静岡県の賃上げ補助金・助成金 規模別比較
室谷さん、静岡の製造業って賃上げの話がすごく多いと聞きますけど、実際どんな状況なんですか?
静岡ってヤマハ、スズキ、本田技研の工場があって、浜松は二輪・楽器、静岡市は食品・茶業、東部は富士山麓の精密機械という感じで、日本有数の製造業密集地なんですよ。
大手メーカーが賃上げを続けると、その下請け・サプライヤーの中小企業も追わざるを得ない。「親会社が5%上げた、でもうちは利益が出ない」というジレンマに直面している経営者が本当に多いんです(笑)。
なるほど!追わないと人が離れていくってことですよね。
そうなんです。静岡の最低賃金は2024年に1,034円になりました。全国水準と比べると決して低くないし、製造業の現場は「時給を上げないと求人に全然応募が来ない」という声が増えています。
で、賃上げするお金をどう捻出するかが問題ですよね。そこで補助金の出番?
まさにそこで使えるのが今回紹介する補助金・助成金です。補助金で設備投資して生産性を上げ、その原資で賃上げするという流れが静岡の製造業で急速に広まっています。
具体的にどんな制度があるんですか?規模別に教えてもらえると助かります。
大きく4つのグループで考えると整理しやすいですよ。まず業種・規模を問わず使いやすい「業務改善助成金」、次に静岡県独自の「中小企業等収益力向上補助金」、そして全国制度の「ものづくり補助金」、最後に投資規模が大きい企業向けの「大規模成長投資補助金」です。
4つもあるんですね!どれが自分に合うか、まず全体像を教えてください。
| 制度名 | 補助上限額 | 補助率 | 対象 | 特徴 |
|---|
| 業務改善助成金 | 600万円 | 3/4〜4/5 | 全業種・中小 | 最低賃金を30円以上引上げが条件 |
| 静岡県収益力向上補助金 | 1,000万円 | 1/2〜2/3 | 静岡県内中小企業 | DX枠あり・伴走支援つき |
| ものづくり補助金 | 4,000万円 | 1/2〜2/3 | 全国・全業種 | 設備投資が中心、年複数回公募 |
| 大規模成長投資補助金 | 50億円 | 1/3以下 | 中堅・中小企業 | 投資額1億円以上・省力化必須 |
この表で見ると、投資規模と賃上げのコミット度合いで選ぶ制度が変わるのがわかりますよね。
まず業務改善助成金から教えてもらえますか?名前だけ聞くと「業務改善したら助成金がもらえる」みたいな感じがしますが(笑)。
そうなんですよ、名前がちょっとわかりにくいですよね(笑)。正確には事業場内の最低賃金を30円以上引き上げ、その生産性向上に資する設備投資を行った場合に、設備投資費用を助成する制度です。
「賃上げが先か、設備投資が先か」がちょっと混乱しそうですが?
ここが重要なポイントで、正しい順番は「申請→設備導入→賃上げ実施→実績報告」です。先に賃上げしてから申請しようとすると対象外になるリスクがある。静岡労働局に事前相談するのが一番確実ですね。
静岡労働局(TEL:054-271-9917)が窓口です。浜松方面なら浜松労働基準監督署でも受け付けてもらえます。補助額は上限600万円で、補助率は3/4〜4/5。最低賃金が950円未満の事業場は4/5に上がる設計です。
静岡の最低賃金が1,034円なので、4/5の対象にはならないですね。
そうなんですよ。でも3/4でも十分手厚いです。100万円の設備投資なら75万円が助成されるわけですから。対象経費の範囲も広くて、POSシステム、自動梱包機、省力化ソフトウェアなど、業務効率化につながるものが対象になります。
次は静岡県独自の補助金ですよね。これが一番のポイントかなと思っています。
そうです!これが今2026年度に使える静岡県独自の目玉制度です。公益財団法人静岡県産業振興財団(RIC静岡)が事務局で、補助上限額は1,000万円、補助率は通常枠で1/2、賃上げ要件を満たすと2/3になります。
「賃上げ要件を満たす」って具体的にどういうことですか?
対象期間内に事業場内最低賃金を一定割合以上引き上げることが条件です。DX枠という選択肢もあって、デジタル化・IT投資をセットにすると優遇される仕組みになっています。
2026年度第1次公募が4月1日から5月15日まで、まさに今が締切直前という状況ですね!(笑)。第2次公募がいつ始まるかはRIC静岡の公式サイトを確認してください。
商工団体(商工会・商工会議所)の伴走支援がついてくるのも特徴で、計画書作成が不慣れな事業者でも申請しやすい設計になっています。静岡で賃上げを検討しているなら真っ先に押さえておきたい制度です。
「ものづくり補助金」ってよく聞きますが、賃上げと何か関係あるんですか?
直接「賃上げのための助成金」ではないんですが、賃上げ加点という仕組みがあって、賃上げ計画を示すと採択率が上がるんです。静岡の製造業が一番多く使っている国の補助金の一つです。
21次締切の結果が2026年1月に出て、採択率はざっくり34%でした。3件に1件通る計算ですね。補助上限は最大4,000万円、補助率は1/2または2/3で、自動化・省力化設備の導入に使えます。
21次締切はすでに終わっていて、22次以降の締切を待つ形です。ものづくり補助金は年に複数回公募があるので、次の公募スケジュールを公式サイトで確認しておくといいですよ。申請前にGビズIDの取得が必要で、取得に2〜3週間かかるので早めに動いておくのが鉄則です。
「大規模成長投資補助金」って名前からして規模が違いますね(笑)。
補助上限50億円という国内最大級の補助金で、投資規模1億円以上の省力化設備導入が前提です。静岡の製造業でも、工場の大規模更新や新拠点設立を検討している中堅企業にとっては選択肢になります。
50億円って桁が違いすぎますが(笑)、補助率は1/3以下なんですね。
そうなんです。50億円の1/3でも16億円以上もらえるんですけど、それだけ大きな投資をする前提ですから。小規模事業者や投資額が数千万円の企業には向きません。5次公募が現在進行中で、事務局は野村総合研究所に変わっています。
賃上げ補助金・申請の流れ(業務改善助成金の場合)
実際に申請するときの流れを教えてもらえますか?初めてだと何から手をつければいいか迷います。
まず相談窓口に行くのが一番です。静岡県内で使えるのが、静岡県よろず支援拠点(RIC静岡内)、各地商工会議所・商工会、そして制度によっては静岡労働局です。
1相談窓口で事前相談(補助金診断・自社要件の確認)
2事業計画書・申請書の作成(支援機関の伴走支援を活用)
3jGrantsまたは郵送で申請(GビズIDの事前取得必須)
国の補助金申請に使う事業者の電子証明みたいなものです。法務局で登記されている事業者なら誰でも無料で取れますが、取得に2〜3週間かかる。申請前月には動いておかないと締切に間に合わない、というのが最大の落とし穴ですね。
- GビズIDの取得: 国補助金はほぼ必須。2〜3週間かかるので早めに申請
- 賃上げ計画の数値化: 何円/何人分を引き上げるか具体的な数字を用意する
- 設備の見積書: 補助対象経費の明細と金額の根拠
- 商工会への登録(収益力向上補助金の場合): 静岡県内の商工会・商工会議所が伴走支援窓口
同一の設備・経費に対して複数の補助金を重複受給するのは原則禁止です。ただし、設備A(業務改善助成金)と設備B(ものづくり補助金)のように対象経費が重ならない組み合わせはOKです。これは事前に各窓口に確認が必要ですね。
- 先行賃上げ: 申請前に賃上げしてしまうと対象外になるケースがある(業務改善助成金は要確認)
- 補助対象経費の誤解: 賃金原資(給与そのもの)を補助する制度は少ない。多くは省力化設備への投資が対象
- 採択後の資金繰り: 補助金は採択後に経費を使う後払い方式。キャッシュフローのバッファを持っておくこと
賃上げってどのくらいしたら補助金の対象になるんですか?最低ラインを教えてください。
業務改善助成金は「事業場内最低賃金30円以上の引上げ」が最低条件です。ただ、引き上げ額が多いほど助成上限額が上がる仕組みがあって、90円以上引き上げると上限が600万円まで上がります。
静岡の最低賃金が1,034円だから、そこから30円上げて1,064円にすれば基本条件はクリアなんですね。
その通りです。小規模事業者で従業員2〜3名なら、30円引き上げても年間の増加人件費は20〜30万円程度。それで75万円相当の設備投資ができれば実質的にプラスになりますよね。
ものづくり補助金の「賃上げ加点」って、どのくらい採択率に影響するんですか?
審査項目の配点詳細は非公表なんですが、実務的には「賃上げ計画あり」の事業者の採択率が明らかに高い傾向があります。給与支給総額年率1.5%以上の増加、1人当たり給与年率1%以上増加を計画として示すことが重要です。
静岡県の製造業で特に相性がいい補助金はありますか?
浜松・磐田エリアの二輪・輸送機械系なら、省力化投資が大きいので大規模成長投資補助金との相性がいいです。静岡市・富士市の食品加工や精密部品系は、ものづくり補助金で衛生管理設備や自動検査装置を入れてから収益力向上補助金で人材育成経費をカバー、という使い方が多いですね。
なるほど、地域特性に合わせた使い方があるんですね!
あとは看過されがちですが、医療・福祉業界の事業者も賃上げプレッシャーは強いです。介護報酬改定の影響もあって、ケアマネ事務所向けの「居宅介護支援事業所事務職員雇用支援補助金」(上限195万円)なども存在します。業種によって使える制度が全然違うので、自分の業種に合った制度を漏れなく確認してほしいですね。
今日の話をまとめると、結局まず何をすればいいですか?
3ステップで考えてもらうといいです。まず「今の投資規模を確認する」。1億円以上の工場新設や大型設備なら大規模成長投資補助金、数百万〜数千万円の設備投資ならものづくり補助金か収益力向上補助金、まず最低賃金引上げに対応したいなら業務改善助成金、という流れです。
次に「商工会・よろず支援拠点に相談する」。RIC静岡(054-275-2882)は静岡県内どのエリアからでも相談できます。補助金の採択実績も豊富で、自社の状況に合った制度を一緒に選んでくれます。
「GビズIDを今すぐ申請する」(笑)。これだけは今日やった方がいい。いざ公募が始まったときに「GビズIDがまだない」で間に合わないのが一番もったいないですから。
室谷さん、今日はありがとうございました!静岡の製造業の方にはぜひ活用してほしいですね。
賃上げって事業者にとっては義務感で捉えがちですが、補助金を使って省力化・生産性向上と組み合わせると、長期的な競争力に変えられます。静岡の中小企業がサプライチェーン全体で強くなれるよう、うまく活用してほしいですね。