室谷さん、今日はかなり大型の補助金を持ってきていただいたんですよね。環境省が出しているスタートアップ向けの補助金で、最大4億円って本当ですか?(笑)
ほんとうですよ!(笑)正式名称は「環境保全研究費補助金 イノベーション創出のための環境スタートアップ研究開発支援事業 フェーズ3(大規模技術開発実証)支援事業」です。ERCA(独立行政法人環境再生保全機構)が環境省の補助金を受けて実施している事業で、補助上限額は4億円(総額)、最大4年間にわたって支援を受けられます。
4年間で4億円!これは相当な規模ですね。どんな技術を持つ会社が対象なんでしょう?
対象は気候変動、資源循環、自然環境保全の3領域で環境保全に資する技術シーズを持つ環境スタートアップ企業です。ただし、ただの研究段階じゃなくて、技術成熟度(TRL)がレベル4以上に達していることが前提です。つまり、プロトタイプが実際に機能することは確認できていて、これから大規模実証に持っていきたい、というフェーズの企業が対象ですね。
TRL(Technology Readiness Level)ですか。聞き慣れない言葉ですが、レベル4というのは具体的にどんな状態ですか?
TRLは1から8まであって、レベル4というのは「主要な構成要素が限定的なプロトタイプとして機能することが確認されており、量産化・水平展開に向けて必要となる基礎情報が明確になっている」段階です。で、フェーズ3ではそこからレベル5以上に引き上げることが求められる。レベル5は「実際の導入環境に近い状態での実証が完了している」状態ですね。
なるほど、机上の研究じゃなくて、実際の現場でもちゃんと動くことを証明する段階ですね。
そうです!まさにそこです。LabtoMrktというか、研究室から市場へのギャップを埋める段階を国が補助してくれるわけです。令和8年度(2026年度)の公募期間は2026年5月12日から2026年6月15日14時までです。
環境スタートアップ研究開発支援事業 フェーズ1〜3の構造と補助上限額
せっかくなので、フェーズ1・2・3の違いを整理してもらえますか?どのフェーズに応募すべきか、判断材料が欲しいんですが。
| 事業区分 | 対象 | 補助期間 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|
| フェーズ1(PoC・FS) | 環境スタートアップ企業または起業家 | 1年以内 | 400万円 | 補助対象経費の10/10 |
| フェーズ2 一般枠(R&D) | 環境スタートアップ企業 | 2年以内 | 3,000万円(総額) | 補助対象経費(最大4,500万円)の2/3 |
| フェーズ2 オープンイノベーション枠 | 環境スタートアップ企業 | 2年以内 | 4,000万円(総額) | 補助対象経費(最大8,000万円)の1/2 |
| フェーズ2 SBIR連結型 | 環境スタートアップ企業 | 2年以内 | 3,000万円(総額・年1,500万円) | 補助対象経費(最大2,250万円)の2/3/年 |
| フェーズ3(大規模実証) | 環境スタートアップ企業 | 4年以内 | 4億円(総額・年1億円) | VC等出融資額の2倍または補助対象経費のいずれか低い額 |
ふむふむ。フェーズ3だけ補助率の計算方法がぜんぜん違いますね。「VC等出融資額の2倍」って?
ここが一番ユニークな部分なんですよ!フェーズ3はベンチャーキャピタル(VC)やCVC、事業会社等からの出資額の2倍が補助上限の計算基準になります。具体的には、応募時点から遡って過去3年以内に獲得したVC・CVCからの出資や融資の合計額を2倍した金額、または補助対象経費のいずれか低い額が補助金額になります。
えっ、じゃあVC資金を多く調達している会社ほど多く補助金をもらえるってことですか?
そうです!(笑)たとえば1億円の資金調達をしている場合、4年間で最大2億円の補助金が申請できる計算になります。もし補助対象経費が3億円なら、1年目に8,000万円、2年目から4年目は各4,000万円で合計2億円という申請が可能です。上限の4億円(総額)を受けるには、ざっくり2億円以上の資金調達実績が必要ってイメージですね。
なるほど!民間資金との組み合わせで規模を決めるという仕組みか。これはVC投資を受けているスタートアップにとってはかなり強力な制度ですね。
ここ、本当に重要なのでもう少し詳しく説明しましょう。補助対象となる出資・融資には条件があります。
まず対象となる資金調達の種類ですが、普通の株式発行による出資のほかに、新株予約権、コンバーティブルエクイティ、コンバーティブルボンド、新株予約権付融資、資本性劣後ローンなども含まれます。かなり多様な形態が認められているんです。
それはいいですね。スタートアップがよく使う調達手段がほぼカバーされてますね。
ただし「融資のみ」は認められません。出資か、新株予約権が付いた金融負債が必ず必要です。あと、応募締め切り日から2カ月以内に資金調達が完了している必要があります。確約がある段階でも応募できますが、交付決定は資金調達完了が条件です。
フェーズ3 補助率計算の仕組み(VC出資1億円の場合の年次補助金額)
- 補助上限 : 4億円(総額・年1億円まで)
- 補助率 : VC等出融資額×2 または補助対象経費のいずれか低い額
- 対象期間 : 応募時点から遡って過去3年以内に獲得した資金調達
- 計算例 : 出資1億円 → 最大2億円(4年間合計)の補助申請が可能
- 注意 : 融資のみでは不可、出資または新株予約権付き負債が必要
環境スタートアップ企業というのは、どんな会社が対象になるんでしょう?
フェーズ3では「環境スタートアップ企業」または「環境大臣の承認を得てERCAが適当と認める者」が対象です。環境スタートアップ企業の要件は5つあります。
要件は5つあります——(1)日本に登記されている未上場企業で、技術開発・意思決定拠点が日本国内にあること。(2)環境省から指名停止措置を受けていないこと。(3)中小企業者(科学技術・イノベーション創出活性化法の規定による)であること。(4)みなし大企業に該当しない、概ね15年以内に設立した中小企業者であること。(5)事業実施責任者・主たる事業実施者が競争的研究費制度への参加資格制限を受けていないこと——です。
大企業が株式の過半数を持っているような会社のことです。具体的には、発行済株式の2分の1以上が同一の大企業に保有されている場合、または3分の2以上が複数の大企業に保有されている場合、さらに5億円以上の法人に100%株式保有されている場合は「みなし大企業」として対象外になります。
なるほど、実質的に大企業の子会社みたいな会社はダメということですね。
そうです。あと重要なのが「15年以内に設立」という条件。設立から15年以上経過した中小企業はフェーズ3の対象外です。ただし、登記前でも応募はできますよ。ただし応募締め切り後2週間以内に登記が完了している必要があります。
- 上場企業 は対象外(未上場が必須条件)
- みなし大企業 は対象外(大企業の実質支配下にある中小企業)
- 設立15年超の中小企業 は原則対象外
- エネルギー起源CO2削減系の研究 は対象外(別事業で支援)
- 原子力関連技術 は対象外
- 融資のみで資金調達 している場合は補助率算定で不利
環境保全に資する技術シーズって言っても、かなり幅広そうですが、具体的にどんな事業が対象になりますか?
3つの領域があります。まず気候変動領域。脱炭素ライフスタイルに資する技術、地域脱炭素技術、気候変動適応策の検討に資する気候予測技術、熱中症対策技術、ヒートアイランド対策技術などです。ただし!エネルギー起源CO2の排出抑制に関する研究開発は本事業の対象外なので注意してください。
えっ、脱炭素なのに化石燃料由来のCO2削減はダメなんですか?
そうなんです。そちらは経済産業省の「地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業」で別途支援しています。ERCAの事業は、もう少し広い意味での環境保全——気候変動への適応策や自然環境・生物多様性保全も含む——に重点を置いています。
資源循環領域は、廃棄物処理技術、バイオマスエネルギー利用、海洋プラスチック問題への対応技術、食品ロス処理・堆肥化技術などです。自然環境保全領域は、生物多様性保全技術、生態系サービスの評価・活用、外来種防除技術、森林・里山保全、サステナブルな水資源管理などが含まれます。AI・IoT・衛星データを使った技術も大歓迎です。
幅が広いですね!気候変動×AIとか、資源循環×IoTみたいなかけ合わせ技術も対象になりそうですね。
もちろんです!むしろ審査では「技術的新規性・革新性」が評価項目に入っています。従来技術に対して明確な優位性があるほど評価が高くなります。
補助金で何に使えるのか、対象経費を教えてもらえますか?
基本的に補助事業を直接実施するために必要な経費が対象です。ただし設備については、原則としてリース・レンタルでの対応が求められています。どうしてもリース・レンタルができない設備は購入も認められますが、応募書類にその理由を記載する必要があります。
リースが原則なんですね。それはちょっと制約がありますね。
代表的な補助対象外経費も知っておきましょう。事業に直接関わらない人件費、補助事業に必要ではないオプション品の購入費、既存施設の撤去・廃棄費用、補助事業期間外(交付決定前・事業完了後)の支出、この補助金への申請手続きにかかる費用などは認められません。
| 項目 | 対象 |
|---|
| 直接人件費(事業実施担当者) | ○ 対象 |
| 設備費(リース・レンタル) | ○ 対象 |
| 設備費(購入・やむを得ない場合) | ○ 対象(要説明記載) |
| 委託費・外注費 | ○ 対象 |
| 間接経費 | ○ 対象 |
| 事業に直接関わらない人件費 | ✕ 対象外 |
| 既存施設の撤去・廃棄費用 | ✕ 対象外 |
| 交付決定前の支出 | ✕ 対象外 |
| 他の公募事業と重複する技術開発 | ✕ 対象外 |
他の公募事業との重複はダメなんですね。気をつけないといけないですね。
そうです。NEDO・JSTなど他の機関で採択中の類似内容の事業と重複している場合は応募できませんし、採択後に重複が発生したらすぐにERCAに連絡が必要です。
実際に申請するにはどう動けばいいですか?ステップを教えてください。
まずe-Rad(府省共通研究開発管理システム)への登録が最優先です!これが時間がかかるんですよ。
e-Radへの登録が先決なんですね。2週間以上かかる可能性があるということは、今すぐ動いた方がいいですね。公募は6月15日が締め切りですし。
そうです!2026年5月中に動き始めないと、e-Rad登録が間に合わない可能性があります。特に初めてe-Radを使う企業は要注意です。
| 評価項目 | 評価の視点 |
|---|
| 事業実施の重要性・必要性 | 環境保全の観点から十分な重要性・必要性があるか。課題解決の見通しがあるか |
| 技術的新規性・革新性 | 従来システムに対して新規性・優位性・革新性があるか |
| 事業化・普及の見込み | 海外を含む市場規模があり、技術的・経済的優位性があり、早期実現が可能か |
| 目標設定・達成可能性 | 課題が明確で、目標が具体的・定量的に設定され、達成可能か |
| 事業実施基盤 | スケジュールが適切で、技術基盤(実施体制・実績等)があり、補助事業を完遂できるか |
結構しっかり審査されますね。事業化の見込みまで問われるとは。
そうなんです。ERCAは採択後にも「事業コーディネーター(BC)」という専任の伴走支援担当者を各事業に配置して、技術開発計画・事業化計画・資金調達・販路開拓まで支援してくれます。補助金をもらうだけでなく、社会実装まで一緒に走ってくれる体制が整っているのが、このプログラムの大きな魅力です。
- TRLレベルの証明 : 申請時点でレベル4が完了していることを具体的なデータ(プロトタイプ実験結果等)で示す
- 市場規模の定量化 : 海外市場も含めた事業化後の市場規模を数字で示す。「何年後に売上○億円」という具体目標が重要
- 資金調達の充実 : VC等からの出資額が多いほど補助上限額も増える。応募前に資金調達の積み増しを検討する価値がある
環境省のホームページに過年度の採択事業が公開されています。気候変動・資源循環・自然環境保全の3領域全般にわたって採択事例があります。具体的には、バイオ系の廃棄物処理技術、リモートセンシングを使った生態系モニタリング、農業残渣を活用したバイオマスエネルギーなど、技術の種類は多岐にわたります。
フェーズ3は大型案件のため採択件数は多くありません。補助上限4億円という規模感から、年間でもごく少数の採択に絞られると見ていいでしょう。それだけに、審査書類のクオリティと事前準備が勝負を分けます。
締め切りまでの時間を考えると、今すぐ動き始めた方がいい企業も多そうですね。
そうですね。次回に備えるという意味でも今から準備しておくべきことをまとめると——まずe-Radへの登録(今すぐ)、次にTRLレベル4の文書化(実験データ・プロトタイプの動作確認記録を整理)、そしてVC等からの資金調達状況の整理(出資契約書・意向確認書の準備)、最後に事業化計画の精緻化(市場規模・競合分析・実用化ロードマップ)です。
資金調達も絡んでくるということは、VC面談も並行して進めないといけないですね。
まさに!「補助金の額 = VC調達額×2」という設計なので、このプログラムに応募する前にVCラウンドを組む企業も多いです。VCと「環境スタートアップ補助金に応募するために資金調達したい」と相談するのも有効な戦略です。特にインパクト投資系のVCはこの補助金の仕組みをよく知っていて、ポートフォリオ企業に積極的に勧めるケースもあります。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 補助金名 | 環境保全研究費補助金(イノベーション創出のための環境スタートアップ研究開発支援事業)フェーズ3(大規模技術開発実証)支援事業 |
| 実施機関 | 独立行政法人環境再生保全機構(ERCA)(環境省からの補助を受けて実施) |
| 補助上限額 | 4億円(総額)、年1億円 |
| 補助率 | VC等出融資額の2倍 または 補助対象経費のいずれか低い額 |
| 補助事業期間 | 4年以内 |
| 公募期間 | 2026年5月12日〜2026年6月15日14時 |
| 採択通知 | 2026年8月頃 |
| 申請方法 | e-Rad(府省共通研究開発管理システム)経由 |
| 対象者 | 環境スタートアップ企業(未上場・設立15年以内・中小企業) |
| 対象領域 | 気候変動・資源循環・自然環境保全 |
| 問い合わせ | ERCA環境研究総合推進部 技術管理活用課(erca-tmu[AT]erca.go.jp) |
| 公式サイト | https://www.erca.go.jp/startup/ |
ありがとうございます!最大4億円でしかも4年間、さらにVC調達額に連動して補助上限が決まるという仕組みが本当に独特ですね。環境技術を持つスタートアップには見逃せない補助金だと思いました。
まさにそうです!フェーズ3は大規模実証段階のスタートアップを本気で社会実装まで引っ張り上げることを目的に設計されているので、BCによる伴走支援も含めて非常に手厚い制度です。環境分野で技術を持っている起業家や経営者の方は、ぜひ一度
公式サイトと公募要領をチェックしてみてください。
ありがとうございます!フェーズ1から直接フェーズ3に応募できるというのは知らなかった人も多そうですね。
そうなんですよ。段階的に育てていくイメージが強いですが、最初から大規模実証レベルの技術を持っていれば、フェーズ3から始めて一気に資金を調達するという使い方もできます。
似たような脱炭素・環境系の補助金が他にもあれば教えてもらえますか?
なるほど、業種・技術によって使い分けが必要ですね。
そうですね。ERCAの環境スタートアップ支援は「環境保全技術を持つスタートアップ」に特化した制度で、建築・設備系の補助金とは性格がまったく違います。どちらが向いているかは、自社技術の性質と事業フェーズによって判断してください。環境省の詳細情報は
環境省 過年度事業報告ページにまとまっています。
よくわかりました!今回は環境保全研究費補助金フェーズ3の詳細を解説していただき、ありがとうございました。気候変動・資源循環・自然環境保全の技術を持つ環境スタートアップには、これだけ手厚い支援制度があるということが、多くの方に伝わればと思います。
ありがとうございました。ぜひ
ERCA公式サイトで最新の公募情報を確認してみてください。公募期間は2026年6月15日14時までです。TRLレベルの要件確認と、e-Rad登録、資金調達状況の整理を今すぐ始めることをお勧めします!
- 今日 : e-Radの登録状況を確認(初めての場合は登録手続き開始)
- 今週中 : 公募要領PDFをダウンロードして、TRL要件と対象経費を確認
- 来週まで : VC等からの出資・融資状況を整理し、補助上限額の試算を行う
- 2026年6月上旬 : 事業提案書の完成・e-Radでの申請完了