室谷さん、今日は北九州市の「環境未来ビジネス創出助成金」を取り上げたいんですけど、これ、最大500万円も出るんですよね?
そうなんです! しかも補助率が最大3分の2なので、500万円の助成を受けるためには実質750万円の事業費があれば組み立てられるわけです。研究開発系の助成金としては相当太い設計だと思いますよ。
えっ、それは確かに大きい! 普通の補助金って2分の1が多いイメージだったんですけど、なぜ3分の2まで出るんですか?
北九州市が市内中小企業者が中心となる場合に補助率3分の2を適用しているんです。北九州市は1960年代の深刻な公害問題を克服して、今では「環境モデル都市」「SDGs未来都市」として国際的に評価されている都市。環境産業を地場産業として育てたいという強い政策意図があって、市内の中小企業への優遇を手厚くしているんですね。
なるほど! 公害から環境先進都市へ、っていう北九州の歴史が背景にあるわけですね。それは知らなかったです(笑)。
北九州市環境未来ビジネス創出助成金 研究フェーズ別助成内容まとめ
この助成金、「社会実装」「実証研究」「FS」って3種類あるみたいですけど、どれを選べばいいか正直よくわからないんです。
ここが本当に面白い制度設計で、研究開発の段階に合わせて3つのフェーズを選べるんですよ。まずFSというのはフィージビリティスタディのこと。「このアイデア、本当に事業化できるの?」って市場性や技術的可能性を調べる前段階の調査ですね。
じゃあ「まだアイデアしかない」段階でも申請できるってことですか?
できます! FSは上限200万円で期間は原則1年なので、まずは小規模に始めて市場を見極める、っていう使い方ができます。FSで検証した内容をもとに、次年度以降に実証研究や社会実装に進むっていうステップアップが想定されてるんです。
ほんとに? そういう段階的な使い方ができるんですか!
実証研究はその名の通り、廃棄物処理・リサイクル技術・環境保全・新エネルギー・省エネルギー技術といった環境技術の本格的な研究開発です。上限500万円で最長3年間。社会実装は研究成果を早期に事業化するフェーズで、こちらも上限500万円・最長2年間です。
FSで市場性・技術可能性を確認(上限200万円、1年)→ 実証研究で本格開発(上限500万円、最長3年)→ 社会実装で事業化(上限500万円、最長2年)という段階的活用が現実的な戦略。
重要: 複数年の研究は毎年度ごとに申請・審査があります。次年度以降の採択は保証されません。
| フェーズ | 上限額(年度当たり) | 助成期間 | 対象 |
|---|
| FS | 200万円 | 原則1年 | 技術・市場性の事前調査 |
| 実証研究 | 500万円 | 最長3年間 | 環境技術の研究開発 |
| 社会実装 | 500万円 | 最長2年間 | 研究成果の早期事業化 |
補助率が「市内中小企業者が中心の場合は3分の2」って言いましたけど、「中心」ってどう判断するんですか?
市内に事業所・事務所(研究施設含む)を有する中小企業者が研究の主体となっていることが基本です。ただし、大企業が単独で当該中小企業の株式の2分の1以上を保有する場合は対象外になります。市外企業が北九州市内の中小企業をパートナーとして共同研究体制を組む場合、そのパートナーが中心であれば2分の3の補助率が適用される可能性があります。
へえ! 市外企業でも北九州市内の中小企業と組めば、補助率が上がる可能性があるんですね。
そこがこの制度の戦略的な使い方なんですよ。市外企業が応募する場合、北九州市内のパートナー企業との連携体制を応募段階からしっかり設計することが、採択率と経済的な有利さの両方に直結します。なので応募前に市内パートナーを確保しておくことが実質的に必須です。
| 補助率パターン | 補助率 |
|---|
| 市内中小企業者が中心となって実施する場合 | 対象経費の3分の2以内 |
| 上記以外(市外企業中心・大企業中心等) | 対象経費の2分の1以内 |
なるほど。でも「全国の事業者が応募可能」って書いてあったので、北九州以外の企業も普通に申請できるってことですよね?
そうです。ただ地理要件があって、社会実装と実証研究は北九州市内で実施することが必須。FSは市内企業か、市内企業と共同で研究を行う者が対象です。市外企業の方は、北九州市内に研究拠点・実証フィールド・連携パートナーを確保することが事実上の前提条件になりますね。
そもそも誰でも応募できるわけじゃないと思うんですが、どんな要件があるんですか?
8つの要件を全て満たす必要があります。市税の滞納がないこと、研究内容に新規性・独自性があること、法令遵守、安全性確保、研究遂行能力があること、それから面白い要件として「研究施設の市民への公開性が十分に確保されること」というのがあります。
え、市民への公開性? それ他の補助金にはあまりないですよね?
そうなんです! 北九州市の「地域に開かれた研究開発」という理念を反映した独自要件です。具体的には、研究施設の見学機会を設ける、成果報告会を市民向けに開催する、研究成果をウェブで公開するといった取り組みが想定されています。競争上の機密情報を全部公開しろということではなくて、地域社会への還元姿勢を示すことが大切ですね。
それは面白い視点ですね。地域の課題解決という本質に立ち返ってる感じがします。
暴力団・暴力団員・暴力団員と密接な関係を有する者は対象外です。また、市税の滞納がある場合は申請できません。応募前に納税証明書(不滞納証明書)を取得しておきましょう。
対象分野はどのくらい広いんですか? うちのような企業でも関係ありそうですか?
環境技術全般が対象で、廃棄物処理・リサイクル技術・環境保全技術・環境配慮型製品開発技術・新エネルギー・省エネルギー技術などが対象分野です。脱炭素・循環経済という世界的潮流に合致するテーマであれば、環境関連のさまざまな技術領域で応募できますよ。
| 業種 | 活用可能性 |
|---|
| 学術研究・専門技術サービス | 非常に高い(研究開発を中核業務とする) |
| 製造業 | 非常に高い(省エネ・リサイクル技術等) |
| 電気・ガス・熱供給・水道業 | 非常に高い(新エネ・省エネ技術) |
| 情報通信業 | 高い(環境IoT・カーボンマネジメント等) |
| 建設業 | 高い(省エネ建材・廃棄物再利用等) |
| 農業・林業 | 中(バイオマス活用・スマート農業等) |
採択審査で加点になるテーマがあるって聞いたんですが?
2つの重点テーマに該当すると審査で加点されます。テーマAは「製造業などの動脈企業とリサイクル業などの静脈企業を含んだ研究体制」。動脈産業(製品を作る)と静脈産業(リサイクルする)の両方が研究者として参画するテーマです。
なるほど、モノが生まれてから回収されるまでの循環サイクル全体を意識したテーマってことですね。
まさに。テーマBは「研究成果を活用する事業者を含んだ研究体制」。技術を開発する大学やスタートアップと、その技術を実際に使う企業が一緒に研究する体制です。研究が机上で終わらず、実際のビジネスにつながる体制を評価するわけです。両テーマとも社会実装・実証研究・FSの全フェーズが対象です。
テーマA(加点): 製造業者(動脈)+リサイクル業者(静脈)の両者が研究者として参画する体制。原材料を製品にして、使い終わったらリサイクル原料に戻す循環サイクルの研究体制。
テーマB(加点): 大学・スタートアップ(技術開発者)+製品化企業(成果活用者)の連携体制。開発した技術が実際の製品・ビジネスにつながることを研究段階から組み込む。
どちらか一方、または両方に該当させることが採択確率向上の鍵。
何の費用に使えるんですか? かなり細かく決まってそうで心配で。
大きく分けると9種類の経費が対象です。原材料費・消耗品費、機械装置の購入(ただし単価10万円以上はリース・レンタル優先)、機械装置のリース料、外注加工費、直接人件費、外部講師の技術指導費、工業所有権の導入経費、調査費・旅費、そしてその他市長が認める経費です。
ただ社会実装と実証研究では直接人件費の合計上限が300万円という制約があります。あと機械装置の購入について、単価10万円以上(消費税含む)の場合は原則リース・レンタルで対応することになっていて、どうしても購入が必要な場合は事前に市へ相談して了承を得る必要があります。
| 経費区分 | 内容 | 注意点 |
|---|
| 原材料費・消耗品費 | 試薬・材料の購入 | — |
| 機械装置等購入 | 研究用機器の購入 | 単価10万円以上は原則リース優先 |
| 機械装置等リース | レンタル・リース料 | — |
| 外注加工費 | 加工・製作の外注 | 関係会社間の発注は不可 |
| 直接人件費 | 研究員人件費 | 社会実装・実証研究は合計300万円上限 |
| 外部講師技術指導費 | 専門家への謝金 | 単発的な指導のみ |
| 工業所有権の導入 | 特許導入費 | — |
| 調査費・旅費 | 研究に必要な出張 | 日当は不可、移動・宿泊のみ |
外注費で注意点があると言っていましたが、もう少し詳しく教えてください。
共同研究者間・親子会社間・代表者が同一の企業間での外注加工費の計上は認められていません。形式的に外注を装って内部取引するのを防いでいるんですね。もし関係者間での作業が必要な場合は、「共同研究開発グループ協定書」を提出した上で、原材料費や直接人件費として計上する方法を取ることになります。
北九州市環境未来ビジネス創出助成金 申請から交付までのスケジュール
申請から助成金が振り込まれるまで、どのくらいの流れになるんでしょう?
令和8年度(2026年度)のスケジュールを見ると、ステップが明確に決まっています。
計画書等の受付(令和8年4月13日〜5月15日) まず研究計画書・年次計画書・体制図・市税の不滞納証明書・決算書・積算根拠資料等を揃えて提出。書類の種類は社会実装用(様式1〜1-3)と実証研究・FS用(様式2〜2-3)で異なる。
研究内容ヒアリング(5月〜6月) 採否を決める前に担当者との対話がある。研究の背景・技術的優位性・実現性について詳しく説明できる準備を整えておくこと。
検討会・プレゼンテーション(7月上旬) 審査委員会等での口頭プレゼンテーションが行われる。質疑応答にも対応できるよう、研究の新規性・独自性のエビデンスを準備する。
採択決定・交付申請・交付決定(7月中旬) 採択者が決定し、交付申請書(様式4)・事業予算書を提出。交付決定を受けてから研究開発を開始する。
研究進捗・経理書類確認(11月〜2月) 実施中の進捗確認と経費書類の確認が行われる。毎月または四半期ごとの報告書類を整備しておくこと。
実績報告・成果報告会(3月上旬) 実績報告書・経費決算書・成果報告書を提出。研究成果のプレゼンテーションも行われる。市民への公開性の観点から、成果発表の機会として活用することが期待される。
交付額確定・助成金支払(3月下旬〜4月) 精算が完了し、助成金額が確定。銀行口座へ振り込まれる。
7月にプレゼンがあるのは知らなかった人も多いんじゃないかな。
これが大事で、書類審査だけでなく口頭でのプレゼンテーションがあるという点がこの助成金の特徴です。技術的な専門用語だけでなく、北九州市の環境政策との整合性、地域への貢献、市場性についても審査委員に伝わる言語でプレゼンできる準備が必要です。申請書を書いて終わりじゃなくて、7月のプレゼンまで見越した準備が求められますね。
3つ挙げると、まず新規性・独自性のエビデンスを徹底的に積み上げること。感覚的な「他にはない技術です」という主張だけでは審査員には伝わりません。特許情報・先行技術調査・学術論文を引用して、既存技術との具体的な差分を定量的に示すことが重要です。
なるほど、「何が新しいのか」を客観的に証明しないといけないわけですね。
2つ目は北九州市の環境政策との整合性を具体的に語ること。北九州市の脱炭素ロードマップ、SDGs目標、環境産業集積構想と自分の研究がどうつながるかを提案書に盛り込むと、政策評価が高まります。北九州市の助成金なので、北九州市への貢献を語れるかどうかは大きなポイントです。
単に「良い技術です」ではなくて、「北九州市にとってこういう意味があります」って文脈を作る必要があるってことですね。
まさに。3つ目は事業化までのロードマップを明確に示すこと。研究だけで終わらず、成果がどうビジネスになるか、市場規模・販路・パートナー戦略まで描けているかどうかは採択可能性に大きく影響します。特に社会実装カテゴリでは、これが最重要評価軸の一つになります。
技術面: 新規性・独自性・実現性のエビデンス(特許・先行技術調査・学術論文)
事業面: 市場性・経済性、事業化ロードマップ、収益性
政策面: 北九州市の環境政策・脱炭素ロードマップとの整合性、地場企業への波及効果
体制面: 研究遂行体制、市内パートナーとの連携、市民への公開計画
申請書類はどれくらい揃えるんですか? 多そうで怖い(笑)。
基本的には7種類の書類を揃える必要があります。全体計画書と年次計画書(様式は研究フェーズによって異なる)、共同研究等グループ全構成員の市税納税証明書(不滞納証明書)、研究代表者の直近2期分の決算書、積算根拠の資料(見積書・カタログ・設計書等)、他制度の助成がある場合その内容、その他の参考資料(会社案内・研究者名簿等)です。
市税の不滞納証明書は全構成員が必要なんですね。共同研究の場合は全員分ということか。
そうです。応募期間は令和8年4月13日から5月15日の約1ヶ月。応募期間が短いので、特に市外企業の方は市内パートナー確保・研究計画の整理・書類準備を公募開始前から進めておくことが現実的です。5月15日の締め切りに間に合わせるためには、4月の公募開始時点でほぼ書類の骨格が完成している状態が理想です。
令和8年(2026年)の公募期間は2026年4月13日から2026年5月15日。この期間に全書類を揃える必要があります。特に市内パートナー企業の確保、共同研究グループの不滞納証明書の取得、研究計画書の作成には時間がかかるため、公募開始前から準備を始めることが必須です。
国の補助金とか他の助成金と組み合わせることはできるんですか?
同一の経費項目に対して複数の補助金を受給することは原則できません。でも対象経費が明確に分離されている場合や、研究フェーズが異なる場合の時系列的な併用は可能なケースが多いんです。
例えば、本助成金でFSを実施した上で、次年度の本格研究開発フェーズではNEDO事業(経産省系の研究開発支援)を活用する流れです。また、本助成金で社会実装を進めながら、設備導入部分について別の省エネ補助金を活用する分離設計も検討の余地があります。
なるほど。「同じ経費に二重取りはNG、でも使途が違えばOK」って感じですね。
そうです。ただ判断が難しいケースも多いので、必ず応募前に北九州市環境局と、併用を検討している補助金の事務局の両方に確認してください。また、本助成金は研究成果の市民公開性が要件に含まれているため、機密性の高い研究を別補助金で並行実施する場合は、公開範囲の整理も事前に必要です。
ここで一度、制度の基本情報を整理してもらえますか?
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 北九州市環境未来ビジネス創出助成金 |
| 実施機関 | 北九州市環境局グリーン成長推進部サーキュラーエコノミー推進課 |
| 対象者 | 全国の事業者(地理要件あり) |
| 助成上限額 | 社会実装・実証研究:500万円/年度、FS:200万円/年度 |
| 補助率 | 市内中小企業者中心:3分の2以内、それ以外:2分の1以内 |
| 助成期間 | 社会実装:最長2年、実証研究:最長3年、FS:原則1年 |
| 公募期間 | 2026年4月13日〜2026年5月15日 |
| 問い合わせ | 電話:093-582-2630 |
| 公式ページ | 北九州市公式 |
ありがとうございます。問い合わせしてみようかなという方に向けて、最後にアドバイスをお願いします!
まずは自分の研究テーマが「実証研究」「社会実装」「FS」のどれに当てはまるかを明確にすることから始めましょう。次に、北九州市内のパートナー企業の有無を確認する。市内パートナーがいれば補助率が3分の2に上がる可能性があります。そして公式ページから申請様式をダウンロードして、記入要領を熟読してください。応募期間が2026年5月15日までと短いので、今すぐ動き出すことが大切ですよ!
最後によくある疑問を一気に聞かせてください。北九州市外の企業でも応募できますか?
応募は可能です。ただ、社会実装は市内で社会実装を行うこと、実証研究は市内で実証研究を行うこと、FSは市内企業または市内企業と共同で研究を行うことが地理要件として定められています。市外企業の場合は、北九州市内に研究拠点・実証フィールド・連携パートナーを確保することが事実上の必須条件となります。
同一の研究テーマで両方を同時に申請することは想定されていません。FSは実証研究の前段階に行う調査なので、同じテーマであれば段階的に進める設計です。FSで蓄積した知見をもとに、次年度以降に実証研究へステップアップするのが現実的な活用方法です。
工業所有権の導入経費として対象になるケースがあります。特許出願は新規性立証のエビデンスにもなるため、研究開発と並行して計画的に進めることが推奨されます。ただし詳細な対象範囲・上限額等は公募要領で確認してください。
市民への公開性って具体的に何をすればいいんですか?
研究施設の見学機会を設ける、成果報告会やセミナーを市民向けに開催する、研究成果をウェブ等で公開するといった取り組みが想定されています。競争上重要な技術情報の全面公開を求められるわけではなく、地域社会への成果還元の姿勢を示すことが主眼です。申請時に具体的な公開計画を記載することで、北九州市の地域貢献政策との整合性をアピールできます。
今回の助成金の詳細、かなりよくわかりました! 環境ビジネスを北九州で展開したい方にはかなり強力な支援制度ですね。
まさに。北九州市は環境産業への本気度が違います。2026年5月15日の締め切りまで時間がないので、興味のある方は今日中に公式ページを確認して準備を始めることをおすすめします!