室谷さん、広島県って台風や豪雨の被害が多いイメージがあるんですが、実際に被災したときに使える補助金や支援って、どんな種類があるんですか?
そうなんですよ、広島県は山がちな地形のせいで土砂災害が全国でも特に多い地域で。まず大きく分けると「個人・世帯向け」と「事業者向け」の2種類あって、それぞれで使える制度が全然違うんです。
そう。さらに「国の制度」と「広島県独自の制度」と「市区町村の制度」の3層構造になってて。たとえば市が「うちは50万出します」と言っても、国から100万出てたりする。これを全部重ねて使うのが申請のコツで、知らないと何十万も損するケースがあります(笑)。
| 支援の種類 | 対象 | 代表的な制度 | 支援額目安 |
|---|
| 被災者生活再建支援金 | 個人・世帯 | 国の制度(都道府県基金) | 最大300万円 |
| 住宅応急修理 | 個人 | 災害救助法 | 最大73万9,000円 |
| 災害復旧貸付 | 中小企業 | 日本政策金融公庫 | 最大1億5,000万円 |
| グループ補助金 | 中小企業グループ | 広島県独自 | 4分の3まで補助 |
| 持続化補助金 災害支援枠 | 小規模事業者 | 中小企業庁 | 最大200万円 |
| 防災拠点整備補助 | 自治体・法人 | 環境省 | 案件規模による |
| BCP策定・設備補助 | 中小企業 | 各種 | 数十万〜数億円 |
まずはこの表で全体像をつかんでもらえると。それで次から「個人向け」と「事業者向け」をそれぞれ深掘りしていきましょう。
分かりました。じゃあまず個人向けから聞かせてください。
広島県の被災者生活再建支援フロー図
家が被害を受けたとき、まず何をすればいいんですか?
最初にやることは「り災証明書の取得」です。市区町村が住家の被害を調査して証明書を発行してくれるんですが、これが後の全ての支援制度の「入場券」になるんですよ。
そう、まずこれを取らないと他の制度の申請ができない。そのあとで「被災者生活再建支援金」「住宅応急修理」「応急仮設住宅」など、それぞれの制度に申請していく流れです。
被災者生活再建支援金(最大300万円)
被災者生活再建支援金って、最大300万円というのは本当ですか?
本当です。全壊の場合は「基礎支援金」として100万円、さらに「加算支援金」として最大200万円。合計で最大300万円受け取れます。ただし「住宅を建て直す・買う」場合の加算が200万円で、「補修する」なら100万円、「賃貸に移る」なら50万円という使い道によって金額が変わるんですよ。
そうなんです。「全壊して新しく家を建てる」ケースが最高額で、「半壊で補修する」ケースはざっくり200万円前後になります。あと令和2年から中規模半壊も対象に加わったので、以前より使いやすくなりました。広島県はこの制度の対象になった災害が複数ありますので、被災したらまず市区町村の窓口に確認してください。
改正前は「全壊・大規模半壊」しか対象じゃなかったんですが、今は「中規模半壊」も含まれるようになって。広島みたいに土砂で「半壊はしてるけど全壊じゃない」ケースが多い地域だと特に助かる改正でした。
- 全壊・解体 + 住宅建設・購入: 基礎100万円 + 加算200万円 = 最大300万円
- 全壊・解体 + 補修: 基礎100万円 + 加算100万円 = 200万円
- 大規模半壊 + 住宅建設・購入: 50万円 + 200万円 = 250万円
- 中規模半壊 + 補修: 25万円 + 100万円 = 125万円
※被害判定区分によって金額が大きく変わるので、り災証明の判定結果を必ず確認すること
被害の程度ごとに一覧で分かると分かりやすいですね。申請はどこにすればいいんですか?
市区町村の窓口に申請します。広島市なら各区の区政調整課が窓口になっていて、申請期限は「被災日から13ヶ月以内」が一般的です。ただし災害によって特例で延長されることも多いので、焦らずまず窓口に相談してください。
住宅の応急修理(最大73万9,000円)
完全に建て直しじゃなくて、応急的に修理したいとき使える制度はありますか?
あります。「住宅応急修理」っていって、災害救助法の適用地域なら市区町村が費用を立て替えてくれて、被災者は最大73万9,000円まで負担なしで修理できます(令和7年4月基準・大規模半壊・中規模半壊・半壊の場合)。ただし「応急修理」なので、屋根や窓、壁など居住に最低限必要な箇所に限定されます。
73万円ちょっとというのはざっくりどのくらいの工事が出来るんですか?
屋根の補修と窓ガラス交換、雨漏り止めくらいはできるイメージですね。本格的な修繕には足りないんですが、「とりあえず雨が凌げる状態にする」という意味では十分です。注意点は、市区町村が認定した業者に頼まないといけないこと。自分で業者を選ぶと補助の対象外になりますので要注意です。
ほんとに。あと市区町村によって受付状況が違うので、被災したらすぐ「住宅応急修理はまだ受け付けていますか?」と窓口に電話するのをお勧めします。
広島県の土砂災害対策 住宅補助(市区町村独自制度)
福山市には「住宅・建築物土砂災害対策改修促進事業」というのがあって、土砂災害特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)にある住宅を改修する際、最大75万9,000円の補助が出ます。これは広島県内の他市町でも類似制度があるところがあるので、各市区町村に確認してみてください。
レッドゾーンの家に住んでる方は確認してみた方がいいですね。
そうです。広島県は土砂災害警戒区域が全国で最も多い都道府県の一つで、4万箇所以上あります。だから県内各地に住宅改修系の補助制度が用意されていることが多いんです。
広島県 事業者向け災害対策補助金 比較図
事業者向けの話も聞かせてください。被災した中小企業はどんな制度を使えますか?
事業者向けは大きく「①被災後の復旧支援」と「②災害前の備え(防災投資)」の2種類あります。被災してからの制度は緊急性が高いので先に確認しておくといいですね。
日本政策金融公庫 災害復旧貸付(最大1億5,000万円)
まず資金繰りの話から聞きたいです。被災した直後って、すごく資金がかかりますよね。
めちゃくちゃかかります(笑)。そこで使えるのが「災害復旧貸付」。日本政策金融公庫が窓口で、設備・運転資金として最大1億5,000万円まで低利で貸してくれます。通常より金利が優遇されてて、返済期間も最大20年まで取れる。
1億5,000万円!それはかなり大きな金額ですね。
ただ「貸付」なので返済義務があります。補助金とは違う。被災直後の資金繰りをつなぐための制度なので、その後に補助金や保険でもらったお金で返済するイメージです。まず「貸付でつなぐ→補助金で補填する」という順番が多いですね。
そう!まさにそれです。被災後の補助金は審査に時間がかかることが多いので、先に資金を確保しておかないと事業継続できないケースが出てくる。日本政策金融公庫の中国本部は広島市中区にありますし、日本政策金融公庫 広島支店にお問い合わせください。
中小企業グループ補助金(施設・設備の復旧費用を最大4分の3)
設備の修理や買い直しに直接使える補助金はありますか?
ありますよ。「中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業」、通称「グループ補助金」というのが大きな制度で。広島県の場合、平成30年7月豪雨のときに活用実績があります。被害を受けた中小企業が数社グループを組んで申請すると、施設・設備の復旧費用の最大4分の3を補助してもらえます。
4分の3というのはすごいですね。自己負担4分の1で済むんですか。
そうです。ただしグループ申請が条件なので、地域の商工会議所や商工会と一緒に動く必要があります。「うちだけで申請したい」という場合は使えない。個人的には、被災後の地域の結束を作るという意味でも、グループで申請するプロセス自体が大事だと思っています。
なるほど、地域コミュニティ的な意味もあるんですね。
小規模事業者持続化補助金 災害支援枠
「
小規模事業者持続化補助金」の
災害支援枠というのがあります。直接的な被害(設備の損壊等)があった小規模事業者に対して、上限200万円・補助率3分の2で支援してくれる制度です。直近では令和6年能登半島地震の被災事業者向けに実施されました。
大規模災害が発生した時に都度、対象地域が指定される仕組みなんです。だから「次に大きな災害が来たとき」に広島が対象になる可能性はある。この制度の存在を知っておいて、被災したらすぐ商工会議所に電話するのが大事です。
防災拠点・避難施設への設備導入補助
あります!環境省の「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する公共避難施設・防災拠点への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」という制度があって。名前が長いんですけど(笑)、要は避難所や防災拠点に太陽光パネルや蓄電池を入れる費用を補助してくれます。対象は地方公共団体や公共性の高い施設の管理者で、補助率は案件内容によって変わります。
詳細はこちらから確認できます。
主には自治体向けですが、一定の要件を満たす民間施設でも対象になることがあります。「うちは要件に当てはまるか?」という疑問は、環境省や各地の自治体担当課に問い合わせてみるのがベストです。
天然ガス設備 災害時レジリエンス強化補助金(最大3億6,000万円)
「災害時の強靱性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金」という制度があります。コージェネレーションシステム(電気と熱を同時に作る設備)とかガスエンジン・ヒートポンプを導入するときに、補助率2分の1または3分の1、上限3億6,000万円まで補助してもらえます。
病院や避難所、大きな工場など、「停電したらまずい施設」向けの制度で。導入コストが何億もかかるケースだとこれくらいの規模になります。これは何次にもわたって公募が繰り返されている制度で、
詳細はこちらで確認できます。
そう。毎年度予算がついて公募されることが多い制度なので、タイミングを逃しても次の公募を待てばいい。ただ事前にGビズIDの取得や計画書の準備が必要なので、余裕があるときに準備しておくことをお勧めします。
分散型エネルギー・マイクログリッド導入補助(最大4億円)
マイクログリッドって最近よく聞くんですが、それにも補助金があるんですか?
ありますよ!「再生可能エネルギー導入拡大に向けた分散型エネルギーリソース導入支援等事業費補助金」というのが該当します。地域で独立した電力網(マイクログリッド)を作る際に、再エネ設備や蓄電システムの導入費用の
2分の1、上限4億円まで補助してもらえます。
詳細はこちらで確認できます。
この規模の制度は個人じゃなくて、地域の事業者グループや自治体が中心になって動く感じですね。ただ「将来的な地域の電力自立」を考えると、非常に重要な施策です。
燃料備蓄 重要インフラへの自衛的備蓄補助(上限25億5,000万円)
自治体や病院が「いざというとき電力を切らさないようにする」ための補助金もあるんですか?
あります。経済産業省の「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金」という制度で、自治体の防災拠点施設に自家用発電設備を設置したり、燃料を備蓄する費用を補助してくれます。上限は25億5,000万円で、対象は自治体や防災拠点を運営する公共性の高い団体です。
詳細はこちらから確認できます。
そうです。個人や中小企業が使う制度ではなくて、「地域全体の災害対応力を上げる」インフラ整備の補助金ですね。ただ、こういう制度が充実していると、被災したときに病院や役所が機能し続けられる可能性が高まるので、地域住民にとっても大事な話です。
BCP策定・事業継続強化のための補助金
「災害が来てから復旧」じゃなくて「事前に備える」補助金もありますか?
あります!中小企業庁が推進している「事業継続力強化計画(BCP)」を策定・実践するための補助金で、都道府県によって違いますが50万円程度の補助が出るところが多い。宮城県では令和7年度に実施しているのを確認していますし、広島県でも類似の制度を各商工会議所が運営していることがあります。
そう。広島県では「ひろしま中小企業支援ネット」や「広島商工会議所」に問い合わせると、今使える制度を一覧で教えてもらえます。一人で全部調べるより、支援機関を使う方が圧倒的に効率的です(笑)。
ここまでで結構色んな制度が出てきましたね。まとめて見てみるとどうなりますか?
| 制度名 | 対象 | 支援額目安 | 補助率 |
|---|
| 被災者生活再建支援金 | 個人・世帯(全壊等) | 最大300万円 | 全額給付 |
| 住宅応急修理 | 個人(被災住宅) | 最大73万9,000円 | 全額(限度内) |
| 土砂災害対策改修促進(福山市) | 個人(レッドゾーン) | 最大75万9,000円 | 費用の一部 |
| 災害復旧貸付(公庫) | 中小企業 | 最大1億5,000万円 | 貸付(低利) |
| グループ補助金(中小企業) | 中小企業グループ | 事業費の最大3/4 | 最大3/4 |
| 持続化補助金 災害支援枠 | 小規模事業者 | 最大200万円 | 2/3 |
| 天然ガス利用設備補助 | 防災拠点・病院等 | 最大3億6,000万円 | 1/2または1/3 |
| 分散型エネルギー補助 | 事業者・自治体 | 最大4億円 | 1/2 |
| 防災拠点 再エネ設備補助(環境省) | 自治体・公共施設 | 案件規模による | 案件による |
| 燃料備蓄 重要インフラ補助 | 自治体・防災拠点 | 最大25億5,000万円 | 定額補助 |
そうなんです。個人向けの生活再建支援金から、自治体向けの数十億規模のインフラ補助まで幅広い。「自分はどのカテゴリか」を最初に整理して、それに合う制度を探すのが一番早いです。
実際に申請するときに気をつけることって何がありますか?
いくつか重要なポイントがあるので、まとめておきますね。
り災証明書を取得する — まずこれがないと他の制度に申請できない。被災後、できるだけ早く市区町村に連絡する
写真を撮っておく — 被害状況の記録が全ての申請に必要。修理する前に、被害箇所を複数の角度から撮影する
支援機関に相談する — 商工会議所、社会福祉協議会、よろず支援拠点など。個人で全て調べるより、窓口に行く方が速い
複数の制度を組み合わせる — 一つの被害に対して「国の制度」「県の制度」「市の制度」を重ねて申請できる場合がある
申請期限を確認する — 制度によって期限が違う。被災者生活再建支援金は「被災日から13ヶ月以内」が一般的
- 修理を先にしてしまう: 補助金申請前に工事を始めると、「被害の証明ができない」として対象外になるケースがある。必ず自治体に確認してから着工する
- り災証明の判定に異議申し立てができる: 「全壊だと思ったのに半壊判定された」という場合は、再調査を申請できる。判定が変わると支援額が大きく変わるので、納得いかなければ申し立てを
- 融資の後払いリスク: グループ補助金は「先に工事をして、後から補助金が入金される」後払い方式が多い。工事費を立て替えられる資金繰りを事前に確認しておくこと
そうなんですよ。「補助金が出るから大丈夫」と思って工事を始めたら、入金まで半年かかって資金ショートしかけた、という話を何社も聞いています。だから「まず融資でつなぐ → 後から補助金で返済」というセットで考えることが大事です。
状況によって違いますね。個人の方は「市区町村の窓口」か「社会福祉協議会」が最初の相談先として適切です。事業者の方は「商工会・商工会議所」「中小機構中国本部」「よろず支援拠点広島」がお勧めです。
- 個人・世帯: 各市区町村の防災担当窓口、広島県危機管理課
- 中小企業(資金): 日本政策金融公庫 広島支店 TEL 082-244-3961
- 中小企業(BCP・総合): 中小機構 中国本部(広島市中区)
- 補助金全般: よろず支援拠点 広島(ひろしま産業振興機構内)
- 商工会地区: 広島県商工会連合会
- 商工会議所地区: 広島商工会議所
それぞれ窓口が違うんですね。「何でも聞けるところ」はありますか?
一番広いのが「よろず支援拠点」ですね。国が設置した無料の経営相談所で、補助金のことから資金繰りまで何でも相談できます。ひろしま産業振興機構(広島市中区)の中に入っていて、予約なしでも相談できることが多い。被災した事業者の方にはまずここをお勧めしています。
補助金の申請書の書き方まで一緒に考えてくれる窓口もあります。一人で抱え込まずに、積極的に支援機関を使ってほしいですね。広島はコミュニティの結束が強い地域なので、被災した時こそ周りの支援を積極的に活用してください。
今日の話を振り返ると、広島県の災害支援って思ったより充実してるんですね。
そうです。国の制度・県の制度・市の制度を全部組み合わせると、かなりの支援が受けられます。問題は「知らないと申請できない」こと。せっかく制度があっても活用されていないケースが多い。
準備として何かやっておいた方がいいことはありますか?
3つだけ言うと、「①ハザードマップで自宅・会社のリスクを確認しておく」「②主要な補助金の窓口電話番号を控えておく」「③事業者なら保険と補助金の関係を整理しておく」ですね。この3点だけでも、被災後の対応スピードが全然違います。
「補助金は保険金との重複受給ができない」ルールがある制度が多いんです。保険で全額カバーできるなら補助金は不要ですが、「保険だと足りない部分」を補助金でカバーするイメージで。両方を上手く組み合わせると損が少ない。この辺りは被災前にFPや中小企業診断士に相談しておくのがベストです(笑)。
ありがとうございました!被災した方が一人でも多く支援制度を活用して、早く日常を取り戻せることを願っています。