室谷さん、うちの会社でも「もっと社員を育てたい」「研修費を国に出してもらいたい」って話が出てるんですよ。富山県でそういう補助金って、実際どれだけあるんですか?
ざっくり言うと、国の補助金・助成金だけで十数種類、富山県独自の補助金も加えると20件以上の選択肢があります。正直、全部把握できている会社主はほとんどいないですよ(笑)。
しかも「補助金」と「助成金」で仕組みがまったく違う。補助金は採択倍率があって競争が必要ですけど、助成金は要件を満たせば原則もらえる。中小企業に有利なのは助成金の方が受給のハードルが低い という点です。まず構造を整理しましょうか。
富山県の人材育成補助金・助成金 比較
種別 代表的な支援 特徴 国の助成金(厚労省) 人材開発支援助成金 要件を満たせば確実に受給可能 国の補助金(経産省) リスキリングキャリアアップ補助金 競争入札型・高額 富山県独自 とやま人材リスキリング補助金 国の助成金と重複しない訓練対象 雇用保険制度 教育訓練給付金 従業員が個人で申請
「助成金」と「補助金」の違いって、経営者の方でも混同しがちですよね。
そうです。厚生労働省の助成金は「雇用保険財源を使った事業主向け支援」なので、雇用保険に加入している中小企業ならほぼ対象になります。一方で経産省系の補助金は公募型で採択率が50%以下のものも多い。まず確実に取れる助成金から攻めるのが基本戦略です。
富山県の人材育成補助金 申請ステップ
はい。大きく「国の助成金」「国の補助金」「富山県独自」の3パターンに分かれます。
人材開発支援助成金(厚生労働省)
まず一番使いやすいのが人材開発支援助成金 です。中小企業の場合、訓練経費の45〜75%、訓練中の賃金の最大60%が助成されます。
訓練中の賃金まで出るんですか!それは知らなかった。
そこが魅力なんです。「社員を外部研修に行かせると売上が落ちる」という中小企業オーナーの声に応えた制度ですね。コースは4種類あって、普通の職業訓練をする「人材育成支援コース」、AIやDX分野へのリスキリングを支援する「人への投資促進コース」、新規事業に合わせた「事業展開等リスキリング支援コース」、研修休暇を整備する「教育訓練休暇等付与コース」です。
そこが令和6〜7年度で大きく拡充された部分です。IT・AIスキルの習得はほぼ全て対象になりました。富山労働局(助成金センター TEL 076-432-9172)が窓口で、jGrantsからの電子申請にも対応しています。なお、人材開発支援助成金と同じ申請窓口で相談できる
業務改善助成金のページ も、賃上げと人材育成をセットで検討する際に参考にしてみてください。
とやま人材リスキリング補助金(富山県独自)
さっきの「国の助成金と重複しない訓練対象」という富山県独自のやつ、もう少し詳しく教えてください。
これが面白い補助金で、厚労省の人材開発支援助成金は「一定時間数以上の訓練」が対象なんですが、とやま人材リスキリング補助金は短期間の研修を対象にしている んです。受講料等の75%、1社あたり年間100万円を上限に補助されます。
しかも所定労働時間外(夜間・休日)の受講も対象です。申請期限は令和9年2月26日(金曜日)で、教育訓練終了日から3か月以内に申請が必要です。民間スクールのプログラミング講座やDX研修なども対象コースが多数あります。
教育訓練の時間数によって申請先が変わります。短時間(概ね10時間未満程度)は富山県庁の担当課、長めの訓練は富山労働局(ハローワーク)というように分岐するので、富山県産業人材課(076-444-3244)に確認するのが確実です。問い合わせは早めがおすすめです。
業務改善助成金(厚生労働省)
もう一つ注目してほしいのが業務改善助成金 です。賃金引上げと生産性向上を組み合わせた助成で、助成率は中小企業で4/5、上限は最大600万円です。
事業場内最低賃金を30円以上引き上げながら、生産性向上のための設備投資を行うと助成されます。設備投資の中に「社員研修・人材育成のためのITツール導入」も含まれるので、実質的に人材育成コストを補助してもらえる。令和7年度(2025年4月〜)も継続中です。詳細は
業務改善助成金のページ をご覧ください。
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金(経産省)
経産省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業費補助金」は、個人がキャリア相談→リスキリング→転職まで一体支援を受けられる事業を行う民間企業を支援するものです。補助率は1/2〜定額と幅広い。
これは個人ではなく、研修サービスを提供する会社向けですか?
そうです。自社で社員を育てたい経営者には直接的ではないですが、「社員に使わせる研修サービスの費用を補助してもらいたい」という場合に間接的に恩恵を受けられます。こちらの申請は事業を実施する民間団体が行います。詳細は
こちらのページ で確認できます。
キャリアアップ助成金(厚生労働省)
パート・アルバイトが多い会社向けの助成金はありますか?
キャリアアップ助成金 がまさにそれです。有期雇用や短時間労働者を正社員化したり、賃金を引き上げたりすると助成されます。「正社員化コース」は1人当たり最大80万円(大企業は60万円)の助成。従業員の育成・登用と絡めて活用できます。
パートを正社員にするだけで80万円って、これは積極的に使いたいですね。
注意点は「キャリアアップ計画書の事前提出」が必要なこと。正社員化の実施前に都道府県労働局またはハローワークに届け出ないと対象外になります。富山県内の事業所なら富山労働局(076-432-2725)に相談できます。
地方の若手人材発掘育成支援事業費補助金(経産省・AKATSUKIプロジェクト)
IT人材育成で使える補助金はありますか?富山でITエンジニアを採用・育成したい会社も多いと思うんですが。
経産省の「地方の若手人材発掘育成支援事業費補助金」、通称AKATSUKIプロジェクトが参考になります。補助率は10/10(全額)、上限は8.9億円という大型補助金で、地域のIT人材・起業家人材を育てる民間企業を支援します。
対象は「育成プログラムを実施する企業・団体」なので、富山県内の民間企業が人材育成プログラムを立ち上げる際に活用できます。コンソーシアム形式での申請も可能です。詳細は
AKATSUKIプロジェクトのページ で確認してみてください。
富山県の海外展開支援補助金(人材育成と絡めて活用)
富山県ってものづくり企業が多いですよね。海外展開を見据えた人材育成向けの補助金はありますか?
ありますよ。富山県の「中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)」は、海外への特許・商標出願費用の1/2を補助(上限300万円)します。技術人材を育てながら知財展開するケースに使えます。令和8年度版で継続中です。
特にモノづくり企業で「優秀な技術者を育てながら知財を守りたい」という場合にセットで使える。出願1件あたり数十万円かかることもあるので、300万円の補助は実質的に数件分カバーできます。詳細は
こちらのページ で確認できます。
名称 対象 上限額 補助率/助成率 申請先 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) 事業主 制限なし 訓練経費45〜75%・賃金60% 富山労働局 人材開発支援助成金(人への投資促進コース) 事業主 制限なし 訓練経費45〜75% 富山労働局 とやま人材リスキリング補助金 事業主 100万円/年 75% 富山県・富山労働局 業務改善助成金(厚生労働省) 中小企業・小規模事業者 600万円 4/5(中小) 富山労働局 キャリアアップ助成金 事業主 80万円/人 定額 富山労働局 リスキリングキャリアアップ支援補助金 民間事業者 非公開 1/2〜定額 経産省 地方の若手人材発掘育成支援(AKATSUKI) 民間企業・団体 8.9億円 10/10 経産省 富山県海外展開支援(海外出願) 中小企業 300万円 1/2 富山県
見ると、やっぱり「使いやすさ」と「金額の大きさ」がトレードオフですね。
まさに。金額が大きい補助金ほど採択競争があって審査書類も多い。まず助成金から着手して、余力があれば補助金に挑戦 というのが現実的な進め方です。
第一歩は「人材開発支援助成金」と「とやま人材リスキリング補助金」の両方を確認する
キャリアアップ助成金の「正社員化コース」は事前計画書の提出が必須(実施前に届け出)
業務改善助成金は賃上げとセットで設備投資・IT導入コストを補助できる
海外展開を視野に入れる企業は富山県の海外出願支援も活用できる
実際に申請するときに気をつけることってありますか?
3つあります。まず「事前計画の提出」です。キャリアアップ助成金は特に、訓練を始める前に都道府県労働局・ハローワークに計画書を出さないと一切もらえません。
できないです。これ毎年引っかかる会社があるので要注意です(笑)。2つ目は「重複受給の禁止」。同じ訓練に対して国の補助金と県の補助金を重複して受けることは原則できません。とやまリスキリング補助金の公募要領にも「公的補助金との重複申請不可」と明記されています。
国と県を両方使おうとするとぶつかる可能性があるわけですね。
でも「訓練Aには国の人材開発支援助成金」「訓練Bにはとやまリスキリング補助金」というように分けて使うことはできます。事前に計画を立てて使い分けるのがコツです。3つ目は「GビズIDの取得」。国の補助金・助成金の多くでjGrantsの電子申請が必要で、GビズIDを取得してからでないと申請できません。
まず富山労働局(助成金センター 076-432-9172)に電話して、今年度の助成金一覧を確認する
キャリアアップ助成金を使う場合は「キャリアアップ計画書」を訓練実施前に提出する
とやまリスキリング補助金の利用を検討する場合は富山県産業人材課(076-444-3244)に確認
GビズIDを事前取得する(法人は登記後すぐに取得できる)
補助金・助成金の経費は原則として「後払い」なので、資金繰り計画も立てておく
キャリアアップ助成金は「訓練開始後の届け出」では受給不可。必ず事前提出
とやまリスキリング補助金は「教育訓練終了日から3か月以内」に申請が必要
国・県の補助金と重複申請になっていないか要確認(同一訓練への二重申請は不可)
助成金は「後払い」が基本なため、研修費を立て替える資金が必要
資金繰りの話は重要ですね。助成金が入金されるまで、研修費を自社で負担しないといけない。
そうなんです。数百万円の研修費を立て替えてから半年〜1年後に入金されることもある。これを知らずに申請して資金繰りが苦しくなる中小企業が毎年いるので、キャッシュフロー計画とセットで考えることが大事です。
「どこに相談すればいいかわからない」という経営者も多いと思うんですが。
富山県内の主な相談窓口をまとめます。補助金の種類によって担当が違うので、迷ったらまず富山労働局と富山県産業人材課の両方に電話するのが最短ルートです。
機関名 連絡先 担当する補助金 富山労働局 助成金センター TEL 076-432-9172 人材開発支援助成金・業務改善助成金・キャリアアップ助成金 富山県産業人材課 TEL 076-444-3244 とやま人材リスキリング補助金 ポリテクセンター富山 TEL 076-421-2789 生産性向上支援訓練・在職者訓練 北陸職業能力開発大学校 TEL 076-494-0034 能力開発セミナー 富山県技術専門学院 TEL 076-424-3371 能力開発セミナー 中小機構北陸本部(富山) TEL 076-432-5811 中小企業向け総合相談
ポリテクセンターって、研修場所としても使えるんですか?
そうです。「生産性向上支援訓練」という国の訓練制度があって、自社の課題に合わせてカリキュラムをカスタマイズしてもらえます。IoT・クラウド活用、生産管理、組織マネジメントなど、製造業に必要なスキルが揃っているので富山のものづくり企業には特に便利です。費用も非常にリーズナブルです。
富山って製造業の集積地ですもんね。ものづくり系の研修ニーズが高い。
富山県は薬品・化学・アルミ・ガラスなど特色ある製造業が多い。それに合わせた人材育成補助金の活用が、他県よりも重要になってくる地域だと思います。
今日話してもらった内容を振り返ると、富山県で人材育成の補助金・助成金を使うなら、まず何から動けばいいですか?
3ステップです。まず富山労働局に電話して今年度の助成金を確認 する。次に自社の訓練計画に合わせて「とやまリスキリング補助金」との組み合わせを検討する。そして計画書・事前届出が必要なものは研修開始前に準備する。この3つを押さえれば、ほとんどの会社は何かしら使える補助金が見つかります。
「どうせ自分には関係ない」と思っていたら損ですね(笑)
本当に。社員3人でも、パートが1人でも使える助成金があります。富山の中小企業は特に使いこなしている会社とそうでない会社の差が大きいので、ぜひ活用してみてください!また、
富山県の補助金・助成金一覧 では人材育成以外の補助金(設備投資・販路拡大・省エネなど)もまとめていますので、あわせてご覧ください。