愛知県 災害・感染症対策 補助金比較
室谷さん、愛知県って南海トラフ地震の被害想定エリアとして毎年メディアに出てきますよね。実際に事業者が使える補助金って、どれくらい種類があるんですか?
それがですね、意外と知られていないんですが、国・県・市区町村の三層合わせると81件以上あるんですよ。製造業が多い愛知県の特性に合わせた制度も結構ありまして。
81件!それは多いですね。でも種類が多すぎると、どれを使えばいいか迷いませんか?
そうなんです。ざっくり4つのカテゴリに分かれていて。「防災インフラ整備(大型)」「設備・機器導入(小口)」「BCP・事業継続対策」「エネルギーレジリエンス(蓄電池・再エネ)」の4つですね。自社がどんな投資をしたいかから逆引きするのが一番早いですよ。
なるほど、感震ブレーカー1台から数十億円規模まで、規模感がぜんぜん違うわけですね。
まさに。あと愛知県はトヨタを頂点とするサプライチェーンの中枢ですから、「取引先からBCPを作れと言われた」という動機で動く企業が多いです(笑)。防災投資をサボると取引先から外されるリスクがある、という意味では他県より切迫感が高い。
| カテゴリ | 主な補助対象 | 補助規模感 |
|---|
| 防災インフラ整備 | 自家発電設備・防災拠点整備 | 億円単位 |
| 設備・機器導入 | 感震ブレーカー・蓄電池・ブロック塀撤去 | 数万〜数百万円 |
| BCP・事業継続 | BCP策定支援・訓練・コンサル | 無料〜数十万円 |
| エネルギーレジリエンス | 太陽光・蓄電池・天然ガス設備 | 数十万〜数億円 |
愛知県独自の相談窓口って、どこが使いやすいですか?
愛知県中小企業金融課がBCP策定のサポートをしていて、「あいちBCPモデル」という無料テンプレートを配布しています。建設業・製造業・運輸業・卸売業・小売業・飲食店・サービス業の7業種分が揃っているので、まずここから始めるのが鉄板です。
無料テンプレートがある!それは中小企業にとってありがたいですね。では次に、具体的な補助金の話を聞かせてもらえますか?
愛知県 防災補助金 申請フロー
一般の中小企業や事業者が実際に申請できる補助金から教えてもらえますか?
まず最も使いやすいのが、経済産業省の「業務産業用蓄電システム導入支援事業」です。令和7年度補正版は補助率1/3以内・上限1,500万円で、2026年3月から10月まで受付中です。工場・倉庫・商業施設などが対象で、停電時のバックアップとしての蓄電池導入に使えます。
1,500万円ですか!製造業の工場規模だとかなりの設備が入りますね。
そうです。蓄電池を入れると、停電が起きても最低限のラインを動かし続けられる。サプライチェーンを止めないという観点でも投資効果が高いです。詳細は
こちらのページで確認できます。
天然ガスを使った防災設備の補助金もありましたよね?
「
災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金」ですね。補助率は1/2または1/3で、上限はざっくり3億6,000万円。コジェネレーションシステムや燃料電池など、停電時でも電気と熱を供給できる設備が対象です。詳しくは
令和6年度版のページをどうぞ。
熱と電気を同時につくる機器ですね。工場・病院・ホテルなどで導入が進んでいます。都市ガスで動くので、ガスの供給が止まらない限り発電できる。愛知は東邦ガスのエリアで普及率も高いですから、製造業との相性が非常にいいです。
都市ガスのインフラ事業者向けの補助金もありますよね?
ありますよ。「
令和7年度都市ガス分野の災害対応・レジリエンス強化補助金」です。バルブ開閉器への補助率は2/3、ガバナ遠隔監視システムは1/2で、上限額は約1億3,480万円。中小ガス導管事業者向けの制度です。詳しくは
こちらで。
環境省が「
地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共避難施設・防災拠点への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」を実施しています。太陽光・蓄電池・非常用電源の導入費が対象で、地方公共団体や公共性の高い施設管理者向けです。詳細は
こちらで確認できます。
太陽光と蓄電池を組み合わせて、災害時に自立して動ける避難所を作るイメージですね!
まさに。令和8年度版も現在公募中なので、市町村の担当者は今すぐ動いた方がいいですよ。では次に、愛知県特有のテーマである南海トラフ関連の補助金を見ていきましょうか。
愛知県って南海トラフ地震の被害想定エリアの中でもかなり上位ですよね。それ専用の補助金って存在するんですか?
あるんです。これが実はあまり知られていないんですが、「南海トラフ巨大地震旧鉱物採掘区域防災対策事業」が2本あって。愛知県の旧亜炭・石炭採掘区域の地盤対策が対象なんですよ。
愛知県は戦前から戦後にかけて亜炭の採掘が盛んだったんです。その跡が地下に残っていて、南海トラフの大きな揺れで陥没する可能性がある。それを補助率9/10で対策する制度が2本あります。地盤ぜい弱性調査・防災工事分が上限約71億3,000万円、検証事業分が上限約1,437万5,000円です。
補助率9/10!でもこれは一般事業者は申請できないんですよね?
そうなんです。県が申請者、市町村が間接補助事業者として実施する形です。直接使える制度ではないですが、地域の防災整備として知っておく価値がある。地盤調査・防災工事分は
こちらで、検証事業分は
こちらで確認できます。
中部地方の休廃止鉱山関連では、「
休廃止鉱山鉱害防止等工事費補助金(災害対策分)」も使えます。こちらは中小企業者が申請でき、補助率1/3以内・上限5,000万円。鉱山の廃坑に非常用発電機や燃料タンクを設置して、大雨・地震に備えます。詳細は
こちらで確認できます。
愛知県の工業地帯・港湾エリアの企業は、この辺の地盤リスクも意識しながら防災計画を立てる必要がありそうですね。では実務でよく使われる補助金の話に戻りましょうか?
自家発電設備に使える大型の補助金って何がありますか?
経済産業省の「
災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金」があります。令和8年度版は上限25億5,000万円の大規模事業で定額補助。防災拠点施設の自家発電設備整備が対象です。詳細は
こちらで。
25億5,000万円!でも執行団体を募集する形なんですよね?
そうです。民間団体が執行団体として応募し、自治体への交付事務を行う形です。令和6年度補正版も別途あって、石油製品タンク等の導入に使えます(上限約21億円・補助率10/10)。詳細は
こちらで確認できます。
ほんとに?補助率10/10って実質全額補助ですね!
これは石油の安定供給確保が国家的な課題だから特別な手厚さなんですよ。ガソリンスタンドのような燃料供給拠点の整備にも使えます。「令和6年度石油製品販売業環境保全対策事業費補助金」も同様で、定額補助・上限約9,000万円です。詳細は
こちらで。
愛知県だとガソリンスタンドも多いですし、こういう拠点整備補助は使い勝手が良さそうですね。
ただし、これらはかなり大型の設備投資が前提なので、中小の個人事業主にはハードルが高いです。まずは次のセクションで紹介する「ブロック塀撤去」や「BCP策定支援」の小口から始めた方が実用的ですよ。
個人事業主や小規模な事業者でも使える補助金はありますか?
ここで最初に確認しておきたいんですが、このセクションで紹介する市区町村の補助金は個人(一般世帯)と中小事業者の双方が対象になるものが多いです。自宅兼店舗の個人が申請するケースも、工場の塀を撤去したい中小企業が申請するケースも、どちらも対象に入りますよ。
じゃあ個人か事業者かで迷ったときは、市区町村の窓口で確認すれば使えるかわかるんですね。
そうです。ブロック塀等の撤去・補修補助がいい例ですね。愛知県内では名古屋市・豊橋市・岡崎市・一宮市・瀬戸市・春日井市・刈谷市・豊田市・安城市・西尾市・蒲郡市・犬山市など、40市町村以上でブロック塀等の撤去補助制度を設けています。
40市町村以上!ほぼ全市町村で対応しているんですね。
2018年の大阪北部地震でブロック塀の倒壊による被害があって以来、国の指導もあって各自治体が整備を進めてきた経緯があります。補助額は市町村によってまちまちですが、上限10万円が多いです。
名古屋市が「感震ブレーカー設置促進助成」を実施していましたが、受付状況は年度によって変わります。国の制度では「住宅事業者への感震ブレーカー購入費補助金」がありますが、これは東京都内の新築木造住宅施工業者向けで愛知県では直接使えません。詳しくは
こちらで。
じゃあ愛知県の感震ブレーカーは名古屋市に問い合わせるのが確実ですね。
そうです。市区町村の補助金は年度ごとに変わるので、最新情報は各自治体の窓口に確認してください。名古屋市・豊田市・岡崎市などの主要都市は、防災課や建築指導課が窓口です。
- 愛知県中小企業金融課: あいちBCPモデル(無料テンプレート・7業種分)
- 愛知県産業振興公社: 補助金申請・事業計画策定の総合相談
- 中部経済産業局: 国の補助金制度・BCP認定についての相談
- 愛知県ブロック塀安全対策: 補助制度一覧(40市町村以上が参加)
愛知県はBCPモデルの整備が充実しているんですね!では感染症対策に特化した補助金の話も聞かせてもらえますか?
ちょうど次のセクションで詳しく説明しますね。感染症対策と防災BCPは今や一体で考える時代になっています。
タイトルに「感染症対策」とあるんですが、感染症に特化した補助金って愛知県にはどんなものがあるんですか?
まず愛知県が医療機関向けに「新興感染症対応力強化事業(協定締結医療機関設備整備事業)」を実施していて、補助率は10/10、つまり全額補助なんです。
簡易陰圧装置(1病床あたりざっくり432万円)、PCR検査装置や等温遺伝子増幅装置(1台あたり935万円)、簡易ベッド(1台5万1,400円)、HEPAフィルター付き空気清浄機(1施設あたり90万5,000円)の4種類です。令和9年度分の意向調査が令和8年6月12日〆切で現在募集中ですよ。
これは愛知県が医療措置協定を結んでいる病院向けということですか?
そうです。改正感染症法に基づく制度で、次のパンデミックに備えて感染症患者を受け入れる医療機関の設備を整備するためのもの。愛知県感染症対策課が窓口です。
中小企業や一般の事業者が使える感染症対策の補助金はないんですか?
事業者向けには「あいちBCPモデル」の感染症版がまず使えます。「新型コロナウイルス感染症対策あいちBCPモデル」と「新型インフルエンザ対策あいちBCPモデル」の2種類が無料で公開されていて。コロナ禍を踏まえた感染症対応のひな形として完成度が高いんです。
感染症版BCPを作るだけで何かメリットがあるんですか?
大きなメリットがあって。感染症対応を含めた「事業継続力強化計画」の認定を中部経済産業局から取ると、ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金などで加点になります。
ほんとに?感染症BCP → 認定 → 補助金採択率アップ、という流れが作れるんですね!
そうです。コロナ禍では「
事業再構築補助金」が感染症の影響を受けた事業者の転換支援として活用されました。現行の第十二回では上限5億円で、感染症の影響が続く事業者がポストコロナ型の事業に転換するケースは今も採択されています。詳細は
こちらで。
感染症対策と防災BCPって、別々に考えるより一緒に取り組んだ方がいいんですね。
まさにその通りで、令和5年以降の流れは「自然災害と感染症パンデミックを一体のリスクとして管理する」方向に変わっています。「南海トラフ地震で工場が止まる」リスクと「次のインフルエンザ流行で従業員が出勤できない」リスクを同じBCPのフレームで同時対処する考え方が主流になってきた。
愛知県はその両方のリスクが高いエリアですし、感染症BCP×防災BCPを一体で作るのが合理的ですね。では次に、BCP策定が補助金採択率に直結する「二段階戦略」の詳細を教えてもらえますか?
BCP策定が補助金採択率を上げるって、どういうことですか?
まず、中小企業庁の「事業継続力強化計画」の認定を取ると、ものづくり補助金などで加点がもらえるんですよ。防災投資が採択率アップに直結する時代です。
ほんとに?防災への取り組みが補助金採択にも効くんですか!
認定取得自体は無料で、中部経済産業局に申請します。「あいちBCPモデル」でひな形を作ってからだと申請書類の作成がかなり楽になりますよ。BCP → 事業継続力強化計画の認定 → 設備投資補助金で加点、という流れが王道ルートです。
順番があるんですね。最初にBCP作って、そこから補助金申請につなげると。
しかも愛知の製造業には別の強みがあって。「南海トラフ対策として明確に位置づける」「BCPとの整合性を示す」「地域サプライチェーンへの貢献を書く」という申請理由の3点セットが書きやすい地域なんです。
確かに、愛知はトヨタサプライヤーが多いですし、サプライチェーンへの貢献を書くのは説得力がありますね。
採択審査員も「愛知の製造業が南海トラフ対策で防災投資する」という文脈を理解していますから、申請書の説得力が高まります。他の都道府県より理由付けが書きやすい土地柄なんですよ。
- 採択前に設備を発注してしまうと補助金対象外(最も多い失敗)
- 同一設備への複数補助金の重複受給は原則禁止
- GビズIDの取得には1〜2週間かかるため、補助金を検討したら同時に申請を開始する
- 申請期限の2〜3週間前には書類を揃えておく(締切直前は事務局が混み合う)
採択前の発注は絶対ダメ!これ知らない人が多そうですよね。
「採択されると思って先に発注してしまった」という相談はかなりよく聞きます。採択 → 交付決定 → 発注の順番を守ることが絶対条件ですよ。
色々出てきましたが、全体像を一覧で整理してもらえますか?
はい!事業規模と申請者の種類で選ぶのが一番シンプルです。
これだけの種類があると、どれを優先すればいいか迷いますね(笑)
中小企業の事業者なら、まず「業務産業用蓄電システム」が一番使いやすいです。上限1,500万円で補助率1/3、今年度は2026年10月まで受付中なので今すぐ動ける。BCP策定と並行してGビズIDを取得し、使いたい補助金の公募要領を確認するというのが最初のステップです。
中部経済産業局か愛知県産業振興公社に相談するのが一番確実です。「この設備にA補助金とB補助金を組み合わせて使えますか?」と直接聞いてください。窓口の方が確認してくれます。
実際にどんな順番で動けばいいか教えてもらえますか?
まずGビズIDの取得から始めることです。電子申請が基本になっているので、GビズIDなしでは申請できない補助金がほとんどです。
1GビズIDを取得する(電子申請の共通基盤、取得に約1〜2週間かかる)
2愛知県中小企業金融課で「あいちBCPモデル」を入手し、自社のBCP草案を作成(感染症版テンプレートも活用)
3事業継続力強化計画を中部経済産業局に申請して認定を取得(ものづくり補助金等で加点)
4中部経済産業局・愛知県産業振興公社に申請候補の補助金を相談(重複確認も同時に)
5使いたい補助金の公募要領を入手・確認し、スケジュールを把握する
6見積もりを取得し、申請書類を作成(採択前の発注は厳禁)
7Jグランツで電子申請 → 採択通知後に設備発注・工事着手
GビズIDは法人なら今すぐ取っておいて損はないですね!
取得費用は無料で、一度取れば複数の補助金に使えます。「そのうち補助金を申請するかも」という段階で取っておくのが賢いですよ。
愛知の事業者が書きやすいフレーズが3つあって。「南海トラフ巨大地震の被害想定エリアである愛知県において」「トヨタサプライチェーンの一員として事業継続を確保するため」「地域の中小企業として地域社会の防災レジリエンスに貢献する」の3点セットを使い倒してください(笑)
それが他の都道府県より採択率を上げやすい愛知の強みです。書類の説得力が桁違いに上がりますよ。
地震調査研究推進本部の令和7年9月の最新評価では、南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率は
60〜90%程度以上とされています。これは地震発生確率として最も高い「IIIランク」(高い)に位置づけられています。「まだ大丈夫」という時間はないんです。補助金は予算が尽きたら終わりなので、使える制度があるうちに動くのが正解です。愛知県の他の補助金も確認したい方は、
愛知県の補助金・助成金一覧もご覧ください!