IT導入補助金で実際にあった不正・詐欺の手口と見抜き方

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補助金エージェント編集部 | 最終更新: 2026年3月29日 | IT導入補助金 完全ガイド(トップ)に戻る

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「自己負担ゼロで導入できます」——その言葉は危険信号です

IT導入補助金は使いやすい補助金として知られていますが、その分だけ悪用しようとする業者も存在します。「補助金があるから実質タダ」「手続きは全部こちらでやります」——こうした言葉を聞いたことがあるなら、一度立ち止まって読んでください。

IT導入補助金は2017年度に創設されて以来、毎年数百億円規模の予算が投入される大型補助金です。

会計検査院は2024年10月、2020年度から2022年度の3カ年においてIT導入補助金で1億4,755万円の不正受給が確認されたと公表しました。また、不正受給を主導していた不適正ベンダー15者が支援した1,978事業(58億円)について不正受給の疑いがあるとして、調査が続いています(NTT西日本Biz Clip 2025年2月記事より)。

これを受け、公式サイト(https://it-shien.smrj.go.jp/)には「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)は不正を絶対に許しません」という警告が掲載されており、「情報漏洩」「キックバック」「重複受給」「実態のない役務」「なりすまし行為」を不正行為として明示しています。


公式サイトが明示する「不正行為」の定義

\n公式サイトが明示するIT導入補助金の5つの不正行為\n\n IT導入補助金公式サイトは以下の行為を「不正であり、犯罪」と明示しています。

  1. 重複受給: 本補助事業と同一の内容で国(独立行政法人を含む)から他の補助金・助成金等の交付を重複して受けること

  2. 不適切な行為: 事業期間中および補助金交付後において、不正行為・情報の漏洩等の疑いがある行為、補助事業者として不適切な行為を行うこと

  3. 未実施の補助事業: ITツールが導入されていない、役務の提供がなされていない等、補助事業が遂行されていないこと

  4. なりすまし行為: 補助事業者自身が行うべき行為(申請マイページの開設およびその後の交付申請における手続き等)を当該補助事業者以外が行うこと

  5. キックバック・ポイント還元: ITツールの販売金額に占める補助事業者の自己負担額を減額または無償とするような販売方法(以下の具体例含む)

    • 例①:ポイント・クーポン等(現金に交換可能なものを含む)を発行・利用することでITツールの購入額を減額・無償にする
    • 例②:ITツールの購入額の一部または全額に相当する金額を口座振込や現金により申請者へ払い戻す
編集部より

編集部より: 不正の定義は「悪意ある事業者」だけに当てはまるものではありません。ベンダーに言われるまま手続きを任せていた、ポイントバックを受け取ってしまった——そうした「うっかり」も不正とみなされ、補助金の返還を求められることがあります。


不正の主な類型と手口

\nベンダーによる不正の手口と見分け方\n\n

類型1:IT導入支援事業者(ベンダー)による架空・水増し請求

最も多い類型です。ベンダーが主導して不正を行うパターンで、申請者側が意図せず巻き込まれることもあります。

具体的な手口:

  • 実際には導入・納品されていないITツールが導入されたかのように書類を偽造し補助金を詐取(架空発注)
  • 実際の販売価格より高い金額を申請し補助金額を不正に増やす(水増し請求)
  • 補助金受給後にベンダーが申請者に金銭を戻す(キックバック)

ベンダーが誘ってくる典型的なセリフ:

  • 「自己負担ゼロで導入できます」
  • 「補助金が通ったあとにキャッシュバックします」
  • 「申請は全部こちらでやります。ハンコだけ押してください」

これらの言葉は不正の誘いです。

類型2:なりすまし行為

申請者(中小企業等)が自分で申請マイページを操作せず、IT導入支援事業者に全て任せてしまうことがなりすまし行為に該当します。

申請者本人がアカウントを開設し、入力内容を自ら確認・宣誓する手続きが必要です。「全部やっておきます」というベンダーは要注意です。

類型3:重複受給

同一の事業内容で他の補助金・助成金を同時に受給することは禁止されています。例えば、IT導入補助金とものづくり補助金の両方で同じITツール費用を申請することは不正です。

類型4:補助対象外の経費の申請

補助対象となっていない経費を申請書類に含めて申請することも不正行為に該当します。汎用プロセスのみのITツール、個人使用目的のツール等は対象外です。

不正の手口を知ったら、次は「もし発覚したらどうなるか」を確認しておきましょう。ペナルティの重さを知ることが最大の抑止力になります。


不正が発覚した場合のペナルティ

\n不正発覚時のペナルティ一覧\n\n 公式サイトによれば、不正行為と判断された場合、以下の措置が取られます。

ペナルティ内容
交付決定の取消申請自体が無効となり補助金の受け取りが取り消される
補助金の返還請求受け取った補助金の全額返還を求められる
加算金補助金受領の日から返還金納付の日までの日数に応じた加算金の納付
延滞金返還が遅れた場合に延滞金が発生
IT導入支援事業者の登録取消不正を主導したベンダーは登録が取り消される
社会的信用の失墜不正事業者の情報が公式サイトで公開される
法的処罰悪質な場合、詐欺罪として刑事罰を受ける可能性

さらに、賃上げ目標等の加点要件を達成できなかった場合は、中小企業庁が所管する補助金(ものづくり補助金、持続化補助金等)への申請で最大18ヶ月間、大幅に減点される制度もあります(2026年1月時点)。

編集部より

編集部より: 「ベンダーが悪いのだから自分には責任がない」と考えたくなりますが、補助金の受給者は申請者です。ベンダーへの返還請求は別途行われますが、まず申請者が返還義務を負います。被害者の立場であっても、金銭的なダメージは避けられません。


不正を見分けるチェックリスト

以下の言葉や提案を受けた場合は、不正リスクがあります。申請を見直すか、事務局に相談してください。

  • 「自己負担ゼロでITツールを導入できる」と言われた
  • 「補助金を受け取った後にキャッシュバックする」と言われた
  • 「申請の手続きは全部こちらでやります。印鑑だけ押せばいい」と言われた
  • 見積書や請求書の金額が実際に払う金額と異なる
  • 実際にはほとんど使わないITツールの導入を強く勧められている
  • 補助金申請のために架空の事業計画を作るよう求められた

不正の疑いがある場合・自主返還について

情報提供

IT導入補助金事務局は、不正受給と思われる事例についての情報提供を受け付けています。公式サイトの「不正に関する情報提供」のページから連絡できます。

自主返還

公式サイト(2026年1月28日更新)によれば、「デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)は補助金の自主的な返還を受け付けています」 と明示されています。

不正受給をしてしまったと気付いた場合、または誤って補助対象外の経費を申請した場合は、事務局に自主返還の申し出を行うことで、刑事責任への発展を回避できる可能性があります。放置して不正が発覚した場合は加算金・延滞金・法的責任が加わるリスクがあります。

自主返還の手続きは公式サイトで案内されています。

立ち入り調査

不正行為の疑いがある場合、事務局が立ち入り調査を実施することがあります。事業実態の確認、書類の検査等が行われます。

編集部より

編集部より: もし「あのとき断ればよかった」と思う状況に気づいたなら、放置することが最も危険です。早期の自主返還と事務局への相談が、最終的に被害を最小限に抑える手段です。


信頼できるIT導入支援事業者を選ぶ方法

\n信頼できるIT導入支援事業者を選ぶ4つのチェックポイント\n\n 不正の多くはIT導入支援事業者(ベンダー)が主導しています。以下の点を確認して信頼できる事業者を選んでください。

  1. 登録取消事業者でないことを確認: 公式サイトで定期的に更新される登録取消リストを確認
  2. 見積書と申請内容の金額が一致するか確認: 実際に支払う金額と申請書類の金額が一致しているか
  3. 申請手続きを自分で行う: 申請マイページへのアクセス・入力は必ず自社で行う
  4. 「自己負担ゼロ」の提案は疑う: 正当な場合でも自己負担は発生するのが原則

詳しくは「IT導入支援事業者の選び方と注意点」をご覧ください。


よくある質問

Q: 知らずに不正に加担してしまった場合はどうなりますか? A: 「意図せず不正」であっても、補助金の返還請求や加算金の対象となります。不正行為とは知らずにベンダーの指示に従ってしまった場合も同様です。不審な点があれば事務局に相談し、自主返還の検討をしてください。

Q: 補助金をもらった後に「キャッシュバック」を提案されました。断れば問題ありませんか? A: 断ることは正しい対応ですが、そのようなベンダーとの取引自体がリスクです。事務局への情報提供も検討してください。既に受け取っていた場合は自主返還が必要です。

Q: 自社ではなくベンダーが申請マイページを操作しています。問題ありますか? A: なりすまし行為として不正に該当します。補助事業者(申請者)本人が申請マイページにログインし、内容を確認・宣誓する手続きが必要です。ベンダーに全て任せていた場合は、補助金の返還を求められることがあります。


まず今すぐできることは、取引中のベンダーへの確認です。見積書と申請書の金額が一致しているか、申請マイページは自分でログインできる状態にあるか——この2点を確かめるところから始めましょう。


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