今日は大分県の「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」について聞きたいんですが、そもそも妊孕性温存療法って何ですか?
簡単に言うと、がん治療を始める前に、将来子どもを持てる可能性を守るための治療のことです。抗がん剤や放射線治療って、卵子や精子を傷つけてしまうことがあるんですよ。
えっ、がんを治そうとしたら子どもが持てなくなるかもってこと!?
そうなんです。だから治療を始める前に卵子・卵巣組織・精子などを凍結保存しておく。これが妊孕性温存療法です。そして大分県はその費用の一部を助成してくれています。
AYAは「Adolescent and Young Adult」の略で、思春期・若年成人のことです。具体的には15歳〜39歳くらいの世代を指します。この年代はがんを発症しても将来の人生がたくさん残っていますから、妊孕性を守ることがとても重要なんです。
なるほど〜。大分県がわざわざ助成してくれるのはすごいですね。
国も同じ制度を持っていますが、大分県は独自にも上乗せ助成をしています。将来子どもを望むがん患者さんが、希望を持って治療に向き合えるようにという思いからですね。
大分県 妊孕性温存療法 助成額一覧
5つの要件をすべて満たした方が対象です。まず大分県内に住所がある方で、治療開始日以降・申請時点のどちらも大分県内に居住していることが必要です。
そうです。次に年齢要件があって、妊孕性温存療法の場合は凍結保存時に43歳未満であること。温存後生殖補助医療の場合は、治療期間の初日時点で妻の年齢が原則43歳未満の夫婦です。
3つ目の要件が原疾患の条件です。がんだけじゃなくて、造血幹細胞移植が必要な再生不良性貧血やファンコニ貧血、アルキル化剤を使う全身性エリテマトーデス・ループス腎炎なども対象に含まれます。
えっ、がん以外も対象なんですか!それは知らなかった!
意外と知られていないポイントですよね。4つ目の要件として、指定医療機関の生殖医療専門医と原疾患担当医の両方が「温存治療をしても生命予後に影響しない」と判断していることが必要です。
医師のお墨付きが必要なわけですね。そして5つ目は?
指定医療機関から十分な説明を受けて、研究参加(臨床情報の提供)に同意していること。この5つすべてが揃って初めて申請できます。
- がん(ガイドライン記載の妊孕性低下リスク治療を受けるもの)
- 乳がん(ホルモン療法による卵巣予備能の低下が想定されるもの)
- 再生不良性貧血・ファンコニ貧血等(造血幹細胞移植を伴うもの)
- 全身性エリテマトーデス・ループス腎炎等(アルキル化剤投与を伴うもの)
未成年も対象です。その場合は本人もできる限り説明を受けた上で、親権者または未成年後見人の同意が必要になります。保護者が申請する場合は委任状は不要ですよ。
治療の種類によって助成上限額が違います。まず妊孕性温存療法の部分から。
| 治療の種類 | 1回あたり助成上限額 | 通算回数 |
|---|
| 胚(受精卵)の凍結 | 35万円 | 通算2回まで |
| 卵子の採取・凍結 | 20万円 | 通算2回まで |
| 卵巣組織の採取・凍結 | 42万円 | 通算2回まで |
| 精子の採取・凍結 | 4万円 | 通算2回まで |
| 手術を伴う精子の採取・凍結 | 35万円 | 通算2回まで |
卵巣組織の採取・凍結が42万円で一番高いんですね!
そうです。卵巣組織の採取は手術を伴う治療なので費用も高くなりがちで、それに合わせて助成上限も高めに設定されています。
「通算2回まで」というのは、同じ治療を2回やっても2回分助成されるってこと?
その通り。ただし異なる治療を受けた場合もすべて合わせて通算2回までという点が重要です。例えば卵子の採取を1回、胚凍結を1回受けたら、それで通算2回達したことになります。
こちらは凍結した検体を使って妊娠を目指す治療への助成です。
| 治療の種類 | 1回あたり助成上限額 | 通算回数 |
|---|
| 凍結した胚(受精卵)を用いた生殖補助医療 | 10万円 | 妻40歳未満: 通算6回まで / 妻40歳以上: 通算3回まで |
| 凍結した未受精卵子を用いた生殖補助医療 | 25万円 | 同上 |
| 凍結した卵巣組織再移植後の生殖補助医療 | 30万円 | 同上 |
| 凍結した精子を用いた生殖補助医療 | 30万円 | 同上 |
40歳未満なら最大6回、40歳以上なら最大3回です。ただし出産した場合、または妊娠12週以降の死産に至った場合は助成回数がリセットされます。新しい命のために再スタートできるんです。
それは希望が持てますね。事実婚のカップルも申請できるんですか?
温存後生殖補助医療については事実婚のカップルも対象です。ただしその場合、両人の戸籍謄本・住民票に加えて、事実婚関係に関する申立書の提出が必要で、生まれた子どもを認知する意向があることも確認されます。
- 入院室料(差額ベッド代等)
- 食事療養費、文書料等の治療に直接関係しない費用
- 凍結保存の維持費(初回の凍結保存経費は対象)
- 他制度の助成を既に受けている費用
- 特定不妊治療費助成事業で同一の治療期間・内容で助成を受けた場合
申請の流れ フローチャート
まず大前提として、大分大学医学部附属病院またはセント・ルカ産婦人科(大分市内の指定医療機関)、もしくは県外の都道府県指定医療機関で受診する必要があります。
令和7年4月から電子申請もできるようになったって書いてありましたね!
〒870-8501 大分市大手町3丁目1番1号 大分県福祉保健部 県民健康増進課 生活習慣病対策班 宛てです。特定記録・簡易書留・レターパック等の追跡できる方法で送付してください。郵送料は申請者の負担です。
大分県庁舎別館4階の県民健康増進課です。平日(月〜金)の午前8時30分から午後5時15分まで受け付けています(祝祭日・年末年始を除く)。
書類がいろいろあって大変そうですが、整理してもらえますか?
妊孕性温存療法と温存後生殖補助医療で書類が異なります。まず妊孕性温存療法の場合です。
| 番号 | 書類名 | 備考 |
|---|
| 1 | 助成金交付申請書兼実績報告書(第1-1号様式) | - |
| 2 | 妊孕性温存療法証明書(様式第3-1号) | 医療機関に記入を依頼 |
| 3 | 原疾患治療証明書(様式第3-3号) | 原疾患担当医に記入を依頼 |
| 4 | 住民票等(大分県内居住の確認) | - |
| 5 | 領収書等(費用額の確認) | - |
| 6 | 振込先口座通帳の写し | 名義人・口座番号・支店名が分かるページ |
| 7 | チェックシート(温存療法分) | - |
| 8 | 委任状(代理申請の場合のみ) | 保護者申請なら不要 |
そうです。運転免許証(両面)、マイナンバーカード(表面のみ)、パスポートのいずれかの画像データが必要です。温存後生殖補助医療の場合は、さらに夫婦関係を証明する書類(戸籍謄本等)が追加されます。
申請書には「患者アプリ番号」の記入欄があります。これは日本がん・生殖医療登録システム(Jofr-2)に登録することで得られる番号です。原則としてこの番号の取得が必要なので、受診した指定医療機関に確認してください。
妊孕性温存治療または温存後生殖補助医療が終了した日の属する年度の3月末日まで(必着)です。年度内が基本ですね。
例えば2026年1月に治療が終わったら、2026年3月31日までに申請するってこと?
正確にはその通りです。ただし、妊孕性温存療法の直後に期間を置かずに原疾患治療を開始しなければならないなど、やむを得ない事情がある場合は翌年度に申請することも可能です。
申請後、書類内容を審査して文書で助成決定と金額が通知されます。そこから約1ヶ月後に指定口座に振り込まれるという流れです。
不備がある場合は助成金が支給されないこともありますし、支給できない場合は文書でその理由が通知されます。証明書などの書類の記入は医療機関に依頼するものが多いので、早めに準備を始めることをおすすめします。なお、証明書の発行には文書料がかかることがあり、その費用は自己負担になります。
大分県がATMで手続きをするよう求めることは絶対にありません。電話で個人情報(口座番号・マイナンバーなど)を聞くこともありません。不審な電話・メールがあった場合は、必ず大分県福祉保健部 県民健康増進課(大分県庁)に直接お問い合わせください。
2026年5月現在、大分県内の指定医療機関は次の2か所です。
| 医療機関名 | 所在地 | 連絡先 |
|---|
| 大分大学医学部附属病院 | 由布市挾間町医大ケ丘1丁目1番地 | TEL 097-549-4411 |
| セント・ルカ産婦人科 | 大分市東大道1丁目4番5号 | TEL 097-547-1234 |
県外の医療機関であっても、その医療機関が所在する都道府県から指定を受けていれば、大分県の指定医療機関とみなされます。つまり転居前に治療を始めた場合や、専門医療機関が県外にある場合でも柔軟に対応できます。
この制度について、よくある疑問をいくつか確認したいんですが。
妊孕性温存療法は、異なる治療を受けた場合も含めて通算2回までです。温存後生殖補助医療は、妻の年齢が40歳未満なら通算6回まで、40歳以上なら通算3回まで。ただし出産または妊娠12週以降の死産の場合はリセットされます。
はい。造血幹細胞移植が実施される再生不良性貧血・ファンコニ貧血等の非がん疾患や、アルキル化剤が投与される全身性エリテマトーデス・ループス腎炎等も対象です。詳細は指定医療機関の担当医にご相談ください。
全額ではなく、治療の種類ごとに定められた助成上限額までです。入院室料・食事療養費・文書料等、治療に直接関係しない費用は対象外。また凍結保存の維持費(初回を除く)も対象外です。他の制度で助成を受けている場合も対象外になります。
体調不良などで温存治療を途中で中止した場合はどうなりますか?
中止した場合でも、それまでに要した温存治療にかかった費用は助成の対象になります。また胚凍結等が正常に行えなかった場合も同様に対象です。
未成年の患者さんの場合、申請はどうすればいいですか?
保護者が申請する場合は委任状は不要です。ただし、できる限り本人も説明を受けた上で、親権者または未成年後見人の同意が必要になります。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 制度名 | 大分県小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業 |
| 対象者 | 大分県在住の43歳未満(凍結時)のがん等の患者 |
| 主な助成額 | 卵巣組織採取・凍結: 最大42万円、胚凍結: 最大35万円 等 |
| 助成回数 | 妊孕性温存療法: 通算2回まで / 温存後生殖補助医療: 3〜6回まで |
| 申請期限 | 治療終了日が属する年度の3月31日まで(必着) |
| 申請方法 | 電子申請・郵送・来庁 |
| 申請窓口 | 大分県福祉保健部 県民健康増進課 生活習慣病対策班 |
| 所在地 | 〒870-8501 大分市大手町3丁目1番1号 |
| 公式ページ | 大分県公式サイト |
大分県には他にも関連する医療費助成制度がありますよね?
がん治療と妊孕性温存、両方に向き合うのは大変だと思いますが、こういった支援があるのは心強いですね。
本当にそうです。まずは指定医療機関の担当医に相談してみることが大切。治療方針を決める前に、生殖医療の専門医とも連携して、将来の選択肢を温存しながら治療に臨んでほしいですね。
- 対象: 大分県在住の43歳未満(凍結時)のがん等の患者
- 助成額: 最大42万円(卵巣組織採取・凍結)
- 申請期限: 治療終了日が属する年度の3月31日まで(必着)
- 問い合わせ先: 大分県福祉保健部 県民健康増進課 生活習慣病対策班(大分県庁別館4階)