室谷さん、今日は「海外出願の補助金」があるって聞いたんですが、どういうものなんですか?
室谷: 海外に特許や商標を出願するときの費用を、半分助成してくれる制度です。正式名称は「中小企業等海外展開支援事業費補助金(海外出願支援事業)」。
佐藤: おお、名前だけで長いですね(笑)。
室谷: ですよね(笑)。令和8年度の二次募集が、和歌山県の窓口である公益財団法人わかやま産業振興財団から出ています。
そもそも、どうして海外出願に補助金が出るんですか?
室谷: 知的財産権は国ごとに独立しているからです。日本で特許を取っても、海外ではそのままでは権利にならない。進出先でも特許権や商標権を取得しないといけないんですね。
佐藤: えっ、じゃあ日本で特許を取って終わり、じゃないんだ。
室谷: そうなんです。製品を海外で売るなら、その国でも権利を取る必要があります。でも外国出願はお金がかかる。そこで費用の半額を助成して、海外展開を後押しするのがこの制度です。
助成されるのは特許だけですか?
室谷: 特許、実用新案、意匠、商標の4つです。しかも、海外で第三者に勝手に商標を出願された場合の「抜け駆け対策商標」も対象です。
佐藤: 商標の先取り対策にも使えるんですね。それは頼もしい。
補助率と上限額を教えてください。
室谷: 補助率は1/2以内です。1企業あたりの上限は300万円。案件ごとの上限は、特許が150万円、実用新案・意匠・商標がそれぞれ60万円、抜け駆け対策商標が30万円です。
佐藤: 300万円は大きいですね。特許を何件かまとめて出願するなら、かなり助かります。
室谷: そうなんです。ただし複数案件の合計が300万円まで、という理解でOK。あとで計算例も見ていきましょう。
募集期間はいつですか?
室谷: 2026年8月14日から2026年8月24日までです。令和8年度の二次募集ですね。
佐藤: えっ、8月24日まで? それってめちゃくちゃ近いじゃないですか!
室谷: はい、まさに今が申請どきです。書類の準備を考えると、8月14日になったらすぐ動くのが正解ですよ。
申請できる人はどんな人なんですか?
室谷: まず大枠として、中小企業者、または中小企業者で構成されるグループです。グループの場合は構成員のうち中小企業者が3分の2以上を占めている必要があります。さらに和歌山県内に事業所があることが条件です。
業種の制限はありますか?
室谷: jGrantsの掲載を見ると、農業・林業、漁業、鉱業・採石業・砂利採取業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業、金融業・保険業、不動産業・物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉など、いろいろな業種が並んでいます。
佐藤: ずいぶん多いですね。製造業はもちろん、漁業や建設業も対象なんですね。
室谷: そうなんです。公務や「分類不能の産業」まで記載がありますから、イメージとしては「だいたいの業種が対象」と考えてよいでしょう。あと従業員数の上限も300名以下と記載されています。
従業員数は300名以下、ということは大きな会社はダメなんですね。
室谷: そのとおりです。ただし、中小企業者であっても「みなし大企業」は対象外。ここがちょっとややこしいんですが。
佐藤: みなし大企業って何ですか?
室谷: たとえば、発行済株式の総数の2分の1以上を同一の大企業が所有している企業。あるいは3分の2以上を複数の大企業が所有している企業。大企業の役員や職員を兼ねている人が役員総数の2分の1以上を占めているケースも該当します。
つまり資本金が大きくなくても、大企業の子会社だったらダメ、と。
室谷: そうです。ほかにも「資本金または出資の総額が5億円以上の法人に直接または間接に100%の株式を保有される企業」や「直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える企業」もみなし大企業になります。全部で5つのパターンがあります。
佐藤: 5つもあるんですね。自分が該当するかどうか、どうやって確認すればいいですか?
室谷: 公募要領に詳しく書かれています。わかやま産業振興財団のホームページに掲載されているので、まずはそちらを確認するのが確実です。
そういえば、地域団体商標の場合は特別なんですよね?
室谷: よくご存じで。地域団体商標の外国出願については、商工会議所、商工会、NPO法人なども対象になります。ここは中小企業者に限らないというのがポイントです。
佐藤: 地域のブランドを海外で守りたい、というケースに使えるわけですね。
室谷: そういう使い方も想定されているんです。グループではなく、商工会が窓口になって出願するようなイメージです。
ほかにも細かい条件があるんですよね?
室谷: 大きな要件が4つあります。まず(1)応募時点で日本国特許庁に特許、実用新案、意匠、商標のいずれかを出願済みであること。そして採択後に、その出願を基礎に優先権主張をして外国出願を年度内に行う予定であることです。
佐藤: 日本に出願してからじゃないと応募できないんですね。
室谷: そうなんです。ただ、商標の場合は優先権がない外国出願も可とされています。あとPCT出願は、日本の特許出願を優先権主張の基礎にしないダイレクトPCT出願の場合、日本への国内移行予定のものに限られます。
ハーグ出願の場合はどうですか?
室谷: 優先権がないハーグ出願については、出願時に日本国を指定締約国に含むものに限られます。かみくだくと「日本に出願済みで、これから海外でも出願します」という状態が基本です。
要件(2)以降はどうですか?
室谷: (2)先行技術調査などの結果からみて、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと。(3)権利を活用した事業展開を計画している、または商標の抜け駆け対策の意思があること。(4)外国出願に必要な資金能力と資金計画があること。この4つです。
佐藤: なるほど、「とりあえず出したいから」では通らないんですね。
室谷: そういうことです。権利になって、ビジネスに生かせる見込みがあるかが問われます。ざっくりした対象チェックはこんな感じです。
ざっくり対象チェック和歌山県内に事業所はありますか?
はい中小企業者またはグループか
みなし大企業ではないか
日本国特許庁に出願済みか
外国出願の計画があるか
次は費用の話です。補助対象になる経費を教えてください。
室谷: 助成対象経費は3つです。①外国特許庁への出願手数料、②①に要する国内代理人・現地代理人費用、③①に要する翻訳費用です。
佐藤: 出願手数料と代理人費用と翻訳費用、ですね。
室谷: はい。外国出願の実務では、この3つが大きなウェイトを占めます。特に代理人費用と翻訳費用は国内出願にはないコストですから、ここが補助されるのは大きいですよ。
出願手数料って、現地の役所に払うお金ですよね?
室谷: そうです。外国特許庁に払う手数料です。そこに加えて、現地の代理人に払う費用と国内の代理人に払う費用が対象になります。翻訳費用も、出願書類を現地の言語にするために必要ですからね。
佐藤: なるほど。出願に関わる費用はだいたい入っていそうですね。
室谷: ただ、「だいたい入っていそう」と思って申請すると、あとで「これは対象外でした」となることもあります。対象経費の範囲は公募要領でしっかり確認してください。
補助対象経費と対象外の考え方- 外国特許庁への出願手数料
- 国内代理人・現地代理人費用
- 翻訳費用
×デメリット
- 上記以外の費用は公募要領で要確認
- 海外出願以外の経費は対象にならない
対象外になりやすいものはありますか?
室谷: ここに列挙されているのは「外国特許庁への出願手数料」「国内代理人・現地代理人費用」「翻訳費用」の3つだけです。ですから、この3つに当てはまらない費用が対象になるかどうかは、公募要領で確認する必要があります。
佐藤: 出願の後にかかるお金とかは、また別の話なんですね。
室谷: そうなんです。とにかく「この3区分に当てはまるかどうか」で判断するのがポイントです。見積もりを取るときに、費用の内訳を分けてもらいましょう。
では、具体的な金額を整理しましょう。改めて補助率と上限を教えてください。
室谷: 補助率は1/2以内です。上限は1企業あたり300万円。案件ごとには、特許が150万円、実用新案・意匠・商標がそれぞれ60万円、抜け駆け対策商標が30万円です。
1企業で300万円、というのは複数案件の合計ってことですか?
室谷: そうです。「1企業に対する上限額は300万円(複数案件の場合)」と案内されています。特許を2件出すなら、それぞれの案件上限150万円ずつで合計300万円、というイメージですね。
佐藤: じゃあ、特許2件でちょうど使い切れるんですね。
室谷: そうなります。ただし、案件ごとの上限もあるので、費用が高額でも無限に補助されるわけではありません。
案件ごとの上限を表で見せてもらえますか?
室谷: もちろんです。
| 区分 | 補助率 | 上限額 |
|---|
| 1企業あたり | 1/2以内 | 300万円 |
| 特許(1案件) | 1/2以内 | 150万円 |
| 実用新案・意匠・商標(1案件) | 1/2以内 | それぞれ60万円 |
| 抜け駆け対策商標(1案件) | 1/2以内 | 30万円 |
特許が一番高いんですね。
室谷: 特許は上限額が一番大きいです。商標や意匠と比べると、審査も複雑ですし、翻訳費用もかさみやすいからでしょう。
計算例を出すとどうなりますか?
室谷: 特許の外国出願費用が300万円かかったケースを考えましょう。補助率1/2以内なので、150万円が補助されます。これは特許の案件上限150万円と同じなので、上限いっぱいまで受け取れます。
佐藤: じゃあ、600万円かかったら半額は300万円だけど、案件上限が150万円だから、もらえるのは150万円まで、と。
室谷: そのとおりです。案件ごとの上限を超えた分は自己負担になります。逆に、出願費用が100万円なら、半額の50万円が補助されます。
佐藤: なるほど。費用が小さければ、半額でも上限には達しないんですね。
室谷: そうです。1企業あたり300万円の範囲内で、案件ごとの上限額との関係を考えながら計画するのがコツです。
申請の流れを教えてください。まず何をすればいいですか?
室谷: 最初に公募要領を確認することです。わかやま産業振興財団のホームページに公募要領が掲載されています。要件や申請様式、提出方法が全部ここに書かれています。
申請はjGrantsからやるんですよね?
室谷: はい。jGrantsで入力します。ただ、ここが大事なポイントですが、jGrants上に入力しただけでは申請受付になりません。
佐藤: えっ、そうなんですか? 入力が完了したら受付だと思ってました。
室谷: よくある勘違いだと思います。交付申請書と添付書類を持参、郵送、または電子メール添付などで提出して、初めて受付になります。ここを間違えると期限内に申請できず、焦ることになりますよ。
海外出願支援補助金の申請の流れ- 1
- 2
jGrantsで入力
入力だけでは申請受付にならない
- 3
交付申請書を提出
Word版をメール送付し、添付書類を持参・郵送・メール
- 4
- 5
書類は何を用意するんですか?
室谷: 交付申請書と添付書類です。交付申請書については、Word版を電子メールで送付してください、と案内されています。
佐藤: PDFではなくWord版ですか。ちょっと意外ですね。
室谷: そうなんです。先方で確認しやすいように、ということでしょう。申請様式は公募要領に添付されているので、そこからダウンロードして使います。
複数案件を申請する場合はどうすればいいですか?
室谷: 案件の数だけお申し込みください、と案内されています。たとえば特許と商標の2案件なら、2つの申請をするイメージです。
佐藤: 1つの申請書にまとめて書くわけじゃないんですね。
室谷: そういうことです。案件ごとに申請書を作る必要があります。あらかじめ代理人に見積もりをもらって、案件数を確定させておきましょう。
提出先と問い合わせ先を教えてください。
室谷: 公益財団法人わかやま産業振興財団、テクノ振興部テクノ振興班です。〒640-8033、和歌山市本町二丁目1番地、フォルテワジマ6階。電話は073-432-5122、メールは
tk7@yarukiouendan.jpです。
佐藤: フォルテワジマの中に事務所があるんですね。
室谷: そうです。書類の持参でも郵送でも受け付けてもらえます。不明な点は、この窓口に問い合わせるのが確実ですよ。
せっかく申請するなら、採択されないと意味がないですよね。審査のポイントを教えてください。
室谷: 大事なのは4つの応募要件を満たすこと。特に(2)先行技術調査等の結果からみて、外国での権利取得の可能性が明らかに否定されないこと、(3)権利を活用した事業展開を計画していること、(4)資金能力と資金計画があること。この辺りが審査の軸になります。
「権利取得の可能性が明らかに否定されない」というのは、どういうことですか?
室谷: たとえば特許なら、先行技術があって明らかに新規性がない場合は、外国で権利を取れない可能性が高いですよね。そういう案件は対象にならない、ということです。
佐藤: じゃあ、出願する前に先行技術調査をやったほうがいいんですね。
室谷: そうなんです。調査結果を整理しておくと、申請書類にも説得力が出ます。「この技術は新しいから、海外でも権利化できる見込みです」という説明ができると強いですね。
事業展開の計画はどれくらい具体的に書く必要がありますか?
室谷: 「外国で権利が成立した場合等において、当該権利を活用した事業展開を計画している」という要件です。どの国で、どんな製品を売るのか。その権利をどうやって守るのか。そういう計画が見えると説得力が増します。
佐藤: 「いつか海外展開したい」くらいだと弱いですかね。
室谷: そうですね。商標の場合は「抜け駆け商標の対策をしたい」という意思でもOKです。海外で自社商標を勝手に出願する人がいる場合、それを防ぐための出願も対象になります。
採択された後の注意点も教えてください。
室谷: 採択された場合は、企業名・所在地等が公表されます。それと、事業完了後5年間の状況調査があります。フォローアップ調査やヒアリングですね。
佐藤: 5年間も追跡調査があるんですね。びっくりです。
室谷: 補助金を交付して終わりではなく、その後の活用状況まで見られるんです。海外出願した権利が、実際にどう使われているのか報告できるようにしておきましょう。
最後にスケジュール感を確認させてください。
室谷: 募集期間は2026年8月14日から2026年8月24日までです。8月24日が締切です。
佐藤: めちゃくちゃ短いですね。もう1週間ちょっとしかない…。
室谷: そうなんです。公募要領の確認、見積もり取得、jGrantsの入力、書類の提出を、この期間に終わらせる必要があります。締切ぎりぎりを狙うと、提出方法によっては到着が遅れることもあるので、余裕をもって動きましょう。
締切は「必着」ですか? それとも「消印有効」ですか?
室谷: この制度の案内には「必着」という記載は確認できませんでした。ですから、持参または郵送の場合の扱いは、わかやま産業振興財団に直接確認するのが確実です。
佐藤: なるほど。ここは問い合わせで確認するのがよさそうですね。
室谷: そうですね。電子メール添付で提出する方法もあるので、自分にとって確実な方法を選んでください。
採択されたら、いつまでに出願すればいいんですか?
室谷: 要件(1)にあるように、採択後に優先権主張をして外国出願を年度内に行う予定であることが応募要件です。つまり、令和8年度のうちに出願するスケジュールです。
佐藤: ということは、海外出願の準備ができていないと応募自体が難しい?
室谷: そのとおりです。出願先の国、代理人、見積もりが決まっていないと、採択されてからバタバタすることになります。できれば募集開始前に準備を済ませておきたいですね。
令和8年度二次募集スケジュール2026年8月14日
募集開始
2026年8月24日
募集締切
書類提出が必要
採択後
外国出願を実施
年度内に出願
事業完了後
5年間の状況調査
フォローアップ調査・ヒアリング
ここまでの話を踏まえて、よくある質問に答えていきましょう。
室谷: ぜひ。質問があればどうぞ。
まず「まだ日本で出願していないけど、これから出願する予定なので応募できますか?」
室谷: 応募時点で日本国特許庁に対して特許、実用新案、意匠、商標のいずれかを出願済みであることが要件です。未出願の状態では応募できません。
佐藤: 次に「商標だけでも対象になりますか?」
室谷: なります。商標は1案件60万円、抜け駆け対策商標は30万円が上限です。商標の場合は優先権がない外国出願も可とされています。
佐藤: 「特許1件だけで申請してもいいですか?」
室谷: もちろんです。1件でも複数件でも、案件の数だけ申請します。上限は1企業あたり300万円、特許の案件上限は150万円です。
最後に、基本情報をまとめてください。
室谷: こうやってまとめました。
海外出願を考えている和歌山県の中小企業にとっては、かなり心強い制度ですね。
室谷: そうなんです。締切が近いので、まずはわかやま産業振興財団のホームページで公募要領をチェックしてみてください。
佐藤: 2026年8月24日までですね。室谷さん、今日はどうもありがとうございました!
室谷: いえいえ。海外展開の第一歩を、ぜひこの補助金で後押ししてくださいね!