長崎県の事業者が直面する災害リスクと補助金の全体像


佐藤
編集長
長崎県って、台風の直撃も多いし、島が多くて被害も分散しますよね。事業者として何から手をつければいいか分からないんですが、補助金的にはどんな制度があるんですか?

室谷
代表取締役
そうですね、長崎は全国でも特殊なリスクプロファイルを持っている県で(笑)。台風・豪雨はもちろん、雲仙普賢岳の火山リスク、南海トラフ地震の影響圏内にも入っています。島嶼部が多いので、本土の系統電力が復旧するまでに時間がかかるケースも多い。その分、国の防災系補助金は手厚くて、DBに入っているだけで80件以上あります。

佐藤
編集長
80件以上!それは多いですね。まずどこから見ればいいんでしょう?

室谷
代表取締役
事業者向けとしては大きく3つに分けて考えてほしいんです。「事前対策(BCP整備・設備強化)」「被災後の復旧支援(資金繰り・再建)」「インフラ耐強化(エネルギー・通信設備)」の3軸ですね。

佐藤
編集長
なるほど、被災してからだけじゃないわけですね。

室谷
代表取締役
そこが大事なポイントで、実は被災後より事前の方が使える補助金が多いんです。BCP(事業継続計画)を策定している企業は加点があって、ものづくり補助金でも有利になる。防災投資と経営強化が連動する時代になっています。

佐藤
編集長
BCP策定自体にも支援があるんですか?

室谷
代表取締役
中小機構(独立行政法人 中小企業基盤整備機構)が「事業継続力強化支援事業」として無料相談や専門家派遣をやっています。中小機構 九州本部が長崎県を担当していて、費用ゼロで計画策定のサポートを受けられる。補助金申請の前に、まずここで相談するのをおすすめします。
長崎県で使える主要補助金・助成金(事業者向け)


佐藤
編集長
では具体的に使える補助金を教えてください。まず事前対策系の大きいものから聞かせてください。

室谷
代表取締役
いちばん規模が大きいのは令和8年度版の「災害時に備えた社会的重要インフラへの自衛的な燃料備蓄の推進事業費補助金」ですね。こちらは1申請当たり上限10億円、補助率10/10の全額補助という破格の制度です。

佐藤
編集長
10億円で全額補助!それは太っ腹すぎますね(笑)。誰でも使えるんですか?

室谷
代表取締役

佐藤
編集長
自治体向けなんですね。民間企業向けで使えるものは何がありますか?

室谷
代表取締役
民間事業者で最も注目なのが「令和6年度 災害時の強靭性向上に資する天然ガス利用設備導入支援事業費補助金」ですね。こちらは上限3億6,000万円、補助率は1/2または1/3です。

佐藤
編集長
3.6億円ですか!それはすごい額ですね!

室谷
代表取締役
コージェネレーションシステムや燃料電池、ガスエンジンヒートポンプなど、停電時でも自立して動く設備を入れる費用を補助してくれます。病院、介護施設、ホテル等の宿泊施設、製造業の工場など、停電が事業に直撃する業種には特に有効です。長崎は離島も多くて、台風で海底ケーブルが切れると本島からの電力供給が止まることがある。そういうリスクに備えたコジェネ導入に使える。

佐藤
編集長
なるほど、長崎特有のリスクへの対策になりますね。

室谷
代表取締役
令和7年度版として「都市ガス分野の災害対応・レジリエンス強化に係る支援事業費補助金」も出ていて、こちらは上限1.45億円です。ガス事業者やエネルギー系インフラ事業者向けの内容ですが、五島列島や対馬など離島のエネルギー供給体制強化にも関係する制度です。

佐藤
編集長
防災拠点に自家発電設備を入れる話もありましたね。令和7年度版はどうなっていますか?

室谷
代表取締役

佐藤
編集長
情報通信インフラの補助金もあると聞きましたが?

室谷
代表取締役

佐藤
編集長
地上波放送局向けも?

室谷
代表取締役
そうです。「地上基幹放送等に関する耐災害性強化支援事業(令和6年度公募)」は放送局が対象で、詳細を見るで確認できます。上限が約5,372万円です。放送局は長崎の離島各地に中継局を持っていることが多い。そういった施設の耐震強化や停電対策が補助されます。

佐藤
編集長
BCP助成金みたいなものはありますか?中小企業向けで。

室谷
代表取締役

佐藤
編集長
あ、都内の企業じゃなくても使えるんですか?

室谷
代表取締役
要件に「首都圏1都7県での事業所」があるので、長崎の企業でも東京等に拠点があれば対象になり得ます。ただし一般的な長崎の中小企業には使えないケースが多い。そういう場合は国の「事業継続力強化計画(経済産業局の認定制度)」を活用する方が現実的です。これは無料で認定が取れて、ものづくり補助金等で加点になります。
BCP対策と防災投資を組み合わせる実践戦略

佐藤
編集長
BCP策定が補助金申請の加点になるという話がありましたが、具体的にどう活用するんですか?

室谷
代表取締役
ものづくり補助金を例に取ると、「事業継続力強化計画(略称 ジギョケイ)」の認定を受けている企業は加点項目になります。採択率が全国平均40〜50%程度の中で、加点がある企業はざっくり5〜10ポイント有利になります(笑)。長崎の製造業や食品加工業が設備投資をするときに、BCP策定をセットで進めておくと採択率が上がるわけです。

佐藤
編集長
実際に計画を作るのって、難しくないですか?

室谷
代表取締役
経済産業省の「事業継続力強化計画策定支援ツール」というオンラインフォームがあって、必要事項を入力するだけで計画書のひな形ができます。さらに商工会・商工会議所、中小機構のよろず支援拠点に相談すれば、無料でサポートしてもらえる。1〜2か月あれば策定できます。

佐藤
編集長
また別の制度で「2026年度 防災・BCP調査事業」というのもありますね?

室谷
代表取締役
それが国立研究開発法人・防災科学技術研究所が公募している調査研究系の補助金で、こちらですね。防災・BCP分野での先端的な研究や実証を支援する制度で、主に研究機関や大学、コンソーシアム向けです。長崎大学とか長崎総合科学大学のような高等教育機関が連携して取り組む場合は要チェックです。

佐藤
編集長
研究寄りの制度なんですね。大学と企業が組んで申請できるんですか?

室谷
代表取締役
大学や研究機関がメインになるケースが多いですが、企業と連携した産学共同型の申請も対象になります。長崎は島嶼部の防災課題が全国的にもユニークな地域なので、「離島における防災・BCP体制の構築」というテーマで採択された事例もあります。
南海トラフ対策と長崎の地域特性

佐藤
編集長
南海トラフ地震って、長崎にも関係あるんですか?

室谷
代表取締役
長崎県は南海トラフ地震の影響圏内に入っています。特に大きいのが「南海トラフ巨大地震旧鉱物採掘区域防災対策事業費補助金」で、こちらは上限71億円超という超大型の補助金です。旧石炭採掘区域の地盤ぜい弱性調査・防災工事が対象で、補助率は9/10と手厚い。

佐藤
編集長
71億円!それは国家事業レベルですね。

室谷
代表取締役
石炭の歴史を持つ長崎は対象エリアになる可能性があります。端島(軍艦島)が有名ですけど、炭鉱があった地域には旧採掘区域があります。地方公共団体や経済産業省の確認が必要ですが、長崎県の担当部署に問い合わせる価値がある制度です。

佐藤
編集長
長崎独自の地域リスクって他にもありますか?

室谷
代表取締役
雲仙普賢岳の火山活動のリスクもありますね。1991年の噴火では大きな被害が出ました。島原市周辺の事業者は火山泥流・土石流のリスクを踏まえたBCPが必要です。それと長崎市内は坂の町なので、がけ崩れ・土砂災害のリスクが高い地域が多い。長崎市の「宅地のがけ災害対策費補助金制度」は上限200万円で、がけ崩れリスクがある土地での防護工事費用を補助してくれます。飲食店や旅館が立地している物件で、がけ崩れリスクがある場合は長崎市役所に相談を。
被災後の復旧支援 事業再建に使える制度

佐藤
編集長
実際に被災したあと、事業を立て直すための支援はどんなものがありますか?

室谷
代表取締役
被災後の復旧支援で最重要なのが「日本政策金融公庫の災害復旧貸付」です。地震、台風、豪雪、大規模火災などで被災した中小企業が対象で、運転資金・設備資金ともに上限1億5,000万円まで借りられます。金利も通常より優遇されていて、審査も被災後は特別対応になります。

佐藤
編集長
補助金じゃなくて融資なんですね。

室谷
代表取締役
そう、補助金と融資は別物で、被災直後は「動ける資金」が最優先です。補助金は後払いが基本なんで、採択されてから工事して完了報告を出して、ようやく入金される。被災直後はそんな時間的余裕がない。まず公庫の融資で手元資金を確保して、並行して補助金を申請するのが正しい順序です。

佐藤
編集長
なるほど(笑)。それは大事な実務知識ですね。

室谷
代表取締役
もう一個重要なのが「セーフティネット保証(信用保証協会)」です。大規模災害時は4号または5号の認定が出ることがあって、保証枠が拡大します。長崎県信用保証協会に問い合わせると、被災時の特別対応について案内してもらえます。

佐藤
編集長
長崎で大きな台風被害があったとき、同様の制度が使えるということですね。

室谷
代表取締役
そうです。長崎の医療機関・医療従事者養成施設向けには、県独自の「災害復旧費補助金」もあります。長崎県ホームページで詳細が確認できて、被災後1か月以内に厚生労働省への協議が必要です。2026年2月に更新された情報なので最新です。

佐藤
編集長
小規模事業者向けの特別枠って今も使えますか?

室谷
代表取締役
「小規模事業者持続化補助金 災害支援枠(令和6年能登半島地震等)」(詳細を見る)は、今は石川・富山・福井・新潟県の被災地向けです。長崎の事業者は直接は使えないですが、重要な示唆があります。「大規模災害が発生したら、持続化補助金に上限200万円・補助率2/3の特別枠ができる」という仕組みを覚えておくといいです。

佐藤
編集長
仕組みを知っておけば、次の災害に備えられるわけですね。

室谷
代表取締役
まったくそのとおりで。過去の災害時のパターンから言うと、被災後1〜3か月で「〇〇災害支援枠」のような補正予算措置が出ることが多い。そういうときに、あらかじめjGrantsのアカウントとGビズIDを取得しておくと、申請がスムーズになります。GビズIDは取得に2〜3週間かかることがあるので、被災する前に準備しておくのが鉄則です。
主要補助金の横断比較テーブル
| 制度名 | 対象 | 上限額 | 補助率 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 燃料備蓄推進補助金(R8) | 自治体等 | 10億円/件 | 10/10 | 避難所・防災拠点に燃料備蓄設備 |
| 発電設備整備補助金(R8) | 自治体等 | 25.5億円 | 定額 | 自家発電設備・防災拠点整備 |
| 石油タンク等導入補助金(R8) | 自治体等 | 22.98億円 | 10/10 | 石油製品タンク・災害バルク |
| 天然ガス設備導入補助金(R6) | 民間企業 | 3.6億円 | 1/2〜1/3 | コジェネ・燃料電池。停電対策に最適 |
| 防災拠点エネルギー補助金(R8) | 自治体・公共 | 大型 | 〜2/3 | 太陽光・蓄電池。脱炭素×レジリエンス |
| 都市ガス災害補助金(R7) | ガス事業者 | 1.45億円 | 設定あり | ガス供給設備の耐災害性強化 |
| ケーブルTV耐災害性強化(R7) | ケーブルTV | 設定あり | 設定あり | 光ファイバー化・耐震化 |
| BCP実践促進助成金(R8) | 中小企業 | 500万円 | 1/2〜2/3 | BCP策定済み企業の実践投資 |
| 小規模持続化補助金 災害枠 | 小規模事業者 | 200万円 | 2/3 | 大規模災害時設置の特別枠 |
| スマート保安実証支援補助金 | エネルギー設備 | 3億円 | 定額 | AI・ドローンで保安自動化 |
長崎の事業者が今すぐやるべきこと(3つ)
- GビズIDを取得しておく — 取得に2〜3週間かかる。jGrantsで補助金申請する際に必須。被災後に慌てて取得しようとしても間に合わない
- BCP(事業継続計画)を策定しておく — ものづくり補助金で加点あり。中小機構の無料相談を使えばゼロ円で策定できる。経済産業局に認定申請すれば「ジギョケイ」取得も可能
- 直近3期分の決算書をクラウドに保管 — 被災して書類が水没・焼失しても申請に必要な書類を即時復元できる体制を整える

佐藤
編集長
GビズIDって、そんなに時間がかかるんですね。

室谷
代表取締役
郵送での書類確認があって、住所確認も含めて2〜3週間が標準です。補助金の公募期間が短いものだと1か月切っているものもある。そういうときに「GビズIDを持っていない」となると申請すら始められない。年1件でも補助金を使う可能性がある企業は、今すぐ取得しておく価値があります。
長崎県・各市の独自支援制度と相談窓口

佐藤
編集長
国の制度はわかりました。長崎県や各市独自の支援ってどんなものがありますか?

室谷
代表取締役
長崎市の「宅地のがけ災害対策費補助金制度」は注目です。がけ崩れのリスクがある土地で、防護工事をする際に費用の一部を補助してくれる。長崎は坂の町なのでがけ地が多い。特に古い旅館・飲食店が立地している斜面沿いの物件では要確認です。

佐藤
編集長
確かに長崎市内って坂と斜面が多いですよね(笑)。

室谷
代表取締役
あとは長崎県商工会連合会や各市町の商工会が「被災小規模事業者応急資金」を運用していることがあります。国の制度が出るまでの間のつなぎ資金として、自己資金ゼロで借りられる仕組みを県が独自に設けているケースもある。被災時はまず管轄の商工会・商工会議所に電話するのが最速のルートです。

佐藤
編集長
「よろず支援拠点」でも相談できますか?

室谷
代表取締役
そうです、よろず支援拠点長崎(中小機構が運営)も無料で相談できる。長崎市内に窓口があって、補助金の選び方から申請書の書き方まで専門家が対応してくれます。離島からでもZoomで相談できるので、五島列島・対馬・壱岐の事業者も積極的に使ってほしいですね。
| 支援機関 | 役割 | 相談内容 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 長崎支店 | 融資 | 災害復旧貸付・BCP資金 |
| 長崎県信用保証協会 | 保証 | セーフティネット保証・被災時特別対応 |
| 長崎県商工会連合会 | 補助金・経営 | 持続化補助金・応急資金 |
| よろず支援拠点 長崎 | 総合相談 | 補助金全般・BCP策定・Zoom対応 |
| 中小機構 九州本部 | BCP・再建 | 事業継続力強化・専門家派遣 |
| 長崎市商工会議所 | 市内事業者向け | 各種補助金・融資紹介 |
申請のポイントと後払いリスクへの対策

佐藤
編集長
補助金を実際に申請するときのコツって何かありますか?

室谷
代表取締役
一番大事なのは「後払いの資金繰りリスク」への備えです。ほとんどの補助金は事業完了後の後払いなんです。工事代金・設備費用を先に全額払い、完了報告後に補助金が入金される。

佐藤
編集長
それって、資金力がないと補助金を使えないということですよね?

室谷
代表取締役
まさにそこが落とし穴で。補助金が確定しただけでは業者に払えない。採択通知が来たあとも、交付決定を受けてから実際に工事をして、完了報告を出して、補助金が振り込まれる。この期間が半年以上になることもある(笑)。だから「補助金申請をする」と同時に「つなぎ資金をどうするか」を考えるのが経営者の鉄則です。
後払いの資金繰りリスクに注意
- 補助金の多くは事業完了後の後払いです。工事代金・設備費用を先に全額払い、完了報告後に補助金が入金されます
- 工事完了から入金まで3〜6か月かかることも珍しくない
- 資金力が不足している場合は、補助金申請と同時に「つなぎ融資」の検討を。商工会・商工会議所や日本政策金融公庫に相談を

佐藤
編集長
「被災したら何を一番最初にすればいい?」という優先順位も教えてもらえますか?

佐藤
編集長
並行して動かないといけないことが多いんですね。

室谷
代表取締役
そうです。被災直後の3日間でどれだけ素早く動けるかが、復旧スピードの半分を決めると言っても過言じゃないです。なので事前に「もし被災したらこの順序で動く」という手順書をBCPとして作っておくのが本当に大事。補助金のためだけじゃなく、事業を守るために必要な準備です。
まとめ

佐藤
編集長
今日の話のポイントをまとめると、長崎の事業者にとって災害対策補助金はどんな使い方をすればいいんでしょうか?

室谷
代表取締役
3段階で考えるとわかりやすいです。「平時の備え」として、GビズID取得・BCP策定(ジギョケイ認定)・設備強化(天然ガス補助金・防災拠点整備)をやっておく。「被災直後」は公庫融資で資金を確保して、写真証拠を保全する。「復旧フェーズ」では商工会・よろず支援拠点を使いながら、持続化補助金の特別枠や補正予算の復旧支援を組み合わせて事業再建する。この3段階を意識しておくだけで、実際に被災したときの動きが全然違います。

佐藤
編集長
長崎って九州の中でも独特のリスクがある県だから、他の県以上に意識が必要ですよね。

室谷
代表取締役
特に五島列島や対馬、壱岐など離島の事業者は、本土とのアクセス遮断リスクもある。船便が止まると物資が来ないし、資材調達もできない。そういう特殊事情を踏まえてBCPを作っておくことが重要です。長崎で補助金を探している方は長崎県の全補助金一覧もぜひ確認してみてください。防災・BCP以外の補助金も多数掲載されています。また災害復旧・防災目的の全国補助金一覧では全国規模の制度を一覧で見ることができます。