室谷さん、今日は「休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金」について聞かせてください。まず、「鉱害」という言葉が聞きなれないんですけど、どういう意味ですか?
「鉱害」というのは、鉱山の採掘活動によって引き起こされる環境・人体への被害のことです。一番身近なのが坑廃水による水質汚染 で、鉱山内部に染み込んだ水が重金属を溶かして川や地下水に流れ込む問題なんです。
えっ、今も現役で採掘してる鉱山じゃなくて、閉山後の話ですか?
そうなんです!ここが大事なポイントで、採掘を止めた後も坑廃水は何十年も流れ続けます。日本には明治・大正・昭和期に採掘されて、今は閉山した鉱山がたくさんあるんです。
マジです。例えば坑廃水に含まれる重金属(鉛・亜鉛・カドミウム等)が農業用水や飲料水源を汚染するリスクがあります。また、採掘跡の空洞による地盤沈下・陥没のリスク も住宅地近くに残っているケースがあります。
本来は鉱山を掘った会社(鉱業権者)が責任を持つんですが、多くのケースで会社がすでに倒産・解散していたり、財産がない「無資力」の状態で、事実上の放置状態になっているんです。
なるほど、それが問題なんですね。じゃあ今日の補助金は、そういった問題を解決するためのものですか?
その通りです。経済産業省が「もう誰も対処できない休廃止鉱山の環境被害を国が支援しましょう」という制度として設けているのが、この休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金なんです。
鉱害防止補助金の仕組みフロー図
今回の令和7年度補正版は、どんな特徴があるんですか?
大きな特徴は3つあります。まず補助率が対象経費の4分の3(75%) という非常に高い割合です。鉱害対策は社会インフラ的な公益性があるので、国が大半を負担する設計になっています。
補助率75%はすごいですね!上限額はいくらですか?
補助上限額は約11億2,381万1千円 です。令和7年度補正予算に基づく大型事業で、坑廃水処理施設の大規模建設工事なんかにも対応できる規模感です。
もう一つ、申請期間が2026年3月25日から2027年3月31日まで約1年間というのも特徴です。大規模な工事計画を立てるのに十分な時間が確保されています。
この補助金は全国の産業保安監督部が地域ごとに管轄しています。【中部監督部】という表記は、中部近畿産業保安監督部が担当している版ということです。管轄地域は主に愛知県・岐阜県・三重県・静岡県・長野県・新潟県・富山県・石川県・福井県などの中部地方です。
他の地域にも同様の補助金があるんですね。中部以外の自治体はどうすればいいですか?
はい、東北支部・関東監督部・北海道監督部・九州監督部など各地域で同様の公募があります。管轄地域外の鉱山については、対象鉱山の所在地を管轄する監督部に申請してください。
補助対象者の種類と要件
申請できるのはどんな人・組織ですか?まず教えてください。
3つの主体が申請対象者です。一つ目は地方公共団体(市町村・都道府県等) 、二つ目は坑廃水処理事業者、三つ目は指定鉱害防止事業機関です。
一般の民間企業は対象外です。ただし「坑廃水処理事業者」として申請できるケースがあります。これは条件があって、関係地方公共団体が「この処理事業は必要だ」と認定したものに限られます。
地方公共団体が申請するには、対象となる鉱山が「鉱業権者が無資力または不存在」である必要があります。つまり、本来責任を負うべき会社が倒産・解散していたり、財産がなくて対処できない状態の鉱山についてです。
坑廃水処理事業者の申請対象になるのは2種類の鉱山です。一つが鉱業権がすでに消滅している鉱山 、もう一つが鉱業権は存続しているが採掘活動を終了してから長期間が経過し、今後再開見込みのない鉱山です。
石炭鉱業と亜炭鉱業はこの補助金の対象外 です。石炭鉱害については別の制度(例えば石炭鉱害賠償等臨時措置法関連の制度)があるため、そちらをご確認ください。
この補助金は石炭鉱業および亜炭鉱業に係る鉱山を明示的に除外しています。金属鉱山・非金属鉱山(銅鉱山、亜鉛鉱山、硫黄鉱山等)の休廃止鉱山が主な対象です。石炭関連の鉱害対策については別途、経済産業省の担当部署にお問い合わせください。
法令(鉱業法等)に基づいて経済産業大臣が指定した機関です。一般的には自治体や業界団体が指定を受けているケースが多く、申請の際は指定を受けていることを確認してください。
具体的にどんな工事が補助されるのかが気になります。
大きく4カテゴリに分かれます。交付要綱の第4条に詳しく定められていて、けっこう幅広いんですよ!
カテゴリ 具体的な対象 鉱害防止工事費 坑廃水処理施設の建設・改修、中和処理設備の整備、沈殿池の建設、捨石・鉱さいの切取り・運搬、かん止堤・擁壁の築造 危害防止工事費 地盤沈下防止の充填工事、陥没防止の補強工事、法面崩壊防止工事、山腹水路・沢水排水路の設置 坑廃水処理費 薬品費、処理施設の運転・維持管理費、水質モニタリング費用 調査・設計費 鉱害調査費、工事設計費、環境影響調査費
調査・設計費も補助されるんですね、それはありがたい。
そうですね。大規模な鉱害防止工事は、まず調査・測量・設計が必要になるので、そのコストも補助対象に含まれています。
補助対象外の費用はいくつかあります。まず稼働中の鉱山に係る費用 は一切対象外です。また、鉱業権者に資力がある場合の工事費、自己の採掘活動に起因する坑廃水処理費なども対象外となります。
稼働中の鉱山に係る費用
鉱業権者に資力がある場合の工事費(無資力・不存在が前提)
自己の採掘活動に起因する坑廃水処理費
石炭鉱業・亜炭鉱業に係る鉱害防止費
事業に直接関係のない一般管理費
交付要綱第3条第2項に「補助金の交付決定額の下限は、事業の実施が特に必要と認められるものを除き、原則100万円」と定められています。ごく小規模な工事は対象になりにくい可能性があります。
実際に申請したい場合、どういう手順で進めればいいですか?
まず絶対に先にやるべきことは中部近畿産業保安監督部への事前相談 です。この制度は専門性が高く、対象要件も細かいので、いきなり書類を作り始めるのはリスクが高いです。
対象鉱山の基本情報(所在地・旧鉱山名・採掘していた鉱物の種類・廃山時期)と、鉱業権者の現状(倒産・解散・不存在の根拠)を整理しておくとスムーズです。
「交付決定前に着手しない」というのは大事なポイントですね。
非常に重要です。補助金全般のルールとして、交付決定前に工事を始めてしまうと補助対象外になるリスクがあります。これは絶対に守ってください。
この補助金は社会的公益性が高い制度なので、鉱害の深刻度と工事の緊急性 が審査の核心部分です。地方公共団体が日頃から鉱害状況をモニタリングし、データを持っているかどうかが大きく影響します。
客観的データによる鉱害証明 : 水質検査結果(重金属濃度)、土壌汚染調査、地盤変動の測量データなど科学的根拠を揃える。「感覚的に危ない」ではなく数字で証明することが重要
技術的に妥当な工事計画 : 採用する工法の選定理由、使用技術の妥当性、工期設定の根拠を明確に。類似工事の実績データや専門家(地質・環境コンサルタント等)の技術意見書を添付すると信頼性が大幅に向上する
長期的な維持管理計画 : 工事完了後のモニタリング計画と維持管理体制を具体的に示す。一過性の対処でなく持続的に鉱害を管理する体制があることで事業の持続可能性をアピールできる
予算の中で優先度が判断されるので、社会的影響の大きさ をどれだけ具体的に示せるかが鍵です。周辺住民の飲料水への影響、農業用水の汚染範囲、住宅地への地盤リスクなど、定量的な被害指標を記載することで優先的な予算配分を得やすくなります。
申請準備の目安は最低60日程度です。大規模な鉱害調査や専門家(地質・環境コンサルタント)への依頼が必要なケースでは、さらに余裕を持ったスケジュール設定をお勧めします。申請期間が2027年3月31日まであるので、早めに動いて万全の申請書類を揃える方が有利です。
補助金がいくらもらえるか計算するとき、どう考えればいいですか?
基本的な計算式は「補助対象経費の合計 × 3/4」です。例えば、坑廃水処理施設の建設費が2億円の場合は1億5,000万円が補助金額になります。
補助対象経費の合計 補助率 受取れる補助金額 1,000万円 75% 750万円 5,000万円 75% 3,750万円 1億円 75% 7,500万円 5億円 75% 3億7,500万円 11億2,381万1千円(上限経費) 75% 約8億4,286万円(補助上限額)
補助下限が100万円ということは、事業費として130万円以上ないと申請できないということですか?
厳密には「交付決定額の下限が原則100万円」なので、補助対象経費で言えば約133万円以上の事業規模が目安になります。ただし、「事業の実施が特に必要と認められる場合」は例外があるので、小規模でも緊急性が高い案件は監督部に相談してみてください。
補助金の上限額(11億2,381万1千円)というのは事業全体の上限じゃなくて、補助される金額の上限ですか?
そうです!これが補助金として交付される金額の上限です。事業費(補助対象経費)としてはその4/3倍、ざっくり約15億円規模の工事まで対応できる計算になります。
読者の方からよくある疑問にも答えていただけますか?
もちろんです。まず一番多い質問が「他の補助金と併用できますか?」というもので、同一工事への他の国庫補助金との重複受給はできません 。これは補助金の基本原則です。
対象経費を明確に区分すれば可能なケースがあります。例えば防災関連(国土交通省管轄)や土壌汚染対策(環境省管轄)の補助金と、工事の範囲や費目を分けて申請することは検討できます。ただし、必ず事前に監督部と相談して確認してください。
絶対にダメです。同一鉱山について複数の監督部に重複申請することはできません 。鉱山の所在地を管轄する監督部1カ所に申請してください。
Jグランツで電子申請する場合はGビズIDが必要です。地方公共団体の場合、GビズIDの取得には一定の時間がかかるので、申請を検討している場合は早めに準備しておくことをお勧めします。
対象は石炭・亜炭以外の休廃止鉱山か確認 (石炭・亜炭は対象外)
鉱業権者が無資力または不存在であることの根拠資料 を準備
管轄は中部近畿産業保安監督部(中部地域)か確認 (他地域は別の監督部)
鉱害・危害の発生データ (水質検査、地盤調査)を収集済みか
GビズIDの取得 (電子申請する場合は事前取得が必要)
交付決定前に工事に着手しないこと (着手後の申請は対象外の可能性)
項目 内容 補助金名 休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金(令和7年度補正)【中部監督部】 所管省庁 経済産業省 中部近畿産業保安監督部 補助率 補助対象経費の3/4(75%) 補助上限額 1,123,811,000円(約11億2,381万1千円) 補助下限額 原則100万円(交付決定額) 申請期間 2026年3月25日〜2027年3月31日 対象地域 全国(中部近畿産業保安監督部管轄地域) 対象業種 鉱業、採石業、砂利採取業 Jグランツ申請 可(電子申請) 代理申請 不可
鉱害防止以外の観点から使える補助金は何かありますか?
あります。例えば令和5年度版の
中部監督部版 や
北海道版 が過去に公募されていました。内容の大枠は同じですが、予算額や細かい条件が年度ごとに変わるので、必ず最新の公募要綱を確認してください。
令和7年度補正分については、各地域監督部とも補助上限額は同じ約11億2,381万1千円となっています。ただし各地域ごとに公募が独立しているので、申請先は必ず対象鉱山の所在地を管轄する監督部にしてください。
中部地域以外の地方公共団体や事業者はどこに相談すれば良いんですか?
対象鉱山の所在地によって申請先が変わります。北海道なら北海道産業保安監督部、東北地方なら産業保安監督部東北支部、関東は関東東北産業保安監督部、近畿は産業保安監督部近畿支部、中国は中国四国産業保安監督部、四国は産業保安監督部四国支部、九州は産業保安監督部九州監督部に相談してください。
管轄外への申請は受け付けてもらえません。「どの監督部の管轄か不明」という場合も、まず中部近畿産業保安監督部か、最寄りの産業保安監督部に問い合わせると案内してもらえます。