室谷さん、「休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金」って聞いたことありますか?なんかすごい名前ですけど(笑)
ははは!確かに長いですよね。一言でいうと、閉山した鉱山から出てくる有害物質を処理するための工事費を、国が4分の3補助してくれる制度 です。経済産業省が所管していて、毎年公募されています。
4分の3って、75%ですよね。それはかなり手厚い!
そうなんですよ。なぜこんなに高率かというと、鉱業権者が倒産したり行方不明になっていて、誰も責任を取れない状態の鉱山が全国にたくさんあるんです。そういった鉱山から、カドミウムや銅、ヒ素といった重金属が川に流れ込んでいます。
今もです。明治・大正・昭和初期に盛んだった金属鉱山が閉山してからも、坑道から出てくる水(これを「坑廃水」といいます)の汚染は続くんですよ。放置すれば農作物の被害や漁業への影響、住民の健康被害に直結します。だから国が「地方公共団体が代わりにやってくれるなら費用の4分の3出しますよ」という仕組みを作っているんです。
2025年12月に成立した令和7年度補正予算に基づく公募です。今回の近畿支部分の補助上限額は約11億2,381万1千円 という大規模なものです。近畿地方(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)の休廃止鉱山が対象で、2026年3月25日から2027年3月31日まで受け付けています。
休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金の補助仕組み図
補助の仕組みって、「義務者不存在分」と「義務者存在分」があると聞いたんですが、どう違うんですか?
よくリサーチしてますね! 実はこの制度、2つに区分されているんです。順に見ていきましょう——
まず「義務者不存在分」 というのは、鉱業権者(鉱山を運営していた会社や個人)が倒産していたり、すでに存在しないケースです。誰も鉱害防止の義務を果たせないので、地方公共団体が代わりに工事を実施します。この場合、補助対象経費の4分の3が補助されます。
そうですね。続いて「義務者存在分」 は、鉱業権者は一応いるんだけど、採掘を終了して長期間が経過していて、もう再開する見込みがないような鉱山のケースです。この場合、坑廃水処理にかかる経費のうち「自分の採掘活動に起因しない部分」——つまり自然汚染や他者の採掘による汚染分——の4分の3が補助されます。
自分でやったことの費用は出ないけど、それ以外の部分は助けてもらえるということですね。
その通りです。さらに、法令で指定された「指定鉱害防止事業機関」も申請できます。三者が対象になっているわけですね。
項目 内容 補助率 補助対象経費の4分の3(75%) 補助上限額 約11億2,381万1千円(令和7年度補正・近畿支部分) 補助下限額 原則100万円(事業の実施が特に必要と認められるものを除く) 申請期間 2026年3月25日〜2027年3月31日 実施機関 経済産業省 中部近畿産業保安監督部近畿支部
約11億円って、どういう規模の工事を想定してるんですか?
坑廃水処理施設の建設ってかなり大規模になるんですよ。中和処理タンク、沈殿池、薬品添加設備……一式整備すると億単位になることも普通です。また、地盤沈下や斜面崩壊の危険がある場合の「危害防止工事」もカバーしていて、法面保護や充填工事も対象経費に入ります。
なるほど! 補助率が75%なら、自治体の負担は25%で済むわけですね。
そうです!地方公共団体の財政が厳しい中でも、この補助率なら本格的な対策が打てます。
申請できるのはどんな団体ですか? 民間企業はダメですか?
基本的には一般の民間企業は対象外ですね。申請できるのは主に3種類です。1つ目は地方公共団体 ——都道府県や市町村です。鉱業権者が無資力または現存しない休廃止鉱山において、鉱害防止工事や危害防止工事を実施する場合が対象です。
2つ目は坑廃水処理事業者 です。ただし条件があって、①鉱業権がすでに消滅している鉱山、または②鉱業権は残っているけど採掘終了から長期間経過していて、かつ今後も再開の見込みがない鉱山であること。さらに関係地方公共団体が「この処理は必要だ」と認めていることが要件です。
そうです。地方公共団体のお墨付きが要る。そして3つ目が指定鉱害防止事業機関 です。金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づいて指定された機関のことで、金属鉱業等鉱害対策事業団などが該当します。
石炭や亜炭の鉱山は対象外とのことですが、なぜですか?
石炭・亜炭については別の法律や補助制度で対応しているからです。この補助金は金属鉱山(銅・鉛・亜鉛・金・銀・ニッケル等)の坑廃水問題 に特化した制度なんです。カドミウムや銅による重金属汚染は特に深刻で、イタイイタイ病の原因になったのもカドミウム汚染でしたから。
カテゴリ 対象となる工事・費用の例 鉱害防止工事費 坑廃水の集水・導水・処理施設の設置または改修、かん止堤・擁壁の築造または改修、法面保護工事、山腹水路・排水路の設置または改修 危害防止工事費 地盤沈下防止の充填工事、陥没防止の補強工事、法面保護工事、斜面崩壊対策工事 坑廃水処理費 処理薬品費(中和剤等)、処理施設の運転・維持管理費、水質モニタリング費 調査・設計費 鉱害調査費、工事設計費、環境影響調査費
稼働中の鉱山に係る費用(採掘活動中の鉱山は対象外)
鉱業権者に資力がある場合の工事費(義務者に支払い能力がある場合は対象外)
自己の採掘活動に起因する坑廃水処理費(義務者存在分でも自己汚染分は対象外)
石炭鉱業・亜炭鉱業に係る鉱害防止費(別制度で対応しているため対象外)
事業に直接関係のない一般管理費
そうなんです。工事の設計や調査費用も含まれますので、「まず調査してどんな工事が必要か把握する」という段階からサポートされています。
実際に申請するには、どんな手順を踏めばいいんですか?
申請のハードルは高くないですが、準備に時間がかかるのでご注意を。順に説明しましょう。
1 事前相談(近畿支部鉱山保安課に電話・メール。担当の宮本氏・茨氏に連絡し、対象鉱山の要件確認と必要書類を確認する)
2 事業計画の策定(鉱害防止工事の詳細計画を作成。工事内容・工期・概算事業費・対象経費の内訳を明確に。専門コンサルタントへの相談も有効)
3 申請書類の作成・提出(交付要綱に基づく書類を作成し、Jグランツで電子申請。Jグランツが利用できない場合は電子メール申請も可能)
4 審査・交付決定(申請書到達から通常30日以内に交付決定の通知が届く。追加資料提出を求められる場合もある)
5 事業実施・実績報告(交付決定後に工事を開始。完了後は実績報告書を提出し、確定審査を経て補助金が交付される)
経済産業省が運営する補助金の電子申請システムです。
jgrants-portal.go.jp からアクセスできます。GビズIDがあれば使えますが、このような大規模補助金の申請では担当者との事前相談が実質的に必須になります。
申請前チェックリスト
対象鉱山の種類(石炭・亜炭以外の金属鉱山であること — 銅・鉛・亜鉛・金・銀等)
鉱業権者の状況(無資力または現存しない場合は地方公共団体が申請主体、採掘終了後長期間経過で再開見込みなしなら坑廃水処理事業者も可)
管轄の確認(対象鉱山が近畿支部管轄地域 — 滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山等 — にあること)
鉱害の証拠(水質検査データ、土壌分析結果、地盤変動データなど客観的な証拠があること)
事業計画の用意(工事内容・工期・費用の詳細計画があること — 事前相談後に策定でも可)
この確認リストを見て、「うちの鉱山は対象かも」と思ったら、まず相談するのが一番ですね。
そうです!事前相談は無料ですし、担当の宮本さん・茨さんはこの分野の専門家ですので、ぜひ遠慮なく聞いてみてください。
審査でどんなことを見られるんですか? 採択されやすくするコツはありますか?
科学的データによる鉱害の深刻度の立証(水質検査で重金属濃度を定量化し、環境基準を何倍超えているかを明示。周辺の水源・農地・漁業への影響を数字で示すと説得力増)
合理的な工事計画の提示(工法選定の妥当性・工期設定の根拠・費用積算の根拠を専門家の意見を交えて明確に示す。類似工事の実績を参考にした計画が評価される)
環境改善効果の定量化(工事後の水質改善予測値・環境リスク低減の範囲を数値で提示。「補助金を投入するとこれだけの環境改善が得られる」という費用対効果を示す)
データが大事なんですね。どんなデータを集めておけばいいですか?
主要なものをあげると——水質検査(pH、カドミウム・銅・砒素等の重金属濃度)、土壌汚染の調査結果、坑廃水の流量データ、地盤変動の測量データ(危害防止工事の場合)あたりですね。これらを環境コンサルタントに依頼して揃えておくと、申請書類の作成がぐっとスムーズになります。
環境コンサルタントへの依頼費用も対象経費に入りますか?
調査・設計費として計上できます!事前に対象経費として認められるか、担当部署に確認してから発注するのが安心です。
項目 内容 制度名 休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金(令和7年度補正)【近畿支部】 実施機関 経済産業省 中部近畿産業保安監督部近畿支部 補助率 補助対象経費の4分の3(75%) 補助上限額 約11億2,381万1千円 申請開始日 2026年3月25日 申請期限 2027年3月31日 対象地域 近畿支部管轄地域(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山等) 申請窓口 中部近畿産業保安監督部近畿支部 鉱山保安課 電話番号 06-6966-6062 公式ページ Jグランツ 制度ページ
はい、この補助金は全国の産業保安監督部で公募されています。令和7年度補正では近畿支部(ID: 66594)以外にも、同額の約11.2億円で以下が公募されています——
そうです。令和7年度予算の通常枠(
近畿支部 ID: 234 、上限約33.6億円)とは別の公募です。今回の「補正」は令和7年度補正予算で追加された分で、上限額が異なります。
鉱害防止に関連して、他にも使える補助金はありますか?
実はあるんですよ。
「休廃止鉱山の鉱害防止に係るエネルギー使用合理化事業費補助金」 というものがあって、坑廃水処理施設の省エネ化をサポートする制度です。近畿支部では
令和6年度版(ID: 1162) が過去に公募されています。
つまり、坑廃水の処理施設を作る補助金(今回の補助金)と、その施設を省エネ化する補助金(エネルギー合理化)が別にあるということですか?
まさにその通りです。ただし、
同一工事への複数の国庫補助金の重複受給はできません 。対象経費を明確に区分できれば、防災関連(国土交通省)や土壌汚染対策(環境省)の補助金と組み合わせられるケースもあります。詳細は担当部署にご相談ください。また、「災害対策分」の補助金も別途あります。台風や豪雨で停電した際に坑廃水処理施設の機能を維持するための非常用発電機・燃料タンク・貯水槽などを対象とした
令和7年度補正第1回公募 災害対策分(ID: 264) も公募されています。
同一の工事・事業について、複数の国庫補助金を重複して受給することはできません
対象経費を明確に区分した場合に限り、異なる省庁の補助金との組み合わせが可能な場合があります
他の地域監督部への重複申請も不可。鉱山所在地の管轄監督部のみに申請してください
申請を考えている担当者から「これはどうなの?」という質問が多そうなものを教えてください。
直接の申請はできません。ただし、地方公共団体や坑廃水処理事業者が受け取った補助金で工事を発注する側になりますので、建設会社や土木コンサルタントは受注者として関わることができます。
申請書が届いてから交付決定まで通常30日以内とされています。ただし、大規模な事業計画の審査や追加資料の提出が必要な場合はもう少し時間がかかることもあります。余裕を持ったスケジュールで動くことをおすすめします。
公募期間が2027年3月31日まで1年あるのに、早く申請したほうがいいですか?
はい、早期申請を強くおすすめします 。予算の範囲内での補助になりますので、予算が消化された時点で受付が終わる可能性があります。また、交付決定後に工事を開始する必要があるため、工事期間を考えると逆算して早めに動くことが大切です。
中部近畿産業保安監督部近畿支部の管轄は主に近畿地方(滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)です。具体的な管轄範囲は支部に直接ご確認ください。
過去の傾向を見ると、毎年度の予算成立後(3月〜4月頃)に通常枠の公募が始まり、補正予算分は成立後に追加公募される形です。
令和7年度の通常枠(近畿支部 ID: 234) は上限約33.6億円でもっと大きな枠で公募されています。既に今年度の申請を逃した方は来年度の公募に備えて、今から事業計画の策定と科学的データの収集を始めることをおすすめします。
今すぐ申請できない自治体や事業者も、次の公募に向けて今から動けることはありますか?
むしろ、今から動き始めることが採択への近道です。この補助金は「鉱害の深刻度と緊急性」で優先度が決まります。つまり、日頃からデータを蓄積しておくことが最大の準備になります。
3段階で動くとよいです。まずフェーズ1として、現状把握のためのデータ収集 です。定期的な水質モニタリング(重金属濃度・pH)、坑廃水の流量測定、地盤変動の測量、農地や河川への影響調査を実施します。これは申請書類の中核になる証拠データになります。
フェーズ2として事業計画の策定 です。収集したデータをもとに、どんな工事が必要か、どの工法が適切か、費用はどのくらいかを専門家(環境コンサルタント・土木設計事務所)と相談しながら計画を作ります。このフェーズで担当部署への事前相談も行いましょう。
フェーズ3が申請書類の作成と提出 です。交付要綱の様式に従って書類を作成し、Jグランツで電子申請します。フェーズ1・2がしっかりできていれば、フェーズ3は比較的スムーズです。全体でざっくり2〜6ヶ月の準備期間 を見ておくとよいでしょう。
なるほど。日頃からデータを取り続けることが大切なんですね。
そうです。この補助金は毎年公募されています。1年目で採択されなくても、データをしっかり蓄積してブラッシュアップした計画で2年目に臨む自治体が採択されるケースも多いんです。諦めずに準備を続けることが重要ですよ。