室谷さん、今日は「ZEB補助金」について教えてほしいんですけど、そもそもZEBって何なんですか?
ZEBは「Net Zero Energy Building」の略で、「ゼブ」と読みます。ひとことで言うと、年間のエネルギー消費量を正味でゼロにする建物のことです。省エネで使うエネルギーをぐっと減らして、太陽光発電などの創エネで使った分を補う、という考え方ですね。
消費量がゼロって、空調も照明も使わないってことですか?
ちがいます(笑)!普通に快適な室内環境を保ちながら、エネルギーの収支をゼロにするっていうことです。省エネ技術で消費量を大幅に削減して、足りない分を再エネで賄う。「ネット」でゼロ、というのがポイントです。
なるほど!で、今回の補助金はそのZEB化を支援するものなんですね?
そうです。環境省の令和7年度補正予算で作られた「二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金」のうち、ZEB普及促進の支援事業です。新築建築物と既存建築物の両方が対象で、上限3億円(条件を満たせば5億円)という、かなり大きな補助金です!
えっ、3億円!? これはちゃんと知っておかないといけないですね。
ZEBってランクがあるって聞いたんですけど、どういうことですか?
ZEBにはエネルギー削減率に応じて4つのランクがあります。一番上の「ZEB」は省エネ+創エネで100%以上削減、「Nearly ZEB」は75%以上、「ZEB Ready」は50%以上削減です。それと、延べ面積1万平方メートル以上の大規模建築物専用の「ZEB Oriented」があります。
基本的にはそうです!ただ、
建物の用途(事務所等かそれ以外か)と、新築か既存かによって補助率が細かく変わるんですよ。これが少し複雑なので、下の表を見てもらうのが早いです。
ZEBランク別 補助率早見表
| ZEBランク | 新築・事務所等 | 新築・事務所等以外 | 既存・事務所等 | 既存・事務所等以外 |
|---|
| ZEB | 1/4 | 1/2 | 1/3 | 2/3 |
| Nearly ZEB | 1/5 | 1/3 | 1/3 | 2/3 |
| ZEB Ready | 1/6 | 1/4 | 1/3 | 2/3 |
| ZEB Oriented | 対象外 | 1/4 | 対象外 | 1/2 |
ほんとに細かい!「事務所等以外」って、どんな建物が入るんですか?
ホテル、病院、学校、店舗、飲食店、体育館、集会所といった建物ですね。事務所よりエネルギー消費の削減が難しい用途なので、補助率を高めに設定して普及を後押しする設計になっています。既存の病院や学校が「ZEB」を達成できれば、補助率2/3という最大レベルの支援が受けられます!
2/3って相当手厚いですね。3億円の補助上限で2/3補助なら…最大で2億円の補助ってこと?
計算はそうなりますね。ただ、補助上限3億円が先に来るので、総事業費が4億5000万円以上あっても補助額は3億円が上限になります。逆に、地方公共団体が延べ面積2,000平方メートル以上の既存建築物を改修する場合や、10,000平方メートル以上の病院新築の場合は上限が5億円に引き上がります!
面積によっても条件が変わるって聞きましたが、どう整理すればいいですか?
そこが少しやっかいなんですが、ポイントをまとめるとこうなります。まず、延べ面積2,000平方メートル未満の建築物ではZEB Readyが対象外です。「ZEB」か「Nearly ZEB」を目指す必要があります。
じゃあ小規模なビルは「Nearly ZEB」以上を狙えってことですね。
そうです。次に、延べ面積2,000平方メートル以上の既存建築物は地方公共団体のみが対象です。民間企業が大型ビルを改修する場合は、この補助金ではなく経産省系の補助を検討することになります。そして10,000平方メートル以上の新築・既存は地方公共団体のみ。ZEB Orientedはこの大規模建築物だけに適用されるランクです。
つまり民間企業は基本、新築10,000平方メートル未満・既存2,000平方メートル未満が対象ってことですね。
ざっくりそのとおりです。民間は中規模以下のビル、公共施設は大規模まで対応、という棲み分けになっています。申請前に自分のプロジェクトがどの区分に該当するかを確認するのが最初のステップです。
- 原則:1事業あたり3億円が上限
- 地方公共団体が保有する延べ面積2,000平方メートル以上の既存建築物→ 5億円
- 延べ面積10,000平方メートル以上の病院の新築建築物→ 5億円
具体的に、どんな設備を入れたら補助対象になるんですか?
ZEB化に直接つながる設備が対象です。まず省エネ設備として、高効率空調(ヒートポンプ等)、LED照明、全熱交換器、高効率給湯器が代表的です。外皮では高性能断熱材、Low-E複層ガラス、遮熱塗装なども入ります。
はい。それと、エネルギー管理のためのBEMS(ビル・エネルギー・管理・システム)の導入も対象で、新築建築物には太陽光発電設備の導入が必須要件になっています。BEMSは必須要件の一つなので、セットで考えてください。
ZEB設計費やエネルギーシミュレーション費、BELS評価取得費も対象経費に入ります!設計段階から使える補助なので、専門家と連携しながら進めやすいですね。
- 土地の取得費・造成費
- 建物躯体の一般的な建設費(省CO2に直接関係しない部分)
- 消費税および地方消費税
- 交付決定前に着手した工事費用(これが最もよくある失敗!)
- 汎用事務機器・什器備品
- 外構工事・植栽等
「交付決定前に着手した工事費用」が対象外というのは、つまり補助が決まる前に工事を始めてしまうとアウトってことですね。
そうです。採択通知が来る前に着工してしまうと、その分は全部自己負担になります。特に年度末に工事を急ぐ事業者さんが引っかかりやすいので要注意です!
では、実際にどう申請すればいいんですか?流れを教えてもらえますか?
申請の流れはこんな感じです!
ZEB補助金 申請の流れ
落とし穴ですよね(笑)。電子申請だけだと思って郵送を忘れるケースがあります。チェックリストを作って、確実に両方対応してください。
せっかく申請するなら採択されたい!審査を通るためのコツはありますか?
いくつかポイントがあります。まず一番大事なのは、ZEBプランナーを必ず関与させることです。これは審査で見られるだけでなく、必須要件にもなっています。ZEBプランナーとは、経済産業省が認定したZEB設計の専門家で、確実なエネルギー計算と申請書類の品質向上が期待できます。
それと、ZEBリーディング・オーナーへの登録も必須要件の一つです。環境省のZEBリーディング・オーナー制度に登録して、ZEB化の取り組みを社会に発信していくことが求められています。
- ZEBプランナーを関与させる(必須要件)
- ZEBリーディング・オーナーに登録する(必須要件)
- BELS評価を早期に取得する計画を立てる(採択後速やかに取得が必要)
- 高いZEBランクを目指す(補助率が上がり、事業の信頼性も高まる)
- IoT機器はJC-STAR(IPAセキュリティ評価)適合品を選ぶ(2026年度からの新要件)
JC-STARって初めて聞きました。これも2026年度からの新しいルールですか?
そうです。太陽光発電設備・蓄電池・BEMSを導入する場合、IPAのセキュリティ評価制度(JC-STAR)で★1以上の認定を取得した機器を使うことが2026年度から要件になりました。製品選定の段階から確認しておかないとあとから困ります。
省エネだけじゃなくてセキュリティも見られるようになったんですね。ますます準備が重要ですね。
似たような補助金で「ライフサイクルカーボン削減型(66686)」というのもありますよね?どっちに申請すればいいんですか?
大事な質問です!同じ令和7年度補正の補助金シリーズですが、対象と要件が違います。
ライフサイクルカーボン削減型(66686)は、建築材料の調達から解体まで「ライフサイクル全体」でのCO2削減量を算定・削減することが要件で、
新築のみが対象です。
今回の補助金(66687)は、建物の「運用時」のエネルギーをゼロにするZEB化が目標で、新築・既存の両方が対象です。技術的な要件のハードルも比較的低く、より多くの事業者がアクセスしやすい制度です。ライフサイクルカーボンの算定に取り組める場合は66686の方が補助上限が5億円とやや大きいですが、既存建築物のZEB化や複雑な算定が難しい案件では本事業を選ぶのが現実的です。
| 比較項目 | 本事業(66687) | ライフサイクルカーボン型(66686) |
|---|
| 対象 | 新築・既存の両方 | 新築のみ |
| 重点 | 運用時のエネルギーゼロ化 | 建材ライフサイクルCO2削減 |
| 補助上限 | 3億円(条件次第で5億円) | 5億円 |
| 技術要件 | ZEBランク達成 | LCA算定+ZEB基準 |
既存建築物のZEB化改修って、新築より難しそうですよね。
確かに技術的にはチャレンジングですが、その分補助率が手厚く設定されているのが既存建築物の特徴です。既存ビルのZEB化改修で特に重要なのは、まず現状のエネルギー消費量の正確な把握です。
ZEBプランナーに「ZEB可能性調査」を依頼するのがおすすめです。現建物のエネルギー消費データを分析して、どの設備を改修すれば最も効果的にZEBランクを上げられるかを診断してもらえます。空調と照明の高効率化だけでエネルギー消費量を30〜40%削減できることも珍しくないです!
太陽光発電の設置はどうですか?既存ビルだと屋根の強度とか気になります。
そこも重要なポイントで!2026年度から、太陽光発電設備を設置する場合は設置箇所の積載荷重が10kg/平方メートル以上であることが要件になりました。既存ビルでは屋根の耐荷重を事前に確認する構造調査が必要になります。設計段階で建築士に確認してください。
- 延べ面積2,000平方メートル以上の既存建築物は地方公共団体のみ対象
- ZEB Readyは延べ面積2,000平方メートル未満の既存建築物は対象外
- 太陽光発電設置の場合は積載荷重10kg/平方メートル以上の確認が必要(2026年度新要件)
- FIT(固定価格買取制度)による売電を行う太陽光発電設備は対象外
最後に、この補助金の基本情報を整理してもらえますか?
| 項目 | 内容 |
|---|
| 正式名称 | 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(新築建築物のZEB普及促進支援事業/既存建築物のZEB化普及促進支援事業) |
| 補助上限 | 3億円(地方公共団体の延べ面積2,000平方メートル以上の既存建築物・10,000平方メートル以上の病院新築は5億円) |
| 補助率 | 1/6〜2/3(ZEBランク・用途・新築既存により異なる) |
| 公募期間 | 2026年3月31日〜2026年5月12日 |
| 対象 | 民間企業・個人事業主・独立行政法人・社会福祉法人・医療法人・学校法人・地方公共団体等 |
| 実施機関 | 一般社団法人静岡県環境資源協会(SERA) |
| 問い合わせ | zeb@siz-kankyou.or.jp |
| 公式ページ | siz-kankyou.com/2025hco2/zeb/ |
2026年5月12日が締切で、もう公募中なんですね!
そうです。GビズIDの取得に時間がかかることを考えると、今から準備を始めないと間に合わない可能性があります。まずGビズID(プライム)の申請と、ZEBプランナーへの相談を同時進行で進めてください!
最後に、よくある疑問をいくつか聞いておきたいです。まず、地方公共団体でも都道府県や政令指定都市は対象になりますか?
都道府県や政令指定都市などの大規模自治体は、病院用途を除いて原則対象外です。小中規模の市区町村レベルの地方公共団体が対象となっています。詳細はSERAへ事前相談することをおすすめします。
申請はオンラインのjGrantsだけでできますか?
jGrantsで電子申請を行うのが基本ですが、申請書類全データを入れた電子媒体(CD-R等)をSERAに別途郵送する必要があります。電子申請と郵送の両方が揃って申請完了です。これを知らずに郵送を忘れるケースが多いので要注意!
ハザードマップの浸水エリアにある建物は対象外と聞きましたが?
浸水想定区域や土砂災害警戒区域内の施設は原則対象外です。ただし、浸水対策を施した設計や防災拠点としての位置付けがある場合は例外的に認められることがあります。事前にSERAへ相談することが重要です。
今回の申請が間に合わなかった場合は、次年度以降も同様の補助があるんですか?
環境省は毎年度このZEB補助金を継続していますので、令和8年度(2026年度)版として
建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業も既にあります。今から申請できる状態ではありませんが、来年度の公募に備えて今のうちに設計を固め、GビズIDの取得とZEBプランナーとの連携を進めておくと万全です。