働き方改革推進支援助成金はいくらもらえる?4つのコースを状況別に解説
目次
あなたの会社、「働き方改革」に踏み切れていますか?
「残業を減らしたいが、何から始めればいいかわからない」「勤務間インターバルを導入したいが費用が心配」「建設業の時間外規制に対応しなければならない」——中小企業の経営者・総務担当者が抱えるこうした悩みを支援するのが、働き方改革推進支援助成金です。
労働時間の短縮・年次有給休暇の促進・勤務間インターバルの導入など、働き方改革に取り組む中小企業に対し、国がその費用の3/4(条件により4/5)を助成します。4つのコースがあり、会社の業種・状況・取り組み内容によって受け取れる助成額が変わります。まず自社に合うコースを確認しましょう。
あなたはどれに当てはまりますか?コース早見表
| あなたの状況 | 使うべきコース |
|---|---|
| 残業削減・年休取得促進に取り組みたい(全業種) | コース① 労働時間短縮・年休促進支援コース |
| 建設・運送・医療・宿泊・情報通信業で特有の課題がある | コース② 業種別課題対応コース |
| 勤務と勤務の間の休息時間(インターバル)を制度化したい | コース③ 勤務間インターバル導入コース |
| 商工会・業界団体として会員企業をまとめて支援したい | コース④ 団体推進コース |
複数コースの併用はできません。ただし、各コースに「賃上げ加算」が設けられており、積極的に賃金を引き上げた場合は追加で助成を受けられます。それでは各コースを詳しく見ていきます。
コース① 全業種が使える:労働時間短縮・年休促進支援コース
中小企業であれば業種を問わず使える、最も汎用性が高いコースです。36協定の時間外上限を引き下げたり、年休の計画付与制度を導入したりする取り組みを支援します。
申請できる事業主の条件
以下の3つを全て満たす必要があります。
- 労働者災害補償保険(労災保険)の適用事業主
- 交付申請時点で、成果目標に対応した就業規則等を整備済み
- 全ての対象事業場で年5日の年次有給休暇取得に向けた就業規則等を整備済み
「中小企業」の定義は業種で異なります。製造業なら資本金3億円以下または常時労働者300人以下、小売業・飲食店なら資本金5,000万円以下または常時労働者50人以下です。
3つの成果目標と助成上限額
成果目標は「1つ以上」を選択します。複数を選べば上限額を積み増せます。
| 成果目標 | 達成する内容 | 助成上限額 |
|---|---|---|
| 目標1(36協定削減) | 月80時間超 → 月60時間以下に設定 | 150万円 |
| 目標1(36協定削減) | 月60〜80時間 → 月60時間以下に設定 | 100万円 |
| 目標1(36協定削減) | 月60時間を超え月80時間以下に設定 | 50万円 |
| 目標2(計画的年休) | 年次有給休暇の計画的付与規定を新規導入 | 25万円 |
| 目標3(時間単位年休) | 時間単位の年休規定 + 特別休暇のいずれかを新規導入 | 25万円 |
例えばこんなケース: 従業員20人の印刷会社で、36協定の上限が現在「月90時間(80時間超)」の状態から「月45時間(60時間以下)」に引き下げ、さらに年休の計画付与も新たに導入するとします。この場合、成果目標1(150万円)+目標2(25万円)で合計175万円が助成上限となります。実際の支給額は「175万円」と「対象経費 × 3/4」のいずれか低い方です。
補助率は対象経費の3/4。従業員30人以下かつ労務管理ソフト・機器・設備の導入費が30万円を超える場合は4/5に引き上がります。
賃上げ加算で最大720万円まで
成果目標の達成に加えて、指定した労働者の賃金を一定率以上引き上げることを宣言した場合、引上げ人数に応じた加算が上乗せされます。
従業員30人以下の事業主(加算が手厚い):
| 賃上げ率 | 1〜3人 | 4〜6人 | 7〜10人 | 11〜30人(1人当たり) |
|---|---|---|---|---|
| 3%以上 | 12万円 | 24万円 | 40万円 | 4万円(上限120万円) |
| 5%以上 | 48万円 | 96万円 | 160万円 | 16万円(上限480万円) |
| 7%以上 | 72万円 | 144万円 | 240万円 | 24万円(上限720万円) |
従業員30人超の事業主:
| 賃上げ率 | 1〜3人 | 4〜6人 | 7〜10人 | 11〜30人(1人当たり) |
|---|---|---|---|---|
| 3%以上 | 6万円 | 12万円 | 20万円 | 2万円(上限60万円) |
| 5%以上 | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 8万円(上限240万円) |
| 7%以上 | 36万円 | 72万円 | 120万円 | 12万円(上限360万円) |
例えばこんなケース: 従業員25人の飲食店(小規模サービス業)が36協定を月80時間超から月60時間以下に削減し(成果目標1: 150万円)、さらに全員に7%の賃上げを実施したとします。25人×24万円=600万円の賃上げ加算となり、合計750万円が助成上限になります(ただし「750万円」と「対象経費 × 4/5」のいずれか低い方が実際の支給額)。
コース①のポイントが掴めたところで、特定業種向けのコース②を見ていきましょう。
コース② 建設・運送・医療等の業種に:業種別課題対応コース
2024年問題(建設業・運送業・医師への時間外労働上限規制)に対応した、業種特化のコースです。コース①と比べて成果目標の選択肢が多く、業種特有の課題に対応できます。
対象となる6業種
- 建設業(工作物の建設その他関連する事業)
- 運送業(自動車運転業務に従事する労働者を雇用している事業主)
- 病院等(医師が勤務する病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院)
- 砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)
- 情報通信業
- 宿泊業
業種によって選べる成果目標が変わる
| 成果目標 | 対象業種 | 内容 |
|---|---|---|
| 目標1 | 全業種 | 36協定の時間外上限を月60時間以下等に引き下げ |
| 目標2 | 全業種 | 年次有給休暇の計画的付与規定を新規導入 |
| 目標3 | 全業種 | 時間単位年休 + 特別休暇を新規導入 |
| 目標4 | 全業種 | 9時間以上の勤務間インターバルを新規導入 |
| 目標5 | 建設業のみ | 4週5休 → 4週8休以上への所定休日増加 |
| 目標6 | 病院等のみ | 医師の働き方改革推進(労務管理体制構築+実態把握) |
| 目標7 | 砂糖製造業のみ | 3直3交代制等の勤務割表を整備 |
建設業であれば「週休2日の実現」という業界の悲願に特化した目標(目標5)を選択できるのが大きな特徴です。医療業界では「医師の働き方改革」という厚生労働省の重点施策に沿った目標(目標6)も用意されています。
このコースの助成上限額・補助率・賃上げ加算の仕組みはコース①と同様です。
コース③ 夜勤・長時間労働の現場に:勤務間インターバル導入コース
「勤務間インターバル」とは、勤務終了後・次の勤務開始まで最低でも一定時間の休息時間を設ける制度です。2019年4月から事業主の努力義務となっています。医療・介護・宿泊・運送業など夜勤や長時間労働が多い職場で特に効果があります。
このコース特有の申請条件
コース①②と異なり、「月45時間を超える時間外労働の実態が過去2年間にある」ことが必要です。加えて、以下のいずれかの状態にある事業場を持つことが条件です。
- 勤務間インターバルをまだ導入していない
- 9時間以上のインターバルを導入しているが対象労働者が半数以下
- 9時間未満のインターバルをすでに導入している(時間延長を目指す)
助成上限額:新規導入なら最大120万円
| インターバル時間 | 新規導入 | 範囲拡大・時間延長 |
|---|---|---|
| 9時間以上11時間未満 | 100万円 | 50万円 |
| 11時間以上 | 120万円 | 60万円 |
より長い休息時間を保証するほど上限が上がる設計です。
例えばこんなケース: 従業員15人の介護施設(医療・福祉)で夜勤があり、勤務間インターバルをまだ導入していないとします。11時間以上のインターバルを就業規則に新規導入すると、助成上限120万円。さらに全員に5%賃上げを宣言した場合の加算は15人×16万円=240万円(30人以下の加算率)となり、合計360万円が助成上限となります。
このコースでも、賃上げ加算はコース①と同じ金額テーブルが適用されます。
コース④ 業界団体・商工会に:団体推進コース
個々の事業主ではなく、事業主団体や共同事業主が申請するコースです。傘下の会員企業の労働条件改善を組織的に推進する取り組みを支援します。
対象となる団体は、事業主団体(事業協同組合・商工会議所・商工会・一般社団法人等、3事業主以上、1年以上の活動実績)または共同事業主(協定書を作成した10事業主以上のグループ)です。いずれも構成事業主の過半数(2分の1超)が中小企業である必要があります。
対象となる取組は、市場調査・好事例の収集・普及啓発・セミナー開催・巡回指導・共同利用設備の導入・更新などです。
申請の流れと書類の準備
申請方法の詳細と必要書類のチェックリストは、別記事で解説しています。
→ 働き方改革推進支援助成金の申請方法は?必要書類と手順を解説
おおまかな流れは「交付申請書提出 → 交付決定 → 取組実施 → 支給申請書提出 → 支給決定」の5ステップです。取組の実施は交付決定を受けてからでないと対象になりませんので、注意してください。
申請窓口は各都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。令和8年度(2026年度)の受付開始時期は、本予算成立後に各都道府県労働局のページで案内される予定です(2026年4月時点では受付前)。
よくある質問
Q. 働き方改革推進支援助成金と業務改善助成金の違いは?
「業務改善助成金」は最低賃金の引上げを目的とした制度で、生産性向上のための設備投資と同時に事業場内最低賃金を一定額引き上げた場合に助成されます。一方、働き方改革推進支援助成金は「労働時間の短縮・年休促進・インターバル制度導入」が目的です。目的が異なるため、両制度を同時期に活用できるケースもあります。
Q. 個人事業主でも申請できる?
従業員を雇用している個人事業主は対象です。ただし、従業員を一人も雇わない一人親方や個人事業主本人のみの場合は対象外です。中小企業事業主の定義に当てはまるかを確認してください。
Q. 令和8年度(2026年度)の受付はいつから?
2026年4月時点では受付前です。本予算成立後に受付が開始される予定で、各都道府県労働局や厚生労働省のページで案内されます。申請前の相談は4月1日以降に各都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)で受け付けています。
Q. 補助率3/4とは、費用の3/4が戻ってくるということ?
はい。例えば、労務管理ソフトを40万円で導入した場合、40万円 × 3/4=30万円が助成されます(成果目標の上限額と比較して、低い方が支給額となります)。従業員30人以下で対象取組が設備・機器導入(取組6〜9)で30万円を超える場合は4/5に上がります。
一緒に活用したい関連制度
働き方改革に取り組む中小企業が合わせて検討したい制度です。
- 業務改善助成金 — 最低賃金引上げとセットで設備投資費用を助成
- キャリアアップ助成金 — 非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善を支援
- 両立支援等助成金 — 育児・介護と仕事の両立に取り組む事業主を支援
- 人材開発支援助成金 — 従業員の研修・スキルアップ費用を助成
業種別・目的別の補助金を探したい方:
まず「相談」から始めましょう
「自社にどのコースが使えるか」「申請書類はどこで入手できるか」——そんな疑問は、各都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)の無料相談窓口で解決できます。また「働き方改革推進支援センター」では社会保険労務士等の専門家が無料相談(電話・オンライン・訪問)に応じています。
コースが決まったら、申請の手順と必要書類を確認しましょう。交付申請書の提出から支給決定まで、ステップごとに整理されています。準備は早めに始めるほど余裕を持って進められます。