室谷さん、うちの会社も従業員のスキルアップをしっかりやりたいと思っているんですけど、東京都ってどんな補助金や助成金があるんでしょう?
いや、これがびっくりするくらい充実してるんですよ!東京都は日本でも最も人材育成支援が手厚いエリアのひとつで、国の制度に加えて都独自の助成金が十数種類あります。全体を把握してる中小企業はまだ少ないので、知ってるかどうかで全然違いますよ。
十数種類!それは多いですね。どうやって整理すればいいですか?
まずは「誰が出してるか」でカテゴリ分けするとわかりやすいです。大きく3つ——国(厚生労働省・経産省)の制度、東京都の制度、そして東京しごと財団が運営する助成金——に分かれてて、それぞれ対象や金額が違います。
| 出所 | 代表的な制度 | 上限額 |
|---|
| 国(厚労省) | 人材開発支援助成金 / 業務改善助成金 | 600万円 |
| 国(経産省) | 働き方改革推進支援助成金 | 1,370万円 |
| 東京都 | テレワーク導入ハンズオン支援助成金 | 250万円 |
| 東京しごと財団 | スキルアップ支援事業(4種類) | 250万円/社 |
| 東京都(最新) | リスキリング・キャリアデザイン応援事業 | 40万円 |
へ〜、省庁ごとに別々に出してるんですね。重複して申請できるんですか?
これが大事なポイントで、基本的に「同じ研修」に対して複数申請はできないんですが、別の研修や別の取り組みなら同時に受けることは可能です。たとえば、DX研修にはしごと財団の助成金を使いつつ、別途テレワーク環境整備で都の助成金を申請する、みたいな使い方ができるんです。
まず東京しごと財団の助成金から聞かせてください。「スキルアップ支援事業」って令和8年度はどんな内容ですか?
令和8年度は4つのメニューに拡充されてるんですよ。事業内・事業外・DXリスキリング・資格取得サポートの4種で、研修の種類に応じて使い分けます。どれも都内中小企業等が対象で、上限は4種合計で最大250万円/社・年度です。
原則、事業内と事業外の合計上限が150万円で、DXリスキリングが100万円(別枠)、資格取得サポートが100万円(別枠)なので、うまく組み合わせれば年間でかなりの金額を回収できます。ただし申請時期に注意が必要で、研修開始の1か月前までに申請しておかないといけないんです。
前もって準備しないとダメなんですね。それぞれの内容、もう少し詳しく教えてもらえますか?
まず事業内スキルアップ助成金は、自社で企画した集合研修が対象です。受講者1人1時間あたり800円が助成されます。3時間以上10時間未満の研修で2名以上が参加すること、が条件です。
少人数の社内勉強会みたいな感じでも使えるんですか?
2名以上で業務命令で実施して賃金払ってれば基本OK。外部講師を呼んで実施すれば問題ないですよ。次に事業外スキルアップ助成金は、外部の公開研修に社員を参加させる場合で、受講料の1/2か2/3(小規模企業なら3分の2)が助成されます。1研修1人あたり上限25,000円です。
外部セミナーや資格講座の費用補填に最適なんです。で、3つ目がDXリスキリング助成金。AI・データ活用など自社のDX推進のための研修に対して、受講料の4分の3(上限75,000円/1人1研修、100万円/社・年度)が助成されます。
DXリスキリングは手厚いですね!3/4ってかなり高い助成率じゃないですか。
そうなんです。補助率の高さという点ではダントツです。それから新設の資格取得サポート助成金、これは令和8年4月30日に新設されたばかりで、建設・建築・運輸分野の国家資格取得に向けた研修費を助成します。上限100万円/社・年度、助成率は1/2です。
令和8年4月に始まったばかりなんですね!知らない会社も多そう。
まさに。受付開始直後なので、競争率がまだ低い可能性があります。建設・運輸系の企業は絶対チェックすべきですよ(笑)
- 事業内スキルアップ助成金: 自社企画研修。受講者1人1時間800円。最大150万円/社(事業外と合算)
- 事業外スキルアップ助成金: 公開研修の受講料1/2〜2/3。上限25,000円/1人1研修
- DXリスキリング助成金: DX関連研修の受講料3/4。上限75,000円/1人1研修、100万円/社・年度
- 資格取得サポート助成金: 建設・建築・運輸分野の資格取得研修費1/2。上限100万円/社・年度(令和8年4月30日新設)
- 問い合わせ先 TEL 03-5211-0391(東京しごと財団 企業支援部 スキルアップ助成金事務局)
スキルアップ支援事業の詳細はこちら
基本的には「研修開始1か月前までに交付申請→研修実施→実績報告→助成金受取」という流れです。jGrantsというオンライン申請システムを使います。まず最初にjGrantsのアカウント取得と、都税の未納がないことの確認が必要なので、早めに準備しておいてください。
東京しごと財団のウェブサイトで募集要項を確認・ダウンロード
jGrantsでアカウント登録(GビズIDの事前取得が必要)
GビズIDの取得が必要なんですね。事前に準備しないといけない。
そうなんです。GビズIDは郵送手続きに1〜2週間かかることがあるので、申請を思い立ったらまず最初にGビズIDの取得から始めるのがコツです。次のセクションでは、東京都独自の外国人支援策を見ていきましょう。
東京都 人材育成補助金 外国人支援フロー図
最近、うちも外国人スタッフを採用したんですけど、そういった場合に使える助成金ってありますか?
あります!東京都は外国人従業員の日本語教育・職場定着支援に特化した助成金を用意してて、これが結構手厚いんです。
「中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金」という制度で、2つのコースがあります。一般コースは、日本語能力試験N2レベル以下の外国人従業員に対して、日本語教育・ビジネスマナー講座・異文化理解講座にかかる費用の1/2を助成。上限は25万円です。
25万円か。それで半分出してくれるなら助かりますね。
もうひとつがウクライナ避難民採用企業コースで、こちらは補助率が10/10、つまり全額助成です。上限50万円ですが、全額なので実質的には非常に手厚い。ウクライナ避難民を採用した企業限定ですが、対象の企業は絶対使うべき制度です。
珍しいです(笑)。国際情勢的な背景もあって特別に手厚い設定になってるんでしょうね。対象の研修内容は日本語教員による日本語教育、ビジネスマナー講座、異文化理解講座の組み合わせです。
- 一般コース: 研修経費の1/2を助成(標準プラン上限25万円、短時間プラン上限15万円)
- ウクライナ避難民採用企業コース: 研修経費の10/10を全額助成(標準プラン上限50万円、短時間プラン上限30万円)
- 対象: 都内中堅・中小企業等の外国人従業員(日本語能力試験N2以下)
- 問い合わせ先 TEL 03-5320-4628(東京都産業労働局 雇用就業部 就業推進課)
外国人従業員研修等支援助成金(一般コース)の詳細 / ウクライナ避難民採用企業コース
テレワーク系の制度も充実してると聞きましたけど、次はそっちを聞かせてもらえますか?
テレワーク推進に使える制度も充実してると聞きましたが、実際どんな制度がありますか?
東京都は働き方改革分野に相当力を入れてて、テレワーク関連だけで複数の助成金があります。代表的なのがテレワーク導入ハンズオン支援助成金で、専門コンサルタントによる支援とセットで最大250万円が助成されます。
そうです。まず都が提供するテレワーク導入コンサルティングを受けて、その提案内容に基づいて環境整備をすると、経費の1/2〜2/3が助成されます。PC・タブレット、VPN環境、業務ソフトなど幅広い経費が対象です。
中小企業が独力でやろうとするとどこから手をつければいいか困りますもんね。コンサル込みは助かります。
まさにそこを解消する設計になってるんです。あと育児・介護との両立を支援するテレワーク導入促進助成金もあって、こちらは上限100万円、助成率2/3〜1/2です。3歳未満のお子さんを育てる社員や介護をしている社員のためのテレワーク環境整備に特化してます。
家族をケアしながら働く社員への支援も手厚いんですね。
東京都はそのあたりが特に充実してます。それから国の制度で働き方改革推進支援助成金も超重要です。これは最大1,370万円で、助成率は3/4(小規模事業者は4/5)。時間外労働削減、年休取得促進、勤務間インターバル制度の導入などが対象です。
上限金額は業種・コース・規模によって変わりますが、複数のコースを組み合わせれば合計でかなりの金額になります。特に令和6年4月から時間外労働の上限規制が建設・運送業にも適用されたので、これらの業種には絶対に活用してほしい制度です。
| 制度名 | 対象 | 上限額 | 助成率 |
|---|
| テレワーク導入ハンズオン支援助成金 | 都内中堅・中小 | 250万円 | 1/2〜2/3 |
| 育児・介護向けテレワーク導入促進助成金 | 都内中小(300人以下) | 100万円 | 1/2〜2/3 |
| 働き方改革推進支援助成金(国) | 全国中小企業 | 1,370万円 | 3/4〜4/5 |
| テレワーク定着促進フォローアップ助成金 | 都内中堅・中小 | 100万円 | 1/2 |
テレワーク系だけでも4種類!どれを選べばいいか迷いますね。
賃上げに悩む会社も多いと思うんですが、そこと紐づいた人材関連の助成金ってありますか?
ありますよ!業務改善助成金がそれで、事業場内の最低賃金を30円以上引き上げたうえで生産性向上の設備投資をすると、その費用の3/4〜9/10が助成されます。上限600万円です。
そうです。設備投資の対象が広くて、POSシステム、業務効率化ソフト、機械設備など多岐にわたります。特に事業場内最低賃金が950円未満の事業者は助成率が9/10になるので、低賃金業種の企業はかなりお得です。
ほんとに手厚いんです。で、これとセットで考えたいのが人材開発支援助成金(厚生労働省)です。従業員に職業訓練を実施した場合に、訓練経費や訓練中の賃金の一部を助成する制度で、4つのコースがあります。
4コースですか、また多い(笑)。それぞれどう違うんですか?
一番使われてるのは「人材育成支援コース」で、これは職務に関連した専門的な知識・技能の習得訓練が対象。次に「人への投資促進コース」は自発的なキャリア形成のための訓練で有給休暇中でも可能。「事業展開等リスキリング支援コース」は新規事業展開に伴う訓練に特化してます。
リスキリング支援コースは成長分野への転換を図る企業向けですね。
東京都人材育成補助金 2026年度 比較図
室谷さん、最近「リスキリング」って言葉をよく聞くんですが、東京都として新しい施策はありますか?
それが令和8年5月に発表されたばかりの情報なんですが、リスキリング・キャリアデザイン応援事業という新しい取り組みがスタートしました。従業員のリスキリング環境整備に取り組む都内中小企業等を応援する制度で、取組内容1項目で20万円、2項目で40万円が交付されます。
キャリアカウンセリングの実施や研修計画の策定・実施などが対象になるとみられています。まだ認知度が低いので、早期に情報収集して申請準備するのが吉ですよ。
あと、副業・兼業推進系の補助金もあるって聞いたんですが…
ありました。「副業・兼業支援補助金」という国の制度で、企業が従業員を他社に副業として送り出す「送出型」と、外部の副業人材を受け入れる「受入型」があります。補助率は1/2で、受入型は1人あたり上限50万円。最大5人まで支援を受けられます。
政府が推進する人材移動・働き方改革の一環です。人手不足の時代に外部の専門人材を副業で受け入れることで、コストを抑えながら専門性を取り込めるメリットがあります。
副業・兼業支援補助金の詳細
多様性推進という観点で、障害者雇用の支援なんかもありますか?
あります!「職場内障害者サポーター事業」という東京都の制度で、都内事業所で障害者を雇用している事業主が対象です。職場内の障害者サポーター養成講座を受講して実践的な支援活動を行うと、最大24万円の奨励金が支給されます。
そうです。単なる奨励金だけでなく、サポーター養成の仕組みを通じて社内の受け入れ体制を整備できる点が特徴です。法定雇用率を満たしながら職場定着率を上げたい企業にとって有効な制度ですね。
職場内障害者サポーター事業の詳細
ここで整理してもらえますか?どの会社にどの補助金が向いてるか、一覧で見たいです。
| 制度名 | 対象 | 上限額 | 助成率 | 特徴 |
|---|
| 事業内スキルアップ助成金 | 都内中小 | 150万円/社 | 800円/人時 | 自社研修に |
| 事業外スキルアップ助成金 | 都内中小 | 25,000円/人 | 1/2〜2/3 | 公開研修に |
| DXリスキリング助成金 | 都内中小 | 100万円/社 | 3/4 | DX研修に。高率 |
| 資格取得サポート助成金 | 建設・建築・運輸の都内中小 | 100万円/社 | 1/2 | 令和8年4月新設 |
| 外国人従業員研修(一般) | 都内中小 | 25万円 | 1/2 | 外国人定着に |
| 外国人従業員研修(ウクライナ) | 都内中小 | 50万円 | 10/10 | 全額助成 |
| テレワーク導入ハンズオン | 都内中堅・中小 | 250万円 | 1/2〜2/3 | コンサル込み |
| 業務改善助成金(国) | 全国中小 | 600万円 | 3/4〜9/10 | 賃上げセット |
| 働き方改革推進支援助成金(国) | 全国中小 | 1,370万円 | 3/4〜4/5 | 最高額 |
| リスキリング・キャリアデザイン(東京) | 都内中小 | 40万円 | 定額 | 令和8年新設 |
| 東京都事業内職業訓練補助金 | 都内中小 | 要問い合わせ | 要問い合わせ | 認定職業訓練向け |
これだけ揃ってると、かなりの金額を回収できそうですね!
最後に、申請する際の具体的なコツを教えてもらえますか?
はい、これが実際に申請するときに差がつくポイントですね。まず何よりも事前申請が絶対条件です。研修が終わってから「そういえば助成金があった」は手遅れ。東京しごと財団の場合は研修開始1か月前、国の制度は2か月前に申請が必要なものもあります。
完全にアウトです(笑)。次に大事なのが書類の記録管理。研修の実施状況、受講者の名前と時間数、支払った費用の領収書——これらを研修実施中からしっかり記録しておかないと、後で実績報告が通らないことがあります。
そうです。それからGビズIDの取得は最優先で。jGrantsでの申請にGビズIDが必要で、郵送手続きに1〜2週間かかります。申請を思い立ったらまずGビズID取得から動いてください。
- 期限: 研修開始前(1〜2か月前)に交付申請が必須。研修後の申請は無効
- 重複NG: 同じ研修への複数助成金の重複申請は禁止
- 書類不備: 受講者名簿・出席簿・支払証明を全て揃えること
- 都税未納: 都税の滞納があると東京都の助成金は申請不可
- GビズID: jGrantsでの電子申請にGビズIDが必要(取得に1〜2週間)
これだけ把握してから申請に臨めば、だいぶ安心ですね。
そうです!あと、商工会議所や東京商工会議所に相談するのもアリです。補助金情報を一括で案内してくれますし、無料相談もあります。補助金の申請支援を専門にしている中小企業診断士や社会保険労務士に相談するのもおすすめです。特に国の助成金(人材開発支援助成金など)は書類が複雑なので、専門家に依頼する会社も多いですよ。
わかりました。まとめると、「まずGビズIDとって、事前申請を忘れずに、書類をしっかり残す」が三大ポイントですね!
完璧です(笑)!あと一点だけ。助成金は「後払い」が基本です。先に研修費を立て替えて、後から助成金が振り込まれる仕組みなので、資金繰りの計画もしっかり立てておいてください。
意外と見落とされがちなポイントなんです。補助金をあてにして経費を組んでると、振込みが数か月後になることもあるので、運転資金は別途確保しておいた方が安全ですよ。
- Step 1: GビズIDを今すぐ取得(jGrantsでの電子申請に必須)
- Step 2: 研修計画を立てたら即座に交付申請(研修開始前1〜2か月)
- Step 3: 研修中の記録(出席簿・受講証明・領収書)を確実に保管
ありがとうございました!東京都に事業所を持つ中小企業は、こんなに多くの人材育成支援を受けられるんですね。他の都道府県の制度も気になってきました。