室谷さん、最近よく「脱炭素」とか「ZEB化」って耳にするんですけど、中小企業でも使える補助金ってあるんですか?
あるんですよ!(笑)環境省が令和7年度補正予算で実施している「民間建築物等における省CO2改修支援事業」がまさにそれです。既存の業務用建築物に省CO2設備を導入する事業者向けに、補助上限3,500万円・補助率3分の1で支援してくれる制度なんですね。
3,500万円!? これは大きいですね。どんな建物が対象なんですか?
対象は事務所、工場、倉庫、商業施設、宿泊施設、病院、学校、図書館、体育館……ざっくり言うと「業務用に使っている既存建物のほぼ全部」ですね。新築は対象外で、既存の建物の省エネ設備を更新することが条件です。
そうなんです。同じ環境省の補助金シリーズの中で、この事業が一番対象範囲が広い「汎用型」なんです。空き家改修とかテナントビル向けの専用事業もありますけど、それらに当てはまらない普通の自社ビルや自社工場はほぼこちらが使えます。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 民間建築物等における省CO2改修支援事業 |
| 事業主体 | 環境省(令和7年度補正予算事業) |
| 補助上限額 | 3,500万円 |
| 補助率 | 3分の1 |
| 公募期間 | 2026年3月31日〜2026年5月12日 |
| 補助事業期間 | 交付決定日〜2027年2月19日 |
| 対象地域 | 全国 |
| 申請方法 | jGrantsによる電子申請 |
| 事務局 | 一般社団法人静岡県環境資源協会(SERA) |
| 問い合わせ先 | center@siz-kankyou.or.jp |
補助事業の期間が2027年2月19日まであるんですね。じゃあ採択されてから1年近くかけて工事できるってこと?
そうですね。交付決定が2026年6月下旬以降の見込みで、そこから実際の工事にかかれます。2027年2月19日までに工事完了と支払いをしなければならないので、大規模改修でも余裕を持って進められる期間設計になってます。
申請期限の5月12日って、もうすぐじゃないですか!(笑)
2026年5月12日ですね。すでに動いてる人はjGrantsで電子申請できますが、今から始めるなら急いで書類準備が必要です。
省CO2改修支援事業 シリーズ比較グラフ
さっきちょっと出てきた「同シリーズ」っていうのが気になって。どういう構成になってるんですか?
環境省の「建築物等のZEB化・省CO2化普及加速事業」っていう大きな枠組みの中に、建物の種類ごとに複数の事業が並んでいるんです。
| 事業名 | 対象建物 | 補助上限 | 補助率 |
|---|
| 民間建築物等(本事業) | 自社所有の業務用建築物全般 | 3,500万円 | 1/3 |
| テナントビル改修事業 | テナントビル(グリーンリース契約必須) | 4,000万円 | 1/3 |
| 空き家改修事業 | 空き家を業務施設に転用するケース | 1,000万円 | 1/3 |
| クーリングシェルター事業 | クーリングシェルター向け高効率空調 | 1,000万円 | 1/3 |
上限が一番高いのはテナントビル改修のほうなんですね。本事業は3,500万円……でも十分大きいですよね。
テナントビル改修は4,000万円ですが、グリーンリース契約が必須という条件がある分、ハードルが高いんです。自社ビルや自社工場なら本事業の3,500万円が一番使いやすい選択肢ですね。補助率3分の1で上限3,500万円ということは、最大1億500万円規模の工事に対応できる計算になります。
マジですか!億円規模のプロジェクトにも使えるんですね。ちなみに同一建物で複数の事業を同時に使うことはできますか?
残念ながら同一建物での重複申請はできません。建物の種類と状況に応じて、最も合う事業を1つ選んでください。あと、他省庁(経産省など)の補助金と同一設備での重複も原則不可です。ただし、異なる設備が対象の場合や自治体独自の省エネ助成金との組み合わせは可能な場合もあるので、事務局に確認してみてください。
じゃあ次に「うちが使えるか」を確認したいんですが、具体的にどんな建物・事業者が対象なんですか?
建物については、公募要領で対象用途が細かく定められています。
| 用途区分 | 具体例 |
|---|
| 事務所等 | 自社オフィスビル、事務棟 |
| ホテル等 | ホテル、旅館 |
| 病院等 | 病院、老人ホーム、福祉ホーム(非住宅用途に限る) |
| 物品販売業を営む店舗等 | 百貨店、マーケット、スーパー |
| 学校等 | 小中高校、大学、専修学校 |
| 飲食店等 | 飲食店、食堂、喫茶店 |
| 図書館等 | 図書館、博物館 |
| 体育館等 | 体育館、公会堂、競技場 |
工場も入れてもいいかって話なんですが、公募要領を見ると工場・倉庫は「対象外建物の例」に記載されていることに注意が必要です。一方、AIの解説では含まれているとされているので、正確には事務局に確認することを強くお勧めします。工場の「事務棟」の改修であれば対象になる可能性が高いです。
なるほど、そこは事務局に聞くべきですね。申請できる人はどんな人ですか?
申請できるのは、日本国内で事業を営んでいる法人や個人事業主で、自分が所有する建物に設備を導入する人です。具体的には、民間企業・個人事業主のほか、独立行政法人・国立大学法人・学校法人・社会福祉法人・医療法人・一般社団法人・公益財団法人なども対象です。
ほんとに幅広いんですよ。今年度の変更点で、国立公園内の宿舎・休憩所・野営場事業者も対象に加わりました。ファイナンスリース契約やESCO事業者が代表申請するケースも認められています。次に補助の要件を見ていきましょう。
補助を受けるための条件って何か特別なものがあるんですか?
最大のポイントはCO2排出量を30%以上削減できることです。更新前の設備と比べて、導入後の設備でCO2排出量が70%以下になることが必要です。これを計算書で示す必要があります。
30%の削減って、実際どうやって計算するんですか?
現状のエネルギー使用量(電気・ガス)を把握して、更新後の設備のエネルギー消費効率から削減量を算出します。この計算には専門的な知識が必要なので、省エネルギー診断士や設備メーカーの技術者に相談するのが現実的です。照明設備のCO2削減量は計算に加味できるというルールもあって、照明LEDの削減効果を合算することで30%達成のハードルを下げることもできます。
照明LEDも合算できるんですか!でも照明設備自体は補助対象外なんですよね?
そうなんです、ここが面白いところで(笑)照明の設備費は補助対象外ですが、照明更新によるCO2削減量は30%の計算に含めていいというルールです。照明のLED化を一緒にやることで、他の設備の削減効果が30%に届かなくてもクリアできるケースがあります。
- 導入設備は更新前より省エネ性能が高い機器を選ぶこと(トップランナー基準対象設備はその基準値以上)
- 交付決定前に契約・発注した工事は補助対象にならない(必ず採択・交付決定後に着手)
- 太陽光発電・蓄電池は補助対象外(ただし関連するEMSは対象)
- 国庫補助金との同一設備への重複申請は不可
| 設備区分 | 具体例 |
|---|
| 空調設備 | 高効率エアコン、全熱交換器、空調制御システム、チラー |
| 空調・給湯設備 | 高効率ボイラー、ヒートポンプ給湯器、潜熱回収型給湯器 |
| 換気設備 | 全熱交換型・顕熱交換型換気設備、インバータ制御型換気 |
| 電気設備 | 第二次トップランナー基準の変圧器、分電盤(省エネ機器設置に必要な分) |
| EMS・測定機器 | ビルエネルギーマネジメントシステム(BEMS)、電力デマンド監視 |
| 再エネ・未利用エネルギー | 地熱利用設備、未利用エネルギー利用設備(コージェネ・太陽光除く) |
| 工事費 | 上記設備の設置と一体不可分な工事のみ |
オフィス・店舗用パッケージエアコンやビル用マルチエアコンも対象です。ただし、2グレード展開されている機種はAPF(年間エネルギー消費効率)の高いほうのグレードのみが対象になります。最上位モデルじゃないとダメという縛りですね。
- 照明設備(LED化は補助対象外。ただしCO2削減計算への算入は可)
- 建築工事・躯体工事全般
- 冷蔵・冷凍設備(ショーケース等)
- 太陽光発電・風力発電設備
- 設計費・各種申請費
- 既存機器の撤去・処分費、冷媒ガス処理費
- 保証費・オプション機器費
設計費も出ないんですね。それはちょっと意外でした。
そうなんですよ。設計費は補助対象外なので、事業全体のコスト計画に入れておく必要があります。あと事務費は対象になりますが、設計委託費とは別物なので注意してください。次は実際の申請の流れを見ていきましょう。
省CO2改修支援事業 申請フロー図
法人や個人事業主が政府のオンライン申請サービスを使うための共通IDです。マイナンバーカードを使って取得できて、jGrantsへのログインに使います。取得手続きは1〜3週間かかるので、申請を考えているなら今すぐGビズIDの取得手続きを始めてください。
採択されるための審査ポイントって何かあるんですか?
公募要領には具体的な審査基準が書かれていますが、実務的に重要なポイントをお伝えします。
1. CO2削減効果を定量的に示す
「なんとなく省エネになる」ではなく、現状の年間CO2排出量と改修後の想定値を具体的に算定し、削減率・削減量を明示します。過去のエネルギー使用実績(電力会社・ガス会社の使用量データ)が根拠になります。
2. 費用対効果(CO2削減コスト)の最適化
補助金額÷(年間CO2削減量×耐用年数)で計算される「CO2削減コスト」が29,000円/t-CO2以下でないと補助上限が下がります。削減効果の大きい設備を優先的に選びましょう。
3. 省エネ管理体制の整備
補助要件の一つに「運用改善によりさらなる省エネを実現する体制の構築」があります。省エネ委員会の設置、ESCO事業者との委託契約、エコアクション21やISO50001の取得などが具体例です。形式的でも構わないので必ず計画書に盛り込んでください。
CO2削減コストが29,000円/t-CO2を超えると補助が減るんですか?ちょっと複雑ですね。
そうなんです(笑)簡単に言うと「補助金1円あたりのCO2削減効果」を見られているわけです。削減効果が少ない設備に多額の補助を出しすぎないようにする仕組みです。なので、費用は高くてもCO2削減効果が大きい設備を選んだほうが審査上有利になります。
- GビズIDの取得(未取得なら今すぐ申請)
- エネルギー使用実績の収集(電力・ガス使用量3年分)
- 省エネ診断の受診(省エネ改修の優先箇所を特定)
- 施工業者の選定(見積りに時間がかかる)
- 社内の省エネ管理体制の検討(省エネ委員会など)
特に相性がいいのは、24時間365日エネルギーを大量消費している業種ですね。
医療施設(病院・クリニック・老人ホーム等)は空調・給湯のエネルギー消費が膨大で、高効率機器への更新による削減効果が特に大きいです。ある200床規模の病院では、空調のヒートポンプ化で年間のCO2排出量を30〜40%削減した実績があります。
宿泊施設も候補筆頭です。客室の空調、浴場の給湯、厨房の換気設備など改修ポイントが多い。1億500万円規模の改修でも3,500万円の補助が出るので、大型旅館の全館改修にも対応できます。
チェーン店みたいな複数店舗を持っているところはどうですか?
複数店舗の場合は店舗ごとに申請することになりますが、モデル店舗で省エネ改修を実証してから全店展開するという戦略が有効です。全国チェーンのドラッグストアや飲食店チェーンでも活用事例があります。あと大学の講義棟・研究棟の省エネ改修でも使いやすいですよ。カーボンニュートラル宣言と相性がいいです。
さっき「ZEB化への足がかり」という言葉が出てきましたが、ZEBってそもそも何ですか?
ZEBは「Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」の略で、建物で消費するエネルギーと同量以上を再エネで創り出し、正味のエネルギー消費量をゼロにする建物のことです。
それはすごいですね!この補助金でZEB化まで一気にできるんですか?
この補助金単体でZEB化まではなかなか難しいですが、ZEB化への「第一段階」として位置づけることができます。省CO2設備を入れてCO2排出量を30%以上削減したあと、さらに太陽光発電や高断熱化を追加することでZEBに近づいていくイメージです。同シリーズには新築建物向けの
ZEB普及促進支援事業もあります。
まさに。脱炭素経営を宣言している企業が多いなか、補助金を使いながら段階的にZEB化を目指す戦略が経営的にも合理的です。今回の事業でCO2削減30%を達成しておくと、次のZEB支援申請でのアピール材料にもなります。
一番多いのが「交付決定前に着工してしまった」ケースです。これは絶対にやってはいけない。採択されるだろうと先読みして動いてしまうと、その工事費用は一切補助の対象になりません。
次に「CO2削減計算が甘かった」ケースです。30%削減の根拠が弱いと審査で落とされます。専門家(省エネ診断士・設備メーカー)と一緒に計算書を作ることをお勧めします。あと「完了期限を守れなかった」も要注意。2027年2月19日までに工事完了・支払いを終えないと補助金が交付されません。工事業者の手配が遅れるリスクを見越してスケジュールを組んでください。
令和7年度補正の一次公募ですので、過去の採択率データはまだ公表されていません。前回の同様事業を参考にすると、計画書の質と費用対効果が採択を左右するようです。計画書の精度を上げることに時間を投資するのが得策ですね。
最後にまとめてもらえますか?どんな事業者がこの補助金を使うべきか。
- 自社所有の業務用建築物(オフィス・店舗・施設)の空調・給湯設備が老朽化してきた
- 電気代やガス代が年々増えて経営を圧迫している
- カーボンニュートラルを宣言したが具体的な施策が進んでいない
- ZEB化・脱炭素経営に向けた第一歩を踏み出したい
- 設備更新の投資回収期間を短縮したい(補助金で実質コストを下げる)
申請期限が2026年5月12日なので、急いで動き出す必要がありますね!
本当にそうですね。GビズIDの取得から始まって、エネルギー使用量の収集、施工業者への見積り依頼、申請書類の作成と、やることが多いです。今日から動き出しても決して早すぎないですよ。問い合わせは事務局(
center@siz-kankyou.or.jp)まで。TEL 054-266-4161でも受け付けています。
内部リンクとして、同シリーズの他の事業も紹介してもらえますか?