ポスト5G先端半導体補助金 制度スキーム図
室谷さん、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」って、名前だけ聞くと何かものすごい話が始まる気がするんですけど。
えっ、そうですよ!(笑)これはNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2020年度から進めてきた国家プロジェクトです。ひと言でいうと、日本の先端半導体の自給体制をつくるための超大型補助金です。
経済産業省の外郭団体で、エネルギーや産業技術の研究開発を支援する機関です。補助金の規模がまず桁違いで、今回の公募では補助率2/3、補助上限は原則160億円以下という設定になっています。
160億円!?ちょっと待って、普通の補助金と桁が3つくらい違いません?
そうなんです(笑)。IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金とは完全に別次元の話ですね。これは「研究開発」のための補助金で、国の安全保障・デジタル戦略と直結した制度です。
ポスト5Gって、今の5Gよりさらに進んだ技術ってことですか?
そうです。今各国で広がっている5Gよりも、さらに「超低遅延」「多数同時接続」といった機能を強化したものがポスト5Gです。工場や自動車など、多様な産業用途への活用が期待されていて、日本の競争力の核になる技術とされています。
なるほど、だから国が160億円規模で支援するわけですね。では今回の公募の具体的なテーマを教えていただけますか?
今回公募されているのは、研究開発項目②「先端半導体製造技術の開発」のうち、(d8)光チップレット実装技術による半導体デバイスの製造技術開発【GX】という非常に特化したテーマです。ちょっと聞きなれない言葉が並んでいますよね。
チップレット(chiplet)というのは、CPU・GPU・メモリなど複数の回路チップを1パッケージに集積する技術です。従来は電気信号でチップ間をつなぐのが主流でしたが、今回のテーマでは光電変換デバイスと導波路を使って「光でつなぐ」ことを目指します。光にすることで、データ転送速度と電力効率が劇的に改善するんです。
電気から光に変えるんですね!それの製造技術を開発するって話か。ほんとに次世代感がありますね。
金額の話をもう少し詳しく聞かせてください。160億円って、1社で全部もらえるんですか?
それはケースバイケースですね。160億円はあくまで「ステージゲート審査まで」の提案補助費の上限です。採択審査の段階で外部有識者が認めれば、この上限を超えることも可能です。ただ、複数の企業・大学がコンソーシアムを組んで応募するケースも多いので、1社あたりの実際の補助額は提案内容によります。
公募要領で確認できるのは補助率2/3です。つまり自己負担は1/3ということですね。100億円の研究開発をするなら、約67億円がNEDOから補助されて、残りの約33億円を自社で負担する計算です。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 補助率 | 2/3 |
| 補助上限額(ステージゲート審査まで) | 原則160億円以下 |
| 自己負担割合 | 1/3 |
| 事業期間 | 研究開発開始から原則5年(60ヶ月)以内 |
| 初期交付決定期間 | 36ヶ月以内(ステージゲート後6ヶ月の調整期間含む) |
| ステージゲート審査 | 研究開発開始から2.5年後を目処に実施 |
5年という長い事業期間の途中で「この研究は続けるべきか?」を外部有識者が判断する中間評価です。開始から2.5年後が目安で、そこで継続が認められれば後半3年弱の研究開発に進めます。逆に言えば、途中で打ち切られるリスクもあるということです。だからこそ初期の提案書の質が重要なんですよ。
5年分の計画を全部審査するんじゃなくて、2.5年ごとに見直す仕組みか。うまくできてますね。次は申請資格を教えてください。どんな組織が応募できるんですか?
160億円規模とはいえ、中小企業や個人は申請できないですよね?
正直に言うと、今回の公募は大企業・中堅企業・大学・研究機関向けの制度です。申請できるのは「先端半導体の製造技術開発に関する高度な技術力・知見を有する企業・法人」が基本条件です。
そうです。日本国内に研究開発拠点を有することが要件です。ただ、応募はコンソーシアム(複数組織の連合体)でも可能で、海外の研究機関と国際連携するプロジェクトも想定されています。今回の(d8)テーマは「国際連携による次世代半導体製造技術開発」という括りに入っていますから。
できます!ただし一点注意があって、研究機関等の単独提案は不可です。大学が申請する場合は、民間企業と共同提案をする必要があります。企業側が主導して、大学と組むパターンが多いですね。
半導体バリューチェーン全体に関わる企業が対象です。半導体メーカー、半導体製造装置メーカー、材料メーカー、パッケージング企業などですね。今回の光チップレットテーマで言えば、光電変換デバイス(フォトニクス)の技術を持つ企業や、高速インターコネクト技術を持つ企業が有力な候補になります。
- 企業・大学等: 先端半導体製造技術に関する高度な技術力・知見を有すること
- 国内拠点必須: 日本国内に研究開発拠点があること
- 連携形態: 単独または複数組織でのコンソーシアム応募が可能
- 大学単独は不可: 大学・研究機関は民間企業との共同提案が必要
- GビズIDプライム or メンバーアカウント: Jグランツ申請に必須(取得に2週間以上かかる場合あり)
研究開発に直接関わる費用が中心です。具体的には研究開発費(設計・シミュレーション費、実験・試作費、クリーンルーム使用料、材料・試薬費)、設備費(製造装置・評価装置・計測機器)、人件費(研究者・技術者)、外注費(外部研究機関への委託費)などです。
先端半導体の研究だとクリーンルームや特殊装置が必要ですよね。それも対象になるんですか?
研究開発に必要な装置・機器の購入またはリース費用は対象です。半導体製造評価装置の導入費や計測・分析機器の導入費も含まれます。クリーンルーム使用料も研究開発費の中に入ってきます。あと、学会発表・論文投稿費や知的財産権の出願・維持費用も対象経費に含まれています。
土地・建物の取得費、汎用的な事務機器・備品(PCなど)、研究開発に直接関連しない一般管理費、飲食・接待費、消費税、そして既に他の補助金で充当されている経費は対象外です。二重補助の禁止は国の補助金では鉄則ですね。
| 対象経費カテゴリ | 主な内容 |
|---|
| 研究開発費 | 設計・シミュレーション費、実験・試作費、クリーンルーム使用料、材料・試薬費 |
| 設備費 | 製造装置・評価装置・計測機器の購入・リース費 |
| 人件費 | 研究者・技術者の人件費、プロジェクトマネジメント費 |
| 外注費 | 外部研究機関への委託費、技術コンサルティング費 |
| その他経費 | 学会発表・論文投稿費、知的財産権出願・維持費用 |
対象外となる主な経費は以下の通りです: 土地・建物取得費、汎用事務機器(PCなど)、研究開発に直接関係しない一般管理費、飲食・接待費、消費税、他補助金で既に充当済みの経費。二重補助は国の補助金では禁止されています。
光チップレット実装技術 開発目標チェックリスト
では実際の申請手続きについて教えてください。何から始めればいいですか?
まずGビズIDの取得状況を確認することです!Jグランツでの電子申請にはGビズIDプライムアカウントまたはメンバーアカウントが必須で、取得に2週間以上かかる場合があります。
GビズIDの取得確認
GビズIDプライムアカウントまたはGビズIDメンバーアカウントを確認。未取得なら即座に登録手続きを開始(取得に2週間以上かかる場合あり)。
公募要領・様式のダウンロード
NEDO HP(公募ページ)から公募要領(補助)、提案書(別添1)、体制表(別紙1)、積算表(別紙2)等をダウンロード。
研究開発計画の策定
光チップレット実装技術の具体的な研究開発計画を策定。帯域密度1Tbps/mm以上・電力30%以上削減という開発目標に対するアプローチ、実施体制、5年間のスケジュールを具体化。
提案書・各種書類の作成
NEDO指定様式に沿って提案書を作成。主任研究者研究経歴書(別添2)、申請者情報(別添3)、GXに係る取組申告書(別添8)等の提出書類も準備。
Jグランツで申請
Jグランツ公募ページ(https
//www.jgrants-portal.go.jp/subsidy/a0WJ200000CDXgZMAX)から必要情報の入力と書類のアップロードを行い、2026年4月27日正午までに申請。
審査・採択
書面審査→ヒアリング審査を経て採択。技術的実現可能性、研究体制の適切性、社会実装見通し等が評価される。採択決定後に補助金交付決定。
2026年4月2日にオンラインで開催済みです。ただ、応募期限が2026年4月27日正午なので、今まさに申請の締め切り直前という状況です。次回公募があった場合は、説明会への参加を強くお勧めします。
持参・郵送・FAX・Eメールは受け付けないんですね。Jグランツ一択か。
そうです。電子申請システム限定です。Jグランツが落ちるなどシステム障害の場合は、必ず提出期限前にNEDO担当者に連絡してください。「申請できませんでした」は言い訳になりません。
審査ではどういうところが評価されるんですか?これだけ大きな補助金だから、倍率も高そうですよね。
そうですね、競争的な資金です。NEDOの審査基準からポイントを絞ると、大きく3つのポイントがあります。
- 技術的新規性の明確化: 既存技術との差別化と技術的ブレークスルーの見通しを具体的に示す。「帯域密度1Tbps/mm以上」「電力30%以上削減」という数値目標に対して、どのようなアプローチで達成するかを説得力ある形で提示
- 産学連携を含む強固な実施体制: 各参画機関の役割分担、知的財産の取り扱い、研究成果の社会実装に向けたロードマップを具体的に示す
- 社会実装シナリオ: ポスト5G時代の情報通信システムへの貢献、産業競争力強化への波及効果を「出口戦略」まで含めて提案する
過去の採択事例みたいなものはあるんですか?参考にしたいんですけど。
NEDO HPで公開されています。先端半導体分野では、大手半導体メーカーを中心に、装置・材料メーカー、大学研究室が連携したコンソーシアム型のプロジェクトが多く採択されています。つまり1社で完結しようとするより、強みを持つ複数機関でチームを組む提案の方が評価されやすい傾向があります。
そうです。あと、GX(グリーントランスフォーメーション)の観点も重要で、今回のテーマは【GX】マークが付いています。光チップレット実装によって「単位通信量あたりの電力30%以上削減」という目標が掲げられていますが、これはまさにGXへの貢献ですよね。GXに係る取組申告書(別添8)もしっかり作り込む必要があります。
- 応募締切: 2026年4月27日(月)正午(厳守、遅延不可)
- Jグランツ電子申請のみ受付(持参・郵送・FAX・Eメール不可)
- GビズIDなしでは申請不可(未取得の場合は即座に登録手続きを)
- 同一経費への他の国の補助金との重複受給は原則禁止
- 「補助」と「委託」は制度が異なる(詳細は公募要領で確認)
ちょっと確認なんですけど、「補助」と「委託」って同じNEDOの事業で別々に公募が出ていますよね。どう違うんですか?
いい質問です!「補助」は研究開発に要する経費の一部をNEDOが補助する形態で、事業者も一定の自己負担(今回は1/3)が必要です。一方「委託」はNEDOが研究開発を委託する形態で、原則として全額がNEDO負担になります。
「委託」の方が全額もらえてお得に聞こえますが、違いはあるんですか?
委託は「NEDOのために研究する」という位置づけで、成果の知的財産権の扱いなどで制約が出る場合があります。補助は「自社の研究開発を支援してもらう」感覚で、自由度が若干高いです。どちらが適しているかは研究開発の性質や事業者の状況によります。なお、2026年2月20日付の交付規程改正で、以前「助成」と呼ばれていた区分が「補助」に名称変更されました。
| 区分 | 自己負担 | 知財の帰属 | 特徴 |
|---|
| 補助 | 補助対象経費の1/3 | 原則、補助事業者に帰属 | 自社研究開発の支援 |
| 委託 | なし(全額NEDO負担) | 要確認(NEDOとの取り決め) | NEDOへの研究委託 |
名称変更があったんですね。「助成」→「補助」か。知らないと混乱しそうですね。
そうなんです。公募予告や経済産業省の研究開発計画で「助成」という言葉が使われていた場合は、今後「補助」と読み替えてください、とNEDOからアナウンスされています。
今回の公募は2026年4月27日が締め切りで、この記事を読んでいる時点では既に終わっている可能性が高いですよね。
そうです。今回の公募は2026年3月26日〜2026年4月27日正午という期間でした。次回公募がいつ出るかは現時点では未定ですが、ポスト5G事業は2020年度から継続的に公募が行われています。実際に当サイトを見ると複数の関連公募が過去にも出ていました。
3つのことをやっておくといいですね。まずGビズIDの取得。これは早めにやらないと申請できません。次に研究開発計画の骨子づくり。光チップレット実装技術について、自社が貢献できる技術的な強みを整理しておきます。そして連携先のリサーチ。NEDOプロジェクトはコンソーシアム型が有利なので、大学研究室や他企業とのネットワークを今から築いておくと次回公募で動きやすくなります。
- GビズIDプライムアカウントの取得: Jグランツ申請に必須。取得に2週間以上かかることがあるため、早めに手続き
- NEDO HP のウォッチ: https://www.nedo.go.jp/koubo/ で最新公募情報を定期確認
- 研究開発計画の骨子作成: 開発目標(帯域密度・電力削減率)と自社の技術的強みの整理
- コンソーシアム形成の準備: 大学研究機関・装置メーカー等との連携候補の洗い出し
- 過去採択事例の研究: NEDO HPで公開されている採択プロジェクトを分析
ポスト5G系の補助金って、他にもありますよね?違いを教えてもらえますか?
関連する補助金をいくつか紹介します。まず今回の(補助)と対になる委託タイプとして
ポスト5G先端半導体製造技術の開発(委託)があります。これはNEDOが全額負担して研究を委託する形態です。同じ2026年公募で出ています。
なるほど、研究開発の「技術」と「設備」で制度が分かれているんですね。自社がどちらのフェーズにいるかで選ぶ補助金が変わってくる、と。
まさにそうです。自社の研究開発フェーズを整理して、どの制度が最もフィットするかを検討するのが重要ですよ。基礎研究フェーズならJST(科学技術振興機構)の研究助成も視野に入れながら、応用・実証フェーズでNEDO補助金を活用するという段階的な戦略もあります。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(補助) |
| 実施機関 | 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) |
| 公募対象テーマ | (d8)光チップレット実装技術による半導体デバイスの製造技術開発【GX】 |
| 補助率 | 2/3(自己負担1/3) |
| 補助上限 | 原則160億円以下(ステージゲート審査まで) |
| 公募期間 | 2026年3月26日〜2026年4月27日正午 |
| 申請方法 | Jグランツ電子申請のみ(持参・郵送・FAX・Eメール不可) |
| 事業期間 | 研究開発開始から原則5年(60ヶ月)以内 |
| 対象者 | 企業(団体等含む)、大学等 ※研究機関単独不可 |
| プロジェクトコード | P20017 |
| 問い合わせ先 | NEDO 半導体・情報インフラ部 ポスト5G室(post5G_koubo7[at]ml.nedo.go.jp) |
| 公式ページ | NEDO公募ページ |
| Jグランツページ | https://www.jgrants-portal.go.jp/subsidy/a0WJ200000CDXgZMAX |
最後に、よくある疑問をまとめて解決していきましょう!
ぜひ。読者の方が一番気になるところを整理しますね。
必須ではありませんが、NEDOプロジェクトでは強く推奨されています。大学や公的研究機関との連携は審査においてプラス評価になります。大学が基礎研究を担い、企業が応用開発を担当するなど、各機関の強みを活かした役割分担を明確にすることが重要です。
同一の研究開発経費での両方申請は、不合理な重複として禁止されています。ただし、研究開発フェーズや経費項目が明確に区分できる場合は、別々の補助制度を活用できる可能性があります。詳細は公募要領の「不合理な重複及び過度の集中の排除」の項目を確認してください。
採択決定後、交付決定を経て研究開始となります。最初の36ヶ月(約3年)が初期交付期間で、そこでステージゲート審査を受けます。採択審査の段階で研究内容の変更、期間の変更、採択額の減額を求められる場合もありますので、提案書の内容に余裕を持って取り組むことが大切です。
NEDO 半導体・情報インフラ部 ポスト5G室です。担当者は久保田、青柳、東、小村、鈴木の各氏で、メールアドレスはpost5G_koubo7[アットマーク]ml.nedo.go.jpです。公式サイトでの記載はメールアドレスの[@]を[*]と表記しています。