するのか(仮説)」「どうやって検証するのか(方法)」「何で成功と判断するのか(成果指標)」の3点セットが面接審査で絶対聞かれます。「なんとなく実証してみます」では通りません。例えば「AI与信審査を導入した場合に貸倒率が○%改善することを3ヶ月間で検証する」くらいの具体性が求められます。
過年度に1回受けた企業が再申請する場合は何か特別な条件がありますか?
前回と異なる内容の実証的取組であること、または同じ内容でも前回より大きく発展していることが求められます。「過年度から継続して都が支援することで、更なるDX推進への寄与が十分に期待できるか」という観点で追加評価されます。つまり「前回の成果を踏まえて次のステージに進む」ストーリーが重要です。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 令和8年度フィンテック企業等に対するイノベーション支援事業(金融サービス事業化支援補助金) |
| 実施機関 | 東京都産業労働局 総務部 国際金融都市推進課 |
| 対象地域 | 東京都内に登記簿上の本店または支店がある企業 |
| 補助率(フィンテック企業・初申請) | 補助対象経費の2/3以内 |
| 補助上限額(フィンテック企業・初申請) | 400万円 |
| 補助率(フィンテック企業・1回受給済み) | 補助対象経費の1/2以内 |
| 補助上限額(フィンテック企業・1回受給済み) | 200万円 |
| 補助率(金融事業者・海外フィンテック連携) | 補助対象経費の1/2以内 |
| 補助上限額(金融事業者・海外フィンテック連携) | 300万円 |
| 受付期間 | 令和8年4月8日(水)〜令和9年1月29日(金)(必着) |
| 実証期間 | 交付決定日以降〜令和9年3月31日まで |
| 審査方式 | 面接審査(オンライン、概ね1〜2ヶ月ごとに開催) |
| 申請方法 | jGrants電子申請または郵送(簡易書留)または窓口持参 |
| 問い合わせ電話 | TEL 03-5320-6274 |
| 公式URL | sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp |
受付期間が令和8年4月から令和9年1月まで約9ヶ月もあるんですね!
ただし予算額に達した時点で受付は終了します。「まだ期間あるから」と油断してると締め切られていたという事態になりかねない。面接審査の実施タイミングも申請受付から1〜2ヶ月かかるので、12月初旬頃までには申請しておくのが無難です。
実際にこの補助金でどんな事業が採択されているんですか?
東京都の公式サイトに過去の採択企業の実証内容が公開されています。いくつか紹介すると……
例えば過去の採択例では、個人投資家向け金融情報メディアを運営するスタートアップが証券会社と組んで、AIによる投資家の関心・ニーズ推定システムの実証を行ったケースがあります。投資状況データとコンテンツ閲覧履歴の相関を検証するものです。
もう一つは、学校集金業務のデジタル化サービスのスタートアップが金融機関と連携して、教員やPTAを対象にしたアルファ版アプリの実証を行ったケースも。業務削減余地の確認と導入意向調査で半数以上が導入希望と回答したとのことで、事業化が期待されている実績もあります。
フィンテックって言っても、教育現場の集金システムまで入ってくるんですね。
金融分野のイノベーションって広いですからね。決済・与信・資産運用・RegTech(規制対応技術)・保険テック・決算管理など、金融に関わるものなら対象になります。大事なのは、金融事業者と協働している実証的取組であることです。
ありがとうございます。最後に申請準備のまとめをお願いします。
まず協働パートナーを見つけることが最優先ですね。パートナーなしには申請できないので。そこから逆算して準備を進めましょう。
- [必須] 東京都内に登記簿上の本店または支店があることを確認
- [必須] 協働パートナー(国内金融事業者)を確定させる
- [必須] 実証的取組の内容・仮説・検証方法・成果指標を詳細に決める
- [必須] 補助対象経費の見積書を取得(100万円以上は2社以上から)
- [必須] 過年度の同種補助金の交付回数が2回未満であることを確認
- [必須] 同一年度内の他補助金・委託との重複がないことを確認
- [必須] 令和9年3月31日までの実施スケジュールを策定
- [推奨] 実証後の事業化・サービス実装ロードマップを作成
- [推奨] 面接審査用プレゼン資料(A4 2枚以内)を先行作成
そこが一番のハードルかもしれないですね。東京都内には東京都の産業交流展やスタートアップ向けのマッチングイベントを活用して金融機関とのコネクションを作る手があります。または既存取引のある銀行・信金に相談してみるのが意外と近道だったりします。
ありがとうございます!問い合わせ窓口はどこに連絡すればいいですか?
東京都産業労働局 総務部 国際金融都市推進課 国際金融都市推進担当に連絡してください。
東京都産業労働局 総務部 国際金融都市推進課 国際金融都市推進担当
電話 03-5320-6274
公式ページ
jGrants補助金詳細
申請書類提出先: 〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 東京都庁第一本庁舎20階
東京都内のフィンテック企業や金融機関の方は、まずは協働パートナーを探すところから始めてみてください!
そうですね。令和9年1月29日が最終締切ですが、予算がなくなったら終わりなので、準備ができたら早めに申請するのが正解です。実証計画と面接審査の準備をしっかり整えて、東京都の金融イノベーション支援をフルに活用してほしいです。
ありがとうございます。東京都内の他の補助金も知りたいのですが、どこで調べればいいですか?
他にも金融・フィンテック系の補助金ってあるんですか?
東京都内の企業向けに似た切り口の補助金がいくつかあります。特にフィンテック・金融テクノロジー系のスタートアップには知っておいてほしいものがあります。
特にデジタル証券やステーブルコイン系の補助金は、フィンテック×金融機関の協働という点で本補助金と同じ文脈です。本補助金と並行して確認することで、自社の実証計画に最適な資金調達の組み合わせを見つけることができます。ただし同一年度内での重複申請はできないので、どの補助金で何を実証するか計画的に整理してください。