室谷さん、今日は「GXサプライチェーン構築支援事業(フィルム型ペロブスカイト太陽電池)」という補助金についてお聞きしたいんですが…名前からしてすごく専門的で、正直よくわからなくて。
そうですよね、名前だけ聞いてもピンとこないですよね!ざっくり言うと、フィルムのように薄くて曲げられる次世代太陽電池を国内で量産するための製造ライン整備を支援する大型補助金です。シリコン太陽電池では置けなかった場所に設置できるのが最大の特徴で。
薄くて曲げられる太陽電池って、どんな場所に置けるんですか?
例えばビルの壁面、工場の軽量屋根、車のボンネット、農業ハウス。従来のシリコンパネルって重くて硬いので、耐荷重の小さい構造物には乗せられないんですよ。でもフィルム型ならシリコンの約1/10の重量なので、全然違う市場が開けてくる。
なるほど!太陽電池を置ける場所自体が増えるわけですね。この補助金の対象は、フィルム型を作る会社だけですか?
そうじゃないところが面白いんです。フィルム型を直接製造するメーカーはもちろん、そのサプライチェーン全体が対象で。フレキシブル基材を作るフィルムメーカー、バリアフィルムを作る化学メーカー、ロールtoロール塗布装置を作る印刷機械メーカー…ウェットプロセスに強みを持つ企業には参入のチャンスが広がっています。
フィルム型・タンデム型・シリコン型 太陽電池の比較インフォグラフィック
まず全体像を教えてください。どんな規模の補助金なんですか?
GXサプライチェーン構築支援事業は、経済産業省が主導する国家規模の補助金です。全体予算は4,212億円(令和10年度までの国庫債務負担含む)。水電解装置、洋上風力発電設備、ペロブスカイト太陽電池、燃料電池という4つのGX分野の国内製造基盤を一気に構築しようという野心的な施策です。
4,212億円!想像を絶する規模ですね。そのうちフィルム型の枠はどのくらいですか?
枠ごとの明確な配分は公募要領には記載されていませんが、積水化学工業さんがこの事業を活用して大阪府堺市に約3,150億円の投資を決定し、その半額補助を受ける予定と公表しています。1社でそれだけの規模ということは、本事業がいかに大型かがわかります。
原則として大企業は1/3以内、中小企業等は1/2以内です。補助上限額は特段設定されていなくて、全体予算と採択件数を総合勘案して決定します。GWクラスの大規模投資でも申請できる設計になっています。
公募開始は2026年3月27日で、締切は2026年6月30日正午です。約3ヶ月ある公募期間ですが、製造ライン整備の事業計画を作るには結構タイトです。GビズIDプライムアカウントが必要なので、まだ取得していない方は今すぐ動いてください。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 令和7年度補正 GXサプライチェーン構築支援事業(事業Ⅱ:ペロブスカイト太陽電池)フィルム型 |
| 補助率 | 大企業 1/3以内・中小企業等 1/2以内 |
| 補助上限額 | 特段の上限なし(全体予算を勘案) |
| 全体予算 | 4,212億円(令和10年度までの国庫債務負担含む) |
| 公募期間 | 2026年3月27日〜2026年6月30日正午 |
| 事業期間 | 交付決定日〜令和11年12月31日 |
| 対象地域 | 全国 |
| 申請方法 | Jグランツ(電子申請) |
| 実施機関 | 経済産業省・NEDO |
| 公式サイト | gx-supplychain.jp |
令和11年度まで事業を続けられるというのも、長期投資に適しているんですね。次に対象者について詳しく聞かせてください。
公募要領「2.1. 補助対象者」に記載の全要件を満たす法人が対象です。業種制限はほとんどなくて、製造業はもちろん、化学、フィルム製造、印刷業、機械装置メーカー、建材メーカーまで多様な業種が対象になります。
もちろんです!中小企業等は補助率1/2以内と大企業より有利な条件になっています。フィルム型の製造はウェットプロセス(塗布・印刷)が中心なので、グラビア印刷や化学コーティングに強みを持つ中堅・中小企業にとって参入障壁が低い分野です。大手との差別化が図りやすい。
| 業種例 | 対象となる技術・製品 | 業種適合度 |
|---|
| 化学・フィルム製造業 | バリアフィルム、封止材、ペロブスカイトインク | 非常に高い |
| 印刷・コーティング業 | ロールtoロール塗布装置、グラビア印刷技術 | 非常に高い |
| 太陽電池製造業 | フィルム型セル・モジュールの直接製造 | 非常に高い |
| 建材メーカー | BIPV(建材一体型太陽電池)モジュール化 | 高い |
| 機械装置メーカー | ロールtoロール塗布装置・乾燥装置 | 高い |
| 農業資材メーカー | 農業ハウス向けフィルム型モジュール | 中程度 |
印刷会社や化学メーカーが太陽電池市場に参入できるって、ちょっと意外でした!
それがフィルム型の面白さです。シリコン太陽電池は高温・真空プロセスが必要で参入障壁が高いんですが、フィルム型はロールtoロールの印刷技術が使えるので、印刷・コーティング業の会社がすっと入っていける。日本の製造業の強みを活かせる分野なんです。
はい。大切なのが、製造ラインの新設・増設・改修を伴う設備投資が必須という点です。研究開発だけを目的とした経費は対象外で、あくまで量産製造基盤の構築が主目的です。設備機械装置の購入(改造等含む)を伴わない案件は補助対象外となります。
フィルム型がそんなに注目されている理由を、もう少し深く聞かせてください。
大きく3つのポイントがあります。まず軽量・柔軟性という唯一無二の特性。ガラス基板を使うシリコンと違って、フレキシブルフィルムなので重さが約1/10。耐荷重が小さい構造物に置けます。
国内の工場・倉庫屋根の約70%は従来型太陽電池の重量に耐えられないと言われています。そこにフィルム型を貼れば、膨大な未開拓市場が生まれる。建物壁面(BIPV)、農業用ビニールハウス、電気自動車の外装、折りたたみ式携帯型電源…設置場所の選択肢が劇的に広がります。
2つ目が製造プロセスの優位性です。シリコン太陽電池は1000℃超の高温プロセスと真空設備が必要ですが、フィルム型は150℃以下の低温・大気圧プロセスで製造できます。新聞印刷と同じロールtoロール方式なので、製造設備コストとエネルギー消費量が大幅に低い。
3つ目が日本発技術による国際競争力です。ペロブスカイト太陽電池は2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授が発明した日本発の技術。フィルム型の実用化では積水化学工業が2026年に事業化を開始し、2027年度には100MWの供給体制、2030年にはGW級の製造ラインを目指しています。
変換効率はどうなんですか?タンデム型と比べると劣るって聞きましたが。
タンデム型の30%超には及ばず、現在は15〜20%程度です。ただし変換効率だけで比べると本質を見誤ります。フィルム型の勝負は効率ではなく設置場所の拡大による新市場創出にある。シリコンが入れない場所を丸ごと取りに行く戦略です。
日本の工場・倉庫屋根の約70%は従来型太陽電池の重量に耐えられないと言われており、フィルム型はこの巨大市場を開拓できる。2040年に約20GW導入という国の目標のうち、フィルム型が担う役割は大きい。建物壁面(BIPV)、農業ハウス、車両・モビリティ、携帯型電源と、4つの新市場での需要拡大が期待されている。
エネコートテクノロジーズ、パナソニックホールディングス、リコー、カネカ、東芝といった企業がGI基金(グリーンイノベーション基金)を活用した研究開発を進めています。エネコートはパナソニック系、リコーはインクジェット技術を活用したロールtoロール製造に取り組んでいます。今まさに量産化の競争が始まった段階です。
フィルム型ペロブスカイト太陽電池の製造ラインに関わる設備投資が中心です。具体的に見ていきましょう。
| 経費区分 | 対象品目の例 |
|---|
| 製造設備費 | ロールtoロール塗布装置、ペロブスカイトインク塗布・乾燥設備、スリットダイコーター、グラビア印刷機 |
| 検査・評価設備費 | フレキシブルモジュールの変換効率測定装置、耐久性・耐候性加速試験設備、インライン膜厚・欠陥検査装置 |
| 建物費・工事費 | クリーンルーム新設・改修工事費、ロールtoロールライン設置工事費、ユーティリティ設備工事費 |
| 材料・部材関連設備費 | ペロブスカイトインク調製設備、フレキシブルバリアフィルム製造設備、封止材・接着剤製造設備 |
| 外注費・委託費 | 第三者認証機関への性能評価費、設計・エンジニアリング委託費 |
設備機械装置の購入が必須っていう話がありましたが、建物だけだとダメなんですね。
そうです。建物工事だけでは対象外で、設備機械装置の購入(改造等含む)が必須です。例えば既存の工場を改修してロールtoロールラインを入れる場合、装置購入費と建物改修費の両方が対象になる。装置を伴わない建物単独の投資はアウトです。
- 土地の取得費
- 補助事業に直接関係のない一般管理費
- 既に完了した事業に係る経費
- 他の国庫補助金等と重複する経費
- 消費税及び地方消費税
- 飲食・交際費
- 汎用事務機器の購入費
- 設備機械装置の購入を伴わない建物・工事費のみの申請
経費の話はわかりました。では実際に申請するにはどうすればいいですか?
GXサプライチェーン補助金 申請フローチャート
申請って複雑そうですよね…。手順を教えてもらえますか?
大きく5ステップに分かれています。順番に見ていきましょう。
事前着手届出というのも聞いたことがあるんですが、それも出した方がいいですか?
製造設備の発注リードタイムが長く、交付決定を待つとスケジュールに支障が出る場合は
事前着手届出を活用することを検討してください。ロールtoロール塗布装置は特注品で納期が長い場合があります。ただし不採択時の自己負担リスクを踏まえた経営判断が必要です。
フィルム型の審査で最も重要なポイントを4つ挙げます。
- 1. 新市場の創出計画を具体的に示す: タンデム型と変換効率で競うのではなく、軽量・柔軟という特性で開拓できる新市場の需要見通しを具体数字で示す。ゼネコン・物流倉庫・農業法人等のMOU(基本合意書)や共同実証の計画があれば強力。
- 2. ロールtoロール量産の実現性を定量化する: 製造ラインの幅・速度・歩留まり・スループットの目標値を示し、量産時の製造コストがシリコンと比較して競争力を持つことを証明する。
- 3. 耐久性・封止技術の信頼性計画を含める: フィルム型は水分・紫外線バリア性の確保が特に重要。バリアフィルムの性能、加速試験データ、屋外暴露試験の計画を含め、10年以上の実用耐久性目標を示す。
- 4. 国際標準化戦略を盛り込む: IEC規格策定への参画、性能評価方法の標準化提案など、国際標準を日本がリードする戦略を含めることで審査評価が高まる。
変換効率で勝負するんじゃなくて、「置けなかった場所に置ける」で勝負するってことですね!
まさにそこです!フィルム型は「今まで太陽電池を置けなかった場所に置ける」という市場創出型の技術。審査では効率よりも市場のポテンシャルと量産実現性が重視されます。パイロットラインの実績データや性能検証結果を事業計画に盛り込むと説得力が大幅に向上します。
申請するにあたって準備にどのくらいの時間が必要ですか?
目安としては60日程度です。GビズID取得(1〜2週間)、公募要領精読と事前相談(1週間)、事業計画書作成(3〜4週間)、最終確認・提出準備(1週間)という流れです。今から動けば2026年6月30日の締切には十分間に合います。
- 公募要領「2.1. 補助対象者」の全要件を満たしているか確認済み
- GビズIDプライムアカウントを取得済み(未取得なら今すぐ申請)
- 自社技術がフィルム型(フレキシブル基材に塗布・印刷)の範疇か確認済み
- 設備機械装置の購入を伴う事業計画になっているか確認済み
- 量産化の技術的見通しと市場需要の見通しを事業計画に盛り込んでいる
- 耐久性・封止技術に関する技術戦略を事業計画に含めている
同じGXサプライチェーン事業にタンデム型もありますよね。両者の違いをもっと詳しく教えてください。
ペロブスカイト太陽電池には2つの技術系統があります。整理しましょう。
| 比較項目 | フィルム型(本公募) | タンデム型(別枠) |
|---|
| 基材 | フレキシブルフィルム | シリコンウェハー(硬質) |
| 重さ | シリコンの約1/10(軽量) | シリコン並み(重い) |
| 変換効率 | 15〜20%程度 | 30%超を目指す |
| 設置場所 | 壁面・軽量屋根・車両・農業ハウス | 屋根上・メガソーラー向け |
| 製造プロセス | ロールtoロール塗布・印刷(低温・大気圧) | シリコン製造ラインを活用(既存インフラ) |
| 強みを持つ企業 | 化学・フィルム・印刷業 | シリコン太陽電池メーカー |
| 市場戦略 | 新市場創出型 | シリコン代替型 |
主たる製品・技術がどちらの型に関連するかで判断してください。例えば封止材メーカーの場合、フレキシブル基材向けの封止材ならフィルム型、シリコンウェハー向けならタンデム型が適切です。判断に迷う場合は事前相談フォームで確認するのが確実です。また、技術特性が両方にまたがる場合は、公募要領でタンデム型との同時応募可否を必ず確認してください。
GXサプライチェーン構築支援事業は、同一事業・同一経費に対する他の国庫補助金との併給は原則不可です。ただしフェーズが異なれば複数の支援を活用できます。
ペロブスカイト関連では、NEDOの次世代型太陽電池の開発事業やグリーンイノベーション基金の関連事業が並行実施されています。研究開発フェーズ(NEDO・GI基金)と製造基盤構築フェーズ(本事業)でフェーズが異なるため、経費を明確に区分すれば両方の支援を活用できます。
フィルム型の変換効率はシリコンと比べてどの程度ですか?
現在は15〜20%程度で、結晶シリコン(22〜24%)には及びません。ただしフィルム型の価値は効率だけでなく、軽量・柔軟性による設置場所の拡大にあります。重量あたりの発電量ではシリコンを上回り、従来設置不可能だった場所での発電を可能にします。
フィルム型ペロブスカイトの耐久性確保は最重要の技術課題です。特に水分と紫外線に対するバリア性能が求められます。高性能バリアフィルムと封止技術の組み合わせにより、10年以上の耐久性実現を目指した開発が業界全体で進んでいます。事業計画では耐久性確保の技術戦略を具体的に示すことが重要です。
はい、対象です!フィルム型の製造は塗布・印刷プロセスが中心のため、印刷技術や化学プロセスに強みを持つ企業にとって参入障壁が低い分野です。インク調製、塗布装置、バリアフィルム、封止材等の製造に関連する事業であれば、幅広い業種の企業が対象になります。
同じ公募枠での審査になります。ただし補助率が中小企業等は1/2以内と大企業の1/3以内より優遇されているので、相対的に有利です。審査は技術力と事業計画の中身で勝負する内容なので、ニッチな技術に強い中小企業が大企業を抑えて採択されるケースも十分あります。
令和11年度まで事業期間があるというのは、投資計画にどう影響しますか?
2026年の交付決定から令和11年(2029年)12月31日まで事業が続けられるので、大型の製造ライン投資や複数フェーズでの設備増強計画が立てやすいです。単年度補助金と違い、中長期の量産体制構築に向けた計画が書けます。2030年のGW級量産体制構築という業界目標と時期がほぼ一致しています。
最後に、今から動き出す企業に向けてアドバイスをもらえますか?
フィルム型ペロブスカイト太陽電池は、2026年の積水化学工業の事業化開始を皮切りに、本格的な量産競争が始まりました。今は「日本が世界をリードできる5年以内のウィンドウ」です。国もGXサプライチェーン事業という大型支援で後押ししています。化学メーカー、フィルムメーカー、印刷機械メーカーの方々にとって、自社技術をどのように次世代太陽電池市場に活かせるか、今すぐ公募要領を読んで検討してみてください。2026年6月30日が締切ですよ!
フィルム型ならではの市場と、申請の具体的な流れがよくわかりました。ペロブスカイト太陽電池の量産化競争に乗り遅れないよう、早めに動くことが大事ですね。ありがとうございました!