IT導入補助金の申請枠はどれを選ぶ?通常枠・インボイス枠の違い

目次

補助金エージェント編集部 | 最終更新: 2026年3月29日 | IT導入補助金 完全ガイド(トップ)に戻る

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「どの枠で申請すればいいか分からない」という方へ

IT導入補助金の申請を検討し始めると、まず直面する壁があります。枠が複数あって、どれが自分に合っているのか判断しにくい、という問題です。通常枠なのか、インボイス枠なのか、あるいはセキュリティ枠か——選び方を間違えると、補助率や上限額で損をすることがあります。

2026年度から正式名称は「デジタル化・AI導入補助金2026」に変わりました。事務局はTOPPAN株式会社が運営しており、独立行政法人中小企業基盤整備機構と中小企業庁の監督のもとで実施されています。

枠の構成は以下の4つです。

枠の名称主な目的補助率最大補助額
通常枠業務効率化・AI化・生産性向上1/2以内、2/3以内(最賃要件該当)450万円(4プロセス以上)
インボイス枠(インボイス対応類型)インボイス制度対応ソフト導入3/4以内、4/5以内(小規模)350万円
インボイス枠(電子取引類型)インボイス対応受発注システム1/2以内〜2/3以内350万円
セキュリティ対策推進枠サイバーセキュリティ対策強化1/2以内(中小企業)、2/3以内(小規模)150万円
複数者連携デジタル化・AI導入枠複数企業の連携IT導入3/4以内〜4/5以内(50万円以下分)、2/3以内(50万円超分)3,000万円(グループ全体)

※枠の名称・補助率・補助額は年度・公募回ごとに変更されることがあります。必ず最新の公募要領を確認してください。

それぞれの枠が「誰のため」に設計されているのか、順を追って説明します。


通常枠:業務効率化・デジタル化のための基本枠

通常枠:業務効率化・デジタル化のための基本枠

補助の目的

中小企業・小規模事業者等が自社の課題やニーズに合ったITツールを導入するための経費の一部を補助し、労働生産性の向上をサポートします(公式サイトより)。

補助率・補助額(2026年版)

例えば、従業員20名の製造業がクラウド型の生産管理ソフトを導入する場合、通常枠が該当します。

条件補助率補助額
通常1/2以内1プロセス以上:5万円以上150万円未満
通常1/2以内4プロセス以上:150万円以上450万円以下
最低賃金要件該当者※2/3以内同上

※令和6年10月から令和7年9月までの間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上であることを示した場合(公式サイトより)

編集部より

編集部より: 「1プロセス」「4プロセス」という概念が分かりにくいという声をよく聞きます。顧客対応・販売支援、決済・債権債務管理、在庫・物流、会計・財務、人事・給与など、公式サイトが定める業務分類のうちいくつをカバーするかで上限額が変わります。複数の業務をまとめてカバーできるソフトを選ぶと、補助上限が450万円まで拡大します。

対象ITツール

申請にあたっては、以下の業務プロセスに対応するソフトウェアを1種類以上申請する必要があります(汎用プロセスのみは不可)。

種別プロセスの例
共通プロセス顧客対応・販売支援、決済・債権債務・資金回収管理、供給・在庫・物流、会計・財務・経営、総務・人事・給与・教育訓練・法務・情シス・統合業務
業種特化型プロセスその他業種固有のプロセス
汎用プロセス(単体での使用は不可)汎用・自動化・分析ツール(業種・業務が限定されないが生産性向上への寄与が認められる業務プロセスに付随しない専用ソフトウェア)

補助対象経費

  • ソフトウェア(必須): ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)
  • オプション: 機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ
  • 役務: 導入コンサルティング・活用コンサルティング、導入設定・マニュアル設定・導入研修、保守サポート

2026年版スケジュール

項目1次締切
交付申請開始2026年3月30日(月)〜
締切日2026年5月12日(火)17:00
交付決定日2026年6月18日(木)(予定)
事業実施期間交付決定〜2026年12月25日(金)17:00(予定)
事業実績報告期限2026年12月25日(金)17:00(予定)

通常枠のスケジュールを確認したら、次はインボイス枠の内容を見ていきましょう。補助率の高さに驚く方も多いはずです。


インボイス枠(インボイス対応類型):インボイス制度対応の高補助率枠

\nインボイス枠(インボイス対応類型)の補助率と対象ツール\n\n

補助の目的

中小企業・小規模事業者等がインボイス制度に対応した「会計」「受発注」「決済」の機能を有するソフトウェア、PC・ハードウェア等を導入するための経費の一部を補助し、インボイス制度への対応を強力に推進することを目的としています(公式サイトより)。

補助率・補助額(2026年版)

例えば、個人事業主が40万円のクラウド会計ソフトを導入する場合、小規模事業者として補助率4/5が適用されます。自己負担はわずか8万円です。

ソフトウェア:

補助額補助率機能要件
50万円以下中小企業:3/4以内、小規模事業者:4/5以内「会計」「受発注」「決済」のうち1機能以上
50万円超〜350万円以下50万円以下部分:3/4(小規模4/5)、50万円超部分:2/3「会計」「受発注」「決済」のうち2機能以上

PC・ハードウェア等:

種別補助率補助額
PC・タブレット等1/2以内10万円以下
レジ・券売機等1/2以内20万円以下

補助対象ITツール

  • インボイス制度に対応しており、「会計」「受発注」「決済」の機能を1種類以上有するソフトウェア
  • PC・タブレット・プリンター・スキャナー・複合機
  • POSレジ・モバイルPOSレジ・券売機
編集部より

編集部より: インボイス枠は2026年度から「過去に採択された事業者は再申請不可」というルールが加わっています。まだインボイス枠を使っていない方は、この機会を逃さないようにしましょう。


インボイス枠(電子取引類型):受発注電子化のための枠

補助の目的

取引関係における発注者がインボイス制度対応のITツール(受発注ソフト)を導入し、当該取引関係における受注者である中小企業・小規模事業者等に当該ITツールを供与する場合に、導入経費の一部を補助します(公式サイトより)。

補助対象者

中小企業・小規模事業者等およびその他の事業者(大企業含む)も対象となります。

補助率・補助額(2026年版)

対象者補助率補助額
中小企業1/2以内(下限なし)〜350万円以下
小規模事業者等2/3以内(下限なし)〜350万円以下
その他の事業者等1/2以内(下限なし)〜350万円以下

補助対象ITツール

インボイス制度に対応した「受発注」機能を有するクラウド型ソフトウェアであり、取引関係における発注側の事業者が受注側の事業者に対してアカウントを無償で発行し利用させる機能を持つもの。


セキュリティ対策推進枠:サイバーセキュリティ強化のための枠

\nセキュリティ対策推進枠の補助率と対象サービス\n\n

補助の目的

中小企業・小規模事業者等がサイバーセキュリティ対策を強化するためのITツールを導入するための経費の一部を補助し、サイバーインシデントを原因として事業継続が困難となるリスクを低減することを目的としています(公式サイトより)。

補助率・補助額(2026年版)

対象者補助率補助額
小規模事業者2/3以内5万円〜150万円
中小企業1/2以内5万円〜150万円

補助対象ITツール

IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されており、かつIT導入支援事業者によりITツール登録されたサービスが対象です(公式サイトより)。

サービスリストはIPAのウェブサイト(https://www.ipa.go.jp/security/otasuketai-pr/index.html)で確認できます。

対象サービスの例:

  • ウイルス対策・エンドポイントセキュリティサービス
  • UTM(統合脅威管理)
  • EDR(Endpoint Detection and Response)
  • セキュリティ監視・インシデント対応サービス

複数者連携デジタル化・AI導入枠:複数企業が連携した導入向け

\n複数者連携枠:グループ全体3,000万円まで補助\n\n

補助の目的

サプライチェーンや商業集積地の複数の中小企業・小規模事業者等が連携してITツールを導入し、面的なデジタル化・DXの実現や生産性向上を図る取り組みを支援します。「通常枠」よりも補助率を引き上げた枠として設けられています(公式サイトより)。

補助対象者

  • 商工団体等(商店街振興組合、商工会議所、商工会、事業協同組合等)
  • 当該地域のまちづくり・商業活性化・観光振興等の担い手(まちづくり会社、DMO等)
  • 複数の中小企業・小規模事業者等により形成されるコンソーシアム

補助率・補助額(2026年版)

例えば、商店街の10店舗が共同でPOSシステムと顧客分析ツールを導入するケースが典型的な利用例です。グループ全体で最大3,000万円の補助が受けられます。

補助対象経費補助率補助上限額(1構成員当たり)グループ全体の上限
ソフトウェア(50万円以下分)3/4以内(小規模:4/5以内)50万円3,000万円
ソフトウェア(50万円超分)2/3以内50万円超〜350万円同上
PC・タブレット等1/2以内10万円同上
レジ・券売機等1/2以内20万円同上
消費動向等分析経費2/3以内50万円同上
その他経費(コーディネート費・謝金等)2/3以内200万円200万円

補助対象となるITツール

基盤導入経費: 「会計・受発注・決済」の機能を保有するソフトウェアとそのオプション、役務およびハードウェア

消費動向等分析経費: 異業種間の連携や地域における人流分析・商取引等の面的デジタル化に資するソフトウェア・役務・ハードウェア

具体的な取り組み例(公式サイトより):

  • 地域にAIカメラ・個店にPOSデータ分析システムを導入し、来街者属性や購買データを分析して商品構成を最適化
  • 地域にビーコン・個店にAIカメラを導入し、ターゲット層に効果的な情報発信
  • 地域に電子地域通貨・個店に分析アプリを導入

注意事項

複数者連携デジタル化・AI導入枠の申請フローは通常枠と一部異なります。公募要領の「3.交付申請方法」を必ず確認してください。

編集部より

編集部より: 複数者連携枠は上限額が際立って大きい一方、申請フローが通常枠と異なります。商店街や事業協同組合での活用を検討している場合は、早めに商工会議所や事務局に相談することをお勧めします。


枠の選び方フローチャート

\n枠の選び方フローチャート\n\n 自分の目的がどの枠に当たるか、以下で確認してください。

ITツール導入の目的は?
│
├─ インボイス制度対応(会計・受発注・決済ソフト)
│   └─ → インボイス枠(インボイス対応類型)
│       ・補助率:小規模3/4以内、それ以外2/3以内
│       ・上限:350万円
│
├─ 取引先への受発注電子化(受発注システムを取引先にも導入)
│   └─ → インボイス枠(電子取引類型)
│       ・大企業も申請可
│       ・上限:350万円
│
├─ サイバーセキュリティ対策ツール(IPAリスト掲載のもの)
│   └─ → セキュリティ対策推進枠
│       ・補助率:小規模2/3以内、中小1/2以内
│       ・上限:150万円
│
├─ 複数企業での共同IT導入(商店街・サプライチェーン等)
│   └─ → 複数者連携デジタル化・AI導入枠
│       ・上限:3,000万円(グループ全体)
│
└─ 上記以外の業務効率化・デジタル化(業務系ソフト全般)
    └─ → 通常枠
        ・上限:450万円(4プロセス以上)

補助額シミュレーション

シミュレーション1:従業員3名の小売業がインボイス対応POSシステム(60万円)をインボイス枠で申請

ITツール費用:60万円
小規模事業者(5人以下)のため:
  50万円以下部分(50万円) × 4/5 = 40万円
  50万円超部分(10万円) × 2/3 ≒ 6.6万円
補助額合計:約46.6万円(自己負担:約13.4万円)

シミュレーション2:従業員20名の製造業がクラウド会計ソフト(年間12万円)を通常枠で申請

ITツール費用:12万円(クラウド最大2年分 = 24万円で申請)
補助率:1/2
補助額:12万円(自己負担:12万円)
※ 申請可能(5万円以上の下限をクリア)

シミュレーション3:従業員8名のサービス業がセキュリティツール(80万円)をセキュリティ対策推進枠で申請

ITツール費用:80万円
中小企業のため補助率:1/2
補助額:40万円(自己負担:40万円)
※ 上限150万円以内のため申請可能

よくある質問

Q: 通常枠とインボイス枠は同時に申請できますか? A: 同一の申請で複数の枠を重複して申請することは原則できません。自社の目的・導入ツールに最も合った枠を選んでください。

Q: 通常枠の「1プロセス」「4プロセス」とはどういう意味ですか? A: 公式サイトが定める業務プロセスの分類(顧客対応・販売支援、決済・債権債務・資金回収管理、供給・在庫・物流、会計・財務・経営、総務・人事・給与等)のうち、申請するITツールが何種類のプロセスをカバーするかによって上限額が変わります。4プロセス以上をカバーするツールは最大450万円まで申請可能です。

Q: インボイス枠はインボイス制度が浸透した後も続きますか? A: 枠の継続・内容は年度ごとに決定されます。2026年版では継続されていますが、今後の年度については最新の公募要領を確認してください。

Q: セキュリティ対策推進枠の対象ツールはどこで探せますか? A: IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」(https://www.ipa.go.jp/security/otasuketai-pr/index.html)に掲載されているサービスのうち、本事業のIT導入支援事業者が提供し、かつ事務局に登録されたものが対象です。

Q: 複数者連携枠には最低何社必要ですか? A: 公式サイトの2026年版公募要領を確認してください。複数者連携デジタル化・AI導入枠については申請フローが異なるため、公募要領の「3.交付申請方法」を参照してください。


まず、自社が導入したいITツールの目的を一つ絞り、上のフローチャートで該当する枠を確認するところから始めましょう。枠が決まれば、申請の準備はぐっとシンプルになります。


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